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胃がん対策で進むこと・進まないこと

森本毅郎 スタンバイ!

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今年の春以降、国は新しい基本方針に、「がんになる国民を減らす」という柱を加える考えを示しています。となると、予防や検査が重要になりますが、実はこれに先駆けて、胃がんの対策で、いろいろなことが既に始まっています。受けた方がいいものとは?森本毅郎・スタンバイ!」(TBSラジオ、月~金、6:30-8:30)の「日本全国8時です」1月16日の放送で、医学ジャーナリスト・松井宏夫さんが解説しました。

松井宏夫

★全国の中学で進むピロリ菌対策

まず去年あたりから、全国の自治体が始めたのが、中学生のピロリ菌検査と除菌です。対象は中学2・3年生で、胃がんの死亡率が比較的高い佐賀県が、県全体で行っています。市区町村レベルでも、すでにいくつかやっていますが、この4月から新しく、山形県鶴岡市、大分県臼杵市が導入を検討しています。

★胃がん予防のピロリ菌検査

予防効果は高いとされています。ピロリ菌は、胃にすむ細菌で、可愛い名前をしていますが、胃の粘膜を攻撃します。それが、慢性胃炎、胃・十二指腸潰瘍、そして胃がんの原因になります。胃がん患者の99%は、ピロリ菌に感染していたというデータがあります。相関関係で見ても、WHOは、ピロリ菌が胃がんの原因の8割だと指摘しています。そこから考えると、ピロリ菌の除菌が、胃がん予防になります。実際、除菌すれば、胃がんの発ガンリスクは、3~4割下がると言われています。また、今の除菌治療の技術は高く、ピロリ菌は95%、除菌できます。まずは検査、そして感染がわかったら除菌するのがいいでしょう。なお、ピロリ菌による胃炎の場合、2013年から保険適用となっています。

★ピロリ菌は高齢者に多い。

ピロリ菌に感染している中学生の割合は、他の世代に比べると少ないのが実態です。ピロリ菌の感染には水の衛生状態が関わっています。上下水道の整備が遅れていた、井戸水時代に育った高齢者には感染者が多く、50歳以上は70%以上が感染していますが、上下水道の整備で、年々減少しています。ただ、上下水道の整備が進んだ今でも、幼児期の食べ物の口移しなどで感染しています。中学生は少ないですが、それでも5%は感染しているので、検査をした方がいいでしょう。

★中学生の除菌効果は?

中学生のピロリ菌除菌の効果は確定していません。ピロリ菌に感染すると胃がんのリスクは高まりますが、必ず胃がんになるわけではない。特に中学生の除菌が胃がんを減らす効果は、まだ実証されてはいません。これは今、中学生が除菌しても、その後胃がんにならなかったかどうかを実証するには、今後30年から40年、もしくはそれ以上の年月をかけて追いかけなければわかりません。その意味では、データがなく、確定していないのは仕方ないのかもしれません。とはいえ、胃がん患者の99%がピロリ菌感染者という調査がある以上、予防しておくのは一定の効果があると考えてもいいし、少なくとも安心なのでは。中学生からのピロリ菌検査と除菌、自治体によって始まっていますので、お住いの自治体に問い合わせてみてください。

 ★胃がんチェックは内視鏡検査がいい?

もう一つ胃がんの検査のお話、今度は内視鏡検査を受けましょう、というお話です。胃がんの検査を受けるとき、みなさんはバリウム検査を選択しますか?それとも内視鏡検査を選択しますか?実は、医師は誰もが、内視鏡検査を選択します。それなのに日本では市区町村の胃がん検診はバリウムのX線検査を行ってきました。ただ、これについても厚労省が、去年4月から内視鏡=胃カメラの検査を導入し、さらに検診対象年齢も50歳以上に引き上げるという新しい方針を打ち出しました。これは韓国で行われた20万人規模の調査で、「内視鏡検査の実施により胃がん死亡率が57%も減った」という結果を、国立がん研究センターが評価したからです。しかし、この対応はあまりに遅すぎます。新潟市などは2003年から検診に内視鏡検査を導入し、バリウム検査時よりも3倍もの胃がんを発見できているのです。バリウムより胃カメラの方が3倍、胃がんを発見できるので、健康診断の対象になったのなら、受けておくべきです。胃カメラは割高にはなりますが、公費が出て、3千円ほどで受けられます。

★しかし内視鏡検査の受け皿作りが進まない

ただ、受けたくても、やっていないところが多いという問題があるんです。去年4月の導入から半年後の厚労省の調査で、実施する予定のない自治体が大半でした。胃がん検診を実施している、1683の市区町村のうち、「84.3%」が「実施の予定なし」と答えています。そもそも導入が遅いことを指摘しましたが、その後の実施も進んでいない。その理由として、一番多いのが、施設や設備が整っていないこと。実施予定の無い、7割近い自治体がそう答えていますが、まずは、ある程度基幹となる病院に集約した形で、進めていくしかないでしょう。そして、実施予定の無い半数以上の自治体では、委託できる事業者がいない。つまり、専門医が足りていない・・・。内視鏡の確かな技術をもった、医師の育成を急ぐ必要があります。

★ではどうすれば?

まずはリスクを高めるピロリ菌の検査、除菌を受けること。そして自治体が、検診に内視鏡=胃カメラの導入を進めてくれることを待ちつつ、導入されたら、バリウムではなく、胃カメラの検査を受けることが重要です。胃がん検診の受診率は、40歳から69歳で見ると、「男性が45・8%」、「女性が33・8%」で、いまだ半数にも達してない状況です。胃がん検診の受診率が伸び悩む原因の1つして、「バリウム検査が嫌!」という人が多いことが挙げられていました。胃がんは、他のがんに比べても、早期発見・早期治療により治る可能性が高い。検診を受けやすい環境づくりという面でも、胃カメラの実施を早く進めて欲しい。

ほし

松井宏夫の日本全国8時です(リンクは1週間のみ有効)http://radiko.jp/share/?sid=TBS&t=20170118080000

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