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亡くなった元Wham!のジョージ・マイケル。「ブラック・ミュージック」の基礎は彼から教わった!

ジェーン・スー 生活は踊る

12月25日に亡くなった元Wham!のジョージ・マイケル。音楽ジャーナリストの高橋芳朗さんは「ブラック・ミュージックの基礎は彼から教わりました」と話します。ラスト・クリスマスなど、日本ではポップスターのイメージが強いジョージ・マイケルですが、その意味とは?

生活は踊る161230

【高橋芳朗】
12月25日に53歳の若さで亡くなった元ワム!のジョージ・マイケル。ここ日本ではポップスターのイメージが強いかもしれませんが、アレサ・フランクリン(『I Knew You Were Waiting』)、ホイットニー・ヒューストン(『If I Told You That』)、メアリー・J.ブライジ(『As』)、ビヨンセ(2007年にビヨンセのライブに飛び入り。『If I Were a Boy』で共演した)など、歴代の「ソウルミュージックの女王」とデュエットしていることからもわかるように、欧米では実力派のソウルシンガーとして認識されているんです。これは月曜日のオープニングで電話出演したときにも話した通り。

【ジェーン・スー】
はい。

【高橋芳朗】
で、僕個人としては、そんなジョージ・マイケル~ワム!の作品を通じてブラックミュージックの基礎を叩き込まれたような意識があって。そこでまず紹介したいのが、ワム!の『Wham Rap (Enjoy What You Do?)』。1982年の作品です。タイトル通りワム!がラップに挑んだ曲で、いまにして思えばこれがラップの原体験だったのかな、という気がしています。1979年にはアメリカで最初のラップのヒット曲が生まれて(シュガーヒル・ギャング『Rapper’s Delight』)、1981年になるとブロンディが『Rapture』でラップを広く世間に紹介しているんだけど、とはいえ当時はまだまだラップ/ヒップホップはアンダーグラウンドな音楽だったわけで、ワム!の試みはなかなか早かったのではないかと。

【ジェーン・スー】
そうですね。確かに。

【高橋芳朗】
RUN DMCがエアロスミスと組んで『Walk This Way』をヒットさせて、ヒップホップがメインストリームに進出するのはこの3年後の1986年ですからね。ワム!のような洋楽の入り口になるようなポップスターが、こういうタイミングでラップを紹介したことにはものすごく大きな価値があったんじゃないかと思います。

【ジェーン・スー】
しかもちゃんと当時のラップのオーソドックスなフォーマットを倣いつつ、かつポップに仕上げてあるという。そういう切り口でつくられているのがまた素晴らしいですね。

M1 Wham Rap (Enjoy What You Do?) / Wham!

【高橋芳朗】
続いても、同じワム!の『I’m Your Man』を紹介したいと思います。こちらは1985年の作品です。ワム!はソウルミュージックの基礎中の基礎といえるモータウンのサウンドを取り入れたヒット曲が多かったんですね。言うまでもなく、モータウンは1960年代にテンプテーションズ、シュープリームス、スティーヴィー・ワンダー、ジャクソン5などを輩出したソウルミュージックの超名門レーベルです。

【ジェーン・スー】
うん。

【高橋芳朗】
そんなモータウン・サウンドを取り入れたワム!の曲というと『ウキウキ・ウェイク・ミー・アップ』の邦題で有名な『Wake Me Up Before You Go-Go』もそうですけど、特に月曜にもかけた『Freedom!』、これから紹介する『I’m Your Man』など、いまBGMで流しているフォー・トップスの『I Can’t Help Myself』(1965年)に代表されるズンズン突き進むようなリズムを用いたヒット曲が印象的でした。きっと、こうしたワム!のヒット曲をきっかけにしてモータウン・サウンドに魅せられていった人も多かったんじゃないかと思います。

M2 I’m Your Man / Wham!

【ジェーン・スー】
小学校時代を思い出すね!

【高橋芳朗】
続いてもワム!の作品、今度は1984年にリリースされた『If You Were There』を。ワム!やジョージ・マイケルはよくアルバムでカバーをやっていたんですけど、これはアイズレー・ブラザーズというソウルミュージックの伝説的なグループが1973年に発表した曲を取り上げたものになります。シュガーベイブの『DOWN TOWN』に影響を与えたといわれている曲ですね。で、アイズレーの『If You Were There』はいまでこそシュガーベイブの文脈もあってそこそこ知られた曲になっているんですけど、もともとは別にシングルヒットしたような曲というわけではなく、あくまでアルバムのなかの一曲にすぎなかったわけですよ。そんな70年代のソウルミュージックの知られざる名曲を、いたいけな少年少女たちに届けていたのはものすごく意義深いことだったと思います。また『If You Were There』というチョイスが本当に絶妙なんですよね。このあと、日本では90年代に入ってフリーソウルと呼ばれる古いソウルミュージックを再解釈しようというムーブメントが盛り上がったんですけど、『If You Were There』はまさにそのシンボルになったような曲でしたから。

M3 If You Were There / Wham!

