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放送中

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  • コラム

第38回放送『焼物の里 茨城県笠間市と栃木県益子町』

コンシェルジュ沓掛博光の旅しま専科
笠間名物の稲荷寿司。色々な具をトッピングしたものが女性に受けている

笠間名物の稲荷寿司。色々な具をトッピングしたものが女性に受けている

 茨城県の笠間市と栃木県の益子町は東日本を代表する焼物の里。この二つの里を結んで東京から直行バスがでている。“関東やきものライナー”と言い、1日5便の運行。自分好みの焼物を見つけたい、作りたいという焼物ファンには便利なアクセス。見どころと併せて2つの里を紹介しよう。

関東の2大焼物産地、笠間と益子を結んで都心から直行する“関東やきものライナー”

関東の2大焼物産地、笠間と益子を結んで都心から直行する“関東やきものライナー”

 “関東やきものライナー”は平成23年に茨城交通が始めた路線バスで、茨城県と栃木県をまたいで結ぶ。秋葉原駅前から出発し、北関東自動車道を経由しておよそ1時間50分で笠間市の観光の中心部、笠間稲荷神社入口に着く。ここから益子町の陶芸メッセ入口へは40分ほど。1便は秋葉原発8時20分で、2便は15時20分。益子町から秋葉原へ戻る最終バスは陶芸メッセ入口発16時3分となっており、バスダイヤの関係で、日帰りで2つの里を色々と見て回るのは時間的に無理がある。1泊するか、日帰りであれば、笠間市か益子町のうち1か所にしぼり、別の日にもう1か所を訪ねるのがいい。
 料金は笠間までが片道1500円(大人)で2枚チケットが2600円(往復または2人で1枚ずつ利用可)、益子までが同2000円で、2枚チケットが3500円(同)となっている。乗れば目的のバス停まで一直線で、しかもリーズナブルな値段なのでお得なバスと言える。このバスの運行をきっかけに、国内では珍しい、県は異なるが笠間観光協会と益子町観光協会が提携して「かさましこ観光協議会」を設立し、焼物の里を軸に観光pRなどを共同で進めている。県境を越えた地域振興の成功例だ。

窯元やお食事処などが点在する笠間市のギャラリーロード

窯元やお食事処などが点在する笠間市のギャラリーロード

 笠間焼を色々歩きながら見たいと言う人は笠間の町に入って2つ目のバス停、やきもの通りで下車するといいだろう。この通り周辺にはやきもの通りのほか、陶の小径やギャラリーロードが続き、窯元や焼物専門店、レストランなどが並び、その先には体験工房や美術館のある笠間芸術の森公園が広がっている。
 やきもの通りには代々続く古くからの窯元や専門店、ギャラリーなどおよそ10店が国道355号沿いに並ぶ。どちらかと言えば大型店が多い。バス停から一歩奥に入った静かな住宅地に延びるのが陶の小径。およそ500mの細い道に沿って10軒ほどのこぢんまりとした窯元が続く。作家ひとりで、あるいはご夫婦で制作し、作業場に続く店先で自分の作品を販売するという作家と直に接しながらの作品選びや買い物が楽しめるのがこの径の魅力になっている。
 先ほどのバス停から友部IC方向へ少し戻って角に向山窯(こうざんがま)が立つところを左折すると2キロに渡って続くギャラリーロードに入る。ギャラリーや食事処、窯元のお店などおよそ30軒が点在し、日常雑器から美術品まで幅広い作品を楽しむことができる。このあたりでランチをとる人も多い。

笠間工芸の丘には笠間焼を手頃な値段で求められるショップもある

笠間工芸の丘には笠間焼を手頃な値段で求められるショップもある

 ギャラリーロードから右手の丘を上がると芸術の森公園に出る。総面積54.6ヘクタールという広大な丘陵地帯に茨城県陶芸美術館、陶芸体験ができる笠間工芸の丘、茨城県窯業指導所、四季の森などが点在している。美術館は東日本では唯一の陶芸に特化した美術館で、日常雑器の製造からスタートし、自由な作風で新しい作品を生み出している現代の笠間焼まで幅広く展示。中でも笠間ゆかりの作家で、昭和28年に陶芸家として初めて文化勲章を受章した板谷波山の上品で色彩豊かな文様模様を取り入れた美の世界が広がる作品や練上手(ねりあげで)の保持者として平成5年に重要無形文化財(人間国宝)に認定された松井康成の常設展示は、その卓越した技法と心に残る類まれなる色彩の妙に目が奪われる。練上とは色の異なる土を重ねあわせたり、練り合わせして成形する技法で、彩色や文様と共に高度の技術が求められる作陶である。笠間工芸の丘では電動ロクロや手ひねりで陶器作りが楽しめる作陶工房や笠間焼をお手頃価格で買えるショップなどがある。芸術作品を鑑賞し、自分で作ってみるのも笠間の思い出になる。

