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【映画評書き起こし】宇多丸、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー Vol.2(原題)』を語る!(2017.5.27放送)

ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル

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■番組オープニングパート

宇多丸:

(オープニングトークのあと)……ということでね、ここで曲をお聞きいただきたいと思います。

先ほど、最初の生鳴きでも言いましたけども。今夜のムービーウォッチメンは『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』。私、もう一作目で大騒ぎをしましたよね。一作目はムービーウォッチメンが当たる前から、試写を見た時点でもう、やいのやいの大騒ぎをしておりましたが。本日はそれの、満を持しての『Vol.2』。そしてこれをなぜね、日本語タイトルではなく、『Vol.2』と言い張っているのかという件。この話をどこに入れ込むのか? あと、この話をするのかしないのか?って思ったけど、ちょっと記録の意味でも、映画評の中にさ、「この時、邦題はこうで、その時にリアルタイムの観客がどう思っていたのか?」ってさ、記録に残しておく意味でも、やっぱり評の中に入れておこうとか、そんな話もするため、非常に尺が長くなりやすい。

で、前回の一作目の評でも、「曲はこんな曲が流れるんですよ」なんつってね、オープニングのところの説明なんてしましたけど、そんなことをしている時間がちょっと今回ないので。なので、ここで曲を聴いて頂こうと思います。やっぱり『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』といえば、スペースオペラにもかかわらず、「タランティーノ的な」と言っていいでしょうけど、既存のポップミュージックの楽曲が――もちろんでも、劇中でなぜそれが使われるのか、意味があるわけですけど――使われる。で、特に今回の『Vol.2』は、非常にその歌詞とのリンクが……一作目でももちろんありましたけど、よりストーリーと密接なリンクをしている、というあたりが特徴でして。

先日、音楽ジャーナリストの高橋芳朗くん。『(ジェーン・スー)生活は踊る』の方で『Mr. Blue Sky』という曲の解説をされていたと思いますね。オープニングでかかる曲。これが最高なんですよ。またね。歌詞がわかるとより……っていうね。

これ、でも後に起こることを知った2度目以降ですよね、これがグッと来るのはね。そんな『Mr. Blue Sky』の解説を、高橋芳朗くんがしていました。けれども、ここではもう1曲。劇中の中で非常に印象的な使われ方をする曲を、先にサントラよりかけたいと思います。タイトルを先に言っておきますね。ジョージ・ハリスン「My Sweet Lord」という曲です。今回は主人公のピーター・クイルという男。半分地球人で……お母さんが地球人で、一作目でお父さんが実は宇宙人らしいと(いうことが明かされる)。しかも、「相当な血筋の宇宙人があなたのお父さんよ」なんてことを言われて終わっていましたね。で、その相当な血筋のお父さんを演じているのが、カート・ラッセルというね。後ほど言いますけどね、「人好きのするクソ野郎」を演じさせたら絶品の(笑)カート・ラッセルが、そのお父さん。

しかも、お父さんの名前が意味深というか、ある意味モロなんですけど、「エゴ」という名前なんですね。で、そのお父さんと出会って。そのお父さんのエゴ、宇宙人というか「天上人」というね。宇宙人というか、宇宙の中の存在でも、結構キている存在というかね。根源的な存在というか、神様なんですね。で、そのお父さんの星っていうのが……だんだんと、その星っていうの自体がお父さんなんだというね。これは(ベースになっている)コミックの方でも本当に、「Planet Ego(惑星エゴ)」というキャラクターなんですけども。

で、そのお父さんの星に行く。で、お父さんの星を見物しながら……要するに、ずっと生き別れていたお父さんと主人公が再会した場面で流れるのが、このジョージ・ハリスンの「My Sweet Lord」。そして後半で、クライマックスでまあ、とあることが起こって、わちゃわちゃわちゃ、ドカンドカンドカーン!(笑)となって戦うという、主人公がやむなく戦いをするという、そこでももう1回この曲が流れるんです(宇多丸註:これ、後半でもう1回流れるのは、評本編でも言及しているフリートウッド・マックの『The Chain』と混同してしまったかもしれません。数日中にもっかい劇場で見直す時間があったら自分でもちゃんと確認しますが、たぶんホントに間違ってるので、先に訂正してお詫びしておきます!)。非常にだから、重要な意味を持つ曲でございます。「My Sweet Lord」。この「Lord」というのは、要は「主よ」ということです。神様。この場合、ジョージ・ハリスンは、この頃にキリスト教じゃなくてクリシュナ教、いわゆる東洋思想に傾倒していた頃で。1970年の曲ですから。まあ、クリシュナの神のことを「My Sweet Lord」って讃えている曲なんですね。

「神よ、会いたかった、会いたかった」ということを歌詞で言う。つまり、主人公ピーター・クイルにとっては、その神にも等しい存在であるお父さんに「会いたかった、会いたかった」と。一方で、ピーター・クイルは別名スター・ロード(Star-Lord)ですから。だから、「ロード、会いたかった、会いたかった」っていうのは同時に、お父さん側からの「息子よ、会いたかった、会いたかった」という、そういうメッセージでもあるという。両面の意味が……だから、よくこれをピックアップしたなというあたりね。こういう選曲の妙がさすが監督ジェームズ・ガン、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』の質をどんどん上げているひとつの要因でございます。ということで、劇中で非常に印象的に使われる曲でございます。1970年リリースの曲です。ジョージ・ハリスンで「My Sweet Lord」。

(ジョージ・ハリスン「My Sweet Lord」がかかる)

