お使いのOS・ブラウザでは、本サイトを適切に閲覧できない可能性があります。最新のブラウザをご利用ください。

放送中

放送中


  • 放送ログ
  • 音声あり

オプジーボは半額に!そして抗がん剤不要の免疫治療薬も新登場!

森本毅郎 スタンバイ!

免疫力を高めてがんをやっつけるのが「免疫治療」で、有名な薬があの「オプジーボ」。その免疫治療で今月、新しい動きが続いています。1つはオプジーボの値下げ、もう1つは、オプジーボ以上と言われる薬の販売開始です。

★免疫治療薬とは

まずおさらいで、そもそも「免疫治療薬」とは何か、ということですが、通常、体の中に悪い物ができると、人間の体は免疫力を発揮して、それをやっつけます。ところが、がん細胞は、なぜか免疫力がきかずに残ってしまうので、厄介でした。

なぜ、がん細胞は免疫でやっつけられないのか?これが謎だったんですが、近年、がん細胞の中には、「PD‐L1」という分子があって、これが免疫力にブレーキをかけることがわかりました。そこでこの「PD‐L1」という分子がブレーキをかけないようにする薬が開発されました。免疫力のアクセルを踏んで、がんをやっつけるので「免疫治療薬」と言います。

代表的なものがあの「オプジーボ」です。免疫力が高まったことで、がんが小さくなった、消えたと、話題になりました。当初は皮膚がんの一部に認められ、その後、肺がん、腎臓がんの一部にも適用、今後は他にも広がる予定です。

★オプジーボの値下げは妥当?

オプジーボは、当初、100ミリグラムあたり73万円という価格が設定されました。肺がんの治療では、1人あたり年間で3500万円かかるとされ、対象の患者を5万人と推定すると、年間1兆7500万円かかるとして問題になりました。患者さんとしては、保険適用なので、一部の負担で済みますが、残りは国の負担です。国の財政を圧迫するという議論を経て、今月から、2分の1=半額に値下げになりました。

半額でも、1人年間1750万円ですから、まだ高い気がしますが・・・当然、製薬会社側は猛反発しています。薬の開発には長時間、高額の研究費がかかるので、そんなに値下げされてはかなわないというのがその理由です。

ただ、今回の値下げは妥当なのではないかと思います。オプジーボは当初、特殊な皮膚がんのみに適用され、想定患者は年500人弱でした。その時に決まったのが、100ミリグラムで73万円です。その後、肺がんなどに適用が広がり、推定される患者は年5万人ともいわれています。今回の値下げは2分の1ですが、推定患者数から単純計算すれば、500人だったのが、5万人に増えたのですから、値段が100分の1になってもいい計算です。海外ではもっと安いという指摘もあるので、このあたりのバランスはもっと検討が必要です。

★新しい免疫治療薬「キイトルーダ」

こうした中、さらに患者には嬉しい、だけどもオプジーボを脅かすような新しい動き。それはオプジーボよりも、患者にとって効果的な免疫治療薬が誕生したんです。その名前は「キイトルーダ」といいます。オプジーボは、日本の小野薬品が海外の製薬会社と開発しましたが、こちらのキイトルーダは、アメリカのメルクという会社が開発した薬です。

キイトルーダは、去年、皮膚がん、そして肺がんの治療で承認され、今月中にも、その薬の値段が決まり、発売になる予定です。このキイトルーダのどこがすごいのか?「免疫治療薬」の仕組みはオプジーボと同じです。がん細胞の中にある「PD‐L1」という分子が、免疫にブレーキをかけないようにして免疫のアクセルをふかすことで、がんをやっつける薬です。

★治療結果はオプジーボ以上!?

ただ、オプジーボとは、効果が違う、という治療結果が出ています。オプジーボは、抗がん剤治療をした後に使うというルールになっています。実際、抗がん剤治療をしていない人にオプジーボを使っても効果が出ていません。

一方、このキイトルーダは、抗がん剤治療をする前に使うことができます。免疫のブレーキを踏むとされる「PD‐L1」という分子がある程度ある場合は、抗がん剤の前にキイトルーダを使うことで効果がある、という結果が出ているんです。使う薬が1つになるだけでも、体への負担が減るし、医療費も安くなる。しかも、あの辛い副作用がある抗がん剤治療をやらなくていいとなると、患者さんは、だいぶ楽になるのではないでしょうか。

★群雄割拠の免疫治療薬

キイトルーダは、現在、皮膚がんの一種と、肺がんで適用が認められています。すでに、胃がんや大腸がん、食道がん、肝がん、前立腺がんなどを対象とした。臨床試験が国内で進められており、今後は、他のがんへの適用が期待されます。実は、こうした、がんの「免疫治療薬」の開発は、どんどん進められています。国内では、製薬会社5つのチームが、7種類の薬の、開発にしのぎを削っています。細かい仕組みはそれぞれ違いますが、大きくみれば、がん細胞が免疫力を弱める動きを邪魔して、免疫攻撃によってがん細胞をやっつける、という点では共通しています。

基本的なところが似ているので、訴訟になるケースもでています。キイトルーダについては、オプジーボの特許を持つ小野薬品が、特許侵害だとして、キイトルーダのメルク社を訴えました。結果は、キイトルーダの売り上げの一部を、メルクが小野薬品に支払うことになり、小野薬品側の実質勝訴で、先月、和解となりました。

★免疫療法が推奨される「がん」

製薬会社としては大変かもしれませんが、患者さんとしては、新しい薬の開発、価格で競争が行われ、効果的な薬が、他社より安く出るのであれば、非常に助かります。がんにおいて免疫治療は、手術、抗がん剤、放射線療法に次ぐ、「第4の治療法」。日本臨床腫瘍学会も、主な18種類のがんのうち、既に6種類のがんに、免疫療法は「推奨される」としています。今後開発・承認される免疫薬が、様々ながんの治療法として、第一選択薬の座につく日は近いので、適正価格や安全性の確保を急いで欲しい。もちろん、オプジーボも、キイトルーダも副作用があるので、そこは注意が必要です。

日本全国8時です(松井宏夫)

解説:医学ジャーナリスト松井宏夫

 

松井宏夫の日本全国8時です(リンクは1週間のみ有効)http://radiko.jp/share/?sid=TBS&t=20170206080000

radikoで放送をお聴きいただけます(放送後1週間まで/首都圏エリア無料)