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【アウトレイジ祭り!後編】北野武インタビュー!(2017年10月7日放送)【書き起こし】

ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル

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(こちらを読む前に宇多丸による『アウトレイジ 最終章』評をお読み下さい)

(スタジオ)さあ、ということで、たけしさんにいただいたジングルから続きまして、いよいよこちらが本番でございます。私、宇多丸によります北野武インタビュー。30分弱ぐらいに渡ってお聞きください。12時直前までお送りします。それでは、どうぞ!

↓↓実際の音声はこちらから↓↓

■「『アウトレイジ』は実際の社会をヤクザ映画にしただけ」

宇多丸:あの、今回も素晴らしく、楽しく見させていただきました。

北野武:ああ、ありがとうございます。

宇多丸:毎回『アウトレイジ』シリーズって、オープニングが超かっこいい車の(ショットの上に重なる)タイトルで始まるじゃないですか。今回もすごいフレッシュな感じでかっこよくて。あれは毎回、車で始まるっていうのは?

北野武:なんか、癖になっちゃってね。最初の幹部会のつながりで「これ、いいな」って「アウトレイジ」って出すんだけど。二作目は、海の水に浸かっているのがグッと上がるとあれだなって思ったんだけど。三作目がもう……済州島から始まるんで。で、やりようがなくて。それで昼間、釣りから始めるっていうことになったんで、まあ頭だけちょっと釣りのシーンを作って、済州島にいるっていう雰囲気を出して、済州島の繁華街を走らせて、やっぱり屋根に持ってきたっていう。だからもう、四本目だったらありえないんだけど、「まあいいや、三作目は」って。

宇多丸:なるほど。でも、すごかったです。「どうやって撮ってるのかな?」ってすごく不思議な、かっこいいタイトルでした。ということで、ここから本題なんですけど。僕、『アウトレイジ』シリーズが他のいままでのヤクザ映画とかギャング映画とは違うなと思うのは、やっぱり日本型ヤクザって結局、論理ゲームっていうか。お互いの言質の取り合いっていうんですかね? 言質取り合いパワーゲームみたいな、それが日本型ヤクザの本質だというのを喝破したところが、『アウトレイジ』はいままでにないというか、斬新だなと思って。これはやっぱり、いままでの日本型ヤクザ映画と違うことをやろう、っていうのはあったんでしょうか?

北野武:うーん……一応ヤクザ映画にはなっているんだけど、脚本を考えると、一般の会社、上場会社の会長がいたり社長がいたり、そのへんの課長部長がいて、裏切られたり、社長が飛ばされたり、会長が新しいのが違うところから来たり。それで自殺するやつもいるしっていうことを考えて、それに拳銃を持たせりゃいいんだっていう。

宇多丸:なるほど、なるほど。

北野武:そうすると、同じことが起きるっていうかね。それで他の、まあヤクザでも違う会社の乗っ取りとか、完全に株で潰してしまうとか、あと引き抜きとか。そうすると、『アウトレイジ』は意外に実際の社会をヤクザ映画にしただけで。まあ、これは政治だったらもっと面白いだろうけどね。加計問題とか出てきたらゲラゲラ笑うけど。だから、脚本を書く時にその人間関係と、ひとつの組織がこっちの乗っ取りと、シマを増やしていくのかと、自分の出世と、どう動くか? その中には、会社一筋っていうか、大友みたいに義理とかそれだけで、スカウトが来ても行かないとか。「オレはこの会社に命を預けるんだ」みたいなやつが出てきて、それをスジ振りにしたみたいなところがあって。

宇多丸:ああ、なるほどね。でも、それはすごいわかりやすいです。だからたぶん、わりといまの観客、女性とかもめちゃめちゃ面白がるのは、やっぱりどこにでもある権力構造っていうか、パワーゲームっていうことなんですかね。やっぱりね。

北野武:だからパッと、まあ西田さんたちがやっている古参のヤクザの上に素人がドンと来た時に、一般の会社だって娘婿っていうのがあるけど。それが大した実力もないのに来ちゃうと、もう「なにもやったことがねえくせに」とか。ヤクザで言えば、「モンモンも背負ってねえし、寄せ場も行ったことねえくせに、あの野郎!」ってなるわけだから。それが一般の企業だと、「営業に行ったこともねえ、経理も何も知らねえのがいきなり専務かよ」っていうようなことで。

