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【映画評書き起こし】、『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』を語る!(2016.12.17放送)

ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル

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「映画館では、今も新作映画が公開されている。
 一体、誰が映画を見張るのか?
 一体、誰が映画をウォッチするのか?
 映画ウォッチ超人、“シネマンディアス”宇多丸がいま立ち上がる――
 その名も、週刊映画時評ムービーウォッチメン!」

<初回鑑賞前のトーク>

宇多丸 はい。ということでムービーウォッチメン、スペシャル回と言っていいでしょうね。『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』の現在、品川のT・ジョイのIMAXシアターの開場を待っている段階です。朝9時45分ぐらいでございます。ということで、いま横にいらっしゃるのは高橋ヨシキさんです。
高橋ヨシキ はい。どうもおはようございます。いやいや、思ったよりも平常心が保てなくなって、いま本当にヤバいですよね。宇多丸さんは結構今日、冷静ですよね?
宇多丸 いやいや、まあ平常心ですよ。もう常にそれは……こっから先、ずっと平常心ですよ。
高橋ヨシキ 僕はもう膝が笑っちゃって、全然まっすぐ歩けないっていうか(笑)。
宇多丸 これから毎年やるんですよ、一応、これ。
高橋ヨシキ これでどんどん弱らされていって、いつ死ぬかわかんないっていう……本当に困ったことですよね。
宇多丸 「だんだん死に近づいていく」というね。今日ね、2回連続で見ますからね。
高橋ヨシキ もうその時は平常心かもしれないんで、がんばります。
宇多丸: もしくは生きていないという?
高橋ヨシキ うるさいな(笑)。まあ、がんばります!
宇多丸 『ローグ・ワン』、内容的な見どころとしてはヨシキさん、いかがでしょうか?
高橋ヨシキ そうですね。これ、いまさら気づくのもあれなんですけど、要はこれって『エピソード4』っていう最初の『スター・ウォーズ』にいちばん近々のストーリーじゃないですか。『帝国の逆襲』より近いんですよ。だから、“超”スター・ウォーズじゃないですか。なにを言っているかわかりませんが。もうヤバいですよね。
宇多丸 もうルークとかは普通に青年として農家を手伝っている時期ですよね。
高橋ヨシキ ルークが農家をサボって都市ステーションでみんなとダベっている頃ですね。
宇多丸 暴走族的にね、ビュンビュンやってネズミを撃ったりしている時です。
高橋ヨシキ そういう時代ですね。ハン・ソロはいまごろ帝国軍の前でジャバ・ザ・ハットにたのまれたスパイスを撒き散らして逃げたりしている頃です。
宇多丸 と、思うとやっぱり広がりますよね。
高橋ヨシキ そう思いながら見るしかないじゃないですか。もう。
宇多丸 っていうかそういう匂わせるくだりがあってもおかしくないですもんね。
高橋ヨシキ まあ、そういうのに引っかかるのもオタクのおじさんのヤバいところですね。もう面倒くさいとしか言いようがないですね。
宇多丸 いわゆる”接待”ですね。
高橋ヨシキ 接待ですね。
宇多丸 あっ、(劇場のドアが)開きました、開きましたよ!
高橋ヨシキ 接待されたいと思います。それじゃ、さよなら〜!

<初回鑑賞前のトークおわり>

毎週土曜夜10時からTBSラジオをキーステーションに生放送でお送りしている『ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル』。ここから夜11時までは、劇場で公開されている最新映画を映画ウォッチ超人こと<シネマンディアス宇多丸>が毎週自腹でウキウキウォッチング。その<監視結果>を報告するという映画評論コーナーでございます。今夜扱う映画は、先週「ムービーガチャマシン」(ガチャガチャ)を回して決まった、そして46時間前に日本で公開が始まったこの映画……『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』

(BGM:テーマ曲が流れる)