……はい。ということでね、なんて言うのかな? エゴの星の景色は当然CGで描かれているんですけども。すっごい、ものすごい手間がかかった……CG映画史上、めちゃめちゃ、層がものすごいあって、いちばん手間がかかった光景ということらしいんですけど。エゴという星の、すごくきれいなんだけど……色合いが非常にカラフルなのが『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』の売りなんで、ちょっとサイケデリックな匂いもしますんで、この曲がすごく合っていますし。で、やっぱりクライマックスでね、非常に胸が痛むような戦いなんですけども、やっぱりこの曲が流れて……というあたり(※訂正は前述の通り)。

やっぱりバックで流れるポップミュージックが、ただの雰囲気じゃなくて、意味的にも、そしてまあいわゆる異化効果といいますか、その落差でもちょっとグッと来させるというあたり。まさに『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』の十八番というか。その後、様々なエンターテイメント作品でこぞって若干真似する潮流もできたというあたり。そのあたり、映画評の中で振れてみたいと思います。後ほどムービーウォッチメン、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー Vol.2』評をお楽しみください。お聞きいただいた曲はジョージ・ハリスンで「My Sweet Lord」でございました。

■「ムービーウォッチメン」本編

宇多丸:
さて、ここから11時までは、劇場で公開されている最新映画を映画ウォッチ超人こと<シネマンディアス宇多丸>が毎週自腹でウキウキウォッチング。その<監視結果>を報告するという映画評論コーナーです。今週扱う映画は先週、「ムービーガチャマシン」(ガチャガチャ)を回して決まったこの映画……一応言っておきます。邦題『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス』こと、『ガーディアンズ・オブ・ザ・ギャラクシー Vol.2』

(Electric Light Orchestra『Mr. Blue Sky』が流れる)

はい。これね、エレクトリック・ライト・オーケストラの『Mr. Blue Sky』。以前ね、『(ジェーン・スー)生活は踊る』で高橋芳朗さんが「この曲の歌詞と、後々わかってくるストーリーにリンクする意味があって。これがわかって見ると、さらに感動的」なんてことをおっしゃっていました。こちらオープニングのアクションシーンでかかる曲でございます。ということで、個性も境遇もバラバラのおたずね者たちが成り行きでチームを結成し、銀河の危機を救う傑作SFアクション、スペースオペラ、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』の第二作。スター・ロードを名乗るピーター・クイルの前に突如、父を名乗る男エゴが現れる。しかし、実はエゴには秘められた大きな秘密があった。出演は前作に続きクリス・プラット、ゾーイ・サルダナ、デイヴ・バウティスタらの他、カート・ラッセル、シルベスター・スタローンも参戦。監督・脚本は前作に引き続きジェームズ・ガンということでございます。

はい。ということで、みんな大好き『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』でございますので、リスナーのみなさま、宇宙の端々から<ウォッチメン>のからの監視報告(感想)をメールなどでいただいております。ありがとうございます。メールの量は、多い! 今年最多。日本での興行収入がいきなりトップみたいな感じじゃないのがちょっと苦々しく思っておりましたが、やっぱり好きな人はいるというね。ありがとうございます。メールの量は多い。今年最多。賛否の比率は「賛」が8割。普通、もしくは否定的な感想が2割といったところでございます。

「笑って泣けて興奮する今年ナンバーワン映画」「前作同様、もしくは前作以上の大大傑作」「キャラクターの深みが増し、家族とは何か? を問うテーマもいい」など絶賛の声が並ぶ。また「これは現代の『スター・ウォーズ』だ」という声や……これは私、一作目の時点でね、これはちゃんと理由があって言っているんですけど。そう言ったりしました。あと、IMAX3D、4DX版への高評価も目立った。逆に否定派の意見としては「悪くはないが一作目より冗長でテンポが悪い」「主人公たちの自業自得では? と思い、乗れなかった」。まあ、一作目もそうなんですけどね(笑)。オーブを勝手に盗んでっていうね。「正直、騒がれすぎ」などの声もありました。

ということで、代表的なところをご紹介いたしましょう。ラジオネーム「まなとんパパ」さん。「はじめて投稿いたします。マズい。マズいです。公開初日に鑑賞してからというもの、彼らのことが頭から離れません。結論から言いますと、全てにおいて最高です。一作目同様、鮮やかな色彩の絵作りと音楽との見事な融合がもたらすエンターテイメント映画としてのレベルの高さは言わずもがな。今作で特筆すべきは各キャラクターを1人たりとも雑に扱うことなく、シンプルでありながら丁寧に心の変遷を描き切り、一作目で構築した各キャラクターにさらなる深みをもたせるだけでなく、シリーズ全体を通したレベルのさらなる底上げを成し遂げているところです。

宇多丸師匠の機嫌を損ねてしまうことを恐れずに言えば、私の中ではその時点で『スター・ウォーズ』サーガを超えてしまっているのです。それぞれのキャラクターの物語にこれほど泣かされるとは。私はまだ3回しか見ておりませんが、最低でもあと5回は足を運ぶつもりでおります。みんなにすすめたい、至高の一作です」ということでございます。もちろん、『スター・ウォーズ』シリーズとの比較というか。まあ一作目の時点で私は「これは『スター・ウォーズ』一作目が出てきた時のパラダイムシフト……とまでは言わないが、でもそれに近いものを感じる」みたいなことを言いましたけども。で、今回さらに、『スター・ウォーズ』サーガへのひとつの『ガーディアンズ』からの回答めいた展開もあるのでね。そのあたりも評の中で触れることができるかどうか。

一方、こんな方もいらっしゃいました。「クラウドマンティス」さん。あ、いまうしろでかかっているね。エンドクレジットの最後で流れる『Guardians Inferno』っていう。こちらは新しいオリジナル曲というかね。『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』用に作った、『スター・ウォーズ』の(テーマ曲の)ディスコ版とかが当時あったんですけど、その感じ。ディスコ用に作り直した超かっこ悪い……(笑)せっかくのいいテーマ曲が台無しになる、超かっこ悪いディスコみたいなのを、現代版で作っているというね。劇中、名前が出るあの人もセリフを加えているというあたりね……あ、失礼いたしました。「クラウドマンティス」さんのメールでございます。期待はずれと言った方。「『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシーVol.2』、2回見ましたがはっきり言って期待はずれでした。IMAX3Dや4DXは大迫力でしたが、前作の良かった点が後退してしまった印象です。

