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【映画評書き起こし】宇多丸、『ジョン・ウィック:チャプター2』を語る!(2017.8.12放送)

ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル

20170812_05

実際の放送音声はこちらから↓

宇多丸:
ここから11時までは、劇場で公開されている最新映画を映画ウォッチ超人こと<シネマンディアス宇多丸>が毎週自腹でウキウキウォッチング。その<監視結果>を報告するという映画評論コーナーです。今週扱う映画は先週、「ムービーガチャマシン」(ガチャガチャ)を回して決まったこの映画……『ジョン・ウィック:チャプター2』

(テーマ曲が流れる)

キアヌ・リーブスが伝説の元殺し屋に扮した『ジョン・ウィック』のシリーズ第二弾。前作でロシアン・マフィアを相手に繰り広げた壮絶な復讐劇から5日後。イタリアン・マフィアとの抗争に巻き込まれたジョンは世界中の殺し屋から命を狙われることに。監督は前作に引き続きチャド・スタエルスキ。共演はジョン・レグイザモ、イアン・マクシェーンら前作からのキャストに加え、今作からラッパーのコモンやルビー・ローズ、ローレンス・フィッシュバーンらも登場ということでございます。

ということで、この『ジョン・ウィック:チャプター2』を見たよというリスナーのみなさん、<ウォッチメン>のからの監視報告(感想)をメールなどでいただいております。ありがとうございます。メールの量は普通。まあ公開からちょっと時間がたってしまったのでね。ちょっと熱気というところでは冷めてしまった方もいらっしゃるかもしれませんが。賛否の比率は「賛」が半分。「良くも悪くも」の中間票が4割ぐらい。全否定は1割ぐらいと少なめでした。「前作よりもパワーアップしている」「バトルアクションシーンが盛りだくさんで、しかもどれもが面白い」「話もキャラも極端すぎて思わず笑っちゃった」などが主な褒める意見。逆に否定的な意見としては「アクションはいいけど話が単調。飽きちゃう」「話が尻すぼみで食い足りない」などがございました。

代表的なところをご紹介いたしましょう。ラジオネーム「あからさま」さん。「『ジョン・ウィック:チャプター2』、最高でした。主人公が無敵の強さを見せるアクションは強すぎることで笑えてくるものが多いですが、今作はそれを超えてもうコメディーの域に達しています。真面目にやっているからこそ、超笑える。車を取り戻しに大暴れするキアヌ。(そのせいで車は廃車寸前)」。ねえ。もう、本末転倒感が半端ない感じがおかしいですよね(笑)。「……殺し屋界絶対の掟、血の契約を断るキアヌ。(直後にグレネードランチャーで家を爆破される)。懐に隠した銃で追跡者と撃ち合うキアヌ。(地下鉄ホームの雑踏で危ない!) 突っ込みどころが多すぎるのに、展開されるのは超絶本格アクション。笑えてくるぐらいすごい。『笑える』と『すごい』を突き詰めたような男心をくすぐる最高の1本でした」。

ちなみに輸入ブルーレイで見た時には、音声解説で、もう監督とキアヌ・リーブスがキャッキャキャッキャ言いながら。アクションシーンでもゲラゲラ笑いながらやっていましたからね。楽しそうでしたよね。はい。ラジオネーム「くまくま」さん。こちらはダメだったという方。「前作はキアヌのやりすぎが大きな魅力となり、切れ味のよい鮮烈な作品だった。しかし今回はなにか、映画全体がやりすぎになってしまい、そこにキアヌの魅力が埋没。ぼやけてしまっている。感情移入できないし、本シリーズの魅力であるガンフーアクションの刺激にも麻痺してしまったような印象。さらに尺が21分も延びて終盤は睡魔に襲われてしまった」という方もいらっしゃいました。まあ、たしかにね、ずっと延々と続く、煉獄を見せられる、っていうところはありますからね。

