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希少がんで「がんゲノム医療」始動~日本の現状と課題

森本毅郎 スタンバイ!

先週月曜日、国立がん研究センターが、患者の数が少ない希少がんについて、「ゲノム医療」プロジェクトを進めていくと発表しました。この夏にできる国の「第3期がん対策推進基本計画」にも、この「ゲノム医療」を推進していく方針が盛り込まれる見込み。これが進めば、がんの治療はどう変わる!?8月7日(月)の松井宏夫の「日本全国8時です」(TBSラジオ、月曜あさ8時~)で解説しました。

★がんゲノム医療って?

ゲノムというのは、DNAに含まれる遺伝子情報全体を指す言葉です。がんは遺伝子の働きが異常になり、細胞増殖が止まらなくなる病気ですが、異常になる遺伝子は患者ごとに違います。そこで、遺伝子の異常な働きを調べて、それを抑える薬を開発して治す、 大まかに言えば、これが「がんゲノム医療」となります。

★原因遺伝子に対応する薬

普通、がんは、がんができた場所など、患部を見て、治療を考えます。肺がんなら肺がん、肝臓がんなら肝臓がん、という具合に治療や薬を考えますが、ゲノム医療の場合は、患部ではなく、遺伝子の状態で、治療や薬を決めます。例えば、一般的な肺がんの治療薬が効かない。肺の希少がんとされた人と、また別の人の肝臓がんが、実は同じ遺伝子変異が原因だったということもあります。そうしたこともあって、今ではがんの患部ごとではなく、原因となる遺伝子から治療を考えるという動きが、世界的に広がっているんです。今後は薬の名前は、「肺がんの薬」という呼び方ではなく、「何とか遺伝子型の薬」というような、呼び方になるかもしれません。

★実際、治療薬の効果は?

日本では、まだ正式に行なわれていないので、事例は少ないですが、効果が出ています。先日、朝日新聞が伝えた、京都大病院の例では、ある患者の場合、がんが、脳や甲状腺、頸椎や肺にあって、どこからがんが発生したかわからず、治療方針が決まらなかったそうです。そこで、遺伝子の検査を行った結果、ある遺伝子の異常が見つかり、それに適した治療薬を使ったところ、効果がみられたそうです。この京都大病院では、2015年から2年間で155人が検査を受け、9割の患者の解析に成功し、そのうち122人に候補となる治療薬が見つかっています。

★日本の検査の実情は?

日本のがんゲノム医療は、世界に遅れを取っていて遺伝子の検査について、その多くは、海外に任せているのが現状です。例えば横浜市立大病院は、国内初となる「がん遺伝子検査外来」を去年、始めました。画期的な外来ですが、実際の遺伝子検査は、アメリカの施設に依頼しています。ニューヨークの「スローンケタリングがんセンター」というところで、ここでは、400以上の遺伝子を調べることができます。手術でとったがんとその周りの正常な組織をアメリカに送ると、がんの原因とみられる異常な遺伝子と、候補となる治療法がアメリカから送られてきます。

★でも費用がかかるのが現状

当然、国内では、こうした治療は自由診療となり、費用がとにかくかかります。今ご紹介した、横浜市立大病院が去年始めた、がん遺伝子検査外来では、検査費用は自費診療となり、60万円ほどかかるそうです。また最初に事例を紹介した、京都大病院は、2015年からゲノム診療を行っていますが、検査だけで自己負担は、およそ88万円と言われています。一方、国立がん研究センター中央病院では、2013年から始めていますが、こちらは、検査で使う薬剤費だけで30万円かかりますが、現在は研究費で賄われています。ただ、これは稀なケースで、検査施設自体が少なく、そのほとんどは自費治療です。

★国を挙げてのプロジェクトとは!?

そうした状況を解決するため、今回、国立がん研究センターを中心に、国を挙げて、がんゲノム医療に取り組んでいこうというわけです。ゲノム医療プロジェクトでは、2つ大きな取り組みがあります。1つは「データを集めること」。もう1つは「薬を創ること」まずは希少がんの患者さんの遺伝子異常やたんぱく質などの情報を集めて、治療経過なども含めて、年間で、100例のデータの登録を目指すということです。そして、この秋から11の製薬メーカーが参加して、集めたデータなどをもとに、臨床試験を行って、新しい薬を創っていく方針です。

★どんな形でゲノム医療に受けることになるのか?

では、今後具体的に、どんな形で、がんゲノム医療に触れることになるのか。今年度中に、7つの施設が、中核拠点として指定される見通しです。合わせて、2年以内には全国各地の20ほどの施設を拠点病院とするということです。そうした拠点病院と、全国の400か所の各地域のがんを扱う病院が連携し、患者の紹介や相談にのる体制作りが進められていきます。がんゲノム医療は、全国どこでも受けられるよう、体制作りが今後進められます。それで、ゲノム医療の対象になる患者さんは、最大40万人を見込まれています。1年間に新たにがんと診断される患者さんは、およそ100万人以上いますので、近いうちに、そのおよそ4割の人が、がんゲノム医療の対象になるということです。

★課題は!?

一方で、課題となるのは、検査の質を確保する、体制作りです。アメリカには、検査の信頼性や、安全性を確保するための認証制度があります。一方、日本にはそうした認証制度はありません。検査の質をチェックする自前の仕組みを作ることも、必要ではないでしょうか。

 

日本全国8時です(松井宏夫)

解説:医学ジャーナリスト松井宏夫

 

松井宏夫の日本全国8時です(リンクは1週間のみ有効)http://radiko.jp/share/?sid=TBS&t=20170807080000

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