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ハンセン病にかかった人の家族たちの被害を伝える▼人権TODAY(3月4日放送分)

人権TODAY

毎週土曜日「堀尾正明+PLUS!」内で8:15頃に放送している「人権トゥデイ」。様々な人権をめぐるホットな話題をお伝えしています。

今回のテーマは・・・『ハンセン病にかかった家族たちが受けた被害』についてです。

「ハンセン病家族たちの物語」(黒坂愛衣著、世織書房)という2年前に出版された本があります。いままでほとんど語られることのなかった、ハンセン病にかかった人の家族たちの物語です。

1996年に、ハンセン病にかかった人を強制的に隔離することを定めた「らい予防法」が廃止されました。そして、隔離を定めた法律のために、治っても、療養所の中でずっと暮らしてきたハンセン病回復者の方たちが「国の強制隔離政策は間違っていた」として謝罪や損害賠償を求めて裁判を起こし、2001年、熊本地裁で勝訴、国と和解が成立しました。しかし、そこには回復者の家族の姿はほとんどありませんでした。

差別や偏見のため、自分にハンセン病にかかった家族がいることを知られたくないので、公にしない、公の場にでない方も多いですし、国からも和解協議などでは、「回復者の話を聞くと、家族から見捨てられた、という。家族が加害者のように見える」という発言も出ていました。

そんななか、この本の著者、東北学院大学准教授の黒坂愛衣さんはハンセン病問題を歴史的に検証する作業の一環で、家族からの聞き取り調査を2004年から始め、10年かけて「ハンセン病家族たちの物語」を完成させました。

黒坂さんの話を聞く講座を先月、「ハンセン病首都圏市民の会」が東京の療養所、多磨全生園で開いたので、崎山記者が取材しました。

黒坂さんによると、一番初めは、熊本の療養所で話を聞いたのですが、当時療養所の入所者は700人。でも、その家族だと名乗って、聞き取りに応じてくれたのは5人でした。

その中で、この本にもおさめられている、匿名のKさんという女性。父親がハンセン病で療養所に入り、母親は離婚、Kさんは親戚に預けられました。Kさんに初めて話を聞いたときの様子について、黒坂さんは「私たちの質問を待たずに一気呵成に、自分がどんな目にあってきたのか、ということをぶつけるように、吐き出すように。自分は親戚をたらいまわしにされた。行く先々で冷たかった。あんたが使った箸は汚いから捨てたとか、あんたが来るのはいやだったとか、そういう扱いをされていた。でも、自分はなんでそうされるのかわからなかった。自分の父親がそういう病気だということを聞かされないまま育ったんだと。自分が話してこれなかった、苦しい思いみたいなものをほんとに爆発させるように語ってくれました」と話します。

「ハンセン病家族たちの物語」には、Kさんも含め、12ケースの家族の話がおさめられています。講座では他の家族の話もいくつか紹介しましたが、それはこの本を読んでもらうとして、黒坂さんは「隔離で肉親と引き離されただけでなく、周りにハンセン病の肉親がいることを隠す、人に言えないという苦しみ。また、肉親には差別されることの苦しさをぶつけることでしか関係を築けない。あるいは差別や偏見から身を守るため、肉親との関係を絶つ。家族関係が破壊されてしまったのです」と話します。

そして、最後に「この本で言いたかったことはほんとにシンプルなことです。家族も被害の当事者だと。ハンセン病の政策の中で、隔離があった。隔離されたご本人たちだけじゃなくて、残された、私が聞いたのはお子さんの時だった方ですが、子供にとっても大変なつらいことだった」とまとめました。

この本が大きなきっかけになって、らい予防法廃止から20年もたった去年の2月と3月に、合わせて568名のハンセン病家族が国に謝罪や損害賠償を求めて熊本地裁に提訴し、裁判は続いています。ただ、差別や偏見が根強くあるため、多くの方は匿名ですし、提訴したのは氷山の一角で、提訴をあきらめた方も大勢います。

講座には、一人の原告の方が来ていました。その方は、「原告になりまして、懇親会とか出席しました。私が受けたみたいな、いじめで情けないこととか、いっぱいお話を伺っています。ぜひ、子どもの時に受けた悔しい思いを国が間違った方法でやってきたわけですから、謝っていただけたら嬉しいな」とあいさつをしました。

また、ハンセン病首都圏市民の会事務局の酒井義一さんは、講座の始まる前に、「いままで私たちがきちんと聞いてこなかった家族の方々が叫びをあげ、祈りをあげている動きです。この訴訟によって問われているのはもちろん国家ですけれども、長いことそのことに耳を傾けなかった、私たち市民の今後の歩みが問われているのではないかと受け止めています」と話しています。

「ハンセン病問題」はまだ終わっていません。ハンセン病回復者にとっても、家族にとっても様々な課題が残っています。

16797267_1674979066135703_2614293254558949341_o 「ハンセン病家族たちの物語」の著者、黒坂愛衣さん。