前作はMCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)抜きにSF的なセンス・オブ・ワンダーとスケールが大きく、明快な冒険活劇が融合した傑作でした。今作はその明快さがなくなり、またスター・ロードの個人的な問題に焦点が偏っているため、感傷的なやり取りが多く退屈です。特にエゴの惑星に着いてからはテンポが冗長で間延びした印象でした。悪役も前作のサノス、ロナンのような絶対悪としての存在感がなくなり、スケール感が小ぢんまりしてしまいました。巨悪を倒すカタルシスがなかったのも大きなマイナス点です。キャラ個々の人間ドラマを掘り下げる方向にしたのでしょうが、一本の娯楽作としての完成度は大幅に下がってしまったと思います。あと、楽曲も前作と比べるとインパクトが薄い曲ばかりになってしまい、残念です」。ちょっと渋めではありますよね、今回、(楽曲の)チョイスがね。ということでございます。みなさん、メールありがとうございました。

ということで『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシーVol.2』、私もですね、スタイリストの伊賀大介さんがおみやげでくれた『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシーVol.2』Tシャツを着て臨んでいきたいと思います。まず私、実は試写で2D字幕。その後にTOHOシネマズ錦糸町で2D吹き替え。そしてT・ジョイPRINCE品川でIMAX字幕3D。3種類で見てまいりました。どの回も正直もうちょっとお客が入っていてもいいんじゃないか? という感じではありましたけどね。はい。まずちょっとね、先に僕、この3つの形態で見てきたんですけど……4DXは僕、眼鏡がズレちゃって上手く見れないので、すいません、ちょっと見れないんだけど……IMAX3D版が最高に素晴らしかった件。とにかくですね、IMAXがベスト、特に3D映画の場合はIMAXがベスト、というのはいつも言っていることですけども。

今回の『ガーディアンズ』二作目に関してはですね、本当にIMAX3Dだと、評価が5割増しする勢いだと僕、思います。もともと一作目からとにかくカラフルで、目に楽しいビジュアルっていうのがトレードマークの作品ではありますが、そのメガヒットを受けて、バジェットが大幅アップ。まあ、2億ドルですね。前回がたぶん1.7億ドルという感じだと思いますけども、2億ドル。で、長編映画ではじめて解像度8Kデジタルカメラを導入して、っていうことらしいんですね。はじめてのテクノロジーまで持ち込んでということで、とにかくきらびやかさ、色鮮やかさが増したこの二作目。もうオープニングシーンから「うわっ、きれいだな!」というこの作品の真価を100%堪能する意味でも、「これはぜひIMAX3Dで!」と言いたい。

特にですね、その大がかりなシーンで「うわーっ、きれいだ! 大がかりだ! ゴージャスだ!」っていうのもあるんだけど、そうじゃなくてもたとえば、室内でのちょっとした会話シーンとかでも、これは監督のジェームズ・ガンが明らかに意識して作っているんだと思うんですけど、ちゃんと3Dが活きるような、奥行きを利用した演出の見せ方。たとえばちょっとピント送りで、奥の人の表情をフワッと見せるとかですね。とにかく奥行きを使った表現みたいなのが、普通の会話シーン、室内とかのちょっと狭めのシーンとかでも多用されている事もあって。要は、大半の3D仕様の映画が、途中からもう目が慣れちゃって、別にどんなスペクタクルシーンを見せられても3Dかどうかどうでもよくなってきがちだと思うんです。正直、大抵の3D映画は。それはIMAXで見ていてさえそうなんですけど……なのとは違って、ちゃんとほぼ全編、3Dならではの楽しさが味わえるような作りにもともとなっている作品だと思うんですね。

ということで、まあ吹き替え版も引き続き非常にノーストレスで見られるクオリティーで、本当によかったです。あと、ある一点。これ終わりの部分でいいますけど、ある一点において、やっぱり吹き替え版だとガン上がりするところがあるんですけど。とにかくIMAX3D、他のバージョンで見た方も一度IMAX3Dでウォッチしていただきたいと思います。ということで、改めまして……「みんな大好き」と、もう言い切っちゃっていいぐらいの存在になったと言っていいでしょう、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』。2014年最大の世界的メガヒットにして……ただし残念ながら「日本は除く」といったことかもしれませんが……いまや誇張抜きで、マーベル・シネマティック・ユニバースの中でも、頭ひとつ出た人気を誇るフランチャイズですよね。もう完全に。

というだけではなく、大きく言えば僕はもう本当に、21世紀のポップカルチャー史に燦然と輝く、新たなクラシックとなったと言っても過言じゃないと思います。『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』。それぐらい多くの人に、キャラクター込みで、この言葉がいちばん相応しいと思いますが、本当に「愛されている」。もう愛されている作品ですね。はい。で、当コーナーでは一作目を2014年10月14日に取り上げて、当然のようにその年度のシネマランキングで堂々の1位とさせていただきましたという。で、まあまさにその、全世界待望の二作目ということなんですけども。

ということで、いまはもう、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』は、世界的に……まあ、日本ではちょっとまた事情が違って残念なんですけども、世界的にはもう待望の、みんなが待っていた、ある意味『スター・ウォーズ』とかより楽しみにしている人は多いかもしれないぐらいの、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』の二作目ということで。ここまで来ると、いまとなってはちょっと、下手をするとすでになかなか思い出しづらくなっている感覚というのを、ここで改めて確認しておきたいんですけど。一作目、要はいろんな意味で、型破りだったという。それまではなかなか無いタイプの作品だったということね。これ、もうちょっと思い出しづらくなっているかもしれないけど。

