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夢枕獏、MASACAのヒマラヤ遭難未遂、そしてアマゾンで老人と海

コシノジュンコ MASACA

2017年7月9日(日)放送

ゲスト:夢枕獏さん(part 2)
1951年、神奈川県生れ。1977年『カエルの死』で作家デビュー。1984年に発表した『魔獣狩り 淫楽編』とそれに続く「サイコダイバー」シリーズがベストセラーとなり、伝奇小説の新たな地平を切り開きます。1989年、『上弦の月を喰べる獅子』で日本SF大賞を、1998年『神々の山嶺』で柴田錬三郎賞を受賞。近年では『大江戸釣客伝』で泉鏡花文学賞・舟橋聖一文学賞・吉川英治文学賞を受賞しています。「キマイラ」「餓狼伝」「陰陽師」「闇狩り師」など、人気シリーズの生みの親。コシノジュンコ×鈴木弘之夫妻のプロジェクト「オペラ 桟橋の悲劇」では、脚本を担当しています。

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出水:遣唐使として中国に渡った空海が、長安で妖怪と戦うという夢枕さんの著書「沙門空海唐の国にて鬼と宴す」(角川文庫)。何と執筆から17年もかけて完成した作品なんですよね!

夢枕:はい、17年間、全5巻! 最初は1年ぐらいで終わるつもりで書いてたら・・・

JK:イメージが膨らんで?

夢枕:いつもラストを決めないで書き出すので、「あ、これをやると長くなるな」とわかってて入れちゃうと、責任を取っていかなくちゃいけない。

JK:じゃあ、映画化するとどのぐらい長くなっちゃうのかしら?

夢枕:でも結局短くして、2時間ちょっとだと思います。

沙門空海唐の国にて鬼と宴す 巻ノ一 (角川文庫)
出水:そう、映画化されるんですよね。タイトルは「空海」、2018年公開予定で主人公の空海役は染谷将太さん。しかも日中共同制作映画としては史上最大規模で、総製作費150億円!

夢枕:信じられないですよね~! 僕も現場に行きました。地平線が見えるような広大な場所に、コンクリートで長安の街を再現しちゃったんです! ものすごくでかいです! あんなにでかいセットは初めてみましたね。あちらでは、撮影後にセットをそのままテーマパークにするというビジネスモデルができていて、今回もテーマパークになるそうです。監督のチェン・カイコーさんが以前撮った「始皇帝暗殺」という映画のセットも、いまだにお客がくるほど人気だそうですよ。

JK:それはいいですね! 観光になりますものね。

夢枕:だから、セットが出来上がったときにはもう観光客が入っていて、お寺のセットにはお坊さんがいて、すでにお寺として機能しているんですよ! お経を読んだり、お線香をあげたり、手を合わせたり。僕がセットの裏に登ろうとしたら、「お客さん、そっちは行っちゃだめですよ!」と言われたり(笑)。

JK:監督のチェン・カイコーさんのアイデアですか?

夢枕:特別な方なので、セットもすごかったです。僕が小説で描いていたイメージをいったん捨てて、映像としてもう一回作り直しているのがすごいですね。

JK:長安っていうのはもともとの首都でしょ?

夢枕:人口100万人ぐらいあった。シルクロードの東端に長安があって、西端がローマ帝国。この2つをつないでいた一番盛りの時に、空海が中国に行っているんです。

出水:なぜ空海に注目したんですか?

夢枕:中学生ぐらいから大好きで! どこか別の国へ行く人って好きなんです。古くは、日本人ではないですが、経典をとりに天竺まで行った玄奘三蔵。日本人だと、空海が密教を取って帰ってくる。明治時代だと、河口慧海というお坊さんがチベットまで行って帰ってくる。実は、これ全部小節に書いてるんですけどね(笑)

JK:探検家になりかったのね! 小説で探検してますね。

夢枕:そうですね。小説はいい加減なところがあるので、危険がないから、いくらでも探検できる(笑)

出水:でも、実際に現地で取材されて書いた部分も大きいですよね。

夢枕:現場には結構行っています。国の中では、中国が一番多いですね。それもヒマラヤ。中国側のエベレストには何度も、ネパール側・カトマンズにも行きました。てっぺんまで登るには技術も能力もないので、せいぜい6000mぐらいまで。

JK:出水さんはキリマンジャロに登ったんでしょ?

出水:仕事で登らせていただいたがあったんですけど、キリマンジャロは5855m。でも、エベレストはベースキャンプがそのぐらいですもんね。

夢枕:いや、キリマンジャロは大変ですよ!下からずーっと登りですからね! って僕は行ったことがないですけど(笑)いやー、尊敬!

平成釣客伝 夢枕獏の釣り紀行
出水:夢枕さんはいろいろな趣味をお持ちだそうですが、そのうちのひとつが「釣り」。ロシアやカナダなど、世界中を回る釣りの紀行本「平成釣客伝 夢枕獏の釣り紀行」(講談社)も出版されています。

JK:この前、獏さんにお電話して「今どこにいらっしゃるの?」って聞いたら「網走にいる」って! あんな寒いところに、しかも真冬! たまんない!

