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放送中

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  • コラム

第40回放送『静岡県西伊豆町』

コンシェルジュ沓掛博光の旅しま専科
夕陽を浴びシルエットになって浮かびあがる西伊豆町の三四郎島

夕陽を浴びシルエットになって浮かびあがる西伊豆町の三四郎島

 伊豆半島の西伊豆町(にしいずちょう)田子地区では冷たい西風が吹く12月に、正月用の塩鰹作りが行われる。古い歴史を持つ塩鰹と西伊豆町の観光の中心、堂ヶ島の見所、温泉などを紹介。

正月用のかざりを付けた塩かつお。左は西伊豆特産のかつお節

正月用のかざりを付けた塩かつお。左は西伊豆特産のかつお節

 今の時期に沼津方面から国道136号で西伊豆町に入ると、建物の陰で荒縄に吊り下げられた腹の開いた鰹を目にする。これが冬の風物詩とも言われる塩鰹の寒風干しで、毎年11月初旬から12月下旬にかけて行われる。正月の縁起物とされ、平成の初めごろまでは船主達が航海の安全と大漁を祈願して、正月に神棚や船に供えたというが、今は漁船も減り、旅館や商店の店先などに縁起物として飾られることが多いという。

あつあつのうどんに塩かつおをかけて食べる塩かつおうどん。かつおのうま味と塩味が出汁の代わりになる

あつあつのうどんに塩かつおをかけて食べる塩かつおうどん。かつおのうま味と塩味が出汁の代わりになる

 田子の漁港に近いカネサ鰹節商店ではこの塩鰹を毎年500本ほど作る。ここでは“潮鰹”の字をあてているが、昭和30年代まで田子漁港は遠洋の鰹が多く水揚げされ、保存食も兼ねて網元や一般家庭でも作られていたという。塩鰹の起源は古く、カネサ鰹節商店の5代目芹沢安久さんによると奈良時代に塩漬けして乾燥させた荒堅魚(あらかたうお)を朝廷に税として献上していたのが塩鰹の前身でしょうと言う。今日では神棚に供えられたり、雑煮に入れたりなど田子地区では正月に欠かせない縁起物になっている。
 作り方は、まず、内臓を取り、大量の塩を使って包むようにして10日から2週間、塩水と共に漬け、漬け込んだものを陰干しで3週間ほど寒風にさらして出来上がる。鰹1本につきおよそ2キロの塩を使うから塩鰹はかなり塩辛い。食べ方は切り身を軽くあぶって細かくほぐし、これをごはんにかけて茶漬けにしたり、熱々のうどんの上に出汁代わりにかけたり、あるいはパスタに振り掛けたりと色々に楽しめる。鰹のうまみと塩加減が食欲をそそる、西伊豆・田子の郷土食だ。今年のB1グランプリ東海北陸支部大会ではこの塩鰹を使った「西伊豆しおかつおうどん」が見事3位に入賞した。カネサ鰹節店では塩鰹は一本(2キロ)3000円、切り身(5~6切れ)が400円で販売。
 カネサ鰹節商店は創業が明治15年という鰹節作りの老舗。カツオ漁がこの田子地区で盛んであったころから始まった本枯れ鰹節という本格的な鰹節作りを今日まで継承している。鰹の身をおろし、これを“手火山式焙乾(てびやましきばいかん)”という下から薪をくべてその煙と熱で鰹の身を乾燥させ、昔ながらに手の平で火の加減を知ることから手火山式の名があるこの手作りの手法でじっくりと鰹の水分を蒸発させ、さらに残った水分をカビつけで吸い出し、日干しにして出来上がるという、すべてが手作業で、半年かけて1本を仕上げる。削られた一片を口に含むとうまみがじんわりと広がり、1本1本を手にしてていねいに作る作業姿が目に浮かんでくる。1本1500円~。