宇多丸:全然ありますよね。これ、でもやっぱりそれをヤクザ映画、ギャング映画っていう形に置き換えたのはめちゃめちゃ発明だと思うんですよね。所詮はヤクザも会社だなっていうか。それが見えたのがとても面白いなと思いました。

北野武:で、ヤクザなりにその盃をもらった・もらわないで実際に変な親分子分の関係ができているから、普通の会社みたいに文句を言えなくて。「盃もらっちゃっているから……」とか絶対性が出てくるんで、ちょっと歪んで面白いなって。

宇多丸:うんうん。これは本当に素晴らしいところだと思いますね。

■『最終章』は『ビヨンド』と大体同時につくっていた

宇多丸:そのまさに「パワーゲームに拳銃を持たせただけ」っておっしゃる通り、どんどん一作目から『ビヨンド』、そして今回の『最終章』と当事者が大物化しちゃっていく一方で、要するに簡単にもう暴力が発動できないというか、どんどん暴力が出てくる瞬間が先延ばしになっていると思うんですよね。なんか、毎回何かが先延ばしにされる感じって、実はたけしさんの映画では全部、毎回そういう話かなと思っていて。モラトリアム期間というか、そのモラトリアム期間に何か豊かなことが起こったり、何かものすごい大事な本質的なことが起こったりするっていう。これは、ご自身はそういう風なものに意識的なんでしょうか?

北野武:うーん……やっぱりこう、漫才の癖かね? 一応、スジ振りになっているんだよね。スジ振りですぐに落とさなくても、スジを振ってきてチョコチョコっつって、ドカン!っていうか。わりかし、今回のなんかはまあ『アウトレイジ ビヨンド』のスジ振りのオチがこうだよね。要するに、(『ビヨンド』の)最後で刑事を撃っちゃって、大友としてはその前に白竜演じる李さんが車で置いていくんで、「ああ、張(チャン)会長が噛んでいるな」って、逃げたのが済州島で。『2』と『3』はそこでリンクしているんだけど。それで、上手いこと花菱が済州島で遊んで、李の若い衆に手をつけているっていうことでケンカになるんだけど。

宇多丸:うんうん。

北野武:大友はもう、そのままずっといてもいいんだけど、張会長のことで帰ってこなければいけなくなる。それが偶然花菱だった……みたいなことになるから、結構後に延ばして、それが後でストーリーのメインになってくるっていうのはわりかしやるけども。

宇多丸:なんか、よく考えたら『ビヨンド』のあの終わり方ってある意味投げっぱなしっていうか。「えっ、ここで終わるの?」っていうことですもんね。なるほど。

北野武:そうそう。あれはもうね、『2』の時に「これは続くな」って思ったから。『4』『5』って行っちゃいそうなんで、「これは『仁義なき戦い』シリーズみたいに連続でやらされるとオレ、辛いし。死んだやつを生かさなきゃいけないし、ダメだな」って思って。『3』は『2』の時にだいたい同時に作っているんですよ。だから「『2』の終わり方をこうしておけば、『3』に上手く入れるな」っていうところがあって。「済州島にいられるし、済州島で悪いことしたやつが花菱で張会長とやり合うかな」っていうことで、「『3』で終わろう」っていう。

宇多丸:なるほど。そういう全体図があったんですね。あと、ネタ振りから落とすのの距離が伸びた分、やっぱり暴力描写のインフレを防ぐというか。どんどん荒唐無稽化しすぎちゃうのを避ける意味もあったのかな?って思ったんですけども。どうでしょうか?