『スター・ウォーズ』シリーズの第一作『エピソード4 新たなる希望』の直前を描いたスピンオフ作品。『エピソード4』でレイア姫がR2-D2に託した帝国軍の最終兵器「デス・スター」の設計図を反乱軍がいかに入手したのか? を描く。主人公のヒロイン、ジン・アーソを演じるのは『博士と彼女のセオリー』でアカデミー主演女優賞にノミネートされたフェリシティ・ジョーンズ。いまね、『インフェルノ』もやってますもんね。監督は2014年のハリウッド版『GODZILLA ゴジラ』のギャレス・エドワーズということでございます。ということで、これを見たよというリスナーのみなさま、<ウォッチメン>からの監視報告(感想)、メールなどでいただいております。

メールの量は、いつもよりかなり多い! 公開からわずか40時間ちょっとしかたっていないことを考えるとかなりの量ではないでしょうか。やっぱりさすがね、『スター・ウォーズ』の新作ともなればこういうことになる。そして、賛否の比率は「賛」、褒めている人が8割以上。「名もなき者たちの戦いに泣いた」「『エピソード4』がすぐに見たくなる最良のスピンオフ作品」「ドニー・イェン最高!」などの声が並ぶ。中には「『スター・ウォーズ』映画史上最高傑作では?」という人もちらほら。一方、否定的意見の方は、「キャラクター描写が薄く魅力に欠ける」「話運びがとにかく鈍重。退屈だった」という意見も。賛の人も否の人も、前半はかったるい。後半に向けて盛り上がる。ラストシーンには感動するというところでは大部分一致していた。同じ部分で、同じ話をして取っ組み合いのケンカをしているという、よくある不毛なパターンですね(笑)。

代表的なところをご紹介しましょう。ラジオネーム「R2-T2」さん。「宇多丸さん、こんばんは。『ローグ・ワン』を見てきました。鑑賞後も動悸がおさまらず、まだ冷静に思考できない状態ですが、ひょっとしてこれは『スター・ウォーズ』シリーズの最高傑作ではないでしょうか? いままで『スター・ウォーズ』シリーズはフォースやライトセーバーを使いこなせるごく少数の選ばれし存在の視点から語られてきました。だが今作はその他大勢の持たざる者たちの生き様を描いています。持たざる者たちは選ばれし者に勝つことはできない。だが、希望をつないでいくことはできる。持たざる者たちにもできること、存在意義があることを教えてくれます。ラストの名もない同盟軍兵士たちのところはシリーズ史上でも屈指の名シーンだと思います。あのシーンだけでもこの映画は100億点の価値があると思います」。最近ね、点数の価値が自分でもよくわからなく……今回、点数表現を僕、控えてしまいましたけども。自分でもね。

一方、「みつばちバッチ」さん。「会社終わりに劇場へ駆けつけ、たったいま見てまいりました。感想としては、不満です。いけ好かない表現なのは承知で言いますが、この映画は人間が描けていないに尽きると思います。まず、キャラクターたちの気持ちの変化がいまひとつ飲み込みづらい。ジンのように悲しい生い立ちゆえに心を閉ざしている人が主人公の場合、そのキャラクターが心を開いていくプロセスは普通、仲間たちとの絆が深まっていくのと並行して描くと思うのです。ところが今作ではクライマックスまでにジンが泣いたり笑ったり感情をあらわにするきっかけは、結局お父さんやフォレスト・ウィテカー演じる育ての親がらみのシーンで全部内輪の話なんです。

これらのシーンでジンはいつも単独行動です。ローグ中隊は一緒に旅をしているだけの添え物で、ジンは彼らとは無関係のところでトラウマを自己解決し、クライマックスまでに自力で立派な戦士の顔になってしまうのです。そしてそんな風にきちんと絆を深めるプロセスも描いていないのに、いつの間にかローグ中隊が『お前と戦って死ねるなら本望』的なテンションになってしまっているのです。そんな状態でクライマックスに突入されたって乗れません。あとは、ドニー・イェンとK2-SO(ドロイド)以外のキャラはみんなローテンションで無口なので個性もよくわからないし、好きにもなれませんでした。改めて、レイやフィン、ポー・ダメロンに一瞬にして魅了された『エピソード7 フォースの覚醒』のすごさを感じました。(中略)とはいえ、何回か泣きました。ジンたちの最期は言うに及ばず、特筆すべきはあの赤いライトセーバーが暗闇の中でブシュンと光る怖さ、神々しさ。狭い通路でダース・ベイダーに襲われることの圧倒的な絶望感が伝わってきました。ギャレスさん、総合的には本当にありがとうございました!」。これはわかりますよね。ということでございます。