【高橋芳朗】
最後は総括として、ジョージ・マイケルのソロ作品で締めたいと思います。月曜日の放送でジェーン・スーも大好きと言っていた『Freedom! ’90』。1990年にリリースされたジョージ・マイケルの2枚目のソロアルバム『Listen Without Prejudice Vol.1』に収録されている曲です。僕は先ほど聴いてもらったようなワム!の曲を通じてブラックミュージックに興味をもって、そのあとに古いリズム&ブルースから最新のヒップホップまで夢中になって聴きまくったんですよ。それで、ブラックミュージックやソウルミュージックのリテラシーがある程度できたときにちょうどリリースされたのが、この『Listen Without Prejudice』だったんです。で、これがもう本当に感動的な体験で。ブラックミュージックのリテラシーが備わったことによって、ジョージ・マイケルのソウルシンガーとしてのかっこよさがいままでよりもリアルに伝わってきたのもそうなんですけど、この『Listen Without Prejudice』では要所要所に最新のクラブミュージック、ヒップホップやグラウンドビートのエッセンスも取り入れていて、ちゃんと時代に応じてアップデートしてきていたのがすごくうれしかったし、なんだか誇らしく思えたんですよ。

【ジェーン・スー】
そうそう、『Too Funky』なんかはグラウンドビートだったよね。

【高橋芳朗】
うん。ジョージは自分を間違いない道に導いてくれたんだなって、この『Listen Without Prejudice』を聴いてよくわかったというか。なかでも『Freedom! ’90』は2007年にアリシア・キーズがライブでカバーしていて、そうやって現行のトップクラスのソウルシンガーにしっかりと歌い継がれていることがまたすごくうれしかったんですよね。

M4 Freedom! ’90 / George Michael

【ジェーン・スー】
もう最高!

【高橋芳朗】
この『Freedom! ’90』、タイトルにある通り1990年にリリースされた曲なんだけど、改めて聴いてみると翌1991年に出たプライマル・スクリームの『Movin’ On Up』に確実に影響を与えているんじゃないかっていう……実際のところはどうかわかりませんが。

【ジェーン・スー】
『Freedom! ’90』はなにが素晴らしいって、歌詞もなかなかグッとくるんだよ。ワム!は『Freedom』という曲で本格的に世の中に出ていったわけじゃないですか。あれは「君の自由がほしいわけじゃないんだ、俺のことを過干渉するのはやめてくれ」みたいな歌詞だったと思うんだけど、こっちの『Freedom! ’90』はマドンナの『Express Yourself』と対になる曲だと思っていて。

【高橋芳朗】
ほう。

【ジェーン・スー】
『Freedom! ’90』がリリースされた当時はスーパーモデルがすごく流行っていたんだけど、この曲のミュージックビデオではナオミ・キャンベルとかシンディ・クロフォードとか、いったい何億かかってるんだってぐらいに有名なモデルが出演しているんですよ。しかも本人は一切出てこなくて、そのモデルたちにリップシンクさせてるという。で、そんな服を着ることが仕事な人たちに「Sometimes the clothes do not make the man(服が人間を作るわけじゃないんだ)」なんて言わせたりしてるんだよね。なかなかアイロニーが効いていておもしろかったな。うん、この曲はミュージックビデオもぜひ見てほしいですね。

高橋芳朗のミュージックプレゼント 「ジョージ・マイケル追悼特集」http://radiko.jp/share/?sid=TBS&t=20161230112147

radikoで放送をお聴きいただけます(放送後1週間まで/首都圏エリア無料)

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当ラジオ番組では「日々の生活に音楽を」をコンセプトに、音楽ジャーナリスト・高橋芳朗さんによる洋楽選曲を毎日オンエア(稀にかかる邦楽はディレクター選曲)。最新1週間のリストは以下です。

12/26(月)

(11:07) Freedom / Wham!
(11:43) All Dressed Up with Nowhere to / Michael Franks
(12:14) Lunch Hour / Rupert Holmes
(12:24) The Dry Cleaner from Des Moines / Joni Mitchell

12/27(火)

(11:07) For Once in My Life / The Spiral Starecase
(11:43) At Last / Stevie Wonder
(12:23) Don’t Be Afraid / Carpenters

12/28(水)

(11:04) Jackie Wilson Said / Van Morrison
(11:43) You Told Me Baby / Bonnie Raitt
(12:21) Morning Sun / Jesse Colin Young

12/29(木)

(11:03) How Does It Feel? / The Ronettes
(11:15) A Girl Never Knows / Connie Stevens
(11:46) Ya Gotta Take a Chance / The Bonnets
(12:20) Gonna Make Him Baby / April Young
(12:49) Then He Kissed Me / The Crystals

12/30(金)

(11:03) Runaway / The Salsoul Orchestra
(11:48) Dr. Love / First Choice
(12:16) Law and Order / Love Committee