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夢枕獏 キース・ジャレットと勝手に対決、そして惨敗

コシノジュンコ MASACA

2017年7月2日(日)放送

ゲスト:夢枕獏さん(part 1)
1951年、神奈川県生れ。1977年『カエルの死』で作家デビュー。1984年に発表した『魔獣狩り 淫楽編』とそれに続く「サイコダイバー」シリーズがベストセラーとなり、伝奇小説の新たな地平を切り開きます。1989年、『上弦の月を喰べる獅子』で日本SF大賞を、1998年『神々の山嶺』で柴田錬三郎賞を受賞。近年では『大江戸釣客伝』で泉鏡花文学賞・舟橋聖一文学賞・吉川英治文学賞を受賞しています。「キマイラ」「餓狼伝」「陰陽師」「闇狩り師」など、人気シリーズの生みの親。コシノジュンコ×鈴木弘之夫妻のプロジェクト「オペラ 桟橋の悲劇」では、脚本を担当しています。

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JK:このところよく会いますよね。先日も。

夢枕:ついこの前、朗読会に来てくださって。朗読会のためにジュンコさんが作ってくださったスーツを下したんですよ。

JK:すごくビックリしました(笑)

夢枕:いつもはあまりきれいな恰好をしないので・・・でも不思議ですよね、ああいうのって。着るとスイッチが入るというか。人格が変わるというと大げさかもしれませんが、よく役者さんが、時代劇で衣装を着た時に役に入り込むというか。あんな感じで“よっしゃ”と気合が入りました。

JK:でも、あのタイプの服は初めてだったんでしょ? ご自分で選ばれたんですよ、「コレ着たい!」っておっしゃって。

夢枕:自分用にあつらえていただくのは初めてでした。周りの人々に負けちゃいられないな、と思って。勝負しなきゃ! と思って。

JK:勝負好きだからね(笑) “夢枕獏” という不思議な名前は、どこから来たんですか?

夢枕:高校生のときに作ったペンネームなんです。おじいさんが落語家で、旅芸人としてあちこち回って落語をやっていたんですが、その時の名前が“東屋清楽”。ゴロが良いなと思って、同じような名前にしたいと思って。ちょうどバクという動物が好きで、下の名前はもう早いうちから決めていたんですが、バクは悪い夢を食べると言われていて、枕の下にバクの絵を置いておくと夜悪い夢を食べてくれる。じゃあ“夢枕”でいこう、という感じです。

JK:そういう雰囲気の小説が多いですよね。

出水:獏さんの小説で特に人気なのが「陰陽師」シリーズ。なんと累計600万部を超える人気作品です!

夢枕:信じられないですよね。

JK:何歳ぐらいから始めたんですか?

夢枕:30代のときです。それからずーっと書いてて、気づいたら30年。

JK:どんどんアイデアが出てきて、まだ行けそうですか?

夢枕:まだ大丈夫。これまでで10冊ぐらい。物語としては100話目を超えました。今は110話目を書いているところです。
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出水:最初にシリーズが始まって30年。どうでしょう、主人公の描き方に変化はありますか?

夢枕:変わった感じはありますね。だんだん年を取ると、悪達者になってくるんです。経験値が積まれてくるので、「こういう時はこうすればいい」みたいな知恵ができてくるんです。場合によってはわざとやっているところもあります。最初のころはその都度違うものを書こうと思っていたんですが、さすがに何本も書いているうちに「あ、フーテンの寅さんでいいんだ」と思ったんです。いつ行っても、柴又にオイちゃんとオバちゃんがいて、寅さんが帰ってくるとひとしきり喧嘩をして、さくらちゃんが追っかけてきて「お兄ちゃん行かないで」っていう。あのパターンがみんな好きなんだなーと思って。だから今では、悪達者になった部分を活かすようにしています。そのほうが、世界観が変わらなくていいんじゃないかなって。

出水:でも、たくさんシリーズものを書いていらして、「筆が進まない」っていうことはないですか?

夢枕:アイデアが出るまでは。アイデアが出てからは、申し訳ないくらい早いです(笑)

JK:食事してる時も、映画見てるときも書いてるんですって?