さあ、ということで『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』、私もT・ジョイ……先ほどの高橋ヨシキさんと昨日見てきた直前の音声もありましたけど、ここで『ローグ・ワン』観賞直後の高橋ヨシキさんの感想を。まあ、一言なんですけど、軽い感想ですけどね。見終わった直後なのでちょっと動転しているかもしれませんけど、こちらもお聞きください。どうぞ!


<上映直後の感想トーク>

宇多丸 みなさん、ご安心ください。高橋ヨシキさん、ご存命中でございます。それでは、終了直後のヨシキさん、お話をうかがってみたいと思います。いかがでしょうか?
高橋ヨシキ いや、どうも。お疲れ様でした。
宇多丸 お疲れ様でございます。
高橋ヨシキ 2回連続で見ちゃって。どんどん見ていくと、2回目の方がよくなる感じもあって、すごい楽しみましたね。あと、結構割とネタバレすると「えっ?」っていうか。そういう秘密が多い映画だったんで、急いで見た方がいいと思います。あと、最近はもうおじさんくすぐり的なことも諦めて見るようにしているというか、普通に素直に楽しめばいいじゃないかっていう心境に、いまはなっています。
宇多丸 せっかくやってくれているんだからね。
高橋ヨシキ そうそう。もらえるものはもらっておいて……っていう。その方がいいと思います。
宇多丸 わかりました。まあでも、非常に楽しんだということで。はい。ということでございました。高橋ヨシキさん、ありがとうございました。
高橋ヨシキどうもありがとうございます。

<上映直後の感想音源おわり>

はい。ということでヨシキさんの感想を……まあヨシキさん、たぶんちゃんとした感想はヨシキさんのメルマガであるとか、(NHKラジオ第1の)『すっぴん!』であるとか、あちこちでもっとちゃんとしたのはあると思うんですけどね。とりあえず、終わった直後はこんな感じのテンションでございました。ということで、このヨシキさんと見たT・ジョイPRINCE品川のIMAX字幕3Dを連続で2回見て、つい先ほど私、TOHOシネマズ錦糸町に「吹き替えも見ておこう」と思って吹き替え版2Dも見てきました。曜日と時間のせいもあって本当に子供たちも含めて満席状態で見ましたということですね。

で、ですね、今回スペシャルウィークということでいろんな方がお聞きになっていると思いますので、リスナーのみなさんの中にどの程度の『スター・ウォーズ』弱者がいらっしゃるかちょっとわからないので……実際にさっきも吹き替え版を見て出てきたばかりの親子連れのお父さんが「まあ、これね、お話がまだ続いているやつだから……」って言ったら子供が「えっ、これ続きものなの?」っていうこんな会話が聞こえたぐらいでですね。改めてそういうビギナー中のビギナーの方が意外と結構な量、いらっしゃると思うので、一応ね、評もクソもない大前提を先に言っておきますけどね。今回の『ローグ・ワン』、最低限でも1977年の一作目『スター・ウォーズ』。いわゆる『エピソード4 新たなる希望』は最低限でも見ていることが絶対条件です! 一応、念を押しておきますが。

なにしろ、先ほどね、「ネタバレか? いや、違うよ」って言ったけど、要は最終的にどういうことになるかは、要は『スター・ウォーズ』を見ているという前提の観客のほぼ全員が知っている。そういう前提で作っている作品ですからね。言っちゃえばその、『エピソード4 新たなる希望』の「あの」物語につながっていくんだ、と。もっと言っちゃえば、『エピソード4』の、「あの」オープニングにつながっていくんだ、という。その一点に向けて全てが組み上げられていると言っても基本、過言ではない作品ですよね。で、それがわかっているからこそ盛り上がる、というタイプの作品なんですね。後ほど言いますけどもね。ということで、逆に言えば『エピソード4』を見ている、そしてもちろん『エピソード4』から始まる『スター・ウォーズ』サーガが好きなのであれば、ほぼ自動的に楽しめる、グッと来てしまう部分がある一作なのは間違いないと思います。これだけはね。

