お使いのOS・ブラウザでは、本サイトを適切に閲覧できない可能性があります。最新のブラウザをご利用ください。

放送中

放送中


  • コラム

第43回放送『千葉県鋸南町』

コンシェルジュ沓掛博光の旅しま専科
東京湾フェリーの船上から見た鋸山。山頂が鋸 の刃のようにぎざぎざした形に見える

東京湾フェリーの船上から見た鋸山。山頂が鋸
の刃のようにぎざぎざした形に見える

「鋸山を越えると肌着が1枚いらない」と言われるほど南房総は冬でも暖かい。その鋸山の南に広がる町がその名もずばり鋸南町(きょなんまち)。海辺に面し、背後に丘陵が広がり、今の時期は特産のスイセンが一面に咲き始め、早や春の訪れを告げている。わが国有数のスイセン郷とその周辺を紹介しよう。

鋸山山頂へはロープウエ―で4分。東京湾の眺めを 楽しみながら手軽に山頂へ行かれる

鋸山山頂へはロープウエ―で4分。東京湾の眺めを
楽しみながら手軽に山頂へ行かれる

 鋸南町へは三浦半島の先端にある久里浜から東京湾フェリーで行くのが便利だ。ぼっーという汽笛とともに出港したフェリーは約40分で東京湾を横切り千葉県の金谷港に着く。入港直前には正面には標高329mの鋸山が見える。その名の通り山頂周辺はノコギリの刃のようにごつごつした岩が連なっている。下から山頂へはロープウエーが延びており、手軽に山頂まで行くことができる。スイセン郷を訪ねる前にまず、鋸山に登ってみよう。フェリーターミナルから車で3、4分、歩いて10分ほどで鋸山ロープウエーの駅に着く。

山頂の展望台のコーナーには江戸時代から始まった房州石の石切りに使用した道具類を展示し、その歴史を伝えている

山頂の展望台のコーナーには江戸時代から始まった房州石の石切りに使用した道具類を展示し、その歴史を伝えている

 乗って4分で山頂展望台へ。ここからは眼下に東京湾が広がり、その向こう正面に白銀をまとい、裾を広げる富士山の美しい姿を遠望する。遮るものが何もない、爽快感あふれる風景だ。とりわけ冬の時期は空気が澄み、青空の下での眺望が素晴らしい。展望台の館内には鋸山石切歴史コーナーが設けられ、鋸山が江戸時代から昭和初期まで房州石(ぼうしゅういし)と呼ばれる砂岩の石切り場であったことやそれを切りだしたツルハシなどの工具類、当時の作業風景の写真などを展示している。加工しやすく、防火、防災にすぐれていることから建築用材として広く利用されていた。足もすくむ地獄のぞきは石切りの跡で、切り立つ断崖が鋭角の絶景を見せている。展望台を下る途中の石切り跡には6年かけて昭和41年に完成した百尺観音が刻まれている。海上からは鋸の歯のように見える山は実は石切りの跡だったのである。なお、鋸山のロープウエーは1月16日から2月3日まで定期検査のため運休する。山頂へは有料の登山自動車道か日本寺(にほんじ)に車を停め、参拝の後に徒歩で登ることになる。

日本寺に安置されている房州石で彫られた日本一大きい磨崖仏

日本寺に安置されている房州石で彫られた日本一大きい磨崖仏

 その日本寺は鋸山の南斜面に境内が広がり展望台から道なりに入ることができる。寺の歴史は古く、およそ1300年前に行基が開いたと伝えられ、関東最古の勅願所と言われる。斜面を下る途中には1553体の千五百羅漢が安置され、岩の上や小さな岩穴などから参拝者を見守るようにたたずんでいる。一体一体の表情はすべて異なり、江戸時代の木更津の名工、大野甚五郎と門弟27名が21年間かけて彫り上げたものだという。大仏前参道をゆっくり下れば正面に大きな大仏が見えてくる。これが日本一大きい磨崖仏で、高さが31.05m。ちなみに奈良の大仏は18.18mだからいかに大きいかお分かりいただけよう。この大仏も大野甚五郎と門弟によるもので、その後風化が激しく昭和44年に復元された。房州石の柔らかな味わいと穏やかな表情に心が引かれる。大仏から少し登った通天窟の横に珍しいスイセンを手にした水仙羅漢が格子をはめた祠の中に安置されている。これは明治から大正時代にかけて鋸南町でスイセンの栽培と東京での販路開拓に尽力した東京の生花問屋のご主人の恩に報いるために地元の人達が祀ったもので、スイセンの町鋸南を語る羅漢さんである。

