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ラップで振り返る。オバマ大統領とアメリカが歩んだ8年とは

ジェーン・スー 生活は踊る

20日で任期を終え退任するアメリカのオバマ大統領。初の黒人大統領には多くのミュージシャンが支持を表明、彼を題材にした曲を発表していました。音楽ジャーナリストの高橋芳朗さんがその中でも特に重要な3曲を紹介し、オバマ大統領の8年を振り返ります。

生活は踊る170113

【高橋芳朗】
1月20日をもってアメリカのバラク・オバマ大統領が8年の任期を終えて退任するということで、今回はオバマ大統領の8年間を彼を題材にしたラップの曲で振り返ってみたいと思います。ラップはストリートを立脚点にした音楽ですから、民衆の声、街の声がダイレクトに反映されますからね。合衆国初の黒人大統領を黒人社会がどのように見てきたのか、その変遷がここから垣間見えるんじゃないかと思います。今日は計3曲紹介しますが、すべてアメリカで非常に人気の高いラッパーの曲になります。アルバムを出せば軽く50万枚~100万枚は売ってしまう非常に強い影響力を持ったアーティストの曲であることを踏まえて聴いていただきたいと思います。

【ジェーン・スー】
はい。

【高橋芳朗】
まず最初は、NASの『Black President』。これは2008年夏ごろのリリースですね。ちょうどオバマが予備選に勝って、民主党の大統領候補指名を確定させたころ。初の黒人大統領誕生がいよいよ現実味を帯びてきたころに出た曲です。歌詞の一部を読み上げたいと思います。

黒人の大統領は、選挙の夜にどんなことを考えるのだろう?
「これからどうやって自分の命を守っていこう?」
「自分の妻を守ることができるのだろうか?」
「自分の権利は守れるのだろうか?」
KKK(クークラックスクラン)の連中はいまごろ
「なんてこった!」なんて言いながら銃に弾を込めてるんだろう
俺の銃にも弾を込めておこう。彼が死ぬときは俺たちも死ぬときだ
もちろん、ポジティブなことだってある
俺はオバマがすべての人種に希望と挑戦の気持ちを与えて
有色人種の人々の憎悪を消し去ってくれると思っている
そして、お互いが愛し合えるようになればいい
俺は、このブラザー(オバマ)を信じることにする
でも、果たして彼はリアルなままでいられるだろうか?
刑務所にいる無実の黒人たちは放免されるのだろうか?
彼は選挙に勝ったあとも、我々のことを真剣に考えてくれるだろうか?

【ジェーン・スー】
うーん、そうか。

【高橋芳朗】
途中物騒なフレーズがありましたが、キング牧師やマルコムXといった過去の黒人指導者の例を引き合いに出して、オバマが暗殺されてしまうのは?という懸念の声は当時非常に多かったんですよね。

【ジェーン・スー】
そうですね、すごくありました。

【高橋芳朗】
そのあたりも含めて、黒人大統領誕生への期待と不安がリアルに生々しく描写されている曲だと思います。

M1. Black President / Nas

 

【高橋芳朗】
続いては、ヤング・ジージー feat. ジェイ・Zの『My President Is Black』。これは2009年1月のリリースになります。オバマ大統領の就任式に合わせて発表になった曲ですね。この曲から、ゲストで参加しているジェイ・Zの歌詞を紹介したいと思います。

俺の大統領はブラック、俺のマイバッハも同じ色だ
でも、俺の大統領はブラックだが実は半分ホワイトなんだ
つまり、お前がレイシストでも彼の半分は認められるってことだな

【高橋芳朗】
これはオバマ大統領が黒人と白人のハーフであることをからめたジョークですね。では、続けます。

ローザ・パークスが白人専用の座席に座ったことが
キング牧師のワシントン大行進につながった
キング牧師が行進したことがオバマ大統領の誕生に結びついた
そして、オバマが大統領になったことで未来の子供たちが空を飛べるんだ
俺も翼を広げよう。空で会おうぜ
赤と白と青の旗を俺に向かって振ってくれ
こんなことを言う日が来るなんて思いもしなかった
もう戦争はうんざり。白い嘘もたくさんだ
今度の大統領はブラックなんだ

【ジェーン・スー】
うーん!

【高橋芳朗】
やはりハイライトは公民権運動とオバマ大統領の誕生を結ぶくだりになると思います。いまはちょっと説明的に訳しましたが、英語では「Rosa Parks sat, so Martin Luther could walk(ローザ・パークスが座ったから、キング牧師が歩いた) / Martin Luther walked, so Barack Obama could run(キング牧師が歩いたから、オバマが走った)」……「run」には「選挙に出馬する」という意味もあるんですね。そして「Barack Obama ran, so all the children could fly(オバマが走ったから、子供たちが空を飛べる)」と。

【ジェーン・スー】
うん、すごいね!

【高橋芳朗】
そう。黒人の地位向上の歴史を「座る→歩く→走る(出馬する)→(希望を込めて)飛ぶ」と表現していくあたりがすごく感動的で。

【ジェーン・スー】
泣いちゃうね。最初の訳を聞いただけでもちょっと胸がグッときます……さすがホヴァ!(ジェイ・Zのニックネーム)

【高橋芳朗】
まさに、初の黒人大統領の高揚感が見事に託されている曲ですね。

M2. My President is Black / Young Jeezy feat. Jay-Z

【高橋芳朗】
3曲目は、J.コールの『Be Free』。これは2014年8月のマイケル・ブラウン事件(丸腰の黒人少年が白人警官によって射殺された事件)を受けてリリースされた曲になりますが、ここで紹介するのは同じ2014年12月に新しい歌詞を加えてテレビ番組で披露したバージョンになります。マイケル・ブラウン事件の白人警官が不起訴になったことで、アメリカ各地で抗議デモが活発化した時期に歌われた曲ですね。歌詞の一部を読み上げます。