北野武:あとね、やっぱり西田(敏行)さんとか塩見(三省)さんとか、あのへんの会話の暴力が好きでね。コッテコテの関西弁の「コラァ、ボケ、カス!」が好きで。それが拳銃の代わりみたいにダカダカダカダカやっているっていう。

宇多丸:ああ、いいですね。会話が拳銃の代わりっていうのは。

北野武:それは『2』でちょっとやったんですよ。花菱の本家でものすごい怒鳴り合いをやるんだけど。まあ、関西人の圧勝になるんだけど。で、それの名残りを全部やって。今度は大杉(漣)さんが空威張りするところとか置いておいて。それで、最後には拳銃が出てくるんだけど、なかなか撃たないようにしたんだよ。

宇多丸:なるほど。これ、やっぱり大友が出てくると、大友は実力行使の人だからすぐに割と……。

北野武:すぐにバーン!ってやる。

宇多丸:すぐにオチをつけちゃう人っていう。この、今回は大友がやっぱりパワーゲーム、さっきの権力闘争からはちょっと距離を置いているというか。あんまりそこには興味がなくて。なんならもう、ちょっとウンザリしているんだけど……みたいな。『ビヨンド』の時点でもう『ソナチネ』っぽいというか。ちょっとブルーな諦観が漂っているなと思っていて。

北野武:まあ、基本的には済州島に行った時点でもう終わっているし、そこに骨を埋めてもいいんだけど、死に場所を探しているみたいなところがあって。うん。

■『ソナチネ』っぽさを避けたオープニング

宇多丸:あの、今回の『最終章』のオープニングは、いろんなところでも聞かれていると思うんですが、やっぱり『ソナチネ』っぽいというか。唯一大友が幸せそうというか。全くなにもない、それこそモラトリアムな宙吊りの時間を生きていて。すごい北野映画だなっていう時間だと思うんですけど。改めて大友はあそこに『ソナチネ』的な時間というか……。

北野武:あれね、だから極力曇天にしたりね。(『ソナチネ』のような)沖縄の真っ青な海と青い空と白い砂浜だったら困ると思ったんだよ。

宇多丸:ああ、やっぱり差別化をしないと(いけない)。

北野武:それで、映像的にもぶっ飛ぶわけにもいかないから。ただ、「済州島にいる」っていうのを見せなきゃいけないんで、ハングル文字だけの夜から始まってもいいんだけど、「ちょっと辛いな」と思って。うーん……。

宇多丸:トラックが走っていった横がもうハングルだったりして、「ああ!」っていう感じはちょっとしましたね。

北野武:だから、「たぶん魚が出て海っていうことになると『ソナチネ』に行くな」って思ったんだけど、それを映像的にきれいな画じゃなくて、まあまあどんよりしたっていう感じで。のんびりした感じも出しているんだけど、やっぱり海があって空があって魚釣りをすれば……。

宇多丸:海があって空があって魚釣りして、子分たちとじゃれ合いをしていると、やっぱり連想しちゃうっていうのはありますよね。

北野武:で、まあそれがちょっと気になったんだけど、ストーリーはコッテコテのストーリーにしてあるからいいだろうっていう。

宇多丸:うんうん。いや、でもすごいそれがよかったです。「あっ、大友が幸せそう」みたいなのがシリーズのファンとしてはすごくいいところでしたけども。

■日本のガンアクションで中途半端にリアリズムを持ち込むのは「ダサい」

宇多丸:あと、また『ソナチネ』との比較で申し訳ないんですけど、クライマックスでライフルを乱射する場面は僕、『ソナチネ』のクライマックスで外側からパパパッ!っと明滅する。あれ、ものすごいショッキングだったんですけど。あれを内側から見せた感じだなっていう風に思ったんですが、そういう意識はおありでしたでしょうか?

北野武:あれはね、もう『アウトレイジ』の最終章なんでね、花火の打ち上げみたいに、「最後はワッ!っと行こう」っていう。大宴会みたいなね。

宇多丸:大宴会(笑)。たしかに宴会シーンではありますね(笑)。

北野武:『ソナチネ』の時にパッパッパッとやったのはね、意外に予算の問題みたいなのはあったのね。それで、いろいろとセットを作ってガチャガチャって。でも、「いろいろと壊すのを用意してやったって大したあれにならねえな」って思ったから、「あそこ、全部暗くして。ライト、ライトでやっちゃおう。想像してくれるから」って。

宇多丸:あれはでも、鳥肌が立ちました。すごい。

北野武:「今度は一応見せようか」ってなって。

宇多丸:宴会シーンを(笑)。でも、すごく抽象化された銃撃シーンじゃないですか。で、やっぱりたけしさんの映画の銃撃シーンって全体に抽象化というか。突っ立ったまま撃つっていう……たとえば香港のジョニー・トーっていう監督とかは絶対に影響を受けている棒立ち銃撃スタイルっていう。これはやっぱり、どうして抽象化されたガンアクションっていうのをやるんでしょうか?