はい。ということで『ジョン・ウィック:チャプター2』、私も実はこれ、ガチャが当たる前にもうすでに劇場で1回見ていて。その後、今週角川シネマ新宿で見て。その後、輸入ブルーレイがすでに発売されておりますので、こちらを音声解説とか込みで。計3、4回ぐらいは通しで見ているという感じでございます。一作目の『ジョン・ウィック』(2014年)、当コーナーでは2015年10月31日にウォッチいたしました。その時点で、アメリカ本国ではもう1年前に公開されていて、作り手たちの予想すら大きく超える大ヒットを記録。キアヌ・リーブスも「こんなにヒットするとは思わなかった」(とインタビューなどで言っている)という。で、すでに全三部作構想での続編の製作が決定している、という話をその評の中でもしましたけど。



とにかくその一作目の『ジョン・ウィック』。物語の発端こそ、『映画秘宝』のギンティ小林さん命名……しつこく言いますよ。これ、僕がつけたんじゃないですからね。ギンティ小林さん命名ジャンルである「ナメてた相手が実は殺人マシーンでした」物、そのものですよね。ですし、その後、旧知のギャングのボスと、彼のドラ息子を挟んだ因縁話になっていくあたり、同じくニューヨークが舞台ということもあって、このコーナーでは2015年5月30日にウォッチした、リーアム・ニーソン主演の『ラン・オールナイト』という映画。これともそっくりだったりしましたよね。ちなみに、『ラン・オールナイト』もライバル殺し屋はコモンですからね。コモンは『スモーキン・エース(/暗殺者がいっぱい)』といい、こういう役ばっかりやっている(笑)という話がありますけどね。


とにかく要は、プロット自体は似たような作品、いくらでもあるような……要はジャンルムービーですから。まあ似たような話は他にもあるんですが、ただですね、同時に、そういうジャンル的な枠組みをフレッシュに刷新するような特色を、大きく言って2つ、持っている作品だったと思います、『ジョン・ウィック』は。まずひとつ目は、キアヌ・リーブスの言わずと知れた代表作である『マトリックス』シリーズに代表されるような――『マトリックス』シリーズは1999年から始まっていますけども――2000年代初頭アクション物。ざっくり言えば、主に香港映画……マーシャルアーツ映画もそうですし、ジョン・ウーとかの香港ノワールもそうなんですけど、香港映画の影響を強く受けた、アンド、VFX技術、まあCGとかの進化を反映した、非常に様式化、デザイン化された、人工感の強いアクションというか。それがアーリー2000年代のアクションなんですけど。

その2000年代アクションの様式性、スタイリッシュさ、ファンタジー性みたいなものは脈々と受け継ぎつつも、アクションそのものの構築とか見せ方は、2010年代中盤以降、現在のトレンド……たとえばタクティカル性(実戦性)も踏まえた、俳優自身の体技。ちゃんと俳優自身が訓練して、実際にやっている体技込みで、しっかりじっくり、ブレブレのカメラとかチャカチャカした編集じゃなくて、ちゃんとじっくりワンショットのアクションとして、リアルにアクションを見せる作りというのになっている。つまり、2000年代初頭アクションの様式美と、現在のタクティカルな、実戦性のある本物の技術の両立。「ファンタジーとリアルの両立」を成し遂げたアクションというのを、『ジョン・ウィック』は確立した。それがまず、その『ジョン・ウィック』の特色。ひとつ画期的なところだったということですね。

たとえばやっぱり、柔道・柔術メインの近接格闘技と、やっぱり近接戦の実戦的なシューティングスタイル。センター・アクシス・リロック・システム(Center Axis Relock System)っていうね、その銃の撃ち方。それを組み合わせた「ガン・フー」。まあ、カンフーっていうよりは柔術なんですけども、ガン・フーアクションという。要するに、1個1個は……たとえば柔術であったり、センター・アクシス・リロック・システムっていう銃の撃ち方、その1個1個はリアル、タクティカルなものなのに、それがあまりにも流麗な一連の流れとして、流れるようなアクションで見せるので、ちょっと常人離れ、現実離れした動きにも見えるという。そういうバランスだと思ってください。