まずガーディアンズというチーム自体が、マーベルのコミック世界の中でもむちゃくちゃマイナーなチームだったし。それを映像化する監督も、ジェームズ・ガンという、まあはっきりB級カルトな作り手ですよね、どっちかって言うと。だし、そして主要キャラにも……まあ、ゾーイ・サルダナはそれなりにヒロイン役ではいろいろと出ていましたけど、主要キャラに決定的なスターはいない。まあクリス・プラットなんかはね、この『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』まではもう、はっきりただの脇役キャラですね。『her/世界でひとつの彼女』の主人公の同僚役とかさ、全くみんな覚えてないでしょ?(笑)。という感じで。

ということで、一見冒険的なキャスティングというか、大抜擢。でも、実はそれなりに筋が通っていて、後から振り返ってみると完全に適材適所ではある人材の大抜擢っていうのは、特にマーベルの映画、『アイアンマン』以降はですね、それで成功してきたというところはありますけども。それにしたって、いくらなんでも……まあ、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』なんか誰も知らないし、出ている人もそんなに知られている人じゃないし、監督もそんなマイナー監督だしというので、公開前には結構、向こうのアメリカのマスコミとかでは、「マーベル初の大失敗作品になるんじゃないか?」みたいな意地悪な見方も結構あったようなんですけどね。

で、冒険的なのは、作品自体の作りもそうなんですね。キャスティングとかそれだけじゃなくて。まずなにしろ、さっきも言ったように、とにかくビジュアルとかデザインが、カラフルでポップっていうことですね。たとえば宇宙船のデザインとか、あるいは色のつけ方とかひとつを取ってもですね、要は『2001年宇宙の旅』『スター・ウォーズ』以降、もうずーっと主流だったモノトーン基本……まあ「リアル志向」っていうことですよね。それと180度異なる……なんなら、その『スター・ウォーズ』がSF映画っていうのを、まあスペースオペラにもかかわらず、ちょっとリアルな感じの宇宙船の雰囲気とか見せ方みたいなのをして以降、みんなそれに倣っちゃっているわけですね。リアル志向みたいな。

なんだけど、その(『スター・ウォーズ』のデザインセンスが圧倒的な標準となる)前にはあった可能性……たとえば、クリス・フォスなどのSFアートの世界に先祖返りしたかのような、それこそ、『ホドロフスキーのDUNE』が本当に映像化していたらこういう感じだったのかもしれないというような絵面、クリス・フォスとかのSFアートに先祖返りしたような……そしてクリス・フォスを実際に呼んできているわけですから、一作目の『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』は。で、そこにでも、現代的「リアル」のバランスもちゃんと、映像として、バランスとしては周到に組み込んだような……で、結果として、非常にフレッシュな、映画の中でこれは見たことがないという、非常にカラフルでキャッチーでポップで、昔のSFアートみたいだけど、でも古臭くダサくない、みたいな。非常にフレッシュな形、色使い。これ、宇宙船の形を1個取ったってそうだし。

画だけじゃなく、ストーリーやキャラクターも、それまで何かと言うとまあ「ダーク」「シリアス」「リアル」に走りがちだったアメコミヒーローとかSF物……つまり、「それが“現代的”なんだ。ダークでシリアスなのが、現代的で大人向けなんだ」という思い込みから多くの作り手が逃げられずにいたようなところに、またやっぱりそれとは180度違う……これもだから『スター・ウォーズ』的なところなんですね。『スター・ウォーズ』一作目が登場した時に近いです。「古くて新しい」、カラッと楽しめる、荒唐無稽上等なスペースオペラ、ということですよね……に、転じてみせた。で、これぞ当時、誰もが驚いたコロンブスの卵的な発明として、スペースオペラに、タランティーノ的な既存のポップナンバー使いっていうのを大フィーチャーする。ねえ。これ、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』まではやっていなかったことですよ。「こんなこと、ありなのか!」っていう。もちろん劇中の、なぜそれが流れるのか? の意味はあるんだけど、こんなのがあるのかと。

で、プラスそこに、ジェームズ・ガン。先ほど「B級カルト」と言いました。『スーパー!』とか『スリザー』とかね、『トロメオ&ジュリエット』……まあ、トロマ映画出身ですからね。ジェームズ・ガンが得意とするオフビートなコメディー感、ギャグ感みたいなのが存分に盛り込まれる。ということで、要するにそれまでのアメコミヒーローの流れとかスペースオペラ……もちろん、マーベルが『アイアンマン』以降作ってきたひとつの流れの上にはありつつも、それまで誰もやっていなかったことを、もう詰め込んだような作品だった。ということで、製作時は完全に、それまでの時代の流れに反する、異端の試みだったものが、結果として大方の――作り手たちもさえもきっとそうだったでしょうけど――予想を大きく裏切る超絶大ヒットとなったと。で、その結果、アメリカエンターテイメント映画界の流れを、大きく変えるような一作となったということですよね。



その意味でやっぱり僕は、1977年当時、『スター・ウォーズ』が出た時、要するにそれまでは映画界全体っていうのは、シリアス、ダーク、リアルっていうものだったのが、もう一気に『スター・ウォーズ』で、カラッとしたエンターテイメント方向に……スペースオペラなんか絶対に、「そんな子供っぽいもの、誰が見に行くんだ?」ってみんな思っていたわけですから。そういう意味で僕はやっぱり、「『スター・ウォーズ』を連想する」っていう言い方をしていたわけですけどね。で、はっきり言ってこの『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』も、その後の映画界の流れを大きく変えました。『デッドプール』評をね、このムービーウォッチメンでやった時にも言いましたけど、『デッドプール』はたとえば『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』の成功があってこそ、妥協することなく、大人向けダークコメディーとして作ることができた作品。これはもう間違いない。もう作り手がはっきり言っていますしね。

