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サロン・ドゥ・ショコラで惨敗、でも嬉しいことってwhy? ~鎧塚俊彦さん

コシノジュンコ MASACA

2017年9月17日(日)放送

ゲスト:鎧塚 俊彦さん(part 2)
パティシエ。1965年京都宇治市生まれ。関西のホテルで修業後、スイス・オーストリア・フランス・ベルギーで8年間修業を積み、ヨーロッパで日本人初、三ツ星レストランのシェフパティシエを務めたあと帰国。Toshi Yoroizukaのオーナーシェフとして活躍するかたわら、小田原市に「一夜城ヨロイヅカファーム」を設立し、洋菓子と農業、地産地消をコラボレーションした活動に取り組んでいます。

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出水:昨年の11月、京橋エドグラン1Fに鎧塚さんの集大成ともいえる大型旗艦店「Toshi Yoroizuka Tokyo」がオープンしました。自社製造のショコラ、一夜城ヨロイズカファームで人気のパンやジャム、そして美しいケーキ! 1Fがカフェ、2Fがデザートサロンになっていて、ジュンコさんも行ってきたんですよね。うらやましい~!

JK:すごくカッコよかった! ヨーロッパでもなかなかお菓子だけであれだけ立派なところはないんじゃないですか? レストランならあるかもしれないけど、徹底的にお菓子だけですよね。

鎧塚:僕は多店舗する気はまったくなくて、ただ一番最初に恵比寿で始めたのが小さなお店で、立地条件的に広げていくのが無理だったので、自然とミッドタウンなどに出店したんですが、やっぱり僕がお店にいて、僕のいろんなものを出せるお店がほしいと探していたところに、東京駅から5分のところにいいお話をいただきまして実現したんです。

JK:京橋の明治屋さんの隣ですよね。すっごくわかりやすい。都会だけどあんまりザワザワしてなくて、落ち着いていて品がある。

鎧塚:京橋というのはいまだに古き良きものを残している街なんですね。そしてこれからまた変わっていかなくてはならない。銀座や日本橋はわりとどんどん変わっていますが、それに比べて京橋は少し遅れている。僕はここに伸びしろみたいなものを感じたんです。一夜城ヨロイヅカファームもそうなんですが、大変なんだけどそこにものすごく夢を感じる。あの場所も完成したわけではなくて、ハコができただけで中身はこれからどんどん良くなっていくと信じて、努力しています。

JK:2階はどっちかっていうとスシバーみたいな感覚。カウンター越しに作り方をずーっと見てて、あまりにもきれいで、マンゴーを切ってる包丁も買っちゃった(笑)さっそく家で同じようにマンゴーを切ってみました。

出水:8月限定のマンゴーのリゾットを食べたんですね。

JK:お・い・し・か・っ・た~! 私、今度来たらこれ食べよう、と思ったら、8月いっぱいって。残念!

出水:お米をココナッツミルクで炊いた上に、マンゴーが載っている??

鎧塚:ココナッツミルクと牛乳、ちょっと隠し味にオレンジジュースも入っているんですが、それでお米を炊き上げまして、そのうえにフレッシュなマンゴー、そのうえにさらにマンゴーのアイスクリームをのっけて・・・

JK:それがまたトロットロになって、ぐちゃぐちゃになるんだけど、それが美味しいんですよ。

出水:毎月変わっていくんですか?

鎧塚:旬って、美味しいものを追い続けていくと、そこに「旬」っていうのが出てくるんですね。いまでしたら、9月は無花果、その後は洋梨が出てきたり、栗が出てきたり・・・

JK:四季感が繊細で、洗練されていて、キチッと表現されるって、日本の特徴ですよね。四季をお菓子やいろんなもので表現する。

出水:しかも、鎧塚さんの代名詞ともなっている「カウンターデザート」。目の前で一皿一皿仕上げていただくという、これもまた楽しいんじゃないですか?

