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16時間耐久・全曲ショパン!~ 横山幸雄さん

コシノジュンコ MASACA

2017年8月13日(日)放送

ゲスト:横山 幸雄さん(part 1)
1971年 三鷹市生まれ。1987年、 東京芸術大学音楽学部附属音楽高等学校在学中にパリ国立高等音楽院にフランス政府給費留学生として留学。1990年、19歳で第12回ショパン国際ピアノコンクールに出場し、第3位を受賞します。ワイン通としても知られ、ワインエキスパートの資格を持つほか、渋谷と京都でイタリアレストランのオーナーも務めています。

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JK:手はどうなってるの?・・・でも、そんな大きくないですね(笑)

横山:身体はデカいですけどね(笑)

出水:プロフィールを拝見してビックリしたんですが、2010年に、ショパンの全166曲を16時間かけて演奏して、「24時間でもっとも多い曲数を1人で弾いたアーティスト」としてギネスブックにも認定されているんですね!どういった経緯で挑戦しようと思ったんですか?

横山:ショパンコンクールで賞をいただいて、必然的にショパンを弾いてほしい、という依頼が多いわけです。僕もショパンが好きだったし、でも所詮ショパンは自分自身じゃないから、他人の曲を弾くことになるわけですよね。だとしたら、ショパン自身のことを知っているかが重要なことじゃないかなと思って、20代のころ1年に2回のペースで、7年かけて全曲演奏会をやったんです。でも、1回会っただけで分かる人と分からない人がいるように、7年終わったときに1年目・2年目を振り返ると、「そういえば、そんな曲もあったような気もするけど・・・??」みたいな曲もあって。いつかもっと短い期間で、まとめて演奏できないかなと思っていたんです。よく伝記ってあるでしょ? 美術なら回顧展とか。そういうように、音楽でいっぺんに全部みるというのが次のステップじゃないかと思ったんです。ちょうど1999年がショパンの没後150年だったのでそんな企画を出したら、「おまえ、頭おかしいんじゃないか?」って言われました(笑)

JK:いままで、全部いっぺんに演奏しようという人はいなかったのね。何日もかかるでしょ? お客様も大変ね。

横山:1時間の演奏会をやって1時間休憩、また演奏して休憩、という感じで、休憩もいれて16時間。朝の9時に開演して、一応その日のうちに終わりました。

出水:それすべて暗譜で演奏したんですよね?

横山:まあ、楽譜をめくってもらってもいいですし、自分でめくりながら演奏するのも可能なんですけど、でも何のためにやるかというと、一番の根本はショパンを深く理解するためのもの。だから、普段から弾いてる曲は暗譜で、初めて演奏する曲は楽譜を見る、ではない形にしたいなと思ったんです。

JK:ショパンの気持ちをくんで、ショパンになっちゃったみたいな感じ?

横山:でもショパンも、昔作った曲は忘れちゃったと思うんですよ(笑)

JK:ショパン本人もね! だいたい作曲家って個性的な人が多いじゃないですか。ショパンってどんな人?

横山:なんせ、会ったことがないので(笑)作品と言い伝えられていることから想像するに、非常に繊細な人だったんじゃないかなと。僕みたいな感じかな?

JK:んん~??

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出水:ショパン全曲演奏会は、毎年少しずつ形を変えて現在も継続中、2005年からは4年計画で演奏しているそうですね。

横山:そうです、最初はまず全貌をとらえる。ショパンの曲のなかにもいろんな作品があって、種類の分け方もいろいろあるんですが、まずはショパン本人が書いた作品。でも、書いたからといって全部発表したわけではなくて、ショパンが作品番号をふりわけて発表したものが中心ですが、作品番号をつけなかったもの・出版されなかったもの・亡くなった後に出版されたもの・亡くなった後に発見されたものなどがあります。ショパン自身は、自分が出版しなかったものは破棄してほしいと遺言を残しているですが、破棄するには忍びない、ということで、破棄せずに出版されたんですね。

JK:そういう破棄しなきゃいけないものも弾いているんですね。

横山:2年目以降は、ショパンの意に反して現在残っている「ショパンが書いたと言われる曲」を弾いています。

JK:ショパン、怒ってないかな??

