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C型肝炎の偽薬混入問題。知られざる偽薬の流通ルートとは!?

森本毅郎 スタンバイ!

今月17日、奈良県に本社がある薬局チェーンで、C型肝炎の治療薬「ハーボニー」の偽造医薬品が見つかりました。今回は、医師の処方箋を扱う調剤薬局で、偽薬が調剤され、それが患者の手に渡ったという意味で、あってはならない事件となりました。なんでこんなことになったのか?

★そもそも「ハーボニー」とは?

まず、今回、出てきた「ハーボニー」という薬について説明しておきます。以前この番組でも紹介しましたが、2015年9月に発売されたC型肝炎の治療薬です。それまで、C型肝炎の治療は、インターフェロンという注射の治療が中心で、ほぼ毎日、少なくとも2日に1回、半年間は注射を打ち続けなければならない、つらい治療でした。重い副作用もあり大変なんですが、そこまでやっても治る確率は、50~60%でした。これに対し、新しく登場した「ハーボニー」という薬は、治る確率は、99%。しかもたった1日1錠、12週間続ける簡単なもので、7万6千人が利用しています。

★「ニセハーボニー事件」の経緯

問題が発覚したのは今月10日で、奈良県の薬局チェーン、サン薬局で見つかりました。ハーボニーを処方された患者さんが、薬を飲もうとしたところ、「いつもの薬と違う」と気がついて、薬局に問い合わせて、問題が発覚しました。

本物の色は、橙色なのに、ニセモノは、薄い黄色や紫色の錠剤が入っていました。また、本物の形は、ひし形なのに、ニセモノの、だ円や丸い形の錠剤が入っていました。さらに本物には、表面に、アルファベットで「GSI」、裏に「7985」と、刻印がありますが、ニセモノにはなかった、そのあたりで気づいたそうです。

その後、薬局からハーボニーの製造元=ギリアド社に連絡が行き、警察も入った大捜査に。調べを進めると、他の店舗や東京からも、次々とニセモノが見つかります。ハーボニーは、1本のボトル型の容器に28錠がまとめ入って、売られているものです。今回、そのニセモノが入ったボトルが、奈良のサン薬局の店舗や在庫から、5本。その後、東京都内の2つの卸売業者から9本・・・これまで計14本が発見されました。

★高額な薬を狙った犯罪!?

問題は、なんでこんなことが起きたのかですが、詳細は厚労省が調査中ですが、まずこのハーボニーが非常に高い薬だということがあります。保険適用なので患者さんの負担は少しですが、本来の1錠の価格はおよそ5万5千円。ボトル1本に28錠入っているので、ボトル1本で154万円近くにもなります。サプリとかを詰めて売れば、1本で150万円、儲かるので、そこを狙った犯罪です。ただ、管理がしっかりしていれば、偽物が紛れ込む余地はないはずです。

★背景にあるのは複雑な薬の流通ルート

一体どうなっているのか?これについて、今回、薬剤師に取材したところ、実は、薬の流通ルートには、ニセものが、混じる、抜け穴があるようです。薬の正規流通経路は、製薬会社から卸問屋へ、卸から病院や薬局に届くという流れです。ところが、実際の薬の流通には、その間に、別の卸問屋がいくつも入っていて、さらには「現金問屋」という、複雑な存在もあるようです。

薬局や、病院は、高い薬の在庫を抱えると大変なので、いろいろな取引をします。薬の値段は、患者に処方される際は全国均一の公定価格ですが、製薬会社や病院、薬局、卸業者で取引される際の価格は決まっていません。大量に仕入れれば割引されることもありますが、小規模の薬局では大量購入は難しい。だからといって、高い薬の在庫を抱えるのはリスクが大きい。そこで、卸業者が間に入り、まとめて安く手に入れた薬を、安く売買したりします。

★薬の流通に出てくる「現金問屋」とは?

現金問屋は、製薬会社や卸だけでなく、病院、薬局から余った薬を、安く仕入れて転売します。東京では神田、大阪では道修町などに集まっていて、100ほどあると言われています。

もちろん、現金問屋は、医薬品の販売許可を取って営業しています。ただ、中には免許を持たない悪質業者もあったり、たびたび、不正の舞台となってきました。例えば、2014年、千葉県の調剤薬局が、余った薬を、廃棄したように見せかけて、現金問屋に横流しして、7年間で1億円の裏金を儲けていたとして、問題になりました。

このように、現金問屋は、メーカーや卸から病院、薬局へ、という川上から川下への流通だけでなく、病院、薬局、さらには個人からも薬を買い取る川下から逆流するような流通も行っています。夕刊紙の三行広告に「薬、現金で買います」というのも出ていたりするくらいなんです。

★複雑な流通経路にニセの薬が出回る「隙」

今回、見つかった偽造品の1本は、東京の卸業者が、許可を持たない個人から購入し、別の都内の卸業者、大阪の卸業者を経由してサン薬局に販売されていたとされています。他のものも、免許を持たない違法業者が関わっているのではと見られています。

確かに性善説に立てば不正は起きないはずですが、現在の流通を悪用すれば、薬を飲み終わった個人から不正業者がボトルを回収して偽物を詰めて転売したり、薬をボトルから個別包装して処方した薬局が、空のボトルに別のものを詰めて転売したり、いくらでも横流しして、偽造品が流通する、隙がある、というわけです。ハーボニーが詰まったボトルは1個154万円ですので、空のボトルが154万円に化けるとなれば、悪い人は何をするかわかりません。

★混入を防ぐ対策は!?

まずは、複雑な流通経路を整理する必要があります。ただこれは時間がかかります。薬剤師に聞くと、その前に、現状でも、防げるはずだ、ということでした。

ニセの薬は、蓋を一度開けない限り、ボトルに入ることはありません。今回は、密閉するシールが付いていたといいますが、本物のシールと、偽造されたシールでは密閉度が違うので、プロならわかるといいます。実際今回のニセモノが入ったボトルは、シールが簡単にはがれたりする状態でした。

これを受け、今後は薬剤師がボトルから一度出して正しい薬かどうか確認するそうです。言われてみれば当たり前のことで、こんなこともしていなかったのかと思います。

それからもう1つ、メーカーも、ボトルではなく、1錠ずつの包装に替える方針です。1錠ずつとなると、偽造するのもコストがかかるので、偽造されにくくなります。

★患者として注意すべきことは?

一般的でない高価な薬の場合は、ネットで薬の形状をチェックしてみるといいでしょう。今回のように、色、形、さらに刻印が違う場合は、薬局に問い合わせを。

 

日本全国8時です(松井宏夫)

解説:医学ジャーナリスト松井宏夫

 

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