JK:私、見過ぎなんじゃないかというくらい。本当お勉強になるし、作り方がすごい。

鎧塚:決して謙遜ではなく、僕は本当に不器用で、センスがない人間なんです。ヨーロッパで三ツ星のお店でシェフをさせていただいて、帰ってくるときに結構期待されて、周りから勝手に「なんかスゴイやつが帰ってくる」ってプレッシャーをかけられて。でも僕は才能もないし、センスもないし、この期待にどうやって応えればいいんだと悩みました。そこで、じゃあ出来たてを出そう、これはきっと美味しいに違いない、ということで、6席だけのカウンターデザートのお店を始めたんです。

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鎧塚:そのころある人から、「そんなの商売として絶対成り立たないよ。客単価はラーメン屋、回転率はすし屋と同じ。それ最悪の店だよ」って言われました。面白いことを言うなーと思いました。「でも、やるだけのことはやってみます」って言ってやらせていただいて、案の定カウンターデザートのお店って儲からないんです。でも、それが僕の真骨頂というか原点で、焼き菓子をたくさんかってくださったり、引き出物に何十箱も注文をいただいて上手く回るようになって、ですからこれからも、カウンターデザートというのは僕の軸として残しておきたいと思っています。

JK:1階のショップではレジのところに並んでました。美味しいもの食べたらやっぱり買っていきたくなりますもの。クッキーとかチョコレートって保ちますもんね。

鎧塚:たぶんジュンコ先生もパリコレをやってらっしゃってご存じだと思いますが、利益を出すのはものすごく大事ですが、僕たちは利益を出すためにこの業界に入ったわけではない。自分が何をしたいのかというのを1本残しておくのは、職人・アーティストにとっては大事なんじゃないかなと、生意気ながら思っています。

JK:ヨーロッパでの「美しいものを作ればいいんだ」という感覚から、ガラッと変わりますよね。あの感覚っていうのは私もよくわかります。パリコレなんか誰が着るの、そんなのへっちゃらよ、っていう感じでやるんですけど、それだけでは商売にならない。プレスは喜ぶんですけどね。そこですよね。ウケても、じゃあ実際には誰が買うのか。コンクールなんかまさにそれですよね。コンクール慣れしちゃうと、そればっかりになっちゃう。

鎧塚:おっしゃる通りですね。ですから、あれだけ世界的評価もあったのに、実際にケーキ屋さんをやったらなかなか売れない。エッ?っていう、その辺のジレンマですよね。ただ売ったらいいというわけでもないですし、そこをどう自分で折り合いをつけていくかというのが非常に大切じゃないかなと思っています。

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鎧塚:僕、一番最初はパリに行きたかったんですが、スイスの田舎町のお店に入ったんです。あれも今となっては良かったと思っています。あの時29歳でしたけれど、日本でけっこう頑張ってやってたんです。そのころはどっちかっていうとパリスタイル、非常に華やかなものをやったら、みんなスゴイねって言ってくれるんですけど、全然売れなかった。その時に勉強させていただいたのは、宝石のように美しいケーキではだめだっていうのに気が付いたんです。美しい→ワアッなんて美しいんだろう→食べてみたい。この思いが後ろに来ないと、飾っておきたい美しさでは絶対ダメなんです。僕はいまでも大切にしています。

出水:どんどん鎧塚さんのケーキが食べたくなってきました(笑)自社製造のショコラも並んでいるそうですが、エクアドルに「ヨロイヅカファーム・エクアドル」を開設して、ここのカカオを使っているんですか?

鎧塚:そうです。そこで生産したカカオを現地で発酵・乾燥させて、一夜城に70kgの麻袋で送ってもらって、そこから粉砕・ロースト・精錬をすべて自社でやっております。

出水:畑からのショコラづくり!

鎧塚:以前はすごく負い目があったんです。ジャン=ポール・エヴァンさんとかクリスタン・コンスティンさんとか、僕がこの世界に入ったときからスーパースターみたいな人で、何十年もチョコレート一筋でやってらっしゃる方が世界中に何千といらっしゃるんですね。僕はパティシエだけど、その方と一緒に肩を並べてお店をやっている。お客様が買いに来て「僕のチョコレートよりもあちらのチョコレートのほうがスゴイですよ」なんて口が裂けても言えないじゃないですか! その人たちと肩を並べるにはどうしたらいいのかな、これはもう畑から、一からやっていって学ぶしかないと思いまして。今はそのおかげもあって、自信も持っています。

JK:イチからやる違いは何ですか?

鎧塚:機械も非常に原始的なもので、自分の味を追求しています。ですから、ジャン=ポール・エヴァンよりもうちのチョコレートが美味しいんだよ、これが僕の味ですよ、どうか食べてください、と言えるようになりました。これが「お客様に食べていただく、買っていただく」という資格だと思うんです。正直言うと、今までは言えなかった。このチョコレートの味、どうなの? エヴァンのほうが美味しいんじゃないの? と言う人もいるかもしれない。でも今になって自信をもって言えるのは「これが僕の味なんです」。

JK:根本からオリジナルのものを作るっていうことすよね。ずーっと永遠に続きますよね。

出水:どういった特徴なんですか?