ですし、それこそマーベルのライバルであるDC側の映画でも、たとえば『スーサイド・スクワッド』……特にあの『スーサイド・スクワッド』の、クイーン『ボヘミアン・ラプソディ』使いの予告編からの本編作り直しなんてのはもう、これは『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』の影響を抜きには絶対に語れないことでございます。ということで、まあ非常に影響が大きかったと。で、その点では今回、一作目とは間違いなく大きく違うのは、全世界期待値マックス状態で作られた二作目ということで、一作目とは全然状況が違うわけですね。期待値マックスの話、ちなみにこれは残念ながら日本では違いますが……っていうね。ちょっとこの話、しましょうかね。

ちなみに原題の『Vol.2』というのは、言うまでもなく劇中に出てくる、主人公ピーター・クイルの亡き母が残したカセットテープについているタイトルにちなんでいるわけですよね。はい。非常に上手いですね。『Vol.2』。粋だな!っていう感じですけどね。いっぽうこの日本題。これが『リミックス』ってなっていてね。これ、口にもしたくないんですけども。この邦題は、要はこういうことでしょう? まあ、『Vol.2』、続編っていうと、もともと一作目だってそんなに日本でヒットしていないのに、「続編だ」なんつったらもっと興行成績が下がっちゃうかもしれないから、続編感はぼやかすような感じで、でも、音楽絡みで、なにか日本人にもそこそこ親しみがあって、なんとなくポップで、なんとなくかっこいい感じの、で、なんか「続編です」みたいなニュアンスも一応つくような言葉として、『リミックス』、みたいなチョイスなのかもしれませんけども……(この『リミックス』という音楽用語の使い方は)意味としてまず、おかしすぎる。

あの、全然これが独立した作品っていうアピールもできていなければ……なんか『未知との遭遇 特別編』とかさ、なんか『(『スター・ウォーズ』)エピソード1 特別編』とか、そういうものに見えちゃう、『リミックス』っていうと。なんか「CGを一部作り直したのかな?」とか思っちゃう人が出てくる感じだと思いますし。意味としてまずおかしすぎるし。で、結果、誰にも何も伝わらない、誰も喜ばないことになっちゃっているのが明らかですよ、これ。『リミックス』なんてタイトル、誰がこれで喜んでいるんですか? これで興行成績が上がるんだったら……上がるの?(笑)っていうね。このタイトルに限らずですけど、これ、本当にちょっと苦言を呈させてください。『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』。一作目の時から、この日本での『ガーディアンズ』に関する宣伝の方向性は、こういうことですよね。「日本人にはどうせウケないだろう」という腰の引けた姿勢。それが、ことごとく「誰得」としか言いようがない、逆効果しか生み出していないと思います。

たとえば、一作目の「しゃべるアライグマ」推しとかさ。これ、わかりますよ。『テッド』がそのちょっと前にヒットしたから。でもさ、そんなことしてこの映画、見に来ます?っていうね。もちろん、わかりますよ。宣伝の人がいろいろ知恵を絞って、いろいろやってるのはわかります。作品を愛してやまない、だからこそ、より多くの人に見てほしいという思いは同じはず……の、いちファンとして、これはでもやっぱり、本当に腹立たしいし、残念です。ということで、当番組では頑なに『Vol.2』と言わせていただきます、というね。すいませんね。評以外の部分でこんなにね……まあ、「こういう意見があった」という記録として残させていただきました。

で、まあとにかく話を戻しますと、日本以外の全世界の期待値マックスの中で作られたこの二作目。一言で言えば、なにがそこまで『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』という作品を特別なものにしていたのか? なんで一作目はそこまで世界中の人に愛される作品になったのか? という部分を、さらに掘り下げ、拡大した一作という方向だと思いますね。まあ、もちろんさっき言ったような、カラフルでゴージャス、まさしく「アイ・キャンディ」と呼ぶのが相応しい、デザイン、美術、VFX、アクション全て込みの、ビジュアルの美しさが倍増というのもそうですね。たとえば今回、最初の方で舞台になるソブリン星。そのソブリン星の偉い人の大広間に出ると、そこはもう金ピカに光っているわけですね。もうこれ、「金ピカの大広間」っていう時点で僕は、「『フラッシュ・ゴードン』か!」っていうね(笑)。要するに、往年のザ・スペースオペラ!(な世界観)のアップデート版。

要するに、『スター・ウォーズ』の元ネタとしての『フラッシュ・ゴードン』が、(1980年)実写映画化されました、ディノ・デ・ラウレンティス製作でね。そしたら、金ピカの大広間みたいなのを出して(当時の一般的世評としては)失笑を買いました(※宇多丸註:僕はこちらも大好きな映画です!)。「(『スター・ウォーズ』がウケたのは)そういうことじゃねえんだよ!」みたいな感じになったけど(笑)、それの意趣返しですよね。それをもうダサくなく、堂々とやりました、ということで。非常にこれも、うれしくなるようなゴージャスさがありました。あとはまあ、70年代後半中心のポップミュージック使いも、今回は一作目以上に、よりストーリーと密接にリンクするようになっているし。これはオープニングトークでも話させていただきました。っていう部分もありました。