で、それを成し遂げた、実際にこれを作り上げたのは、監督であるチャド・スタエルスキさんと、これはノンクレジットですけど実際には共同監督をしているデヴィッド・リーチさんという方。この方たちが立ち上げた87Eleven(エイティーセブン・イレブン)というスタントアクションの会社。この技術とアイデアがあってこそのものなんですね。はい。ちなみにこの監督、チャド・スタエルスキさんは、『マトリックス』でキアヌ・リーブスのスタントダブルを演じていた方ですね。ということで、旧知の、スタントアクションを知り尽くしたこの2人に、自分に送られてきた脚本を送って、「初監督してみれば?」っていう風にやったキアヌ・リーブスという、こういう構図があるわけですけども。

ということで、要するにファンタジーとリアルの両立を成し遂げたアクション。これがまずひとつの特色。そして、もうひとつの特色は、まさにその、ちょっとタクティカルすぎて、実戦性が高すぎてちょっとファンタジーの域に入っている、というようなこのアクションのバランスとも関係しているんですけども、主人公のジョン・ウィックがもともと属していた殺し屋業界独特のルール・世界観……たとえば、ホテルコンチネンタルという奇妙な舞台が出てきますが、それに代表されるような殺し屋業界独特のルール・世界観。言ってみれば、『ルパン三世』とか、鈴木清順の『殺しの烙印』……殺し屋のランキングがあるとかさ。あとはまあ、アメリカ映画だとさっきも出ました『スモーキン・エース』とかそういう、奇っ怪な殺し屋がいっぱい出てきたりするような、そういうような感じ。

そういう、言ってみればアメコミというか、グラフィックノベル的なケレンがですね、独特の……字幕表現なんかもまさにその一環ですよね。字がこう、フーッとさ(浮かび上がる)。で、強調する字に色がついていたりする。あれなんかも、グラフィックノベル的なケレンの表現なわけですけど。まあ、作中では語られていない設定も含めて、こちらの、観客の想像力を非常に刺激して、とても楽しい部分。これがやっぱり『ジョン・ウィック』の、もうひとつの特色でしたよね。要は、「世界観自体が売り」というのは、はっきり言って今時のエンターテイメントの潮流とも非常に一致していたわけです。なので、『ジョン・ウィック』は特に……たとえば(同じく“ナメてた相手が殺人マシンでした”物の傑作である)『イコライザー』よりも『ジョン・ウィック』が人気が出るのは、そういうことだと思うんですね。「世界観ごと売りになっている」という部分だと思うんですね。


ということで改めて整理すると、その1、「様式美とタクティカル性を高い次元で両立させた、画期的なアクション設計」。そしてその2、「グラフィックノベル的ケレンにあふれた殺し屋業界設定、その世界観の広がり、面白さ」といったところですね。この2つが、2014年の第一作目『ジョン・ウィック』を、非常に特別な作品に仕立てたということだと思うんですけども。ということで、じゃあ今回の『チャプター2』はどうか? というと、これまたごくごくシンプルに、ちょっと先に結論を言い切ってしまえば、今回の続編『チャプター2』はですね、案の定というべきか、まさにその2点に焦点を絞って、さらに拡大・発展をさせた……つまり、前作の面白かったところ、よかったところだけを倍増したという、そういう一作になっております。

