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その息切れ、心臓の弁の異常が原因?「心臓弁膜症」手術の最前線

森本毅郎 スタンバイ!

心臓の病気といえば、狭心症や心筋梗塞を思い浮かべる人が多いと思いますが・・・心臓で血液の流れを調整する「弁」に異常がある「心臓弁膜症」という病気があります。実は、患者の数は300万人と多く、手術は年間2万人に対して行われています。いま変わりゆくその手術は?6月5日(月)の松井宏夫の「日本全国8時です」(TBSラジオ、月曜あさ8時~)で解説しました。

★心臓弁膜症とは?

心臓は血液を全身に送るポンプの働きをしていて、内部は4つの部屋に分かれています。各部屋には血液が逆流しないように、部屋と部屋の間には弁と呼ばれる扉がついていて、心臓には、合わせて、4つの弁があります。それらの弁が、正常に機能しなくなる病気を「心臓弁膜症」といいます。そして、4つの弁の中でも、全身に血液を送るポンプの役割をしている左心室と、大動脈の間にある弁=「大動脈弁」が機能しなくなる、患者さんが一番多いです。

どう機能しなくなるかというと、2つタイプがあります。1つは、きちんと弁が閉じなくなるタイプ。もう1つは、こちらがほとんどですが、弁が十分に開かなくなってしまうタイプです。

★弁がどうして働かない?

近年では加齢や、動脈硬化が原因の人が多いです。十分に開かないタイプの人の場合、動脈硬化によって、弁が石灰化し硬くなってしまう。硬くなってしまった弁は、「30%」しか開かなくなります。となると単純に残りの70%は、うまく送り出せないわけですから、全身に影響がでます。

症状としては、まず、坂道や階段を上るときに息が切れてしまう。この状態を、そのままにしてしまうと、症状はさらに悪化します。胸が締め付けられる痛みがあったり、脳の血液が減って突然倒れる「失神」が起きます。またここまでくると、息切れの症状も、座っていても息が切れるほどになっています。

こうしたひどい症状が現れると、それから1年で25%、2年で50%の方が亡くなっているという状況があります。

★まずは異常の早期発見!

心臓に何らかの異常が起きているということは、意外に簡単にわかります。聴診器で心臓の音を聞くと雑音が出ているので、まず異常が確認できます。その後エコー検査で、弁に異常が起きていることも、画像ですぐにわかります。

息切れの症状などがある人は、一度診てもらうと良いでしょう。そして、ほんとにまだ軽い症状であれば、薬中心の治療となりますが、最近では、早めに手術を検討するのが、主流となっています。

★第一選択治療は、人工弁置き換え手術

基本的に手術は、もともとあった弁を、ほかの弁に置き換える、というものです。ただ、その置き換える方法や、ものが今変わってきています。

いま日本で、第一選択の治療となっているのは、人工弁に置き換える手術です。

人工弁にもいくつかあって、ひとつは、特殊なカーボン素材で作られた機械弁。また、ブタの大動脈や、ウシの心臓を包んでいる心膜で作られた生体弁があります。こうした人工弁に置き換える手術方法自体は、長年行われてきたので、今では、手術のリスクは、極めて低くなっています。ですがやはり、最近は高齢の心臓弁膜症患者さんが増えていて、胸を切り開く手術が難しい、という人が、全患者の少なくとも3割以上はいます。

★新しい治療「TAVI」

今注目されている新しい治療が「TAVI(タビ)」というものです。大動脈に、カテーテル=管を通して、人工弁を置き換えていくという手法で、TAVIは、それを英語にしたときの、頭文字をとったものです。2000年代の初期に、フランスで開発されたもので、ここ数年で日本でも、各地域の大学病院などで、広がりつつあります。

TAVIの治療では、管を、大動脈を通して心臓に送り込んでいくわけですが、管を、どこから入れるかというと、大体は、太ももの付け根から入れていきます。患者の脚の血管の状態によっては、肋骨の間など、ほかの場所から通すこともあります。

そして、送り込む管の先端には、人工弁が収容された装置が取り付けられています。その装置が、心臓の大動脈弁の内側に到達すると、装置が風船のようにパッと開いて、それが人工弁に置き換わります。

その間、大きく体を切り開く必要はなく、体に優しい治療と言えます。この治療は、高齢の方や、従来の外科的手術が困難な場合に、行われます。高額療養費制度で、患者の負担費用はおよそ5万円から20万円です。

★血栓の可能性

ただそこに問題はあって、機械やほかの動物の臓器で作った人工弁は体にとって異物です。異物を体内に入れるとどうしても、発生するのが、血のかたまりの血栓です。異物に触れると出てくる血栓が、血管の中に留まらないようにするために、血栓をできにくくする薬を飲み続ける必要がでてきます。特に若くして、心臓弁膜症となった人が、その後の人生ずっと薬を飲み続けるのは、大変なことで、運動などが制限されてしまいます。

★自己心膜の弁

そういった人には、自分の心臓を包んでいる心膜で大動脈弁を作る方法もあります。心膜の一部を切り取り、専用の液体に10分ほど浸して、弁として働くよう強くします。そして強くした心膜の形を整え、それを大動脈弁のところに、縫い付けます。

自分の元々体の一部であった心膜を使っているので、手術後に血栓をできにくくする薬を服用する必要はありません。

これは、日本で開発された手法で、今では40ほどの施設で受けられることができます。こちらの手術は、先ほどのTAVIとは逆で、今欧米でどんどん導入され始めています。

大動脈弁の手術で2つの新しい治療法として、TAVIと、自分の心膜を使った大動脈弁が選択肢としてあるのは、良いことです。

★外科と内科の連携も必要!

ですが最後に、実は、その2つがうまく連携できていない、という問題もあります。TAVIは、循環器内科で、自分の心膜を使った大動脈弁は、心臓血管外科。まず、息切れなどの症状が出ると患者が訪れるのは、循環器内科です。そこで循環器内科は、手術を行わない内科的治療で、体に優しい治療です、とTAVIを薦めることが多いが、若い人など外科的手術の方が良い場合もある。循環器内科と心臓血管外科とが連携し、より良い治療を目指してほしいです。

 

日本全国8時です(松井宏夫)

解説:医学ジャーナリスト松井宏夫

 

松井宏夫の日本全国8時です(リンクは1週間のみ有効)http://radiko.jp/share/?sid=TBS&t=20170605080000

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