ただね、そういう表面上の、言ってみれば作品における「デザイン」の部分。選曲とかもそうですけど、デザインの部分もさることながら、やっぱり『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』を何より特別なものにしている、凡百のフォロワーが真似しようとしてなかなか真似できない部分……どの作品とは言いませんが、ねえ。「凸凹チーム」とか言っているけど、ねえ……(笑)みたいなね。全然愛着わかねえんだけど、みたいな。(そういううまくいってないフォロワーたちと『ガーディアンズ』が)どう違うか?っていうと、やっぱり、各々のキャラクターの魅力と、それぞれの関係性から生まれるヴァイブス……それのベースにあるのは、やっぱり個々の役者の個性を活かして、いい感じの環境で、いいヴァイブスを生む演出みたいな(笑)、そういうところだと思うんですよね。

脚本・監督のジェームズ・ガンさん自身、これは『海外ドラマNAVI』というところのインタビューから引用させていただきますが、こんなことを言っている。「なんといっても一作目も今作も、キャラクターと彼らの関係性というのがいちばんの核となる部分だから、そこをいちばん心がけてしっかり表現しようと気をつけて(脚本を)書いていったんだ。キャラクターがまず第一で、変な話だけど、ストーリーは二の次というか。いかにキャラクターを素晴らしく見せるか、彼らの感情をいかに上手く伝えるかという部分にあわせてストーリーを展開させていった」とまでジェームズ・ガンさんは言い切っているわけですね。

事程左様にですね、非常にざっくりした言い方をすれば、こういうことでしょうね。まあ「キャラ同士の関係性萌え」。これ、あらゆるエンターテイメントにおいて、いま世界的な潮流になりつつあるのかもしれないという話。たとえば僕、5月6日の『ワイルド・スピード ICE BREAK』評の中でも指摘しました。ちょっとね、時間も限られているので、そのこと自体の是非についてはここではあえて論じませんが。で、本作『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシーVol.2』も、はっきりその部分、キャラクター同士の関係性萌えっていう部分を深化・拡大する、という方向で作られているのは間違いないところだと思います。

たとえばですね、先ほどの『海外ドラマNAVI』のインタビュー、ジェームズ・ガンはそこから続けてこんなことを言っている。「二作目にもなるとキャストたちとの気心が知れているから、彼らの個性を活かせるように書けたかなと思う」と言っているんですけど、これは特にたとえばね、元プロレスラーのデイヴ・バウティスタさん演じるドラックスというキャラクター。彼の言うことで笑わせる場面っていうのが、大幅に今回、増えていますよね。っていうか、非常に陽気なキャラクターになっているんですね。前回は「冗談を解さない」というキャラクターだったのが、ガーディアンズにいるうちに冗談の楽しさに目覚めたかのように、まあ非常にケラケラと、何か言っては笑う人になっている。

まあ、彼の言うことで笑わせる、という場面が大幅に増えている一方で、でも実はやっぱり、誰よりも深く重い悲しみを胸に秘めている――要は、妻子を殺されているわけですから――ということには変わりはないということが、中盤、明らかになったりというね。これ、マンティスというね、新しいキャラクターとの絡み。非常におかしいところでもある。マンティスのことをやたらと「ブスだ、ブスだ」っつって。「オエーッ!」とかさ。いまどきあのさ、「オエーッ!」っていうリアクション、ある?(笑)。まあ、笑っちゃうんだけど、そのマンティスはエンパシーという共感能力があるので、触るだけで……しかもそれ、セリフじゃないですね。触って、マンティスの表情が「……」ってなるっていうだけで、一作目を見ている人は、「そうなんだよ。こいつは、そうだった(実は重たい悲劇性を背負っているキャラクターだった)。思い出したよ」ってわかる。非常にいい場面でしたけどね。

まあ、そんな感じでドラックスをはじめとして……それはたぶん、要するにデイヴ・バウティスタはプロレスラー出身で(一作目の時点では)俳優としては未知数でしたけど、ここまで行けるんだっていうことをジェームズ・ガンがちゃんとわかって、それを引き出すということをやっている。そこまで含めて、二作目ならではのキャラクター掘り下げ、そして発展(ディベロップメント)ということが、非常に全部分に関して顕著に言えるということだと思います。ただですね、それには代償もありまして。これはやっぱり「気に入らない」という人の意見も僕は実はちょっとわかるんです。それこそ、本筋とは一見関係ないオフビートな会話ギャグの分量とかが、前作以上に増えた分……キャラクターの(見せ場としては)いいところなんですよ。キャラクターの掘り下げだし、見せ場でもあるしということで。(ただしそういう局面が)増えた分、でも特にやっぱり序盤とかは、語り口としてちょっとモタモタしている……要するに、オフビートなギャグの会話シーンが始まることで、ストーリーがそこで一旦止まる。で、「また止まるのか。また止まるのか」が今回、分量として多いので……ちょっとテンポが悪く見えるところが多いのは事実だと思います。

ただね、そこはさすがジェームズ・ガンというべきか。さっき、「一見本筋とは関係ない」という言い方をしましたけど、まさに、そんなオフビートな駄話、話が一見止まっているように見える駄話も、ちゃんと後で、ストーリーとかテーマと、やっぱり大なり小なりきっちり響き合っていたりすることがわかる仕掛けになっていて。やっぱりね、さっき「キャラクター同士の関係性萌えを掘り下げた」と言いましたけど、凡百の、そういう要するに「キャラ萌えできればいいんだ。そこに耽溺すればいいんだ」、もしくは「観客をそこに耽溺させればいいんだ」っていう開き直ったような代物とは比べようもないぐらい、やっぱりちゃんと、キャラクターの掘り下げをしっかりしたストーリーテリングにきっちりと落とし込んでいるというあたり、やっぱりジェームズ・ガンは、格が違うなという風に思いました。