ちなみに今回はですね、本当にチャド・スタエルスキさんの単独監督作になっています。87Elevenの相棒、デヴィッド・リーチさんはじゃあどうしているか?っていうと、本作では製作総指揮に回って、監督としてはなんと、シャーリーズ・セロンがやはり87Elevenの特別トレーニングを受けてめちゃめちゃなアクションを見せるらしい『アトミック・ブロンド』。そして、来年に控えている『デッドプール2』の監督に抜擢されたということで。これだけでもやっぱり、いかに『ジョン・ウィック』という作品がアクション映画として画期的だったか、評価されているか、っていうのの証であるということだと思うんですけどね。ということで、今回の『チャプター2』、なにしろディテールを味わい尽くしてナンボの作品なのでね、順を追って行きますけども。はっきり言って銃の話が今回の評、めちゃめちゃ多いです(笑)。すいませんね。私ね、好きなんでね。

まずね、15分ぐらい続くアバンタイトルシーンがあるわけです。タイトルが出るまで15分ぐらい場面があると。前作のエンディングから5日後という設定。で、まずね、ニューヨークの――ロケはモントリオールでしているらしいんですけど――ビルに映画が映し出されている。あれはバスター・キートンなわけです。映画的アクションの大先輩、バスター・キートンに敬意を表しつつのバイク・カーチェイスシーンが始まるわけですけど、要はここから15分間、ジョン・ウィックとは何者か? もっと言えば、『ジョン・ウィック』っていうのはどういう映画なのか?っていうのを、短時間でテンポよく観客におさらいさせていく、というくだりなわけです。

まずね、前作のボスの弟にあたる、ピーター・ストーメアが演じているロシアン・マフィアのボスが、「ブギーマン」伝説を語るわけです。「鉛筆1本で3人殺したんだぞ。彼について語られている伝説は……(『全て本当だ』ではなくて)全て控えめに語られている」。最高!っていうね。まあ、そういうエピソードはもちろんのこと、たとえばそのピーター・ストーメアのところに電話がかかってきて。で、話しているかと思えば、途中でガチャン!って切られるとか。そういう「かならず会話は途中で一方的に打ち切られる」とか、あるいは、「なにか大事な話は、隠語表現を含め、あくまでも遠回しに語られる」とか、そういう『ジョン・ウィック』特有のコミュニケーションスタイル。こういうのもオープニングで存分に発揮されますし。

あとですね、もちろん車を武器のように扱う「カー・フー」アクション……そう監督たちが言ってますので(笑)。カーフーアクション、まあ、車でボーン!って、「車で人を殴る」っていうアクションね。前回もやっていましたけども、今回はよりそれをガーン! と強調して、頭のところでやったりとか。あと今回、改めてブラジリアン柔術チームに集中訓練してもらって強化したという、まあいかにも『ジョン・ウィック』流な、柔術・柔道を中心とした格闘術しかり。ということで、まあ『ジョン・ウィック』とはどんな映画か? というのを提示していく、このアバンタイトルシーンがあるんですけど。

特に僕が思わずうっとりしてしまうのはですね、前作のジョナサン・セラもよかったんですけど、今回の撮影監督ダン・ローストセンさん。『クリムゾン・ピーク』とかを最近だと撮っていますね。ダン・ローストセンさんと、あとカラリストさんの仕事がとってもいいんだと思うんですけど、この15分あるオープニングシーンから、この後も結構全編、映画全体に渡って、今回は色調が完全に統一されているんです。ネオンライトのブルーと、限りなくピンクに近い赤というか、限りなく赤に近いピンクというか。とにかく、レッドピンク。ネオンライトのブルーとレッドピンクで、色使いが完全に統一されているんですね。

前作でいうとこれ、この色使いは、レッドサークルという、ロシアン・マフィアが入り浸っているクラブで大殺戮のシーンがあるんですけど、レッドサークルのシーンがこの色調なんです。なんだけど、結果的に『ジョン・ウィック』という作品のイメージカラーといえば、やっぱりこのネオンブルーとレッドピンク、という風に非常に印象づけられている。ビデオのパッケージとかでもその色が使われていたりして。ということで、その青とピンクレッドを全編に統一してやっていると。オープニング、まさにもう、始まってすぐにそれですから。みなさん、注意してぜひ見ていただきたいんですけど。あるいは、たとえば中盤。地下道で、壁全面に、オーロラビジョンというか、テレビ画面みたいになっているところとかがやっぱり……あのバイオリニストの殺し屋と戦った後、画面の色がどうやって変化するか。「ああ、また来た。青とピンク!」とかですね。