オバマが大統領に就任したとき、俺たちは浮かれまくっていた
彼が任期を満了してホワイトハウスを去るときには
政府がブラザーたちに奴隷労働の賠償金を支払うかもな、
なんて話して盛り上がっていたっけ
オバマのことを悪く言うつもりはない
でも、俺には彼が掲げた「チェンジ」がいまだに見えてこない
きっとオバマは正しいことをしようとしたんだろう
だが、システムに窒息させられてしまったんだ
彼にでも変えられないことがあるとわかったときは、本当に悲しくなった
地元の仲間たちは季節の変わり目ごとにおびえている
なぜって、彼らの家には暖房も冷房もないんだ
子供が生まれたばかりの俺の親友は、ウォールマートをクビになった
俺たちは取り残されてしまったのだろうか?
もう自分たちだけで戦うしかないのだろうか?
なにかに打ちのめされそうになる。でも、立ち上がらなくちゃいけない
もう突っ立ってるだけじゃダメだ。傍観してたらダメなんだ
俺たちの望みは、ただ自由になりたいだけ
自由になりたいだけなんだよ。この鎖をはずしたいだけなんだ

【高橋芳朗】
オバマ大統領へのリスペクトや失望がないまぜになった、複雑な感情がとてもよく表れている曲だと思います。

M3. Be Free / J.Cole

【高橋芳朗】
テレビでパフォームしたバージョンは権利の関係でかけられないので、オリジナルのバージョンを聴いていただきました。歌詞は異なりますが、当時の黒人社会の沈痛なムードはここからも十分聴き取れるんじゃないかと思います。オバマ大統領の功績としてはオバマケアや同性婚の合法化などがありますが、初の黒人大統領ということで期待された人種差別問題に関しては大きな成果をあげるには至らなかったところがあって。任期の最後の最後にきて、こうして黒人差別問題が深刻化したことについてはきっと悔しい思いもあるんじゃないでしょうか。

【ジェーン・スー】
そうですね。

【高橋芳朗】
オバマ大統領はヒップホップ/ラップが大好きで、このJ・コールのことも好きなアーティストに挙げているんです。あと、彼は毎年お気に入りのソングリストを発表していたんですけど、そこにもよくヒップホップの曲が入っていました。ほかにも、ホワイトハウスで開催したパーティーや会合にラッパーを招いて社会問題について意見交換をしていたり。そんななかでも、特にオバマ大統領が好きだったラッパーがケンドリック・ラマーです。去年のグラミー賞で最多受賞したラッパーですね。そのケンドリック・ラマーが、オバマ大統領の退任に合わせてこんなコメントをしています。

俺たち黒人をホワイトハウスに入れてくれたこと自体がオバマの功績のひとつだと思う。彼はホワイトハウスで政治をすることがどういうことなのか、俺たちに見せてくれたんだ。これは、俺たちの先祖が実現を願いながらも絶対に叶わないと思っていた光景だろう。それに、オバマは大統領としてというより友達として俺たちに接してくれるんだ。俺の母親や姪にもひとりの人間として対応してくれた。自分も将来ああやって振る舞える人間になりたいと思ったよ。

はい、以上がケンドリック・ラマーのコメントでした。でも本当に、音楽が大好きな大統領でしたよね。ミシェル夫人も含めて、とても音楽愛にあふれたファミリーでした。スーさんは先日の退任演説などを踏まえて、なにか思うところはありましたか?

【ジェーン・スー】
うーん……成功だとか失敗だとかということじゃなくて、やっぱりこの人種差別の歴史自体が8年でひっくり返るわけがなくて。まだ道半ば……この次がああいうことになってしまったという反作用はありましたけども、まだまだこの先にもアメリカに変化が訪れると信じたいですね。

高橋芳朗のミュージックプレゼント ラップで振り返るオバマ大統領の8年http://radiko.jp/share/?sid=TBS&t=20170113112114

radikoで放送をお聴きいただけます(放送後1週間まで/首都圏エリア無料)

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当ラジオ番組では「日々の生活に音楽を」をコンセプトに、音楽ジャーナリスト・高橋芳朗さんによる洋楽選曲を毎日オンエア(稀にかかる邦楽はディレクター選曲)。最新1週間のリストは以下です。

1/9(月)

(11:03) Nothin’ You Can Do About It / Manhattan Transfer
(11:48) Hot Rod Hearts / Robbie Dupree
(12:14) Funky Love / Ned Doheny
(12:23) When Will You Be Mine / Average White Band
(12:52) Don’t Leave Me Now / Peter Allen

1/10(火)

(11:03) Modern Love / David Bowie
(11:48) Say It Isn’t So / Daryl Hall & John Oates
(12:18) Everything She Wants / Wham!
(12:24) Give It Up / DeBarge
(12:52) C’est La Vie / Robbie Nevil

1/11(水)

(11:03) Upa Neguinho / Sergio Mendes & Brasil ’66
(11:43) Cartao de Visita / Flora Purim
(12:17) Amanha, Ninguem Sabe / Chico Buarque
(12:52) Menino das Laranjas / Elis Regina

1/12(木)

(11:03) Sometimes I’m Happy / Sarah Vaughan
(11:15) I Can’t Believe That You’re in Love With Me / Tony Bennett
(12:17) Nice Work If You Can Get It / Mel Torme
(12:51) I’ll Take Romance / Eydie Gorme

1/13(金)

(11:02) On The Beat / The B.B. & Q. Band
(11:13) Here I Am / Dynasty
(12:15) Inside You / The Isley Brothers