日本三大稲荷のひとつに数えられる笠間稲荷神社

日本三大稲荷のひとつに数えられる笠間稲荷神社

 芸術の森公園からギャラリーロードに戻りおよそ20分歩くと笠間市出身で、わが国の洋画の画商としては草分け的な存在の日動画廊創業者の長谷川仁が創設した笠間日動美術館が立つ。フランス印象派の作品や世界的にも珍しい有名画家のパレット370点を収集し常時200点ほどを展示している。ここから門前通りに出て15分も歩くと右手に赤い大きな鳥居が見えてくる。ここが1350余年の歴史を誇る笠間稲荷神社。伏見稲荷大社(京都府)、祐徳稲荷神社(佐賀県)と共に日本三大稲荷のひとつに数えられる。ちなみにこの大鳥居は5年前の東日本大震災の時に倒壊し、この10月にようやく立て直され、本来の境内の姿に戻ったところである。笠間稲荷の前身は、その昔一帯にくるみ林が広がりその木の根元に神を祀った胡桃下(くるみがした)稲荷がルーツ。境内には幹に注連縄を張ったくるみの古木があり、その横に2本の藤の大木が見事な枝を伸ばしている。かつて世界中でヒットした「上を向いて歩こう」を歌った坂本九は幼いころ笠間市に住んでおり、この稲荷で挙式したことでも知られる。門前にはお稲荷様ゆかりの稲荷寿司のお店が軒を並べている。

笠間日動美術館の分館、春風萬里荘。陶芸家でもあった北大路魯山人の住居を移築して、作品などを展示している

笠間日動美術館の分館、春風萬里荘。陶芸家でもあった北大路魯山人の住居を移築して、作品などを展示している

 また、公園からやきもの通りの国道355号を渡り、車で約10分のところに笠間日動美術館分館の春風萬里荘(しゅんぷうばんりそう)がある。萱葺きの重厚な民家で、明治、大正、昭和と生き陶芸、書などに活躍した芸術家北大路魯山人の北鎌倉にあった住まいを移築したもので、魯山人の作品展示や自ら設計した茶室、石庭、四季の花が咲く閑静な庭園など日頃の喧騒が忘れられる空間が広がる。

益子町の陶芸メッセに立つ益子陶芸美術館

益子町の陶芸メッセに立つ益子陶芸美術館

 笠間稲荷神社入口からバスでおよそ40分で益子町の陶芸の中心地、陶芸メッセ入口に着く。ここには益子陶芸美術館、益子焼を世界に広めた濱田庄司の旧宅などが立ち、益子焼の魅力と濱田庄司の作品世界をじっくり楽しむことができる。“用の美”を追求し、共に民芸を推進させた河合寛治郎、英国の作家バーナード・リーチらの作品が展示され、今もなお新鮮な感動と発見が個々の作品から伝わってくる。
 益子焼の始まりは江戸時代に遡る。お隣の笠間で焼物の技術を修得した大塚啓三郎が益子で窯を築いたのがその始まりとされ、笠間焼と同様に瓶や鉢、急須などの日常雑器を主に焼いていたが、大正13年(1924)に濱田庄司がこの地に移住し、益子で焼かれる使いやすく、丈夫で親しみのある雑器から“用の美”に気付き、柳宗悦らと民芸運動を起こして益子焼を国内外に広めた。濱田庄司抜きには今日の益子焼は語れないと言われるほど繋がりは深い。

濱田庄司記念益子参考館に保存されている茅葺の自邸。内部には愛用した家具なども展示されている

濱田庄司記念益子参考館に保存されている茅葺の自邸。内部には愛用した家具なども展示されている

 その濱田庄司の作陶の場であり自邸でもあった工房を公開し、作品や濱田が自ら蒐集した国内外の作品などを展示した濱田庄司記念益子参考館が陶芸メッセから歩いて10分のところにある。参考館としたのは、濱田庄司が自ら作陶の参考にと集めた品々から得た恩恵を、広く多くの人にも共有してもらいたいとの考えから名付けられたもので、濱田庄司の心眼が伝わる名品が並ぶ。茅葺の自邸やろくろの前に障子をはめた作陶場などが見学でき、人間国宝であり、文化勲章を受章した陶芸の偉大なる先立の人柄を直に知る思いがする。益子焼のお店巡りはこの濱田庄司記念益子参考館から陶芸メッセの間に延びる城内坂通りに沿って50軒ほどが軒を連ね、湯のみや皿などの日常品から大皿や壺などの作品まで幅広く展示、販売している。食事処もそろっているのでこの通りを中心に益子散策を楽しむといいだろう。

問い合わせ:笠間観光協会 ℡0296-72-9222
      益子町観光協会℡0285-70-1120
交通:秋葉原駅前より茨城交通「関東やきものライナー」で、
   笠間市は、やきもの通り下車、益子町は陶芸メッセ入口下車。
   車は北関東自動車道友部IC利用