地下鉄のホームまで――白で統一されていて、そこがまた現実離れしているんだけど――その地下鉄のホームにまで、ピンクのネオンが灯っているんですよ。という感じで、今回の『チャプター2』では全編わりと徹底して、このネオンライトのブルー、ピンクレッドというイメージカラーを統一している。それによって、現実世界が舞台なはずなのに、現実のニューヨークが舞台のはずなのに、どこか夢幻的というか、なんかずっと夢の中にいるような感覚をもたらしているんですね。で、それが後ほど言いますが、とある物語展開とも大変にマッチしていて、大変大きな効果をあげていると私は思います。非常に美しい。

さて、とにかくなんだかんだ言って、また殺しの世界に引きずり戻されてしまったジョン・ウィック。これ、あれもおかしいですよね。こうやって武器をもう1回、セメントで丁寧に手間をかけて埋め直して。「はい、ようやく作業終了! これで俺もようやくカタギに……」「ピンポーン!」っていう(笑)。さっきから言っている、なんでも、どんなものであれ「一方的に中断させられる」っていうのが『ジョン・ウィック』の世界なんですよね。ということで、嫌々ローマに向かってですね。ちなみに、なんで今回ローマが舞台か?っていうと、監督は「スーツが似合う街だから」って。たしかに『ジョン・ウィック』というのは、スーツ物というか、スーツ映画なんですよね。美しいスーツ姿を愛でる作品でもあるので。「スーツといえば、やっぱりイタリアでしょう!」ということで。

まあ、ローマに向かって彼の「お仕事」をするわけですけどね。前半の見せ場、このローマの街の地下にある、地下墓地での銃撃戦なんですけど。これちょっと大げさに聞こえるかもしれませんが、僕はマジで、映画におけるガンアクションの歴史において……特にマイケル・マン、「マン師」の、『ザ・クラッカー(/真夜中のアウトロー)』以降、非常にタクティカルな、実戦的なコンバットシューティング技術というのが映画に取り入れられるようになって以降ですね(※宇多丸補足:ちなみに後述するタラン・バトラー氏は近年のマイケル・マン作品にもガン・インストラクターとしてかかわっています)、ガンアクションはどんどん進化してきたんですけど、この『チャプター2』の、このローマ地下墓地での銃撃戦は……一作目もすごかったですけど、この『チャプター2』で、ついに決定的にネクストレベルに行ったな、という風に思うぐらい、今回のガンアクションシーン、このシーンはすごいです。ガンマニア的に見て、もうすごいです、ここは。

実際に前作から最も強化されたのは、このまさにガンアクションの部分。チャド・スタエルスキ監督も、「あらゆるアクションには通じているんだけど、自分はちょっとガンアクションだけは弱い」というので、集中トレーニングなどを受けて……これ、詳しくは『月刊Gun Professionals(ガンプロフェッショナルズ)』という専門誌の、2017年8月号『ジョン・ウィック』特集が本当に詳しい、素晴らしいので、ぜひこれを読んでいただきたいんですが。途中でね、そのローマで、キアヌ・リーブスが、ピストル、アサルトライフル、ショットガンと、3つ銃を持ち替えていくシークエンスなわけですけども。これね、道の途中に、予め銃を1個ずつ置いていく描写を見て、ディレクターの箕和田くんは「『男たちの挽歌』のオマージュじゃないですかね」なんてことを言っていて。たしかにそれもあるかもしれないけど、それ以上にこれは、実際にあるスリーガンマッチ(3 GUN MATCH)という競技のスタイル、そのままなんですね。ピストル、アサルトライフル、ショットガン、この3つを持ち替えて、どんどん競っていくという競技のスタイル。