北野武:ハリウッドの映画を見て、走ったり避けたりするのはわかるんだけど、明らかに当たらなきゃいけないのに、逃げたやつの足元をずっと弾が追いかけて。あれがもう嫌になっちゃって。

宇多丸:主人公だけが当たらないやつ。

北野武:「出たら当たるだろ?」って思うから。出たら当たるんだったら、最初の『その男、凶暴につき』で白竜が延々と撃っているんだけど、オレはこういうところをぶち抜いてでも歩いて行くっていうのにしちゃわないと、もう破れないっていうか。「1回避けたら終わりだよ、これ」っていうか。だからもう、常にやっちゃうっていう。で、撃つ時は撃つっていう風にしちゃわないと。まあ、様式美じゃないけど。ダーン!って撃ったら、こう避けて壁の中でこんななってやって。するとこうなって、カーン!ってやって……めんどくせえ!っていうね。だからそんなことは一切しないっていう。

宇多丸:あと、日本で銃を出す時に、もともとちょっと嘘をついているから、そこで中途半端にリアリズムを持ち込むとダサい、っていうのがあると思ったんですよね。

北野武:そう。ダサい。うん。

宇多丸:それでこう、すごい抽象表現になったのかな?っていう。

北野武:うんうん。割かしもう、銃撃シーンは出したら、ただお互いに撃っちゃうっていう。一方的に撃つとかね。そういう風になっちゃうね、やっぱり。

■「オレはリボルバーは嫌いだから」

宇多丸:一方で、ちょっと細かい話ですけども。たけしさんが映画で使う銃は絶対にガバメント系ですよね。これはこだわりがあるんですか? M1911型というか。

北野武:ええとね、あれは納富(貴久男)さんっていう銃器専門の人が来るんだけども。大抵、相手が勧めるのを取っちゃうんだよね。カチャンって。

宇多丸:ああ、納富さんが勧めるのがガバメントなんですね。じゃあ、似合うって思っているということかしら?

北野武:「これ、どうですか?」「いいよ、なんでも」っていう風になっちゃう。

宇多丸:じゃあたけしさん自身にはこだわりがあるわけじゃないと。

北野武:うん。で、あれはもう効果の人がジーッと見て、「武、○○を使っている」って書いて。その弾の実弾を撃った音がちゃんとあって。全部当ててっていう。

宇多丸:『BROTHER』の時に録って。

北野武:それを後で当てるから、効果はいい音がするんだけど。

宇多丸:めちゃめちゃ、ちょっと日本映画では聞いたことがない音がしていると思います。

北野武:あれはストックがあるんだけど、どうしても掴んじゃうね。オレはリボルバーは嫌いだから。

宇多丸:ああ、そうですか。これは感覚的な感じですか?

北野武:シリンダーがついているのは無理だね。ガチャッがよくて。トカレフでもなんでもいいんだけど。

宇多丸:ああ、そうですか。ガバメントはめちゃめちゃ、なんか古い時代の武骨な男っていう……たとえば大友だったらそういうイメージだからガバメントかな?っていう。

北野武:それはたぶんね、納富さんが選んでいる。

宇多丸:納富さんが選んでいる。まあ、(サム・)ペキンパー映画の主人公っぽい感じというか。なるほど。


■「お笑い以外の世界だったらちょっとオレは無理だろう」

あと、先ほどの親分子分関係というので、やっぱりたけしさんの、「ああ、殿の映画を見ているな」っていう感じがするのは、子分が親分に軽口を叩くんだけど絶対的な忠誠を本当は感じているっていう。あれ、すごいたけしさんっぽいっていうか……言ってみればたけし軍団っぽいですよね。