で、メールにもいっぱいありましたけどね、今回の『ローグ・ワン』を見てから改めて『エピソード4』を見返せばさらに感慨が増すであろうことも必至と。非常に『エピソード4』を見返したくなりますね。要は『エピソード4』っていうのは『スター・ウォーズ』シリーズの中でも、もっともストレートに明るい話なわけですよね。ストレートにエンターテイメントしている、いちばん明るい話なのに、あの明るい話の土台に、こんなに重たい背景が横たわっていたとは!っていう。それだけに切ない。要は、『エピソード4』の主人公のルークたちが華々しくワーッとなっていくのが、「ああ、その影にはあの人たちの犠牲があったんだ!」っていうのが切なくなるというね、効果がございます。

また、それとは別にですね、『イウォーク・アドベンチャー』とかその続編の『エンドア/魔空の妖精』とかありますけど、それを別にすればというか、それをなかったことにすれば、『スター・ウォーズ』の劇場用実写長編映画としては初めての正式スピンオフ作品ということで。つまりサーガのほう(※宇多丸註:このくだり、お恥ずかしい限りですが、放送で僕が話したことが実は大幅に間違っていたので、この公式書き起こしでは、誤解を避けるために訂正済み版を掲載させていただきます……今回の『ローグワン』含め、ディズニー体制下で作られた作品はスピンオフも「カノン(正史)」に属するので、放送上での僕の分類表現は完全に誤りです。来週の放送でも改めて言いますが、この場を借りて訂正してお詫びいたします! ホント恥ずかしい!)、要は「エピソード○○」ってつくやつ、メインのストーリーとは違うスピンオフということで……たとえば映画としてのスタイル、トーンに比較的自由にトライできる機会っていうのもある。要するにスピンオフだから、言っちゃえば『スター・ウォーズ』のメインの方ではできないジャンル的な挑戦とかもできたりすると。

たとえば今回の『ローグ・ワン』、戦争映画的な展開というのはもちろんのことですけど、エピソード○○の方では禁じ手の手法を結構バンバン使っている。たとえば字幕で惑星の名前とか設定をバン!って出すとかはあれ、絶対にメインのサーガのほうじゃやらない語り口というか、やったらファンが怒る語り口ですね。スピンオフだから許されるし。あと、これは高橋ヨシキさんに言われて「ああ、そういえば!」って思ったけど、回想。回想が入るのはサーガでは絶対にないですよね。フォースでいろんなことをひらめいたりはするけども、回想はない。だから回想ショットが入ったりすることも含めて、今回の『ローグ・ワン』はそういうところで見ていても、「あっ、ということは『今回はスピンオフだからスタイルからしてメインのサーガとは違うことをやりますよ』っていう宣言なんだ」という風に僕は取って見ていましたけどね。

で、エピソード○○はですね、事実上、先ほどメールでみなさんおっしゃっている通りです。一部のもともと資質を豊かに持っている、具体的にもっと言えばスカイウォーカー家ですからね。スカイウォーカーの家系を中心にした、そういうもともと「持っている人たち」の物語に最終的には結局収斂していってしまいがちなところですね。要は、実は狭い、小さい話に感じられるところも、時にはなくはないわけです。これ、結局は家族の……よく言うんだけど、「壮大な家族ゲンカの話じゃないか!」なんてことはよく言われますけども。