本作のシューティングインストラクターを務めたタラン・バトラーさんという方。この方は、ハリウッド映画のガンインストラクターをいっぱい務めているんですけど、この方がまず、スリーガンマッチのチャンピオンに何度となくなっているような方で。で、キアヌ・リーブスと監督のチャド・スタエルスキさんは、このタラン・バトラーさんのところでトレーニングをするうちに、当初脚本にはなかったこのスリーガンマッチのスタイルを映画の中に取り入れたら面白いんじゃないか? ということで、取り入れたということなんですよね。ただし、(劇中に出てくる)ショットガンを持ちながら、動きながら(弾を)装填していくスタイルは、キアヌ・リーブスが創作したらしいですけど。

で、準備の段階で、「銃ソムリエ」、ピーター・セラフィノウィッツさんという(俳優が演じている)、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』とかにも出ていましたけど、あの銃ソムリエが勧めてくる銃も、単にグロックだとか、単にAR-15であるとか、ベネリであるとかじゃなくて。そのタラン・バトラーさんの会社、タラン・タクティカル・イノベーション(TTI)社の、最新カスタムなんですよ。ちょっとソムリエも説明していますけども。「スライドにちょっと、ポートを開けています。きっとお気に召しますよ」とかね。最新カスタム。もう、ここだけで「うわっ、タラン・バトラーのカスタムだ!(よだれ、ダラ~ッ!)」っていう感じなんですけどね(笑)。

で、そんでもって、それを実際に扱うキアヌ・リーブスのアクションを、マガジンチェンジ……弾切れもちゃんとして、マガジンチェンジを毎回ちゃんとやるとかですね。チャンバーチェック、ちゃんと弾がここ(薬室)に入っているかどうか、キッてかならずチェックする。マガジンチェンジやチャンバーチェックなど、本当に細かい、まさしくタクティカルな動作込みで、できるだけカットを割らずに、ちゃんと一連のアクションの流れで見せきるという、これをやっているわけです。本当にこのシーンだけで、どれだけフレッシュなガンアクションのアイデアが詰め込まれていることか!っていうね。

たとえばね、弾切れしてしまったショットガンを、銃身を敵に押し付けたまま、これも実際にマッチなどで使う、マッチセイバーズ・シェルホルダーという、横に一発予備の弾が付いているやつで、チャキッて、指でこうやって弾を一発入れて、ドン!って撃つとかですね。いままで他の映画では見たことがない、非常にタクティカルなんだけど、あまりにそれが流麗なので常人離れもして見える、映画的楽しさ、美しさにもあふれているという、本当にネクストレベルに行っているガンアクションでしたね。本当にね、もう惚れ惚れしました。その一方で、後半、美術館を舞台にしたガンアクションシーンでは、今度はアラン・コーゲンさんというイスラエルの元テロ対策部隊の方がトレイナーについた、さっきから言っているセンター・アクシス・リロック・システム。要は狭い場所での近接ガンアクションですね。それ全開での、いわゆるガンフーアクションをやるという。

これね、そこで渡される銃……ローレンス・フィッシュバーンが笑っちゃうほどオーバーアクトでやってみせる、「Somebody, Please(get this man a gun)!」って白目をむいてこうやって言う(笑)、あのバワリー・キングからもらった銃、キンバー・ウォーリアー。キンバーというメーカーの、M1911系、ガバメント系のウォーリアー……要するに「上質だけど最小限の銃」、カスタムなわけですね。で、7発しかもらえず、当然ながら弾切れして、そこでどんどん敵の銃を奪っていくんだけど、.45ACPっていう同じ弾、そしてシングルスタックのマガジン、要するに、その銃(ウォーリアー)に入れられる(弾を持った)敵を見つけると、そのマガジンだけは、キンバーにまた入れるわけです。つまり、大事にちゃんと使っている。しかもそこで、片手でチャンバーチェックするとかね、もういちいち、「フゥーッ!」っていうね(笑)、感じだと思います。

