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おすすめラジオクラウド Session-22「『この世界の片隅に』を世界はどう見たのか?」

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こんにちは。文字起こし職人のみやーんです。

僕が選んだラジオクラウドのおすすめコンテンツを紹介するコーナーの第六回目。今回は『荻上チキ Session-22』より「『この世界の片隅に』を世界はどう見たのか?」です。

2016年11月の公開開始以来、異例のロングラン上映を続けるアニメ映画『この世界の片隅に』。アメリカやフランス、アジアなどでも続々と公開スタートし、評判を呼んでいるようです。そんな『この世界の片隅に』の監督であり、各地の上映会場を回り続ける片渕須直さんをスタジオに招き、日本や海外でこの作品がどのように受け止められ、どのような反応があるのか? について、海外在住の方々からのレポートも交えながら話していました。

まずは片渕須直監督が日本全国を回って出会った観客の方々からの反応を紹介。映画の主人公であるすずさんと同年代である観客の方からの反応として……

ついこの間お目にかかった90代の方は「これは自分の自己証明でだ。自分が生きてきた時代がそのまま描かれているような気がする。ああいうところに私はいたんだということを証明してくれる映画だ」っていう風に言ってくださったんですね。もちろん僕らは見たことがない世界を描いているから、そういう風にある種の太鼓判を押していただいてるのはありがたいんですけどね。(片渕須直)

続いては、アメリカ国内の反応について『たまむすび』などでおなじみのアメリカ在住の映画評論家 町山智浩さんが紹介。

(評論などは)絶讃です。が、それが、言葉にできていないんです。たとえば「アニメ技術が素晴らしい」であるとか、「非常にディテールがよくできている」という良い点を指摘しているものはたくさんあるんですよ。ただ、なんで見終わった後にみんなが涙が止まらないのかがわからない。誰もまだ、言葉にできていないですね。(町山智浩)

アメリカの場合には(日本よりも)さらにカルチャーギャップがあるので。完全に理解をするまで、ものすごく時間がかかると思いますが……感動は先にくるんですよ。だからみんな泣いているんですが、Twitterとかを見るといちばん表現をできているのはこの言葉だと思うんですよ。「涙が止まらない。でも、なぜだかわからない」。(町山智浩)

LAタイムズで書いているケネス・トゥーランっていう評論家の人で、こういう風に書いているんです。「映画が終わる時、自分もすずさんに向かって手を振りたくなった」って書いているんですよ。それほど、彼女を個人的に人として見て入り込んでいたっていうことを最後に書いているんですね。(町山智浩)

「なぜだかわからないけど泣ける」という表現が興味深いですね。これに対して片渕須直監督はこのように話されていました。

さっき町山さんが「なぜだかわからないけど泣ける」っておっしゃったんですけど。『マイマイ新子』の時もそうだし、今回もそうなんですけど、何回か日本のお客さんでも見て、「泣ける場所が違う」って言うんですよ。それから人によっても違いますし。同じ人でも「見るたびに違うところで心を揺さぶられる」って言うんですね。それはひょっとしたら、いちばん大きいのはその人自身の中にそういう要素があるんではないか?っていうことなんですよ。それが触発されているだけで、我々はそれを刺激っていうか、すずさんがそこを揺すぶっているだけなんではないかなという気がするんです。そういう意味で言うと、みんな同じなんだなっていう。(片渕須直)

続いて、カナダ在住のリスナーの方がメールで現地の反応レポート。トロント・ジャパニーズフィルム・フェスティバルでの上映では、意外にも(おばあさんが嫁入りするすずさんに話した)「傘と柿」のくだりでいちばんの笑いが起きたそうです。これに対して片渕監督は……

他の国でも意外とあの傘のところが受けるらしいんですよ。どこまで理解しているのか、わからないですけど。そもそもでいうと、あそこを理解できる日本人はほぼいないはずなんですよ。あれ、「どういう意味なのか、説明してくれ」って言われると説明できるんですけどね。でも、僕も結構たくさん本を読んだんですけど、1冊しか(その話が)載っていなくて。だから(原作者の)こうの史代さんと同じ本をたまたま読んだんだろうなと思うんですけど。広島のある地方だけで言われていることだったりするんです。読み解いてみないとその意味ってわからないんですけど。でも、みんながなんとなくそういうことが言われているんだろうなって、日本の人も雰囲気で、「このシーンはこういうことなんだろうな」って思いつつ見ているわけなんですよ。だから(傘が)なんのシンボルか?っていうことですよね。(片渕須直)

