お使いのOS・ブラウザでは、本サイトを適切に閲覧できない可能性があります。最新のブラウザをご利用ください。

放送中

放送中


  • 放送ログ
  • 音声あり

分かり合えないことが前提だ ジャーナリスト・武田徹さん

久米宏 ラジオなんですけど

TBSラジオで毎週土曜日、午後1時から放送している「久米宏 ラジオなんですけど」。
5月20日(土)放送のゲストコーナー「今週のスポットライト」では、ジャーナリストで専修大学教授の武田徹さんをお迎えしました。

武田徹さん

武田さんは1958年、東京都生まれ。国際基督教大学大学院に在学中から『週刊文春』などで評論や書評を書き、ライターやジャーナリストとしての活動はもう30年。その一方で、2007年から恵泉女学園大学の教授になり、メディア論などを教えてきました。ジャーナリズムとアカデミズムの両方を知っている方です。原発報道、ネット社会など、幅広いテーマを論評しますが、一貫しているのは、「言論」や「ことばと社会」についての問題意識。2016年後半から2017年前半にかけて、『日本語とジャーナリズム』、『日本ノンフィクション史』といった本を相次いで出版しています。

日本ノンフィクション史

ストレートニュースで事件や事故を伝えるときには、短い時間の中で最小限の事実を伝えることになります。でもそれだけではどうしても分からないことがたくさんあります。そこでもっと長い時間の中で事件の背景や人間関係を伝える「長尺のジャーナリズム」も必要で、それが本やノンフィクションだと武田さんは言います。ノンフィクションは短いニュースだけでは分からない事件の全体像を浮かび上がらせる役割を担っているのです。

スタジオ風景

武田さんは、日本のノンフィクションはドラマ性が強く、人を感動させることが求められているところが特徴だと言います。これまでの「大宅壮一賞」の受賞作品を見れば、その傾向は明らかです。でもノンフィクションには、後世の歴史学者や社会学者が参照可能な資料としての役割、つまり社会科学性も求められるはずだと武田さんは考えます。今すぐに多くの読者には読まれなくても、将来、アカデミズムとしての受け皿となるような「アカデミック・ジャーナリズム」というのもありうるのではないか、というのが武田さんの提案です。

物語性と社会科学性。相反する要素が織りなす「稜線(りょうせん)」の上を絶妙のバランスを保って歩いていくのがジャーナリズムであり、ジャーナリスト。その代表はやはり大宅壮一でしょう。キャッチフレーズを作って人の心をつかむのがうまい。でも俗情に流されず、自分の言いたいことは言う。長いものには巻かれない。大宅は稀有な存在です。今はそういうジャーナリズムの在り方が難しくなっている面はあるでしょう。こうしたことは書き手の問題というだけでなく、日本語の特性、言葉のシステムの問題として考えないと、日本の戦後ジャーナリズムは分からないところがあるのではないかと武田さんは考えています。

スタジオ風景

かつてニュースの伝え手として日本語と格闘してきた久米さんは、言葉は相手に伝わらないことがあるということを痛いほど感じている、と言います。そのことについて武田さんは、コミュニケーションは「誤解」からしか始まらないと言い切ります。分かり合えるというのは幻想だと。自分の言葉が相手にどう受け取られるかは偶然任せであって、分かり合えないことが前提。もしひとつの言葉が分かり合えたら、それはとても貴重な経験。そのうえで人間関係を積み上げていくことが大事。ニュースやインターネットの情報、ノンフィクションを読むときにもそういう姿勢が必要なんですね。

武田徹さんのご感想

武田徹さん

予想していたのとはだいぶ違う話になりましたけど、思っていたこと、感じていたことを言わせていただきました。

久米さんは大宅壮一に会ったことがあるということでしたから、その話も聞きたかったですね。久米さんの世代だと大宅壮一や清水幾太郎はオンタイムで読んでいたと思います。僕はそこからひと回りした世代。大宅も清水もすでに過去の人になっていましたけど、逆にそれで客観的に彼らを見ることができて、やっぱり学ぶものが多かったです。梶山季之もそうです。あれだけのものを書けるのはすごい「日本語使い」だったと思います。俗に流されず、でも人気もあって、それが両立し得るんですね。そういうことがマスコミの役割としてあったと思いますし、きっと影響力も持ち得たんじゃないかと思います。だから今、マスコミはやるべきことをやれているか、本当に考えないとけないでしょうね。


2017年5月20日(土)放送「今週のスポットライト」、ゲスト:武田徹さんhttp://radiko.jp/share/?sid=TBS&t=20170520140000

radikoで放送をお聴きいただけます(放送後1週間まで/首都圏エリア無料)