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一本の鰹節は市販の削り節とは全然違う!

久米宏 ラジオなんですけど

TBSラジオで毎週土曜日、午後1時から放送している「久米宏 ラジオなんですけど」。
11月26日(土)放送のゲストコーナー「今週のスポットライト」では、東京・築地にある鰹節の仲卸店「伏高(ふしたか)」の3代目、中野克彦さんをお迎えして、知っているようで知らない「ダシ」の話をたっぷり伺いました! ちなみに、11月24日は「い・い・ふ・し(節)」ということで「鰹節の日」なんだそうです。

鰹節(本節・枯節)と荒節

伏高は1918年(大正7年)、当時、日本橋にあった魚河岸で鮮魚の問屋兼仲卸として創業。関東大震災で魚河岸が築地に移転してから、鰹節店になりました。それ以前、江戸時代の中野家は日本橋で米屋を営みながら十手持ち(岡っ引き)もやっていたそうです。明治になると本所で鍛冶屋となり、陸軍に蹄鉄や轡(くつわ)などの馬具を納めていましたが、不良品を出して出入り禁止となり家業が傾いたため、まだ10歳そこそこだった中野さんの祖父・高介(たかすけ)さんは日本橋の蛸屋に奉公に出たそうです。仕事がとても辛くて外国船に乗って逃げようとしますがそれも叶わず、食い合わせが悪いうなぎと梅干しをたらふく食べて死のうとしたそうです(当然、何ともありませんでした)。その後、いくつか店を経て、「伏正」という仲卸店で長らく働き、独立したのが、冒頭に書いた大正7年。「伏正」の一字をもらい、自分の名前の一字と合わせて「伏高」というわけです。そんな鰹節店の3代目に生まれた中野さんは、慶応義塾大学を卒業し(その前にアメリカ留学も経験!)、外資系の銀行に4年半勤めたあと、1989年4月に家業に入りました。伏高の歴史だけで対談が終わりそうでしたが、鰹節の歴史もとても面白いものでした。

鰹節をスタジオで削る

鰹節は古事記にも出てくるぐらい古くから日本人の暮らしに入っていましたが、その頃は今の製法よりずっと簡単で、鰹を干しただけの堅魚(かたうお)や、煮てから干した煮堅魚(にかたうお)でした。それが室町時代になって堅魚や煮堅魚を煙でいぶす「焙乾(ばいかん)」という技術が考案され、鰹節の原型ができあがりました。これは今でいう「荒節(あらぶし)」の状態。カビを表面に付ける行程の前の鰹節です。この状態の鰹節は表面にタールのようなものが付着して全体に黒い色になっています。戦国武将たちはこれを保存食として戦場に持って行ったそうです。

削りたての鰹節

その荒節にカビが付着すると非常に臭くなってしまうのですが、中には臭くならないカビもあって、これが付いた荒節はとてもおいしくなることが分かったんです。カビによる化学変化が味をまろやかに、奥深いものに変えたのです。そこでそのいいカビを意図的に付着させることで、悪いカビが付くのを防ぎ、旨みも増す技術が生まれたのです。カビ付けは江戸時代に確立しました。ここまでくると、今の鰹節にかなり近くなってきますが、あとひといき。

削りたての鰹節をつまみながら

明治になると、カビ付けを何度か繰り返すことで熟成させる技術が導入されました。これが「枯節(かれぶし)」(本節、仕上げ節)というもので、今の鰹節です。こうした鰹節の製造には半年以上の期間を要します。鰹節製造者の家にはそれぞれのカビが住んでいるので、かつては製造者によって鰹節の味が違いました。現在は独自のカビを付けている製造家はほぼ残ってないそうです。

荒節

ところで、みなさんは「鰹節」というと、すでに削られた状態でパック詰めされて売られている「花かつお」を思い浮かべるのではないでしょうか。自分の家で鰹節を削っているという家庭はほとんどみられなくなりましたからね。でも実は、自分で削る鰹節と花かつおは、同じものではないってご存じですか。「えっ、同じじゃないの?」 いえいえ、両者は「似て非なるもの」と言っていいくらい、根本的に違うんです。

本節と荒節

鰹節店などで売られている一本の鰹節は「枯節」(本節、仕上げ節)ですが、市販の花かつおは「荒節」を削ったものなんです。荒節の段階で削ってパック詰めしてしまうほうが手間もコストも大幅にカットできるので、大量消費・大量生産の現在はほとんどこの荒節の削り節が花かつおとして売られているのです。花かつおの原料(荒節)はカビ付けされていないので、室町・戦国時代と同じ状態。味はワイルド、魚のにおいも強めに残っているので、パンチのきいたダシが取れます。一方、枯節で取ったダシは雑味のない上品な味ですが、花かつおのダシにすっかりなじんでいる人には薄味と感じられるかもしれません。スタジオでは久米さんと堀井さんが花かつおと枯節で取ったダシを飲み比べ。その違いを味わって驚いていた様子でした。

出汁を味わう

中野さんがおっしゃっているのは、花かつおと枯節はどちらがいいのかということではなく、それぞれの良さを生かした料理を楽しんでほしいということです。ところが今はあまりにもコスト第一主義で、効率よく収入が得られるものばかりが大量に作られるようになり、本格的な料理店でもコストがかかる枯節を使う機会はだんだん少なくなっています。使う人が少なくなれば、わざわざ時間も手間をかけて枯節を作る製造家が少なくなるのは当然です。安い削り節の原料となる大量生産型の荒節の製造家は収入が良くて、クラウンやシーマといったいいクルマに乗っているのに、2倍も3倍も手間をかけて丁寧に仕上げた枯節を作っている製造家は収入が少なく、乗っているのは軽トラック…。国産鰹節の製造家は今、深刻な後継者不足に直面しているのです。そんな状況を少しでも何とかしようと、中野さんは国産の鰹節にこだわり、一般の消費者向けに「本物のだし」の魅力を発信しています。

中野克彦さんのご感想

中野克彦さん

鰹節のいろいろな話の中から久米さんはどこを広げていくのかと思いながらずっと聞いていましたけど、やっぱりじいちゃん(伏高の創業者・高介さん)の話に興味を持ったようでしたね。話はあっちこっちへ行きながら、うまいことスパッ、スパッと進めていくものですね。久米さんはきっと頭の中にご自分の台本が入っているんでしょうね。

今日は荒節と枯節のダシを飲んで違いが分かっていただいて、大変嬉しゅうございました。ありがとうございました。

2016年11月26日(土)放送「今週のスポットライト」、ゲスト:中野克彦さんhttp://radiko.jp/share/?sid=TBS&t=20161126140000

radikoで放送をお聴きいただけます(放送後1週間まで/首都圏エリア無料)