夢枕:冬の網走で、わかさぎを釣ってました。

出水:本の後書きのタイトルが「ペンと竿、どちらを握るか」。そのぐらいお好きなんですね(笑)

夢枕:アマゾンは結構シビアなところでしたね。大きな蛇や毒蛇もいるし。ペルー・アマゾンに行ったときは、フジモリ元大統領が釣り別荘に使っていたところまで3日かけて船で行きました。もうボロボロになって、窓も壊れていて、金目のものは全部なくなっているような状態だったんですけど、その近所に何泊かして釣りをしていたんですが、ピラニアは入れ食い(苦笑)僕はピラルクという魚を釣りたかったんですが、他にもドラドンとか獰猛な魚とか、ナマズ系の大きいのとか・・・

JK:でも、どこの国に行っても、朝から晩まで釣りじゃなくて合間に書くんでしょ?

夢枕:締め切りがどうしようもない時は、僕だけ午前中に仕事をさせてもらったりします(笑)

JK:でも、いまはeメールでばぁっと送れるじゃない?

夢枕:それがね・・・できない場所があるんですよ! 以前マルケサス諸島を釣りで歩いたことがあるんですよ。マルケサス諸島とは、タヒチから南米にむけてずーっと島が続いていて、最後のイースター島からその先ペルーまでものすごい距離があくんです。ハワイの篠遠先生という方が、釣針の発掘から、タヒチからペルーへ文明が移動したということを証明したんですが、彼の案内でマルケサス諸島を船で移動しました。大きい貨物船でね、先生のレクチャーを聞きながら、あとはずっと釣り。その時、原稿を船からFAXで送ろうとしたんですけど、送れないんですよ! 1枚送ってはダメ、またダメの繰り返し。だから、島に着くたびに郵便局へ行って、FAXを送っていました。原稿が出来上がってないときは、郵便局で書いて送ったり(笑)

JK:なんとなく、その姿が思い浮かびますね(笑)でも、釣りをしながらストーリーのイメージはわいてくる?

夢枕:申し訳ないんですけど、釣りをしているときは真っ白! 仕事のことを考えようとしても、魚がかかると、地球に魚と自分しかいなくなる(笑)

JK:だから、魚との対話のような表現が描けるんですね。不思議な言葉で。

出水:いままで釣りあげたもので、印象に残っているものは?

夢枕:キングサーモン、50ポンド!これは気が遠くなりそうでしたね! 海で育って上がってきたサーモンは、河口近くだと海にいた時と同じくらい元気で、かかるとすごくファイトして、引くんですよ! 自分のこれまでの人生をすべて捧げないと対決できないですね! だから、ね、若いころに逃げた女のことを思い出しながら、「コノヤロウ!」と戦うんです!人生の中で大きなイベントがあるじゃないですか、結婚式とか、そういうのと同じくらいのイベントです。かみさんには申し訳ないけれど、結婚式よりも上だったかもしれない(笑)

masaca_0709c(色紙にもつい、お魚・・・)

JK:この番組では人生におけるMASACAを伺っているんですけど、獏さんのMASACAは何でしたか?

夢枕:ヒマラヤのマナスルに行った時、食糧がつきちゃってね。MASACAというのは、シェルパがお米に灯油をこぼしちゃったんです。わーっと、一晩で米袋が全部ダメになっちゃって。しかも毎晩雪が降って、その場に閉じ込められて。最後はシェルパが責任をとって近くの村まで下りて、羊を背負って帰ってきました。その時は、蹄と角以外は全部食っちゃいましたね!でもみんな、実は食物を隠してるんですよ。チョコレートを出してきて、「悪かった、俺は個人用に非常食を持ってきてたんだ。みんなで分けよう」って。実は僕も羊羹を1本持ってきてたんですけど、寝袋のチャックをしめて、夜中にこっそり「俺だけは助かるんだ」と食ってたんです(笑) だけど、これはしょうがないと思って、最後に出しました。

出水:極限ですね・・・

夢枕:毎晩ニュースを聞くんです。エベレストではインド隊が閉じ込められて、最初は食い物がなくなった、その3日後には連絡が途絶えた、という感じになるんです。俺たちも似たような状況になったな!と言っているうちに、Hな話をするんですよ、男同士だから。それも3日ぐらいすると出尽くして、今度は神の話をするんです。みんなで毎日、神はいるのか、とか言ったり、シェルパが「私は神を見た」とか言い返したり。そんな10日間を過ごしました。

出水:最終的には雪が挙がって・・・?

夢枕:雪がちょっとあがったすきに。僕はヒマラヤを越える鶴を見るのが目的だったんで、途中で降りてきたんですけど、後で聞いたら、やはり雪崩でシェルパの1人がなくなりました。僕らのいるときも雪崩が来てたんですけど、たまたま雪崩を避けて通っていたので、何とか助かりました。

JK:無事でよかったですね・・・

夢枕:でも、怖くてね。古畑さんっていう隊長に、「あなたは怖くないんですか?」って聞いたら、「俺は山と戦う決心をしてきた。竜が守っている玉を取りに行く覚悟をしてきたんだ。だから、竜が襲ってくるのは覚悟してる」っていうんです。なんてカッコいいんだ! と思って。町で会ったらフツーお父さんみたいな感じの人なんですけど。山にいると、それはもうカッコいいですね~!

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=OA楽曲=
M1.  Mountain Dance (RAGA) / Sachal Studios Orchestra