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アルコール依存対策が変わる!「断つ」から「減らす」へ

森本毅郎 スタンバイ!

お酒がやめられない、アルコール依存症対策に変化が起きています。今月、アルコール依存症の、専門施設では、新しく「減酒外来」が始められました。新しい対策に合わせた薬など、どう変わるのか?4月24日(月)の松井宏夫の「日本全国8時です」(TBSラジオ、月曜あさ8時~)で解説しました。

★女性・高齢者で増加傾向

まず、アルコール依存症の現状について、おさらいしておきます。 アルコール依存症の患者は、日本でおよそ100万人と言われています。最近は、お酒をほとんど飲まないか飲めない人が増えています。1年以上前にお酒をやめた人を含め、飲まない人は、20歳以上の半数近くに上ります。

ただお酒の飲み方は二極化していて、飲まない人がいる一方で、飲む人のお酒の量は、増加傾向にあることが、東京都の調査でも明らかになっています。今月発表されたもので、飲む人の飲酒量は、日本酒にして1合以上と答えた人が、74%で、前回の68%より6%増えています。また、依存症は、女性や高齢者で増加傾向にあります。

★低い受診率

アルコール依存症というと、意志が弱いだらしない人、と思う人も多いかもしれませんが、それは違います。アルコールに限らず、依存症は脳の病気で、自律神経や精神に影響が出て、意志の力では、コントロールできなくなる「疾患」です。

にも関わらず、およそ100万人の患者さんのうち、実際に治療を受けているのは、4%ほど・・・この受診率の低さは、問題です。

★減酒外来はじまる

そうした中、日本で唯一、アルコール関連問題の施設と指定されている、国立病院機構久里浜医療センターが今月から、お酒を減らす、「減酒外来」を開始しました。

日本のアルコール依存症の治療は、これまで、お酒を完全に断つ、「断酒」1本でした。世界的には、断酒はアメリカの治療方針で、減酒はヨーロッパの方針です。・

断酒だと、例えば、患者さんが「辞めるなんてできないよ」と泣き言を言っても、「それではダメ。治療にはなりません」と言われてしまいます。患者さんとしては、治療を受けることで、「酒をやめさせられる」ことを嫌がったり、周りから「アル中と言われやしないか」という意識が働いたりします。そんな意識が、診療をますます遠ざけてしまう、という背景がありました。

久里浜医療センターには重症の患者さんがほとんどです。そんな重症の患者さんでなくとも、アルコール依存症に分類される人は、たくさんいます。

減酒外来はお酒を断つ、ではなく、減らすというように間口を広げることで、いまはまだ自覚が無い人や、予備軍の人にも、扉を開いた施設になるそうです。

★付き合い方をアドバイス

では実際、減酒外来では、どんなことをするのか?アルコール依存の度合いや体調を調べる検査を行った後、医療スタッフが「どんな飲み方にしたいか?」など問診をします。
例えば、お酒はやめたくないが量を減らしたい。週に2回は休肝日を作り、飲む日も2合までにしたい、と患者が目標とする アルコールとの付きあい方をチェックします。

そのあと、アルコール治療専門の医師が、患者さんのアルコール依存がどんなレベルか踏まえ、アドバイスをしていきます。また、次の診察のときに、患者さんに書いてもらった飲酒日記を使って、1日ごとの飲酒量や回数を振り返り、飲酒の習慣や方法について、話し合います。

★薬も柔軟に

柔軟路線は、使う薬でも起きています。日本でこれまで使われてきた薬は、「抗酒薬」と呼ばれる薬です。抗酒薬を服用中に、もしお酒を飲むと嘔吐、頭痛、動悸などの反応が出て、気持ちが悪くなります。その気持ち悪さで、お酒を断とう、という狙いの薬です。そうなると、お酒をコントロールできない患者さんは、気持ちが悪くなるので、薬を飲まなくなります。

★飲んでも気持ち悪くならない

そこで、お酒を飲んでも気持ち悪くならない、薬が導入されています。薬の名前は「アカンプロサート」といって、日本では、2013年から使用が可能に。ヨーロッパでは30年ほど前から使われている薬です。

これは、脳に作用して「飲みたい気持ち」そのものを減らす薬です。これまでの、抗酒薬のように、もしお酒を飲んだとしても、脈が速くなるなどの反応を引き起こさないため、高齢者でも使えるという特徴があります。

また、「アカンプロサート」は、抗酒薬との併用も可能と言われています。ただ、アカンプロサートにも、おなかをくだすなど副作用はありますので、病院で診察・処方を受ける必要があります。

★減酒がうまくいくかどうかはこれから?

減酒でアルコール依存症が改善することはヨーロッパの研究で分かっています。このように患者さんの治療の壁を低くすることで、受診する患者さんは増えると思われます。増えることは朗報で、どれだけうまくいくかは日本初なので、これからです。

ただ、減酒をして駄目だったならば、次に断酒で行います。このように治療に2段階あるのも患者さんには選択肢が増えて、良いことだと思います。また研究としても、このタイプの人は減酒で成功する、このタイプは断酒じゃないと無理と言うことも分かってくると思います。

国はアルコール依存症対策に取り組み、「アルコール健康障害対策推進基本計画」を推進しており、それに基づいてアルコールの拠点病院を各都道府県に置くようにします。減酒外来が上手くいくと、その拠点病院を指導するのが久里浜医療センターなので、それらの病院にも指導することになり、広がりを見せることになります。

全国の中では2015年から鳥取県が最も早く取り組み、拠点病院も決めました。そして、治療のみならず、さまざまなアルコール問題にかかわる啓発活動も行っています。これによってアルコール依存による健康問題の他、家庭問題なども改善へと向かうのでは。

 

日本全国8時です(松井宏夫)

解説:医学ジャーナリスト松井宏夫

 

松井宏夫の日本全国8時です(リンクは1週間のみ有効)http://radiko.jp/share/?sid=TBS&t=20170424080000

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