その意味でね、すでにみなさんご存知な、愛着のあるキャラクターたちそれぞれの個性と関係性を、最小限のセリフと、あとはアクションとか戦い方の描写などで、改めて的確に、タイトに伝えつつ、さっきも言った『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』ならではのザ・スペースオペラ!なカラフルでゴージャスなビジュアルとか、あるいは実はストーリーとも密接にリンクした既存曲の選曲であるとか。あるいは、ジェームズ・ガン十八番のオフビートなギャグ&コメディーが炸裂しているであるとか……で、「ここだ!」っていう瞬間に、「ここだ! これだ!」っていう大きさでタイトルが出るとか、そういうのも含めて、つまり、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』という作品の魅力が、もう全て倍増して詰まっていると言っても過言ではない、オープニングのモンスター撃退シーン。まあ、オープニングタイトルのところですね。さっきの「Mr.Blue Sky」が流れるところですね。

もうここで、あらゆる意味で満点! もう「○億点」っていう表現は自分でもなんだかよくわかんなくなってきてるんで(笑)、とにかく、あらゆる意味で満点超えっていう。「サイコーッ! フェーイッ!」っていうね(笑)、最高なところですね。はい。特にここは、一作目の大きな魅力でもあった、「チームプレーの強み」っていうのが、非常にロジカルに伝わるアクションシーンにもなっているんですね。「ロケット、上を向かせろ!」って、上を向かせて何かをやるとかですね。あるいは、ゾーイ・サルダナ演じるガモーラと、「えっ、なに? 銃で戦うの? お前、剣が得意なんじゃないの?」って一旦やりとりをしておいて、「あ、銃で戦うんだ」と思わせてからの、「やっぱり剣だ!」からの……あのゾーイ・サルダナの走り姿の美しいこと!という、キメ画的な美しさも見せつつの、ドン!っていう。ということで、やっぱりチームプレーの強みがロジカルに伝わる。で、その上で、ドラックスは何もわかってねえみたいな(笑)、(キャラクター描写としても)ばっちりなわけで。やっぱり、非常にカタルシスが大きい作りなんですね。オープニングね。見事なシーンだと思います。

ただこれ、逆に言えばですね、今回そういう風に、チームプレーの、「こうやってああやって、こうしたから勝てた」、もしくは「チームプレーがこうやって上手く行かなかったから失敗した」というような、ロジックがきっちりしたアクションシーンが、特に後ろの方にあんまりないんですよね。一作目で言う、序盤のオーブの奪い合いのシーンとか、脱獄シーンみたいな、「この人とこの人がこうこうこうやって、そのそれぞれがリンクして上手く行った」みたいなのが結構なくて。割りと全体として大味なというか、全体としてなんか雰囲気で見せるようなアクションシーンが多いので、そこは多少物足りなく感じる部分も僕はありましたかね。はい。

ただまあ、今回の『Vol.2』は、そこよりも、まあピーター・クイルのお父さんの「エゴ」。これ、コミックとは違うキャラをお父さんに当ててきています。これ、ジェームズ・ガンさんが、一作目の時点で、たとえばブルーレイやDVDの音声解説で、「クイルのお父さんはコミックではジェイソンっていうキャラクターなんだけど、ジェイソンっていう名前もかっこ悪いし、設定を変えようと思うんだよね」(笑)みたいなことは、その時点でもう言っているんで。まあ、エゴというね、実はガーディアンズじゃなくてね、『マイティ・ソー』とか、『ファンタスティック・フォー』側の(キャラクター)なので、(今回の映画でも)20世紀フォックスにこのプラネット・エゴというキャラクターを使う許可を取ったらしいんですけど。はい。まあその、エゴを巡る、SF的大風呂敷奇想の面白さが、僕はむしろ今回のメインディッシュ、という風に思っております。

僕ね、一作目の評の時に、「ハリウッド実写版『モジャ公』みたいだ」って言いましたね。凸凹はみ出しチーム(が主人公のスペースオペラ)。しかも、お互い悪口の言い合いっていうか、全然普段はチームワークが良くないみたいなやつらなんですけどね。藤子不二雄の大傑作ですけども。その『モジャ公』の中の、『天国よいとこ』っていう名エピソードがあって。つまり、ある星に行って、「いやー、もう天国みたいないい星だ!」って思っていたら、「いや、ヤベえぞ、この星……」っていう。まさにその「天国みたいな」っていう、その胡散臭さがヤバいんだよっていう。(今回の『ガーディアンズ』二作目も)非常にね、僕は「ますます『モジャ公』っぽくなってきた」と思って見ていましたけどね。

プラス、「生きている、宇宙を漂う巨大な脳」っていうね。完全に『ルパン三世』の、最初の劇場版の「マモー」ですね。「マモーや!」って思って見ている人、いたと思いますけどね(笑)。はい。とにかくそのエゴさん、これを巡るSF的奇想が今回のメインだと。演じているのは、カート・ラッセル。ねえ。人好きのするクソ野郎(笑)っていうね。カート・ラッセルが(過去に演じた)『デス・プルーフ』のあの悪役とか、人好きのするクソ野郎役は、まあばっちりでございます。あと、そのエゴの登場シーン。なんか宇宙船の上にヒモをつけて乗っかって、こうやって手を振っているっていう(笑)。あの絵面、ジェームズ・ガンはですね、「シルバーサーファーがキャラクターとしては本当は好きだ」って言っているんで。だからシルバーサーファー風でもあるし、あと、そういうちょっと、サーフィンやっている感じのカート・ラッセルっていうのは、やっぱり『エスケープ・フロム・L.A.』のスネーク・プリスケン風だったり。なんなら、カート・ラッセルは出ていませんけども、同じジョン・カーペンターの『ダーク・スター』なんかも、ちょっと思い浮かべるなんてあたりかもしれませんけどもね。