KEITH JARRETT夢枕:ああ、この前のお話ですね(笑)キース・ジャレットというピアニストが公演したときに、彼と勝負しようと思って。コンサート会場の椅子に座って原稿用紙を広げて、彼の演奏を全部言語化しようと思ったんです。30分しないうちに、隣の女性から「うるさいからやめてください」って言われちゃった(笑)万年筆が、原稿用紙の上を走る音のことだと思うんですが、ああいうのって音の大小ではなく、聞こえること自体が気になるんですよね。「すいませんでした!」って頭を下げて、30分経たないうちに対決は終わっちゃいました(笑)

JK:でも、音楽に対決するっていう視点が面白いわね。

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JK:獏さんにお願いした、「桟橋の悲劇」のオペラ化。蝶々夫人のその後を描いたオペラを脚本にしていただきましたが、表現がとてもチャーミング。言葉ひとつひとつが素敵ですよね。

夢枕:ありがとうございます。僕もゼロから書くよりは、最初に少しテーマをいただくほうがやりやすかった。鈴木さんが原作の本をお書きになっていて、しかも自由にやらせてくれたのでね。

JK:いつできるんだろうと思ってたら、お正月ぐらいかしらね、いつの間にか1冊書きあがってきて!

夢枕:そう、あっと言う間に。3日で書きました。でも、その3日までが大変なんですよ!頭の中で整理するまでが大変ですね。決まれば早い。あとはもう肉体労働のようなものですから(笑)

JK:これまた言葉の表現がチャーミングでね~。女性ファンがまた増えるかもしれない。

出水:絵が浮かぶような、音が聞こえてきそうな、非常にテンポのいい書き方をされていますよね。

夢枕:実は、生で蝶々夫人を見たことがなかったので、まずビデオを買い込んで、それを見て、それから台本のようなものを読んで・・・そもそもルールがわからないんですよ、「オペラの書き方」が。たとえば小説だと、書き出しの1マス目を空けるとか、僕の場合だと、原稿用紙1枚=200字分のところに、タイトルと名前と章立てのタイトルを書くとか。でもオペラの場合はどうなんだろう?結局は自由なんですけど、まずは形式を頭に入れないと、途中で「これはどうしたらいいんだろう?」立ち止まっちゃうんです。そうならないように、形式を自分の中で決めてから書きました。

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JK:でもだからって、複雑じゃないわよね。場面がポンポンっと出てきて。

夢枕:そうですね。しかも途中の説明がないんですよね。場面の間にどういったドラマがあったのか・・・小説だと結構やりがちなんですけど、オペラではぱっと次に飛んで、場面や時間が一気に過ぎているという感じ。

JK:そして最後は必ず悲劇でないと、当たらないんですよね(笑)

夢枕:作曲家の松下さんと喫茶店で、オペラの主人公の最後をどうするか話し合っているときに、「これは最後は死んだほうがいいかな~」「それはぜひ、殺していただきましょう」なんて言ってたら、隣の席の人たちが「この人たちは何を話しているんだろう??」みたいな顔をして(笑)

JK:獏さんが優しいのはね、蝶々夫人は100年前の話だから、その後といえば昭和、つまり現代劇なんです。でも私は現代劇の衣装は弱いなーと思っていたら、ちゃんとそういう場面を作ってくれて。

夢枕:そりゃもう! ジュンコさんの出番を作らなきゃと思って! 仮装パーティのシーンを入れました。外国人が日本をテーマに仮装パーティをしたら、という設定で、芸者ガールみたいなのだったりと、なんでも自由に、日本そっくりじゃなくてもいいんです。

JK:「こういうのかな」「ああいうのかな」って、あの場面を面白くしたいから、私も衣装で頑張ります!

夢枕:ジュンコさんのためのシーンですから(笑)

出水:出来上がって形になるのを待っているところなんですね! いつごろに完成するのか、聞きたいです。

夢枕:あとは、松下先生が書き上げるだけ! もう残り1/3ぐらいまでできてると思います。

JK:あの方も、書けばカンタン。なかなか始められない(笑)でも、リミットがあったほうがノるでしょ?

夢枕:いや、締め切りがないとダメですね。

JK:じゃあ、どこか劇場をぱっと取っちゃう?! 決まっちゃったから、もうしょうがないか、みたいな!

=OA楽曲=
M1.  陰陽師 / 梅林茂

M2. ある晴れた日に / マリア・カラス