北野武:(笑)

宇多丸:特に今回の『最終章』は、これは僕の見立てですけど、親分論というか。四者四様の親分がいるなと思っていて。怖がられていて慕われている張会長っていうのがいて、大友は権力とかはそんなにないんで、怖がられてはいないけど慕われているのが大友で。で、西田敏行さんの西野は慕われてはいないけど、怖がられていて統治している。で、大杉漣さんは怖がられてもいないし、慕われてもいないっていう、この四者四様があるなと思っていて。『アウトレイジ』シリーズを見直すと、子分をそれこそ全くよくわからないタイミングでいきなり殴ったりする人はだいたい、いちばんひどい目にあったりしているんですけど。これはやっぱり殿の、「こういう風に子分を扱っちゃダメだ」っていう、それこそたけし軍団のボスとしての矜持があるのかな? とか深読みをしてしまうんですが。

北野武:やっぱり……まあまあ、いまはもう全然暴れなくなったけど。昔は暴れたら止まらなかったって言われたけど。でも、理屈はちゃんと、殴られる理屈がちゃんとあるやつしか殴らなかったけどね。だけどちょっと過度になっちゃったっていうのはあるけど。

宇多丸:でも、殿が演じるボスは常に大友型ですよね。ちょっと軽口を叩くぐらいの距離感というか。

北野武:それでまあ、実際に暴力団とかそういうのになったら、やっぱり早くに死んでいるんだろうね。絶対に長生きはできない。

宇多丸:ああ、たけしさんご自身が。

北野武:うんうん。っていう感じだね。

宇多丸:やっぱりネタ振りとオチで言うんだったら、割と早めに決着をつけたがるっていう?

北野武:「行きます!」っつって。

宇多丸:めんどくさくなっちゃう(笑)。

北野武:いろいろと策略を練って、最後に総長まで上りつめたっていうのはないと思うね。

宇多丸:割と単刀直入に行きたいタイプっていう。

北野武:だから、オイラの世界はお笑いだからどうにか、その世界ではたけし軍団とか子分を持って若い衆がいるけど、お笑い以外の世界だったらちょっとオレは無理だろうっていう。

宇多丸:ああ、そうですか?

北野武:うん。お笑いってくだらないのが好きだから、オレがくだらないことをやっているのを、「なんだ、あれ。しょうがないな」とは言わないから。「面白いよ」って。「さすがだ」っていうやつもいるし。ただ階段から落っこちただけなのに。

宇多丸:わりとだから、無茶なオチをつけるのは良しとされる世界だからっていう。でもやっぱり、さっきおっしゃったパワーゲームとしてのヤクザ社会みたいなものを、全体のお話を作るっていうことは、とは言えパワーバランスみたいなものをものすごく常に敏感にわかっていないと、この物語はできないと思うんですよ。要するに、アホは絶対にこの物語は作れないというか。ただ、その絵図はわかっているけど、自分自身は興味ないという、本当に大友的なスタンスっていうことですかね。

北野武:うーん。まあ、実際のいろいろを調べると、かつてのいろんな組の興亡史はあるけど、結局これが出すぎて破門されていくっていうのはこれは、ちょっと出すぎるんだよね。で、上手いところ懐けば犬に……もしかするとこいつ、親分を超すんじゃねえか?っていうようなやつがちゃんと外されていくよね。

宇多丸:ああ、へー。

北野武:だから、上手いのは二代目を狙って側近でいて、ちゃんと入っていくし。やっぱりこれはもう政治的な駆け引きでね。自民党のいろんなやつが外されたりっていうのとそっくりだよね。

宇多丸:はい。まあいまね、起こっているドタバタとかも完全に『アウトレイジ』じゃねえか?っていう感じですもんね。

北野武:そう(笑)。辞めて、小池(百合子)のところに行っちゃったりね。

宇多丸:本当に、本当に。とか、「えっ、いきなり新党!?」とか。カードの切り合いがたしかに、いま『アウトレイジ ビヨンド』が起こっていますね。あっちでね。それじゃあたけしさんがね、政治劇も全然、やろうと思えばいけるっていうことですかね。