そういうのに対して、今回の『ローグ・ワン』のようにですね、たとえばフォースの力を持っているジェダイとかシスっていう連中以外の、普通の人々。みなさんもこの表現を使われていましたよね。「名もなき人々」の物語をも紡ぐことができるということをやってみせることで、むしろ今後の『スター・ウォーズ』の世界観、『スター・ウォーズ』サーガに広がりが出た。「もうスカイウォーカー家の話だけじゃないですよ」っていう広がりが出た。もちろん、小説版とかコミックの方ではスピンオフをやっていたけど、実写映画版としては初めてちゃんとやってみせたということで、そういう広がりが出たという意味で、要するにサーガとスピンオフを1年ずつ交互にやっていくという、ディズニーに移籍して以降の『スター・ウォーズ』の戦略の、なんという確かさよ……ということでもあるんですけどね。

ということで、それを証明してみせるという意味でも非常に今回の『ローグ・ワン』、重要な一作ですし、本当に今後100年を……『スター・ウォーズ』という下手すりゃ100年続くかもしれないエンターテイメントを占う重要な局面でもありますし。僕的には今回の『ローグ・ワン』で非常に大きいファクターはですね、ドニー・イェンとその相方を演じているチアン・ウェンさんというキャスティング。まあ、ドニー・イェンは言わずと知れた中国のカンフー、武侠アクションスターですね。もう大スターでございます。長年ね。このキャスティングが僕は非常に大きい。

つまり、『スター・ウォーズ』というのは、黒澤明の映画を含めて、東洋的なるものからのインスパイアが非常に大きいと公言しているシリーズでありながら、これまでただの1人もメインキャストに東洋人がいなかったんですね。で、僕はそれを『スター・ウォーズ』ファンでありながら非常に不満に思っていた部分ですね。はっきり言って、『フォースの覚醒』でさえも入っていなかったところにすごく失望して、ちょっと怒っていたぐらいなんですよね。「もうレイシストシリーズ認定するぞ、この野郎!」みたいに思っていたぐらいなんですけど。まぁ『エピソード4』の時点でね、オビ=ワンを三船敏郎が演じるなんていうキャスティングがもし実現していたらね……ただ、それが実現していたら、ひょっとしたら何かバランスがおかしくなっていたかもしれませんから、なんとも言えないということで。まあ、ようやく東洋人のメインキャストが実現したということも、非常に僕にとっては大きいなということでございます。

ということで、見る前からすでに、僕がいままで言ってきたような「ガワ」の条件の部分で、もう一定以上、作品としての意義が保証されているような作品なんですよね。「もういいに決まっているでしょ、それ」っていう作品なんですけど。で、実際に見て、僕はどうだったか? と言いますとですね……はい。こっから先は私の意見をちょっと強く言わせていただきますが。大絶賛派が非常に多いのは存じ上げております。それが多い中、申し訳ないんですけど、僕は決して両手を上げて、全部が全部「最高!」っていうテンションでは正直ないです。まず先によかったところの話をしておきますね。っていうのは、いいところはめちゃくちゃあるんです。いいところもある。めちゃくちゃいいところもいっぱいある作品です。なので、いいところ、よかったところというのを先にしておきますけども。

とにかくこの映画はですね、当たり前っちゃあ当たり前なんですけど。これも本当にこう言っている方が多かったのはわかります。っていうか、これが本当にこの映画の事実なんでしょう。後ろに行けば行くほど、終わりに近づけば近づくほど……つまり、『エピソード4』に近づけば近づくほど、グイグイとエモーションが高まっていくということは間違いないと思います。要はね、「その後」を知っているわけですね、我々観客は。「その後」っていうのはつまり、『エピソード4』ですけども、その後を知っている我々観客は、主人公たちが最終的にどうなっていくのか、まああらかた予想がつくわけですよね。それはね。『エピソード4』で、「あれ、私がやりました」っていう人が出てこないわけですからね。