横山:あきれてるかもしれませんね(笑)

JK:こんな人、150年後に現れるとは思っていなかったでしょうね!

出水:未発表の曲というのは、クオリティというのは違うんですか?

横山:これはなかなか難しいんですが、発表しなかった理由にもよると思います。ショパンは10代のころにたくさん曲を書いているんですが、そのころ彼は出版する立場にいなかった。当時ショパン自身がすごく出版を熱望した「ソナタ第1番」という曲があって、演奏旅行に行くたびに楽譜を携えて出版社に直談判した。そういったことをしないと有名になれないわけですよね、今みたいにインターネットがあるわけじゃないから。だけど、無名の若者の訳の分からないソナタなんて誰も出版しなかった。そうこうしているうちに、10年ぐらい経ってショパンが有名になって、出版社のほうから「あのソナタを出版させてくれ」と言い出してきた。するとショパン本人が、「それは出版するに値する作品じゃないから、もう出版しない」と拒否した、という作品もあります。

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JK:このまえ紀尾井町ホールで演奏されましたが、あのときはショパンじゃなかったですね。ものすごく難しかった!見てても力が入りますよね。

横山:あのときはラフマニノフを演奏しましたね。あれは難しい作品なんですよ、音符の数がものすごくありますからね。楽譜って白い紙に印刷されているけど、黒い部分のほうが多いんじゃないかなって(笑)

出水:ショパンのほかにも、ベートーベン、チャイコフスキー、シューベルト・・・さまざまな作曲家の中で、実はこの人が一番好き、というのは誰ですか?

横山:そんなこと言えるわけないじゃないですか!(笑)

JK:でも横山さんイコール、ショパンですよね。何といっても。

横山:ショパンは自分の家に帰ってきたような感じ。僕自身も曲するんですが、自分の作品よりもショパンのほうが“我が家”な感じがします。僕自身は「自分が弾きたい」という感覚もありますけど、それよりも「誰かに聞いてもらいたい」という気持ちで作られた曲もあるんです。楽譜に残っているだけだと単なる楽譜。美は作品そのものが訴えてくることがありますけど、作曲家の自筆譜は実際には音が出ないので、それを演奏するのが僕たちの役目。だからどんな作品が好き・どんな作曲家が好きというのは、それを聞いてくれる人がどんな人で、誰に聞かせるかという観点から考えますね。

JK:そうですね、弾いてもらって初めて評価が出るんですものね。人に見てもらったり、聴いてもらったりするため。でないと自己満足になっちゃう。

横山:そんなこと考えなくても、素晴らしいものが生まれてくることもあると思いますが、音楽の場合、僕たち演奏家は作品を作り出しているのではなくて、その作品を甦えらせているわけです。どういう風に聞いてもらいたいか、どんなシチュエーションで誰なのか、その日がどんな日でどんな気分なのか・・・

JK:お客様の反応によって、気持ちが毎回違う?

横山:そうですね。ふつうの大きなホールでの演奏会はプログラムを決めて演奏しますけど、分のレストランで毎月演奏するときは、曲目を決めずに、みなさんこんにちは、って言って、その時頭に思い浮かんだ曲を演奏する。

JK:もう会話なんですね。今度行きたいわね! でも、そういう風に自分自身で環境を作って、美味しいもの食べて、ピアノを弾いて、という発想はなかなかないですよね。

横山:僕はわりと気が多いのか、ピアニストとしてピアノ以外に何をできるのか、ということをなんとなく考えちゃう。ピアノは当たり前なので、それ以外の広がりで何ができるか。そこで見えてくるものが、演奏にフィードバックできたらいいなと。

JK:大きな演奏会場も良いけど、小さいところで、食事しているのか聞いてるのか、一体化してわからないような環境。いいですね。

横山:僕にとって音楽は、まさにそういう感じです。

=OA楽曲=
M1.  小犬のワルツ / 横山幸雄

M2.  ノクターン 第2番 /  横山幸雄