北野武:政治劇は……うーん、まあネタを考えりゃあ拳銃とぶん殴るのをなくして、裏でヤクザが暗躍すれば。「あいつ、引っかけろ」って言えば、女を抱かしたりなんかして、そこに週刊誌を連れてきて、「一線を超えましたか?」で終わりじゃん。

宇多丸:いまだったらめちゃめちゃ面白いネタがいっぱいある(笑)。やっぱりその「言葉が銃弾だ」っていうのがすごく、いまうかがっていて印象的で。『アウトレイジ』で面白いのはやっぱりその会話で上手く……やり込めるつもりで行ったのにやり込められちゃって。「あれ? 立場が弱くなっているんだけど……」みたいな。だからそこはやっぱり言葉の使い手っていうか。たけしさん本来の得意領域……。

北野武:やっぱり、そうだね。掛け合いは漫才師だったから、結構削ぎ落としてエッセンスでやり合いはある程度書いたつもりなのね。余分な言葉じゃなくて、かなり言いたいことを言って会話らしく成立させているつもりだけど。

宇多丸:で、そのミニマルな会話の外側にちゃんと嫌な感じが漂っていたり。実はここ、「あ、いま言質取られちゃったけど……」みたいな。そういうロジックゲームというか、そのスリリングさがありますよね。

北野武:だから、西田さんはベラベラとしゃべっているようで、エッセンスしか言っていないんだよね。そんなに長くしゃべっているわけじゃなくて。

宇多丸:いや、でもそこは本当に、どんどん会話劇としてのソリッドさが増していて、本当に面白いなと思ったあたりです。

■「会長、映画出ます?」で出演が決まった「張会長」

宇多丸:あと、『ビヨンド』に引き続き張会長。今回の『最終章』では「核」っていうか。この張会長の磁場である意味全部動いているというか。大友の行動原理なんかは基本的には張会長に対する義侠心なわけで。なのに、これはすごく観客として不思議なのは、要するに張会長を演じてらっしゃる金田時男さんという方のことを誰も知らないという。すごい映画として、よく考えたらちょっと不思議なバランスですよね?

北野武:この人の倅と友達だったんだけど、1回呼ばれたの。そしたら、出てきて。「うわーっ、かっこいいな、この人」って。いつもスラッとして、アルマーニ着ているからね。で、何も食べずに痩せているし。で、「ああ、そう。よろしくお願いします」っつったら迫力があるのよ。そしたらある時、なんか酒を2人で飲んでいたら、松田優作さんが死んだ時に「優作さん、死んだねぇ」なんて話をして。そしたら、「僕は地位も財産もある程度みんな作ったけど、孫に動いている僕を残していないんだよ」みたいな言い方をしたから。「そしたら会長、映画出ます?」っつったら、「いや、僕は何もできないからな」って。「じゃあテストで1回、出たらどうですか?」「なんの役ですか?」って言うから、「『ちょっとオレが世話になっている』って言うんで、『ご苦労だったな』だけでいいですから」って。で、『ビヨンド』で使ったんだよ。

宇多丸:はい。

北野武:そしたら、度胸が座ってるから、韓国語でしゃべってこうやってやったら、かっこいいのよ。それで慣れて、「『アウトレイジ 最終章』で張会長でもう1回、出てくれませんか? 今度はセリフ、長いですけど」って言ったら、なんか『ビヨンド』で出た時に周りいろいろと言われて本人、気分よくなったんじゃない? 「本当にもう1回出ていいの? じゃあ、出る」っていうから、「しめた!」と思って。それで、役者ではこういう顔、いなんだよね。

