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反トランプのウィーメンズマーチでは何が歌われたのか?

ジェーン・スー 生活は踊る

ドナルド・トランプ大統領に対する抗議デモが各地で行われています。その中でも注目を集めたのが、ワシントンDCなどで行われた女性の権利デモ「ウィーメンズマーチ」。マドンナやアリシア・キーズらが参加しました。デモの中では参加したアーティストらが様々な楽曲を披露したわけですが、実際に何を歌ったのかはあまり日本では報道されていません。音楽ジャーナリストの高橋芳朗さんが解説しました。

背活は踊る170127(高橋芳朗)

【高橋芳朗】
今週のテーマは「トランプ大統領に抗議するウィメンズ・マーチでは何が歌われたのか?」。先週末、ドナルド・トランプ大統領就任式の翌日21日に世界60ヶ国以上で女性の権利向上を訴えるデモ「ウィメンズ・マーチ」が行われました。実質「反トランプデモ」と言っていいと思うんですけどね。今日はその中心となった、50万人もの人々が集まったというアメリカの首都ワシントンD.C.のデモでミュージシャンたちがどんな歌を歌ったのか、3曲ほど紹介したいと思います。

【ジェーン・スー】
はい。

【高橋芳朗】
まずはアリシア・キーズの『Girl On Fire』を。2012年の作品です。アリシア・キーズは曲を披露する前にスピーチを行っていますが、トランプ大統領が女性に対して侮辱的な発言を繰り返したことを受けて、こんなことを主張していました。「私たちは政府の男たち、もしくはあらゆる男たちに体を所有されたり支配されたりすることを許しません。私たちの良心を踏みにじられることも許しません。すべてのアメリカ国民に最善なものを要求します。憎悪や偏見、イスラム教への規制は要りません。私たちは教育と医療、そして公平さを要求します」と。で、アリシアはこのスピーチのあとに『Girl On Fire』をパフォームしました。『Girl On Fire』の歌詞は「あのコは普通の女の子。でも燃えるような情熱を秘めている。自分の足でしっかり立って、後戻りはしない。この女の子にはそんな力がある」という女性を鼓舞する内容になっています。今回、アリシアは歌詞の「Girl on fire」の部分を集まった群衆に合わせて「These girls are on Fire」と変えて歌っていました。

M1 Girl On Fire / Alicia Keys

【高橋芳朗】
続いてはマドンナの『Express Yourself』。おなじみ、1989年の大ヒット曲です。マドンナもアリシア・キーズと同様にスピーチを行ってから曲をパフォームしたんですけども、このマドンナのスピーチが大変な物議を醸しまして。

【ジェーン・スー】
いや、でもさ……っていう感じだよね。額面通りに受け取ってあれこれ言うのは意地が悪いなとは思ったよ。

【高橋芳朗】
まあね。特に大きく取りざたされたのが「私は激怒している。ホワイトハウスを爆破したいなんて恐ろしいことも考えた。でも、そんなことをしてもなにも変わらないことを私はわかっている」という部分。「ホワイトハウスを爆破したい」っていうところだけ抽出されて「暴力を煽っている!」と批判されたわけですが、マドンナは後日Instagramでこんなふうに釈明をしています。「昨日のデモはとても美しい経験でした。私は『Express Yourself』をパフォームしましたが、私がやったことはまさに『Express Yourself』(自分を表現すること)でした。ただ、私はいくつかはっきりさせておきたいことがあります。私は決して暴力的な人間ではないし、暴力を推奨してもいません。文脈を無視してワンフレーズだけ取り出すのではなく、スピーチ全体を理解してほしい。私は比喩を用いてふたつの物事に対する見方を示しました。ひとつは希望、もうひとつは怒り。でも、怒りによる行動が何の解決にもならないことを私はよくわかっています。物事を良い方向に変えていく唯一の方法は、愛によるものです。たくさんの人々と一緒に『I choose love』と唱えられたことは、本当に光栄なことでした」

【ジェーン・スー】
はい。

【高橋芳朗】
で、いまの釈明文にも登場した『Express Yourself』ですね。どんな歌詞かというと「あなた自身を、本当の気持ちをさらけ出して。二番手に甘んじていちゃダメ。本物の愛を試してみなくちゃ」という内容になっています。表面的には恋する女の子の背中を押すような感じの歌詞なんですけど、今回のデモで歌われていることからもわかるようにフェミニズムの観点からも非常に高く評価されている曲なんですよね。時代の経過とともに『Express Yourself』というフレーズが広範な意味を持つようになってきた印象は受けます。

