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「もの忘れに効く薬」が続々登場。でもご注意を!

森本毅郎 スタンバイ!

あれっなんだっけ?あの人の名前なんだっけ?という「あれ」や「それ」やのモノ忘れ。そんな中年期以降の、モノ忘れに効く市販の薬が最近、続々と登場しています。こう聞くと、使ってみたい、と思う人が多いと思いますが、同時に注意してほしいことも。8月21日(月)の松井宏夫の「日本全国8時です」(TBSラジオ、月曜あさ8時~)で解説しました。

★もの忘れの現状

まず、日本のモノ忘れの現状ですが、ある製薬会社の調査では、40代を過ぎると、早くも物忘れを自覚する方が増え始めて、50代を超えると6割以上が「このままではいけない、何とかしたい」と思いながら、実際には、何も対処していない、どうしていいかわからないという実態があったそうです。そうしたこともあり、モノ忘れに効くという薬が、市販薬として次々出てきたわけです。

★ひと月、4~5千円

では、モノ忘れに効くという薬のうち、今日は代表的な3つをご紹介します。

まず1つ目。森下仁丹が今年3月、ロート製薬と一緒に発売したのが、「キオグッド」。記憶がグッドになるという意味です。顆粒タイプ、90包入りだと、税抜き5400円・・・1日3包を飲むため、30日分です。

2つ目は、小林製薬が、6月28日発売したのが、錠剤タイプの「ワスノン」。こちらは勝手な解釈ですが、恐らく「わす」れることが「ノン」無くなるという意味です。錠剤タイプ、168錠入りだと、税抜き3700円・・・1日6錠で、28日分です。

最後3つ目は、クラシエ薬品から、先月発売された薬で「アレデル顆粒」です。その名の通り、「あれ」なんだっけ?というものが「出る」という意味です。顆粒タイプ、42包入りだと、税抜きで1900円、1日3包を飲むため、2週間分。1か月で3800円くらい。

★もの忘れに効く根拠は?

名前だけ聞くと冗談みたいですが、一応、国もお墨付きがあって出てきた薬なんです。国がお墨付きを与えたのは、古くから漢方薬に使われてきた「オンジ(遠志)エキス」です。先ほど紹介した3つの薬には、共通して、このオンジという同じ成分が使われています。

オンジとはイトヒメハギという植物の根を乾燥させた生薬で、そのエキスが入っています。中国最古の薬物學所にも載っていて、東洋医学では健忘に効く薬として使われてきました。このオンジについて、厚労省は2015年12月、用法・用量などのガイドラインを示し「中高年以降のモノ忘れの改善」の効果・効能があるとしました。

また、海外でも研究が行われていて、2004年、雑誌「ナチュラルメディシン」に発表された研究でも興味深い結果が出ている。物忘れは、脳内の神経機能の低下が原因とされるが、オンジをマウスに与えたところ、脳神経細胞障害などが回復する効果があったということです。

★もの忘れの薬の注意点1=一番大切なのは脳トレ

ただ、この「もの忘れに効く薬」というのは、値段はかなりしますね。1年で5万前後かかる計算です。医師に伺うと、モノ忘れについては、薬ばかりに頼らず、日頃の予防が大切だということです。例えば、日々の運動、趣味をもつ、頭を使う事などで、中高年以降の物忘れは改善されます。まずは頭を使う、そのことを意識する方が先です。そうやって頭を使わなければ、薬だけ飲んでいても、効果は薄いでしょう。

★もの忘れの薬の注意点2=認知症は別物!

モノ忘れの薬を使う前に注意して欲しいことがあります。言葉や記憶が出てこない「あれ」や「それ」は、本当にモノ忘れなのかどうか?ここは誤解されがちなんですが、「単なるモノ忘れ」と「認知症」は別物です。そして、先ほどご紹介した薬はモノ忘れの薬で、認知症の薬ではありません!

認知症の場合、できるだけ早くから、「認知症の薬」を飲み始めることが重要です。モノ忘れと勘違いして、モノ忘れの薬を飲んでいると、その間に、認知症がどんどん進み、取り返しがつかなくなる可能性もあります。厚労省も販売時には、モノ忘れの薬を認知症に使う人がでないように、注意喚起するようメーカーに求めています。

もちろん今の認知症の薬は、認知症の進行を止めるだけで、完全に治す薬ではありません。ただ、まだ軽いうちに、認知症の薬を正しく飲み始めれば、薬の効果が長持ちすることがわかっています。当たり前ですが、認知症なのに、モノ忘れの薬を飲むよりは、正しく作用します。

★もの忘れと認知症はどう違う?

「物忘れ」と「認知症」は似ているようですが、異常が起きている場所が、異なります。私たちは日常的な出来事や、勉強して覚えた情報など「新しい記憶」は、脳の真ん中にある、タツノオトシゴみたいな形の「海馬」という場所で整理整頓します。その後、その記憶は「古い記憶」として脳表面の「大脳皮質」にためられていきます。モノ忘れは「新しい記憶」に関わる海馬の神経細胞の数の低下や、機能低下が原因です。一方、認知症は、「古い記憶」に関わる大脳皮質全体の機能障害です。特に大脳皮質の中の、思考や感情、理性、性格などを司る前頭葉に障害が起き、記憶力以外にも、様々な認知症特有の症状が出てきます。

★もの忘れと認知症の見分け方は?

ただ記憶が出てこないのはモノ忘れですが、認知症の場合は、一段と深刻な症状が出ます。認知症が原因のモノ忘れは、記憶のすべてを忘れてしまっています。どこかにモノを置き忘れたとすると、「どこにモノを置いたのか思い出せない」のはモノ忘れ。「忘れたこと自体を忘れてしまう場合」は、認知症の可能性があります。また、物事の手順がわからなくなるというのも、認知症の症状です。電気器具の使い方や調理の手順がわからなくなる、という場合は認知症を疑いましょう。また記憶力以外に「意欲」が低下し、お風呂が億劫、身だしなみがだらしないなども注意

★怪しい場合は、もの忘れ外来で検査を!

ただ、モノ忘れなのか、認知症なのかは、素人には見分けがつきにくいかもしれません。その場合は「もの忘れ外来」で、専門の医師に検査してもらうことを勧めます。「もの忘れ外来」は最近増えていますが、関東では、国立精神・神経医療研究センターや筑波大学附属病院などが有名です。また、もの忘れ外来では、ご本人の生活状況が診断、治療に重要な情報になります。その状況をきちんと説明できるご家族などの同伴があると、より詳しく調べられます「もの忘れ外来」が近くに無い場合は、大きな総合病院の神経内科や脳外科で受診をしてくだい。

 

日本全国8時です(松井宏夫)

解説:医学ジャーナリスト松井宏夫

 

松井宏夫の日本全国8時です(リンクは1週間のみ有効)http://radiko.jp/share/?sid=TBS&t=20170821080000

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