宇多丸:いや、あの役は無理ですよね。

北野武:この役になるまで、誰も知らないんだから。普通の役者だったら、西田さんの顔になるまでに西田敏行をみんな知っているから。急にこの顔で新人が出てきたらおかしいけど、新人が急にこの顔ででてくるから、圧倒的な迫力なんだよ。役者はもう、顔を晒してきてこの顔になるけど、この人は違うところからポンと来たから、新しい生き物を見ているみたいで。圧倒するんですよ。それで、全然上がらないし。「大丈夫だったかな?」なんて言って。だから「いや、会長。大成功ですよ。上手いですよ」っつって。そしたら、すごい話が『アウトレイジ』がこの会長が入ることによって、違うものになっちゃって。

宇多丸:うんうんうん。磁場が強すぎて(笑)。

北野武:うん。知っている顔の人を入れたら、これほど話が強く無いんですよね。

宇多丸:たしかに。なるほどね。そうか。このみんな、誰も知らないバランスだから成り立っている磁場の強さなんですね。ああ、言われてみればそうかもしれないですね。

■次作は純愛映画、そしてその次は……

宇多丸:ただこれ、シリーズのファンとしては、どう考えても終わっているんですけど、「ええっ、寂しいんだけど……」っていう感じがちょっと残ったんですけども。

北野武:まあ、次は純愛映画を撮るんで。小説を書いたんですよ。おかげさまで、『アナログ』っていうのが結構売れていまして。もうなくなっちゃったかな? いま、本屋にないんで。これ、また出せば売れると思うけど、それをやって。純愛映画を撮ってみて、しばらくしてまたこういう映画を撮ったら、「ああ、たけしは金がなくなったな」って……。

宇多丸:いやいやいや(笑)。

北野武:この張会長の若い衆時代っていうのを……倅がいるのよ。オレが知っているのは張会長じゃないけど同じような人を知っていて。アメ横を仕切るんだけど、そっくりなのよ。で、オレも子供時代に鉄くずを持っていってかわいがってもらった、そういう人がいるんで。それも、張会長の若い時代として表しても……ベトナム戦争までで大儲けするのがあるし。

宇多丸:それもめちゃめちゃ面白そうじゃないですか!

北野武:それから、花菱と張会長のところの本当のケンカが始まるっていうのもあるし。

宇多丸:すごい! その東京アンダーグラウンド史みたいなの、めちゃめちゃいいし、たぶんその企画、たけしさん以外だと映画会社が怖がっちゃうやつですよね。

北野武:お金がかかるしね。

宇多丸:もちろんそうでしょうけども。

北野武:まあ、だからそのアメ横あたりの闇市と、あとどこを使うかだね。

宇多丸:うんうん。でも、『アウトレイジ』だってやっぱりたけしさん以外だとたぶん映画会社は怖がっちゃう企画かもしれないですよね。今時は。もうちょっといろんなことができるのに……っていう感じはするんですけどね。

北野武:まあ、Vシネでね、そんな関係の人が金を出して作っているのが楽だけど、そうはいかねえから。

宇多丸:でも、観客がこれだけ集まっているんだから、本当はみんなね、映画館にせっかく行くんだから、テレビとは違う……それこそ張会長みたいな異様な、自分たちが見たことがないものを見たいわけで。やっぱりそれをね、たけしさん映画には期待してしまいますよね。

北野武:いやー、だから上手いこと、役者さんが「出たい」って言ってくれて。だいたい西田さんたちはみんな、直訴だからね。「たけちゃん、出してよー」っていうから。「ヤクザだよ? (『探偵ナイトスクープ』みたいに)局長でワーッて涙なんか流してられないんだよ?」って言ったら、「いや、わかっているから」って。「いい人、やっちゃダメだよ」っつったら、「それはやらないよ」って。そしたら、見事にやるからね。悪そうにね。

宇多丸:いや、最高ですよ。

北野武:塩見さんなんか、上手くて驚いたもん。いいオヤジの役なのに、「ああっ、コラッ!」ってやった時、「上手いな、この人」って思って。

宇多丸:『ビヨンド』の時なんかほとんどしゃべっていないのに。横でイライラしているだけで、「怖いよ、怖いよ、怖いよ……」っていう。

北野武:怖いよね。

宇多丸:素晴らしい。でも、今回はちょっとバランスが違う感じが。「はあー」のところとか最高でしたよね(笑)。

■「拳銃以外でちょっと考えたいよね」

宇多丸:あと、本当にファンの不躾なあれとしては、1回銃じゃなくて鈍器オンリーのバイオレンス映画を殿がやったら結構いいんじゃないかなっていう……。刃物、鈍器オンリーっていうのはいかがでしょう? というのは、銃はやっぱり暴力描写としてインフレしていっちゃうっていうか。で、日本人でやると、さっきおっしゃったようにダサくなりかけるというようなところ、危ないっていうのもあって。

