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芥川賞作家・山下澄人さん 30年前に久米宏と富良野で肉体労働!?

久米宏 ラジオなんですけど

TBSラジオで毎週土曜日、午後1時から放送している「久米宏 ラジオなんですけど」。
スペシャルウィーク2月25日(土)のゲストコーナー「今週のスポットライト」では、小説『しんせかい』で第156回芥川賞を受賞した山下澄人(やました・すみと)さんをお迎えしました。

山下澄人さん

スタジオに表れた山下さんは受賞会見の時と同じようなラフなスタイル。久米さん曰く「大道具さんかと思った。クツなんか工事現場の人が履くような安全靴ですか?」。いえいえ、かなりオシャレなクツです。

靴

山下澄人さんは1966年、兵庫県神戸市生まれ。高校卒業後、アルバイト生活をしていた時に、たまたま間違って家に配達された新聞に入っていたチラシを見て、脚本家の倉本聰さんが始めた演劇塾「富良野塾」の塾生募集を知り応募。1985年に2期生として入り、2年間、共同生活を送りながら演劇を学びました。その後は俳優の道を歩み、1996年、東京で劇団「FICTION(フィクション)」を旗揚げ。脚本も手掛けるようになりました。

小説は山下さんの演劇を観た出版社の編集者に勧められて書き始め、2011年に作家デビュー。2012年には『ギッちょん』が第147回芥川賞候補となり、『緑のさる』で第34回野間文芸新人賞を受賞。翌2013年にも『砂漠ダンス』と『コルバトントリ』がそれぞれ第149回、第150回の芥川賞候補となり、新たな才能の登場と注目されました。そして今年(2017年)1月、4度目のノミネートで見事、芥川賞を射止めました。

『しんせかい』

『しんせかい』は、山下さんの富良野塾での生活が下敷きとなっています。富良野塾は倉本さんがシナリオライターと俳優を育てるために1984年の春に立ち上げたもの。富良野市街から20キロ離れた谷あいに住まいや稽古場などすべての建物を塾生たち自身の手で建てるところから始めて、生活費もすべて塾生たちが近くの農家に出て働いた収入を充てました。ですから昼間はひたすら建築作業と農作業。しかも山下さんが入った時はまだ2期目で塾生は総勢でも20人ほどしかいなかったので、みんな必死で作業しないと、演劇どころか、生けていけない状況。娯楽が一切ない環境で、唯一ラジオの音だけが流れていたそうです。ですから今でも山下さんは、どこからかラジオの音が聞こえてくると、辛かった当時のことがすぐに頭をよぎるそうです。同期生の中で一番、倉本さんに怒られていたそうです。

そんな黎明期の富良野塾を実は久米さんも体験していました。「ニュースステーション」が始まる半年前の1985年5月の連休中、久米さんは倉本さんを訪ねて、建設作業を手伝ったのです。倉本さんに「風呂場を作るから」と言われて、ひたすら穴を掘り続けたのだそうです。富良野の土は大きな石がゴロゴロしていて、突き刺したスコップがカチンと音を立てるたびに暗澹たる気持ちになった…。

そんな思い出を久米さんが話すと、久米さんと一緒にその穴を掘っていたのはなんと山下さん自身だったというではありませんか! そんな偶然に久米さんはびっくり。山下さんのほうは鮮明に覚えていて、「久米さんと一緒に穴を掘った」と時々、自慢していたそうです。そこから2人の脳内は一気に32年前の富良野にタイムスリップ。当時、山下さんは19歳、久米さんが40歳。5月の富良野はひどく暑くて穴掘りはかなり身体にこたえたこと、ヘトヘトになって夜の演劇の講義は気絶するように眠ってしまったこと、富良野の夜はまるで星が降るようだったこと…。そんなことを話しているうちに、完全に記憶にないはずのことまで一気に蘇ってきたと久米さんは言います。並んで穴を掘っている2人の姿を高い空から鳥が見ている風景まで思い出したような気がすると言う久米さんに、「そういうものだと思います」と山下さん。

スタジオ風景

「小説に書かれているのは事実なんですか?」と聞かれるけれど、事実ではない。でもウソでもない。人の記憶も同じで、その記憶が本当かウソかと問うこと自体、成立しない。ただ、そう憶えているだけ。すごくあやふや。でもそれでいてすごく確かな実感がある。だからその記憶が事実かウソかなんてどちらでもいい。それより、あやふやでありながら身体の感覚まで伴うような実感を持つ記憶のほうが面白い――。そんな感覚が山下さんの中に確かにあるようです。
ちなみに、久米さんが「富良野塾の塾生たちの風呂場になる」と思って掘った穴ですが、山下さんによれば、本当は「便槽(べんそう)」だったそうです!

山下澄人さんのご感想

山下澄人さん

なかなか感慨深いですね。本当に、富良野に行って僕が初めて見た有名人が久米さんでしたから。当時、久米さんはいろいろしゃべってくれたと思いますけど、僕はすごく緊張して作業をしたことを憶えています。そういう方とこうしてしゃべることができるんですからねえ、芥川賞ってすごいなと思います(笑)。ありがとうございました。

2016年2月25日(土)放送「今週のスポットライト」、ゲスト:山下澄人さんhttp://radiko.jp/share/?sid=TBS&t=20170225140000

radikoで放送をお聴きいただけます(放送後1週間まで/首都圏エリア無料)