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まだまだ厚いガラスの天井

森本毅郎 スタンバイ!

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忙しい朝でもニュースがわかる「森本毅郎・スタンバイ!」
(TBSラジオ、月~金、6:30-8:30)
8時からは、話題のアンテナ「日本全国8時です」
全国ネットで、日替わりゲストとともに放送。
毎週木曜日は、東京大学名誉教授、月尾嘉男さんの「賢くなれる雑学コラム」!

月尾嘉男

11月18日(木)は「まだまだ厚いガラスの天井」

★クリントンは破れなかった「ガラスの天井」

アメリカ大統領選挙ではトランプ氏当選の衝撃の陰でそれほど話題になりませんでしたが、もう一つ関心を持たれていたのが、クリントン氏が「ガラスの天井」を打ち破るかどうかということでした。念のため説明しますと、上を見上げると何も障害がなさそうなのに、実際に登っていくと見えない障害があって、それ以上は上に行けない状態を「ガラスの天井」と言います。制度上では男女の差別はないけれど、実際に挑戦すると女性が活躍することが困難だという状況のことです。アメリカの大統領はトランプ氏で45人目ですが、女性は1人も当選しておらず、クリントン氏は2008年の大統領選挙でも挑戦しました。その時、民主党候補としての支持率はオバマ候補の21%、ジョン・エドワーズ候補の11%を大きく上回る40%でしたが、実際に選挙が始まってみるとオバマ候補に負けて予備選挙で敗退しました。今回、予備選挙は勝ち上がったのですが、優勢と予測されながらトランプ氏に敗退し、ガラスの天井は破れませんでした。

★ガラスの天井、世界では…

しかし世界では、国家元首やそれに相当する役職で次第にガラスの天井が破られつつあります。戦後だけでも、有名な女性国家元首はアルゼンチンのイサベラ・ペロン大統領(1974~76)、フィリピンのコラソン・アキノ大統領(1986~92)、ブラジルのジルマ・ルセフ大統領(2011~16)などをはじめ、80名近い女性が国家元首になっています。また政府の代表としては、インドのインディラ・ガンジー首相(1966~77、1980~84)、イスラエルのゴルダ・メイヤ首相(1969~74)、イギリスのマーガレット・サッチャー首相(1979~90)、ノルウェーのグロ・ハーレム・ブルントラント首相(1981、1986~89、1990~96)など、これまでに80名以上が就任しています。現職でも韓国のパク・クネ大統領、チリのミシェル・バチェレ大統領など14名の国家元首と、ドイツのアンゲラ・メルケル首相、イギリスのテリーザ・メイ首相など8名の政府の代表が存在します。しかし、国連加盟国は193ヵ国ですから、国家元首と政府代表を合計しても
女性は11%ですから、破られつつあるとはいいながら、ガラスの天井は存在しているようです。

★日本はまだまだ

日本は最近、何人かの女性国会議員が総理大臣を目指している雰囲気になりましたが、これまでのところ初代の伊藤博文総理大臣から96代の安倍晋三総理大臣まで131年間で女性総理はゼロです。アメリカも227年間でゼロですから、日本も仕方がないとしても、日本の見えない天井は、国会議員の女性の比率です。列国議会同盟という国際組織が189ヵ国の国会議員の女性比率を比較していますが、日本は11.6%で147番です。多い国では1位のルワンダが57.5%、2位のボリビアが51.8%、3位のアンドラが50%、4位のキューバが48.9%。以下、主要な国では6位のスウェーデンが43.6%、8位のフィンランドが42.5%、9位のベルギーが42.4%と、日本とは大差です。189ヵ国の平均が20.5%ですから、日本は平均以下です。

これには理由があり、それらの国々の多くには「クオータ制」という、女性の国会議員の比率を一定以上にしなければいけないという制度があるからです。一般に先進国といわれる35ヵ国で構成されるOECDでは、クオータ制を採用していないのはフィンランド、ニュージーランド、デンマーク、アメリカ、日本、トルコの6ヵ国で、それぞれ女性議員の比率は、フィンランド(41.5%)、デンマーク(37.4%)、ニュージーランド(31.4%)、アメリカ(19.5%)、トルコ(14.4%)、日本(11.6%)です。フィンランドは女性大統領や首相が選ばれ、女性国会議員比率も9位ですし、ニュージーランドは国家元首代理の総督は代々女性、首相も女性が何回か就任していて実際に女性議員の比率も36位ですから、クオータ制が必要ないと思いますが、日本は検討するべきかもしれません。

★職場の女性進出も遅れている日本

それ以外にも、日本は女性の参加が少ない国で、研究者の女性比率は14.4%でOECD加盟国中最下位です。これでも2000年の10.6%からは増加していますが、上位のリトアニアは49.3%、ラトビアは47.5%、ブルガリアは44.6%と、比較すると、日本はきわめて低い比率です。企業の管理職の比率も少なく、部長級は5.1%、課長級は8.5%で、管理職全体では11.2%ですが、世界を見ると1位のフィリピンは47.6%、2位のアメリカが43.7%、3位のフランスが39.4%と、大差をつけられています。

★セルロイドの天井、竹の天井

このような職業の天井について「セルロイドの天井」という言葉もあります。女優で監督もしているジョディ・フォスターの言葉ですが、ハリウッドでは女性の就業者が増えているが、監督だけはほとんど増加していないということで、かつてはフィルムがセルロイドでできていたために、そのように名付けたという次第です。アメリカには「竹の天井」という言葉もあります。アメリカにはアジア系の人口が5%生活していますが、アメリカの雑誌「フォーチュン」が毎年発表している世界の企業番付「フォーチュン500」に入っている大企業の役員は2%でしかないことです。

これらの天井は何が問題かというと、今流行しているダイバーシティの阻害要因になるということです。ダイバーシティは多様性ということですが、社会が固定していた時代には、性別も国籍も年齢も同じような人々が集団で社会を維持することが可能でしたが、人々の好みも多様になり、企業の活動も国際展開し、高齢者の比率が増加してくると、それに対応するためには企業も役所も議会も様々な人で構成されることが重要になります。世界で日本の存在感が低下しているのは、経済力が低下してきたからだけではなく、他国と比較して多様性が低いことも影響していると思います。ぜひ様々な天井を破る人が増えてくることを期待したいと思います。

月尾嘉男の日本全国8時ですhttp://radiko.jp/share/?sid=TBS&t=201611170800

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