で、そのエゴを巡る奇想……ネタバレになるので多くはもう言いませんけども。なによりもここが僕はグッと来ました。『スター・ウォーズ』もまさにそうだけど、要は「実は特別な資質を持った存在だった主人公」っていう。まあ『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』も、一作目ラストで、「実はあなた、半分ちょっとすごい存在かもよ」っていう風に提示される。で、そこで我々は、「えっ? なんかはみ出しチームだったのに、特別な人だから勝てたわけ? ちょっとそれ、興ざめだな」って、僕は一瞬思ったわけですけど。まあそういう『スター・ウォーズ』とか(に代表される“主人公がもともと特別な資質を持っている”タイプの物語)に対する、ひとつの、これまでにないタイプの回答(を本作は示している)。これが非常に痛快だし、やっぱり感動的だな、という風に思いました。ある意味、『スター・ウォーズ』の呪縛を、今回の二作目で解いたなという。「もう血族の話とかいいから!」っていう。「(本当に大事なのは)血族じゃねえし!」みたいな。非常に痛快でしたね。はい。

でね、実際に主人公だけじゃなく、主要登場人物のほぼ全員が、家族がいない、家族をなくした人たちなんですね。ゆえに、家族を、絆を、誰よりも求める。この「絆」って言うのもね、フリートウッド・マックの「The Chain」っていう曲で、絆を通じる話が歌詞ともリンクして……いま、(BGMで)流れておりますが。(そのように内心絆を強く求めている)からこそ、表面的には突っ張ってしまうけども……っていうところまで、非常に各キャラクター、まさにさっき言ったように全キャラクターを、愛を持って描ききっているなと。そしてその中心に、マイケル・ルーカー演じる、ヨンドゥを置いている。マイケル・ルーカーっていうのは、やっぱりジェームズ・ガンさん最愛の俳優さんでございます。さらにね、そのヨンドゥの子分役として、前回はチョイ役でしたけども。クラグリンという役。これを演じているショーン・ガンさんは、ジェームズ・ガンさんの弟であり、そしてロケットの(CGを当てる前の)演技も演じている人なので。どれだけ思い入れがそこで強いかという……ああーっ! もう時間がない!(笑)

それゆえ、終盤ちょっと、かなりウェットになる。一作目に比べて、かなりウェットになるのとか、気にならなくもない……っていう気もしますが。うわっ、全然言い足りてねえな! (笑) はい。ということでね、これがいちばん偉いところだと思います。「MCUの一作品だから」的な甘えに一切走らず、単体の作品として。要するに、キャラ萌え潮流の方向にありながら、それでも一本の映画として守るべき矜持をきっちりと守った。やっぱりこの、キャラ萌え潮流の掘り下げとしては、最高峰を見せているんじゃないでしょうかね。ワープシーンがね、『銀河ヒッチハイク・ガイド』を思わせるとかね。あと、スタローンの(吹替版の)声を(羽佐間道夫、玄田哲章と並ぶスタローン声優である)ささきいさおがやっていてガン上がりとか、そういういろいろと話がしたい! したいんだよ!(笑) はい。ということで、この調子であと100作ぐらい作ってください。ぜひ劇場で、IMAX3Dでご覧ください!

(ガチャ回しパート中略 ~ 来週の課題映画は『光をくれた人』に決定!)

以上、「誰が映画を見張るのか?」 週刊映画時評ムービーウォッチメンのコーナーでした。

■番組エンディングパート

バッタバタになってしまったムービーウォッチメン『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー Vol.2』評ね、リスナーのみなさんから大量にいただいているメールの中で、ちょっとこちら、読み忘れていたというか、ぜひこちらをご紹介したいので。こちらのメールを最後にご紹介させてください。ラジオネーム「テラダアキラ」さんからいただいたメールです。

「これはメールしなきゃいけない使命感を感じました。自分はついに、オールタイムベストの映画に会いました。現在17才ですが、自分は14才の時に父を亡くしました。あまりに突然のことで、当時は実感がなく1回も泣きませんでした。この映画(『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシーVol.2』)を母と一緒にIMAX3Dではじめて見た時、父との記憶が全て蘇りました。

キャッチボールをした記憶、どこかへ遊びに行った記憶。実感のなさから、いままでそれも当たり前に思え、あえて思い出して泣くようなことはありませんでした。そして、父だけではなく途中回想シーンで一瞬、草原の上でお母さんとピーターがひとつのヘッドホンを2人で使う場面が出てきた時には、自分のために働く母のことも思い出し、『Father & Son』が字幕で流れた時には母の隣で涙が我慢できませんでした。父が亡くなった時には泣かなかった分、より泣きました。終わった後は、母と父親の話はしませんでした。きっとわかっているはずだからです。久しぶりに親子で見た映画が『ガーディアンズ』でよかったです。これからやっと父と向き合えそうです。ガン監督、ありがとう」

さらにですね、こんなメールも。ラジオネーム「アベベ」さん。

「私はいま、あるシネコンでバイトをしています。公開初日の夜勤のシフトだったのですが、映画を見終わった観客が売店に列をなし、みんなが口をそろえて『ガーディアンズ、パンフ、特別版で』と3つの単語を連呼していました。まるで3つの単語しか話せないアイツのようでした。私は心の中で『We Are Groot!』と唱えながらレジを打っていました。印象的なのは妙齢の女性が涙を流しながら、ジグソーパズルとマグカップ、特別版のパンフと通常版パンフを買った後に主演のクリス・プラットを指差し、『前の西部劇の映画(『マグニフィセント・セブン』)が良くて。この俳優さん目当てで来たのに、こんなに泣かされるなんて。前作も見ていなかったんですけどね。前にBSを録画したのがあるんだけどね。まさか、こんなにいいとは……ボールペンもちょうだい!』と、ボールペンもお買上げになって行きました」ということで、アベベさんでございました。

ということで私もね、キャッキャキャッキャ言いたいのをね……いろいろ言ったけど、あれですよ。いろいろ言ったけど、いろいろ言ってない人より好きなぐらいですからね!(笑) ということでございました。

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