天から射す陽が水面を輝かせ、神秘的な光景が広がる天窓洞

天から射す陽が水面を輝かせ、神秘的な光景が広がる天窓洞

 田子地区から海辺に車で10分も行くと観光の中心、堂ヶ島地区に入る。海沿いの国道136号から広場に降りると桟橋が延びている。ここから国の天然記念物に指定されている天窓洞を見物する遊覧船が出ている。所要時間は20分。ヘビの模様を思わせる地層が見える蛇島など西伊豆特有の奇岩を眺めながら三四郎島の脇をかすめて、洞窟に入る。船の両側に大岩が迫るスリル満点の入り口を巧みに抜け、少し進むと海面が1か所、明るく輝いているところに出る。頭上を見ると岩盤がそこだけすっぽりと抜け落ちたように、大きな穴が開いている。天からの光が射し込む、まさに天窓であり、その洞窟だから天窓洞の名がある。上から注がれる光りが海面に反射し、キラキラ輝く薄暗い洞窟の中はどこか神秘的だ。三四郎島は、実際は伝兵衛島(でんべいじま)、中ノ島、沖ノ瀬島(おきのせじま)、高島(たかじま)と4つの島が連なり、見る場所によって3島とも4島とも見えるところから三四郎島の名がある。この島にはトンボロ現象も見られる。これは干潮になるとおよそ200mに渡って陸地が現れ、島と陸が繋がり、満潮には海の中に没するという幻の道。3時間ほど出現しているが、冬季は潮位の関係で陸地まで現れることは無いという。三四郎島を眺める海岸近くに堂ヶ島温泉が湧き、温泉と海景、そこに沈む夕日が自慢の宿が多い。

美しい夕日を眺めながら湯あみが楽しめる沢田公園露天風呂

美しい夕日を眺めながら湯あみが楽しめる沢田公園露天風呂

 下船して国道に戻れば目の前に加山雄三ミュージアムが立つ。加山雄三さんがこの地にたびたび訪れていたのが縁で平成10年にオープン。館内には愛艇で、西伊豆の港に係留されている光進丸の操舵室の再現や出演した映画のポスター、撮影風景のスナップ写真などが豊富に展示されている。圧巻はプロ並みと言われる加山さんの絵画の展示だ。海をモチーフにした作品が数多く飾られ、改めて加山さんの海へ注ぐ熱い思いを知らされる。
 堂ヶ島から入江ひとつ隔てた沢田地区には共同湯の沢田公園露天風呂がある。断崖の上に立ち、ここからは駿河湾やそこに浮かぶ三四郎島などが望まれ、夕日を眺めながら入れば、茜色に染まる海景が広がり、西伊豆の絶景風呂が堪能できる。

国内外のガラス作品を展示する黄金崎クリスタルパーク

国内外のガラス作品を展示する黄金崎クリスタルパーク

 堂ヶ島エリアから海を左手に見ながら国道北へ上がると15分ほどで西伊豆町北端の宇久須の集落に入る。ここにはガラスの作品を展示した黄金崎クリスタルパークと作家の三島由紀夫氏ゆかりの黄金崎がある。国道に面して立つ黄金崎クリスタルパークはガラス作品専門の美術館で、内外の作家や西伊豆町在住のガラス工芸作家の作品を展示。波やマリンスポーツを題材に取り入れるなど、他のガラス美術館にはない海に望む西伊豆らしい作品が目を引く。美術館はオープンしてすでに17年たつが、そのきっかけはこの宇久須でガラスの原料となる珪石が採掘されていたことから。一時は全国の板ガラスの9割ほどがここの珪石で賄われていたという。館内にはこの他、美しいガラス製品の販売やガラスのキャンドル作りなどの体験コーナーもある。

馬が首を延して海の水を飲むように見える黄金崎の岬。“馬ロック”の愛称がある

馬が首を延して海の水を飲むように見える黄金崎の岬。“馬ロック”の愛称がある

 黄金崎クリスタルパークから岬へ車で2~3分も行くと黄金崎に着く。駐車場の右手下に薄茶色をした岩肌を大きく見せる岬が見え、展望台に上がると、全景が見渡せる。その姿はまるで馬が首を延ばし、顔を海に近づけて水を飲んでいるようにも見え、何とも不思議な大岩である。文豪三島由紀夫はかつて沼津から乗った汽船から夕日に輝くこの岬を見て、その作品「獣の戯れ(けもののたわむれ)」の中で『平滑な一枚の黄金の板のやうに見え』と描写している。夕刻の時に訪れると、ちょうど馬を思わせる顔から首、胴体にかけて夕日があたり、それが岩の色と重なって茜色がやや黄色帯びて見え、遠目には黄金色に見えるのだと地元の人は言う。色といい、形といいどこか不思議な岩である。最近は“馬ロック”の愛称がつけられている。
 新年を迎え、勝ち馬に乗ろうと、縁起をかついで正月の三が日に訪れる人も多いとか。

問い合わせ:西伊豆町観光協会
      ℡0558-52-1268
交通:新幹線三島駅より伊豆箱根鉄道に乗り修善寺下車、バス乗り換え。
   車は東名沼津IC利用