っていう、言ってみれば「物語的運命」ですよね。我々は「こうなっていく」っていうことを知っている。その物語的運命に、今回の劇中の登場人物たちが、否応なく、やっぱり行き着いていく。その、「否応ないところに行き着いていく」っていうのは、要は悲劇なわけですから。その悲劇性というのにやっぱり、非常に涙腺を強力に刺激される作りというのは間違いない。ゆえに、終わりに近づけば近づくほど……というのはあると思いますね。しかも、その——ここが本当にいいところだと思うんだけど——僕、いま「悲劇」って言いましたけど、この悲劇は同時に、劇中で何度もキーワード的に口にされる「Hope(希望)」っていう。この「Hope」っていうのは言うまでもなく、その言葉自体が『エピソード4(Episode IV – A New Hope)」という作品の暗示であるわけですけど。悲劇がその希望というのと表裏一体のものであるという、そういうことを描いているわけですね。

要は、ある1人の人物が、人生とか、命をかけて果たしたある役割みたいなものがあるとして、それはそれ単体では非常にちっぽけな……なんなら、「それ、失敗じゃん」とか、なんならそれこそ悲劇的にも見えたりとかっていう出来事かもしれないんですけど……それがまた次の誰かに伝わっていったり、それを受け取った誰かがまた次の誰かにそれをバトンタッチして、やがては偉大な何かを達成するかもしれないというようなこと。これって僭越ながらですね、たとえば僕らRHYMESTERっていうグループなんですけど、その(持ち曲である)『そしてまた歌い出す』だとか、佐々木中くんという方の『切りとれ、あの祈る手を: (〈本〉と〈革命〉をめぐる五つの夜話)』で書かれているテーマとも本当に通じる話だと思うんだけど。

なので、たとえば主人公たちが、今回の『ローグ・ワン』の劇中でこういうことを言うんですね。「(自分たちのやったことは)誰かには届いたはずだ」っていうことを言うじゃないですか。「やったー! 勝ったー!」じゃなくて、「大丈夫だったかな? いや、きっと誰かには……」。この”誰かには”っていう言い方がいい。「……誰かには届いたはずだ」って。で、そういう風に実際に口にしてから、まさに劇中どんどん、その”誰か”たちによって……本当に後に『新たなる希望』となっていく小さな小さなバトンが文字通り”手渡し”されていくと。それも本当に地を這うような手渡しをされていくというその終盤のある展開。

これはもう本当にね、これはもう絶対に『スター・ウォーズ』のメインのサーガの方では語り得ないし、語られないだろうし。しかし同時に、ルークだとかアナキン・スカイウォーカー、ダース・ベイダーというような有名な英雄たちの物語にも厚み、深みをさらに増す、まさにスピンオフならではの……本当にこの表現を使っている人も多かったです。「名もなき英雄たちの物語」なんだっていうテーマを、終盤のそのバトンタッチが、もう本当に見事に浮かび上がらせていて。無論、ここはもうもちろん、涙腺大決壊ですよね。もうドバーッ!っていう感じでしたし。

あと、この”名もなき”っていうことで言うと、今回主人公たち側だけじゃなくて、悪役側。デス・スターの工事責任者のベン・メンデルソーンさんという方が演じているクレニック長官という。これもやっぱりちょっと「名もなき」タイプゆえの哀感が、最終的にものすごーく味わい深く浮かび上がってくる役柄で、非常によかった。彼がね、たとえばちょっと弱げなんだよね。クライマックスでドカーン、ドカーン!ってあちこちで爆発しているのを、こうやってちょっと目が泳いで。「どうしよう?」っていう感じになっているところとかですね。あと、彼の迎えるある最期があって、非常に味わい深い。あの彼の思い。(倒れた状態から)顔を上げたら……「ああー……」っていう。あれは見事なシーンじゃないでしょうか。個人的にはピエット提督以来の帝国将校の大ヒットキャラ。こちら、クレニックさんは素晴らしかったと思いますし。

それに対するね、後に『エピソード4』でメインの悪役を張っていく連中。要はダース・ベイダーであったりとか、今回ピーター・カッシングの演技をCGIでもう1回作り直したモフ・ターキンであるとか、ああいう連中の本当の悪さ、怖さ。これまでのサーガの中では描かれなかったような悪さとか怖さみたいなのが、今回しっかり描かれているというのも非常によかったんじゃないですかね。「ああ、ダース・ベイダーってこんなに怖いんだ」っていうね。ダース・ベイダーね、いわゆる『エピソード4』バージョンで目が赤いわけですけど、「目が赤いよ」っていうのを殊更に強調する光の当て方とかがちょっとわざとらしくて嫌でしたけどね。あと、ちょっと『エピソード4』の直前にしては動きすぎじゃないかな? とか。あと、体型がやっぱりデヴィッド・プラウズとはちょっと違って見えるなとか、いろいろ言いたいことはあるんだけど。まあいいや。

