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原因不明の「ふるえ」その画期的な治療

森本毅郎 スタンバイ!

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日本で悩んでいる人が約300万人。原因不明の「ふるえ」が起きる病気について、一月ほど前、ある医療機器を使った治療法が、新しく承認されました。身体を全く傷つけない画期的な治療について。森本毅郎・スタンバイ!」(TBSラジオ、月~金、6:30-8:30)の「日本全国8時です」1月23日の放送で、医学ジャーナリスト・松井宏夫さんが解説しました。

松井宏夫

★原因不明の「ふるえ」とは。

まず、原因不明の「ふるえ」についてです。病名として、正式には「本態性振戦」といいます。「原因がはっきりしない」という意味の医学用語です。それと「振戦」は、意志に反して起る「ふるえ」を意味します。

★どんな「ふるえ」?

ふるえる場所は、腕や首や声で、人によってふるえの場所、強さなどが違います。本態性振戦のふるえの特徴は、動いたときに、ふるえが起きることです。食事で箸を持ち上げようとしてもできなかったり、文字を書こうとしてもうまくかけない、来客時にお茶を入れるのも大変な人もいます。そうした日常生活に支障が出る程、ひどくふるえが起きる人がいます。さらに、抑えようと思えば思うほど、緊張で、症状は強くなり、心理面での影響が大きい。この原因不明のふるえに悩む人が、推定300万人と言いましたが、ある調査では、40歳以上に6%の人に、この症状がみられたと報告されています。

★間違えやすいのは、パーキンソン病

「ふるえ」は、よくあることで、違う病気でもある症状なので、見落としがちになります。診断を間違えやすい代表的な病気が、パーキンソン病です。本態性振戦とパーキンソン病の「ふるえ」の違いを言うと、本態性振戦は、身体の左右対称に、だいたい同じ強さでふるえますが、パーキンソン病は、右と左で、ふるえの強さに差があります。また、本態性振戦は、箸を持ち上げようと動いたときに、ふるえますが、パーキンソン病は、箸を持ち上げようと動いたときは、ふるえが収まります。

★「ふるえ」の原因は?

まだ解明されていませんが、遺伝的要因が強いとも言われます。本態性振戦は、ふるえ以外には、からだに何も起こらない病気です。ですから、本態性振戦は、「病気」というよりも「体質の問題」とも言えます。ただわかってきているところでいうと、からだの活動を高める交感神経が過剰に興奮すると、ふるえの幅は大きくなります。また、そのふるえを起こす交感神経に脳の一部が、関わっていることもわかっています。ただ、なんで脳の一部が、そうなってしまうのかは、詳しくわかっていません。

★治療の基本

病気は早期発見・早期治療が鉄則ですが、この病気の場合、生活に支障が出ている人に治療が勧められます。その治療の中心は、まず薬となります。交感神経が興奮するとふるえが出るので、そのたかぶりを抑える効果のある薬を使います。ただ、この薬が効くのは12時間、薬の効くのは6・7割の人で、効果がない人も。また、薬を飲むことで脈が遅くなる副作用もあります。薬などで十分な効果が得られない場合は、手術となります。手術では、ふるえの交感神経に関わる脳の一部を取り除くことになります。頭部に小さな穴を開けて行う手術や、放射線のガンマナイフを利用した手術がありますが、問題の部分は、脳の真ん中にあるので、他の部分へ影響する懸念がありました。そうした治療しかなかったところに先月19日、新しい治療法が承認されたんです。

★画期的治療法とは?

身体を全く傷つけない治療で、「MRガイド下・集束超音波治療」といいます。どんなものか、噛み砕きますと、「MRガイド下」の、MRはMRIのです。MRIの丸い機械の中に患者が入って、脳などの画像診断を行うものですが、それで、脳の中でふるえに関係する、問題の場所を正確に捉えます。次に、「集束超音波」というのは、集めて束にした超音波と書きますが、これは、熱のエネルギーを1カ所に集めて束ねた、ビームです。患者さんはMRに入るときに、専用のヘルメットのようなものを頭にかぶるんですが、そこには、ビームを出す、千個近くの端子がついています。小さい頃、虫めがねで太陽の光を集めて黒い紙を燃やす実験をした人も多いと思いますが、同じ原理で、千個近くの端子を1点に集中させて、問題の場所を狙い撃ちします。60度から90度くらいの熱で、直径2ミリ弱くらいを焼いてしまいます。MRで温度変化を見ながら、ヘルメットの冷却装置で頭を冷やしながらゆっくり治療します。治療は局所麻酔だけで、患者さんは、ふるえが止まるのが自分でもわかります。大体1時間くらいの治療で、ビームを15回くらい当てて終わるので、治療も簡単です。

★今後はパーキンソン病やがんの治療に応用も!

今のところ、この手術をする医療機器は、日本に8台あるんですが、今回、正式に治療法として、承認されたので、今後一気に広がりが期待できます。今回、「本態性振戦」に限定した治療法として承認されましたが、実はこの先、他の脳の病気の治療法として、応用されることが期待されています。例えば、本態性振戦と診断が間違えやすい、パーキンソン病などもその1つです。身体を傷つけないで、悪い部分だけ焼くという点では、他の病気も対象になってきます。乳がんなどいくつか症例があり、そちらにも応用が期待される医療機器です。

★保険適用まではすぐ?

しかも、今後、保険適用までの、通常より早いことが予想されます。これまで、新しい機械の試験は、各病院が自主的にバラバラに行うことが、よくありました。だから基準が出来ず、多くの病院で使えるようになるまで、とにかく時間がかかりました。しかし今回は脳神経外科学会が主導で、機械の使用基準などガイドラインを作っています。機械のある施設で、有効かつ安全を示す試験が大体、2年ほど。学会が責任を持ってガイドライン作りをするので、国も早く保険適用にするのでは。

 

松井宏夫の日本全国8時です(リンクは1週間のみ有効)http://radiko.jp/share/?sid=TBS&t=20170123080000

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