鎧塚:酸味ですね。今年もチャレンジするんですが、サロン・ドゥ・ショコラというのがパリにあるんですね。お菓子の世界でいうパリコレのようなもので、去年はコテンパンにやられました(笑)

出水:えーっそうなんですか??

鎧塚:でも僕はうれしくって。日本の人は、Toshi Yoroizukaが畑からやっている先入観をもってらっしゃって、それを個性だと思ってくださる。だから、僕のチョコレートは雑味があって、粒子も粗い。あえてそれをやっているんです。ところが、世界で肩を並べる企業、ValrhonaとかLintzとかは何十億という機械を入れて大規模にやってらっしゃしゃる。僕はそういう人と違うのを百も承知でやっているけれど、世界に出したら、同じところに並べられて、このチョコレート粒子が粗いんじゃない? 雑味があるんじゃない?って比べられるんです。ものすごくショックで落ち込んだ反面、ものすごく嬉しい。

JK:大手と比べてもらえる、っていうことですよね。

鎧塚:Toshi Yoroizukaも、ジャン=ポール・エヴァンも関係ないんですよ。ブラインドでテイスティングして、チョコレートの質としてみられる。僕はいままでの雑味を残しながら、世界レベルで通用するチョコレート、両方を作っていきたいと思って、去年からまた試行錯誤しています。今年のサロン・ドゥ・ショコラ、見ててください!

出水:うわー! じゃあもうすでに構想ができてるんですね!

鎧塚:はい。でも、またコテンパンにやられるかもしれない。僕はそれでもいいと思っています。やられても挑戦し続けていきたいなと思っています。

JK:そこで肩を並べてやっていくことが、またひとつ大きな成長につながるし、発見になりますよね。やらないよりやらなきゃ。何も残らない。それは楽しみですね!

鎧塚:負けて悔しいですけれど、恥ずかしいということはないです。

JK:その悔しさって、ずっと力になるんです。だから良かったですね、ってなんか変だけど(笑)次、次、って永遠にやっていけるもの。変に1位になっちゃうと、これでイイヤって努力しなくなるかもしれない。だけど、次につなげることは力強い。

鎧塚:女房の影響で演劇なんかも好きなんですね。演劇やる人もそうですし、脚本家、演出家の人たちが今年こそ賞を獲れるかと思って、勝負を逃したりするのを見ると僕はうれしくなるんです。お前はまだ獲らないほうがいいよって(笑)でもね、自分がそうなっていると、俺はやっぱり賞を獲りたい! 他人って無責任ですよね(笑)

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JK:鎧塚さんの人生のMASACAって何ですか?

鎧塚:すべてがMASACAですよ! 女房と結婚したのもMASACAですし、TVに出させていただいたり、世界のコシノ・ジュンコ先生と知り合って、ラジオに出させていただいたり・・・すべてがMASACAの連続です。僕の親友に「僕の彼女を連れていく」と、初めて女房を最初に紹介したとき、そいつ彼女を見て「ギャーッ」て叫びましたからね(笑)そんなことを言えば、女房が僕よりも先に亡くなるというのもMASACAですし。やっぱりいろんなことがあるんですね。

JK:これからもMASACAを味わってください。鎧塚風の味で!

鎧塚:失敗しても後悔することはないと思います。それだったら、あれをやっておけばよかったという後悔のほうが僕は怖いと思っている。命懸けっていいますが、今の日本ではほとんどの命懸けが嘘です。いくら失敗しても命は獲られない。そういう国もあるんです。日本では、命懸けでお菓子を作っているといっても、命を獲られることはない。だったら、精いっぱい、失敗を恐れずに頑張ってほしい。みんなもそうあってほしいと思います。

JK:パティシエって子供たちの憧れですよね。子供たちの夢をもっともっと膨らませていくためにも。いま小学生からパティシエになりたい子がいるんですものね。

鎧塚:僕がこの世界に入ったときは、パティシエなんて言う言葉がなかったですからね。今後はどんどん勉強してもらって、菓子職人として守るべきことはしっかり守って、そして、時代の移ろいと共に変えなきゃいけないところは勇気をもって変えていこうと思っています。

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=OA楽曲=

M1.  And Then There Was You / Norah Jones