【ジェーン・スー】
なりましたね。

【高橋芳朗】
それから、マドンナがキャリアを通じて訴えてきたメッセージの集大成/シンボルといえるような曲になってきた気もします。さらに付け加えると、レディー・ガガの『Born This Way』なんかは曲調的にもメッセージ的にも完全に『Express Yourself』のアップデート版といえるでしょうね。後続の女性アーティストにも絶大な影響を及ぼした重要作です。

M2 Express Yourself / Madonna

【高橋芳朗】
ウィメンズ・マーチでは男性シンガーもパフォーマンスを行っているということで最後はその曲、マックスウェルの『This Woman’s Work』を。2002年の作品です。これはケイト・ブッシュの1988年のヒット曲のカバーで、ジョン・ヒューズ監督/ケビン・ベーコン主演の映画『結婚の条件』のクライマックスで非常に感動的に使われていた曲ですね。タイトルは「女性の務め」みたいな意味になると思うんですけど、これは妻/恋人の出産を見守る男性の心情をつづった曲になります。歌詞の大意はこんな感じになります。「無事に乗り越えられるように、神に祈ろう。あとはただ見守るだけ。ここからは女性の務め、女性の世界。もう男としての役目は終わった。これからは父親としての営みが始まる。君のなかには小さな生命が宿っている。君は、はかりしれない強さを秘めているんだ」

M3 This Woman’s Work / Maxwell

【高橋芳朗】
以上、ウィメンズ・マーチで歌われた曲から3曲紹介いたしました。スーさんはデモの模様を深夜にご覧になっていたそうで。

【ジェーン・スー】
なかなか考えさせられるというか……参加もしていないのに何様だって話なんだけど、「この次はどうするのか」っていう話は集まった人たちのなかで早速行われていたみたいですね。デモについてのコラムも英文のものも含めていくつか読んだりしましたけど、本当にいろいろな角度のものがあって。イギリス人の女性コラムニストは「Victimhood(被害者意識)でフェミニズムは止まってはいけない。あのマーチ自体は素晴らしいものだし自分たちの意見をきちんと表明するのは大事なことだけど、被害者というところで立ち止まってはいけない。フェミニズムとはそういうものなんじゃないか」と意見していて。あと、黒人女性のコラムニストは「ずっとアクティビストとしてやってきたけど、今回のマーチには参加しなかった。なぜなら、あなたたちは次のBlack Lives Matterには来ないでしょ?」って。

【高橋芳朗】
うーん、なるほど。

【ジェーン・スー】
結局、やっぱりいろんなレイヤーがあるんですよね。その人は「もしあなたが『怖い』と感じたのがこれが初めてなのだとしたら、それがいままであなたが持っていた特権なのだ」って。そういうものに対する人々の意識が今回はっきりしたんじゃないかな。「明日は我が身」というところもなきにしもあらずだからね。これは対岸の火事ではないからさ。どういう態度を自分が持てばいいのか、考えるきっかけにはなりましたね。

高橋芳朗のミュージックプレゼント ウィーメンズマーチで歌われた曲http://radiko.jp/share/?sid=TBS&t=20170127112159

radikoで放送をお聴きいただけます(放送後1週間まで/首都圏エリア無料)

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当ラジオ番組では「日々の生活に音楽を」をコンセプトに、音楽ジャーナリスト・高橋芳朗さんによる洋楽選曲を毎日オンエア(稀にかかる邦楽はディレクター選曲)。最新1週間のリストは以下です。

1/23(月)

(11:03) All for a Reason / Alessi
(11:43) Undercover Angel / Alan O’Day
(12:15) Let It Go / Pages
(12:24) Lie to Me / Bill LaBounty
(12:50) So Beautiful It Hurts / Rupert Holme


1/24(火)

(11:03) Hard to Handle / Otis Redding
(11:14) B-A-B-Y / Carla Thomas
(11:43) See Saw / Don Covay
(12:17) Funky Broadway / Wilson Pickett


1/25(水)

(11:03) Put On a Happy Face / Blossom Dearie
(11:43) Somebody Else Is Taking My Place / Beverly Kenney
(12:16) Let’s Live Again / Nancy Wilson


1/26(木)

(11:04) Quadras De Rodas / Ivan Lins
(11:42) A Banca do Distinto / Doris Monteiro
(12:18) Mineiro / Danilo Caymmi


1/27(金)

(11:01) Take Your Time (Do it Right)  / The S.O.S. Band
(11:14) Does It Feel Good / B.T. Express