江月水仙ロードでは里山風景の中で、可憐な スイセンを楽しむことができる

江月水仙ロードでは里山風景の中で、可憐な
スイセンを楽しむことができる

 このスイセンが群生しているのが鋸山から車で約15分、JR内房線の保田(ほた)駅の先にある。スイセン郷は全部で3か所あり、江月水仙ロード、谷沢(やつざわ)水仙郷、をくづれ水仙郷とあり、2月上旬まで楽しめる。保田駅からは歩いて約10分と一番近いところに江月水仙ロードの入り口があり、そばに無料駐車場もある。道が狭いので車の人はここに停め、歩いて巡るのがいい。歩き出してすぐに道の両側にスイセンの畑が現れ、可憐な白い花がいっぱいに広がって見える。鋸南町のスイセンの出荷量は1年間で約800万本と言われ、日本一を誇る。スイセンは畑や斜面で栽培され、切り花として関東地方を中心に出荷される。道をさらに進んで行くと地蔵堂があり、振り返ると眼下に海が望める。晴れればここから富士山も遠望できるという。ここまでゆっくり歩いて40分程。足に自信のある人はさらに狭い農道を進んでスイセン畑や里山の風景など楽しみながら見返り峠まで足を延し来た道を戻る。なお、江月の地名は頼朝伝説によるもので、鋸南町の浜に上陸した頼朝に献上した名馬池月の名が転じて江月になったという。

スイセンの花が咲きそろう佐久間ダム親水公園

スイセンの花が咲きそろう佐久間ダム親水公園

 もう一つの谷沢とをくづれ水仙郷は歩いてまわるには距離があるので車か町営の循環バスで行くことになる。バスダイヤは少ないので事前に保田駅か安房勝山駅の案内所などで確認しておきたい。先ほどの江月ロード入り口から県道34号線(長狭街道)を進むとまず左手に谷沢水仙郷がある。斜面を飾るようにスイセンの花が咲き乱れている。その先ををくづれ水仙郷入り口の看板に従って右折し、トンネルを抜けると一面にスイセンの畑が広がっている。ここがをくづれ水仙郷だ。ゆるやかな傾斜地を埋めるようにスイセンの花がやわらかい冬の陽をいっぱいに浴びて輝くように咲いている。おすすめは道の先にある八雲神社の境内からの眺めだ。やや高台にあって眼下にスイセンの畑が広がり、彼方に房総独特のゆるやかな丘陵が見える。のどかな里の風景とスイセンの花が美しくとけあっている。ここから10分程下ると佐久間ダム親水公園。ダム湖を囲むようにスイセンの花が咲きそろい、近づけばやや高い香りが鼻孔をくすぐる。もう春はすぐそこにきているようだ。佐久間ダム親水公園では1月末までライトアップも行われる。

勝山漁協直営のお食事処なぶらの人気メニュー のひとつ、なぶら海鮮丼

勝山漁協直営のお食事処なぶらの人気メニュー
のひとつ、なぶら海鮮丼

 をくづれ水仙郷から県道184号線をJR内房線の安房勝山駅方向へ戻る途中に町営の日帰り温泉施設の笑楽(わらく)の湯があるので、温泉で足腰の疲れを取るのもいい。
 味覚では安房勝山駅から漁港に向かって10分ほど歩いたところに勝山漁協直営のお食事処なぶらがある。漁港を目の前に眺めながら新鮮な幸を刺し身や煮魚定食で味わえるお店でマグロ、タイなど7種のネタがのったなぶら海鮮丼1300円などあり、リーズナブルな料金もうれしい。このほか、スイセン郷を巡る時に持っていきたいおやつにJR保田駅から続く保田商店街にあるパン屋の菊香堂(きっかどう)の頼朝あんぱん(1個200円)がある。頼朝伝説にちなんで、餡のまわりに白い旗をイメージしたギュウヒをかぶせ、パンの真ん中に頼朝桜の花の塩漬けを乗せている。全体に平たくして餡が均等に収まるよう工夫している。この他お弁当では小ぶりのアジをこの辺りではジンタと呼ぶが、このジンタの押し寿司が人気。鮮度のいいジンタを使い、アジの旨味が酢飯にしみこんでおいしい。割烹なぎさで予約販売している。

問い合わせ:鋸南町役場地域振興課
      ℡0470-55-1560
交通   :東京湾フェリー金谷港下船。
      またはJR内房線浜金谷駅下車。
      車は富津館山道富津金谷IC利用