で、やっぱり無駄にカットを割らず……たとえばちょっと前の流行りである、やたらと揺れる(手持ち)カメラとかもやらずっていうあたりで、非常に見事な見せ方をして。とにかくこういう一連のアクションを……やっぱりこれは、ミュージカルにおける歌やダンスと同じく、マーシャルアーツ映画において格闘をそれ自体を愛でるのと同じく、「ガンアクションそのもの」を愛でることこそ、やっぱりガンアクションというジャンルの真髄だとするなら、これは完全にそれの最新進化系だと思います。一方ね、さっきから言っている、殺し屋業界の世界観、設定を拡大していった部分、というところで……それによって、まるでこの『チャプター2』からは、世界には殺し屋しかいないのか? 普通の人は住んでいないのか?(笑)っていうぐらいの感じ。なんなら、全てジョン・ウィックというか、1人の狂った男の、脳内の妄想なんじゃないか?って思えてくるぐらい、ちょっと悪夢的な、パラノイアックなムードがどんどん濃くなってくるあたりも、今回の『チャプター2』の大きな魅力ですね。

中盤、ありとあらゆる敵から襲われて、っていうあたり。特にやっぱり、好敵手コモンとの戦いのあたり。セルジオ・レオーネ・オマージュなアップからの、戦闘開始!なところとかですね……今回はフランコ・ネロも出ていますから、そういうマカロニ・ウェスタン・オマージュもあるんですが……で、人混みの中、2階と1階で「パスッ、パスッ!」って撃ち合うとか(笑)、地下鉄車両内、人が減るのを見計らってからのナイフ戦とか、とにかく戦い方のアイデアが豊富だし、どんどんどんどん、それに従って世界観が異常になっていく。それが極に達するのが、クライマックスの美術館、「鏡の間」の戦い。これはもちろんですね、オーソン・ウェルズ『上海から来た女』から、もちろんブルース・リー『燃えよドラゴン』のクライマックスのオマージュなんですけど、同時に、要するに鏡の間の戦いっていうのは、さっきから言っているちょっとパラノイアックなニュアンス、1人の男の脳内妄想なんじゃないか?っていう感じに、拍車をかける舞台装置なわけです。

たとえばジョン・ウィック、鏡に写った顔が、(自動ドアになっていて)バーッと開くと、そこにルビー・ローズ演じる女殺し屋の顔が、バッとそこにある。つまり、全て自分の中の、復讐中毒……「お前、ただの復讐中毒になっているだけだ」って言われてましたけど、正しくその通り。暴力の虜になった男の脳内の、本当に悪夢のようなサイクルの中で、グルグルやっているだけ。この悪夢感が、この鏡の間の戦いで増している。しかも、戦い方はタクティカルなんですよ!(笑)っていうね。ラストに至ってはもう、完全にパラノイアですよね。「世界のみんなが敵に見える!」(笑)。逃げろ!……って、どこへ?っていうね。

三部作の真ん中、二作目エンディングならではの、この宙吊り感。本当に嫌いじゃないですし……僕はやっぱりね、一作目の面白いところを何倍にもした、とんでもない二作目。この二作目で、僕は『ジョン・ウィック』っていうシリーズの本当のすごさを知りました。三作目はさらにすごくなること、間違なしじゃないでしょうか。僕は文句なしに楽しかったです。もう、最高に楽しみました。ガンアクション映画のネクストレベル、ぜひリアルタイムで劇場でウォッチした方がいいですよ、これ!

(ガチャ回しパート中略 ~ 来週の課題映画は『スパイダーマン:ホームカミング』に決定!)

以上、「誰が映画を見張るのか?」 週刊映画時評ムービーウォッチメンのコーナーでした。

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