あと、「名もなき」組というか「名もなき」キャラで言えば、やはりドニー・イェン演じるチアルートと、チアン・ウェンさん演じるベイズというこの東洋人コンビが、非常に素晴らしい。ドニー・イェン、盲目で杖を振り回して戦うということで、当然、連想するのは座頭市ですね。まあ、世界的に本当に有名なキャラクターですから座頭市なんですけど、そこに相方というか、ほとんど古女房的な、このベイズっていう、呆れ半分に付き従うというキャラクターがついたことで、ドニー・イェン単体だと座頭市なんだけど、このベイズのキャラがつくことで、要はドン・キホーテですね。ドン・キホーテとサンチョ・パンサ。この構図が浮き上がってくる。入ってるところが僕は今回すごく味わい深いあたりだと思います。

つまり、ドン・キホーテってどういう人か?っていうと、すでに滅びた騎士道を信じ続けている夢見る男なわけでしょ? で、サンチョ・パンサはそれにずーっと付き従っているけど、でも現実主義者でもあって、「この人はもう頭がおかしくなっちゃっているんだな」って思ってるわけじゃないですか。ところがサンチョ・パンサは、そのドン・キホーテが倒れた時、騎士道の理想を諦めそうになった時に、「あんたには、騎士道があるじゃないか!」みたいな感じで、要はすごく懐疑的に現実的に見ていた男が、ついにその理想に感化されるというそういう話なわけですよね。なので(今回の『ローグワン』の)クライマックスはまさにその構図ですよね。ずっと「フォースなんてさ……」って言っていた人が、その言葉を受け継ぐようになるという、非常に本作の白眉。テーマ的にも白眉と言ってもいいんじゃないでしょうかね。

ただね、これ、ドニー・イェンだから仕方ないんですけど、案の定、ぶっちゃけドニー・イェン演じるこのチアルートはですね、どんなジェダイよりも正直強いです(笑)。こんな強い人、見たことがないぐらいですね。ということで、ちょっと描写としてのバランスが悪いかな? なんていうところがあったり。ただまあ、素晴らしかったです。キャラクターとしても場面としても。あとね、元帝国軍パイロットのリズ・アーメッドさんが演じるボーティーの「見るからに小物」感とか。K2-SOっていう今回のドロイドの、ドロイドらしからぬって言ってもいいと思うけど、やさぐれ感とかも含めて、名もなき人たちの物語として、非常にいいキャラが揃っているなとも思いましたし。

あと、映画全体のルックもね、特にDigital Arri Alexa65ミリカメラ。で、ウルトラ・パナビジョン70レンズっていうのを活かしたダイナミックな、広い景色の画のところは非常に素晴らしかった。グレッグ・フレイザーさんという撮影監督が撮っている。オープニングのちょっと西部劇風っていうか、マカロニ・ウェスタン風のね、悪漢たちが主人公の住処に、並んで横になってやってくる、あのへんもよかったですし。あと、クライマックスのモルディブでロケしたというビーチ。まず、きれいなビーチと『スター・ウォーズ』っていうこの組み合わせの妙は本当に発明だと思いますし。もちろん、戦争映画的なルック。もともと『エピソード4』自体が第2次大戦ものというものに大きくインスパイアされた作品なので、今回の本格戦争映画的なルックに、「これが『スター・ウォーズ』だよ!」って感じる人が多いのは当然だなという風に思います。

