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『さい帯血移植問題』~無届け医療行為・流出はなぜ起きたのか?

森本毅郎 スタンバイ!

赤ちゃんのへその緒、つまり「さい帯血」を使った医療行為を無届けで行ったとして、厚生労働省が先月28日、11の医療機関に停止命令を出しました。ガン治療や美容のため、とうたって、さい帯血を使われていましたが、医療機関が本来守るべきルールは何か?さい帯血がなぜ流出したのか?7月3日(月)の松井宏夫の「日本全国8時です」(TBSラジオ、月曜あさ8時~)で解説しました。

 

★「さい帯血」とは?

さい帯血には、「幹細胞」といって、体のさまざまな種類の細胞のもとになる、細胞が豊富に含まれ、そうした細胞は、血液を造ると書いて、造血幹細胞と呼ばれます。さい帯血のような造血幹細胞は、赤血球や白血球などの「血液のもと」になります。血液をうまく造れない血液の病気、白血病や再生不良性貧血などの治療に役立ちます。他にも様々な細胞を作り出す能力があるので、再生医療での応用が期待されるものです。なおこのさい帯血を使った医療行為をする場合は、公的な機関から、さい帯血を取り寄せ、液体窒素が入ったタンクでの冷凍保管など、厳重な管理も必要となります。

★問題が明るみになった経緯

問題が明るみになったのは、厚労省が愛媛県の医療機関に立ち入り検査をしてからです。厚労省は先月9日、無届けの再生医療を行ったとして、その医療機関の停止命令を発表。その後、全国的に本格調査をしたところ、先月から今月にかけて、愛媛の医療機関を除く、11の医療機関にも、同様の問題が見つかりました。

それらの医療機関は、がん治療や肌の若返りの美容のために、再生医療を行っていました。保険が利かない自由診療で、患者一人あたり300万円程の治療費を請求していました。

ガンで藁をもつかむ思いで高い治療費を払った患者さんのことを思うと、許せない話です。今回の問題は、そうした心理を突いて、さい帯血を使って医療行為を行った「医療機関」とそのさい帯血を医療機関に渡した「提供元」にあります。

★医療機関の問題は?

まず、医療機関の問題ですが、国に「無届け」で、再生医療行為を行った点にあります。

基本的なことですが、医師は、国に認可をとらず、どんな医療行為を行っても良い人です。なぜなら個別の医療行為を許認可制にすると、医療現場では突然の判断ができなくなります。例えば、飛行機に乗っていて急患が出た場合、気道が詰まっているとします。医師であれば、急患に対して、近くにあったホースを使い医療行為をすることもあります。患者の状況に合わせて、医療現場で判断を下して、患者の命を救うのが医師です。

しかし、今回のさい帯血のような、他人の幹細胞を使った「再生医療」については、届け出だけはしてください、という法律があります。ⅰPS細胞などの再生医療への期待の高まりに合わせて、整備がすすめられたもので、「再生医療などの安全性を確保するための法律」が2年前に、施行されています。法律に沿って、さい帯血を使う再生医療は、国に計画書などを届け出ないといけません。再生医療はまだ確立された医療行為ではないですし、他人の細胞を体内に入れた場合、感染症のリスクもある、高度な医療行為です。

★故意か不勉強か・・・

届け出には、再生医療について検討する第三者機関の委員会の意見書を添える必要があり、実は、私もその委員会に、一般の立場としてメンバーに入っています。意見書の他にも、定期的な報告書を出し、安全性の確保をする必要があります。実際、今回停止となった11医療機関の中でも、私たちの委員会に意見書を作ってほしいと求めた医療機関が過去にありましたが、門前払いとなっています。肌の若返りなどの美容についてさい帯血の効果は、全く医学的な根拠がありません。

★提供元の問題は?

そしてもう一つの問題、そんな医療機関にさい帯血を渡した「提供元」です。今回の提供元には、民間バンクと呼ばれる、さい帯血を預かる業者の存在があります。いくつか報道もされていますが、今回は、茨城県の「つくばブレーンズ」という民間業者が、破産したことで、そこで預かっていたさい帯血が、債権者に流通してしまったようです。この業者は子供の将来の病気などに備え、個人からさい帯血を預かる事業をしていました。

ところが、資金繰りが悪化し、1500人分のさい帯血のうち、 少なくとも800人分が債権者側に流れ、治療1回分100万円から200万円で売られた。さらに京都と福岡の医療関連会社が、利益を上乗せし、200万円から300万円で販売。それを買ったのが、今回販売停止になった11の医療機関などでした。

★民間バンクは届け出がいらない?

提供元についても、「造血幹細胞移植推進法」という3年前に施行された法律で「国の許可」が必要ですが、販売した業者は国に、何も届け出ていませんでした。

実は、さい帯血を保管するバンクには、公的バンクと民間バンクの2種類あります。しかし国に届け出が必要なのは、公的バンクだけなんです。と言うのも、公的バンクは、産婦から無償で提供されたさい帯血を、第三者に提供します。

一方、民間バンクは第三者ではなく、本人や親族に使うため、届け出義務がないんです。現在も2つの民間バンクがありますが、届け出義務がないため、国も実態を把握できない。果たしてこのままのルールでいいのか?ここは一度、議論があっても良さそうです。

さらに言えば、今回のように破産した場合の、さい帯血の取り扱いルールはありません。今回の問題も氷山の一角で、中には、ロシアからさい帯血を入手するという話も聞きます。早急に、さい帯血の流通や、それを使う医療機関をきちんと取り締まる必要があります。

★守りたい正しいさい帯血の移植医療

今回の件で、さい帯血の移植医療そのものが停滞することがあってはいけません。ガイドラインで対象となっている病気に対して、さい帯血の移植治療は有効な治療です。再生不良性貧血や白血病などのさい帯血移植は、無償で提供してもらった、さい帯血を使う、がんの基幹病院か大学病院で受けるのが良いでしょう。お母さんたちの善意でへその緒を頂いている良い制度なので、これは守りたいです。

 

日本全国8時です(松井宏夫)

解説:医学ジャーナリスト松井宏夫

 

松井宏夫の日本全国8時です(リンクは1週間のみ有効)http://radiko.jp/share/?sid=TBS&t=20170703080000

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