日本人も海外の方にもなんとなく、その記号的な意味が伝わっているところが興味深いですね。次は、フランスの反応を紹介。『水曜日のアニメが待ち遠しい』の著者で日本史学研究者で翻訳家トリスタン・ブルネさんにお話を聞いています。

アヌシー国際アニメーション映画祭でとても高く評価されて、ほとんどの評価がいいんです。インターネットでも、映画を見た人たちの評価は非常に高いです。アニメーションだけではなく、映画としても本当にフランス人が好むような(タイプの作品です)。日常生活の細かいことを描きながら、もっと広い歴史などが反映されている。人間そのものの良さが出てくる作品として高く評価されていると思います。(トリスタン・ブルネ)

高畑勲の『火垂るの墓』とかと比較されることも多いんですけど、それだけじゃなくて、たとえばフランスでは非常に高く評価されいる小津安二郎の映画みたいな、戦争の時の広島の日本人の日常生活が描写されているということが評価されているんです。実は全てのメディアが高く評価しています。(トリスタン・ブルネ)

実際にフランスにも行かれて作品についていろいろなインタビューも受けていた片渕須直監督はこんな風に話されていました。

本当にこうの史代さんが生み出した「すずさん」という人物がね、裏表がないんじゃなくて、裏も表もあって。本当の人間ってこれだけ複雑だよなというところをちゃんと持っている。でもそれが、彼女を本当の意味で生き生きと感じさせているんだろうなと。それが、誰も見たことがない戦争中の時代に、そのすずさんと一緒に、すずさんの後ろをくっつくようにして入っていく導入になっているわけですよね。むしろすずさんそのものを眺めているうちに、その時代にいつの間にか自分も浸ってしまう。それは、どの国の人もみんな同じなんだろうなと。我々も知らない時代ですよね。(片渕須直)

続いては、香港の反応を紹介。香港の「雨傘運動」のリーダーであり、日本のカルチャーに大変詳しい周庭(アグネス・チョウ)さんにお話を聞いています。

この映画は単純に感動的な作品ではなく、香港の新聞やメディアでも「笑いながら涙が出ちゃう。泣ける作品」という風に紹介されていて。戦争についての物語ですから、反戦的なメッセージとかも香港の新聞などで紹介されました(アグネス・チョウ)

ネットでは、この映画の主人公の声優はのんさんですから、注目されていました。東南アジアで有名な女優さんがこの映画の主人公の声優として注目されていました。香港人は日本の昔の戦争の歴史については詳しくない部分があるので、この映画の中で日本の昔の戦争の歴史を学ぶことができるというコメントなどもありました。(アグネス・チョウ)

(この映画の香港版のタイトルは)2つあります。直接、『この世界の片隅に』というものの直訳型もありますが、『この世界の片隅に私を見つけてくれてありがとう』みたいな(すずさんのセリフの)意味のもの(『謝謝你、在這世界的一隅找到我』)もあります。もともとのタイトルもすごくいいと思いますけど、この(2つ目の)タイトルはもっと感動的なものに感じられます。(アグネス・チョウ)

香港でも「笑いながらも泣けてしまう」という受け止められ方のようです。オリジナルのタイトルも素敵ですね!

この「笑える」という要素に日常が伝わっているなという感触がうかがえますよね?(荻上チキ)
なんせね、戦争中だからって普通に生活をしていて全く笑わなかった人もなかなかいないだろうなと思うわけですよね。その要素が入ってきた時に、はじめて生々しくなるんじゃないかなと思うんですよ。それと同時に、やっぱり親しみを持ってもらうということは、ここは共鳴するということで言うなら、すごく大きな入口であるはずだと思うんです。(片渕須直)

この放送は日本国内だけではなく、海外の方々の反応を紹介しながらこの作品が持つ普遍性についてを解き明かしていく、とても面白い放送だったと思います。もう『この世界の片隅に』をご覧になっている方はもちろんですが、まだご覧になっていない方も9月15日には『この世界の片隅に』のDVDやBlu-rayも発売されるようなので、このラジオクラウドをお聞きになった上で作品をご覧になるといいんじゃないでしょうか。作品もラジオクラウド音源も、両方とも強くおすすめいたします!

Session-22「『この世界の片隅に』を世界はどう見たのか?」

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