あと、デス・スターのレーザーの結果が完全に原爆風になっていますよね。あれも本当によかった。要は、主人公のお父さんはデス・スターの開発者で。なんだけど、ちょっと(ロバート・)オッペンハイマーが入っているというか。本当に悪魔のような兵器の開発者なんだけど、その苦悩というのが入っていて、そういう感じ。そのあたりも含めて、ギャレス・エドワーズさんのこだわりの部分がよく出ている部分はいっぱいあったと思います。ということで、いいところはとてもいい作品だと思うんです。

ただ、正直ですね、ちょっといろいろと惜しいところも多い作品だとは思う。まずは何しろね、クライマックス。肝心のデス・スター設計図ぶん取り作戦。これがいちばん見たいわけですけど、ここに行くまでが長すぎだし鈍重ですよね。この意見も多かった。はっきり言うと、結構退屈です。っていうのもですね、なんか余計だったり、重なっていたりする段取りとか絵面が、いちいち多いわけです。たとえば、ヤヴィン第四衛星にある反乱軍基地に、主人公たちが2回行ったり来たりするのとかね、なんかクドいなとか。あと、「栄えている市場」っていう場面が2回出てくるとか、なんかクドいっていうのがあったりする。全体にですね、たとえば今回クライマックスで(出てくる、故障していて危険な)開閉する出入り口であるとかですね、なんか「パネルを直せ」とかですね、とにかくちょっと「ゲームっぽい段取り」みたいなのがすごく多い。メインスイッチがものすごく嘘くさいところにドーンとあるとかですね。ゲームっぽい段取りが多かったりして、なんか余計な見せ場が多いという感じがしますね。

あとはフォレスト・ウィテカーの役がですね、予想以上に何の役にも立たない感も含めて、本当に中盤は、端的に展開として面白くないんですよ。全然、展開が。面白い場面がないっていうのがある。で、ダラダラしている割には、これもメールで多かった。肝心の主人公の……特に主人公のキャラが弱いという風に私、思います。これもメールにあった通り、主人公たちがチーム化していくプロセスを含め、大きな動機づけ。それになるようなポイントが、結構観念的なセリフで説明されるだけだったりするところが多いという風に思います。そういう意味では、いろいろ難しい部分を全部先送りして済ませたズルい映画なのは間違いないけど(笑)、キャラ立ちとか関係性描写みたいなことは抜群だった『エピソード7』とは、本当に対照的だなという風に思います。

あと、(そのわりに)必要な描写がないんですよね。たとえば、カイバー・クリスタルを集めているっていう実際の具体的な絵面は必要でしょ? とか、いろいろあったりしますね。なんにせよ、戦争チーム潜入もの。たとえば、『特攻大作戦』とか『荒鷲の要塞』、『ナヴァロンの要塞』とかいろいろありますけど。要するにもともと、結構確立されているジャンルなだけに、もっとできただろ感がすごく目立ちやすい部分ではあったかもしれませんね。あと、これはうるさ型ゆえかもしれませんが、いろいろね、実は親父接待の部分にも言いたいことはあるんですよ。あるんだけど、これだけは言わせてくれ! ラストのラスト、僕は号泣してますよ。大号泣しているそのピーク、ある人物がこうね、パンアップでフーッと顔を映されるんですよ。で、まあそれがオチになっているんだけど……その顔がね、CGで作っているんですけど、微妙に、僕の知っている顔と違う……(笑)っていうんで、これが初見時には大変にノイズになりました。

まあ、2回目以降はまあ、そういうものだと思って見たんで、だいぶ心穏やかになりましたがね。まあ、あと音楽のバランスとかに関しても、ちょっと僕は言いたいことがある。これはまあ、うるさ型おじさんだからです。なので、いいところは本当に多いです。特に終盤は本当に素晴らしいですし、『エピソード4』『スター・ウォーズ』が好きなら絶対に盛り上がることは間違いないですし。まあ「最高傑作」って言っている方がいるのもわかる、すっごくよい部分がある作品なのは間違いないと思いました。『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』、ぜひ劇場でご覧ください!

(ガチャ回しパート中略 〜 来週の課題映画は『ドント・ブリーズ』に決定!)

以上、「誰が映画を見張るのか?」 週刊映画時評ムービーウォッチメンのコーナーでした。

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