北野武:まあ、ちょっとこの映画であるとしたら、変な親分が耳かきをこうやっていて、後ろから刺されてガン!ってやっちゃって。で、振り向いたところをボン!って殴るのもあったんだけど。あとは鈍器で……まあ、(マーティン・)スコセッシだとバットで引っ叩くのはあったけど。あと、うちの近所の職人はね、ノコギリで頭を引きちゃったりなんかするからね、ちょっと痛すぎるんだよね。ガーッてやるから。

宇多丸:ちょっとさすがに正視に耐えない世界になっちゃうっていうことですか?

北野武:そう。だから、ガーン!ってくるようなね。

宇多丸:でも、たけしさんの鈍器描写が世界のバイオレンス描写に革命を起こすんじゃないかっていうのは……。

北野武:なんかね、そう。拳銃以外でちょっと考えたいよね。

宇多丸:いや、いろいろと今後も楽しみにさせていただいております。ありがとうございます!

■インタビューを終えてスタジオで

お酒、買ってきてー! お酒(笑)。はい、ということでございました。約29分に渡ってお聞きいただきました、北野武監督に私がインタビューした音源です。こんな、終わった後にキョドり始めてしまったっていうね。いま、自分で素材を聞いていて、みなさんもわかったと思いますけどもね。まあ緊張が伝わってくるというか。まあ、後半だいぶ打ち解けてきたのはいいんだけど、でもやっぱり基本的に地に足の着いていない感じというかね。声が揺れている感じが自分でもわかって。途中までトイレに逃げたり、いろんなことをしていたんですけどね。このTBSのラジオのフロアはね、どこまで行っても放送が追いかけてくる(笑)ということで。

みなさん、いかがだったでしょうかね? ただ、前半の私の『アウトレイジ』シリーズ評、からの『最終章』評というかね。振りに対して殿がこういう風に答える、というあたりで、私の拙い内容のインタビューではございましたが、それによって多少立体感というか、『アウトレイジ』シリーズおよび北野映画というものを楽しむための糸口、というのが出てたんじゃないかなと思います。あのね、「リボルバーは好きじゃない」とかね。そうなんです。あそこ、もう1個突っ込めばよかったね。「なんでか?」っていうのをね。なんかちょっと先を急いじゃったところがあって。なんでかを聞けばよかったなとかね、いろいろと反省はあるんですけどね。

またちょっと、これでようやく私も度胸がつきましたんで(笑)。わかりませんけどね。だって玉さんが緊張するぐらいだから、慣れることはないとは思いますが。またなにか、機会があればぜひ北野武監督にお話がうかがえればなと思っております。いかがだったでしょうか? ということで、お聞きいただきありがとうございました。『アウトレイジ 最終章』は現在絶賛公開中でございます。見られる劇場によってはね、「4DXを超える4DX体験」が味わえるかもしれませんからね。僕、『ビヨンド』を見た時には深夜の新宿の回と、あと丸の内TOEIが、最近のその指定席制に慣れていない黒い紳士たちが、『ビヨンド』のね、さっきのパワーゲームの振り子が止まらなくて……(笑)。で、最後に気の弱そうな映画好きそうなお兄ちゃんにそれがたどり着いて、というくだりがありましたけどね。いろんな場所で見てみるのが楽しいんじゃないでしょうか。

私ももう1回、劇場で3回目を見に行こうと思っております。とにかく見に行けよ、バカヤロー、コノヤロー!っていうことでございました。以上、『アウトレイジ 最終章』公開記念、北野武監督インタビューでした。たけしさん、ありがとうございました!

■宇多丸による『アウトレイジ 最終章』評はこちらから

文字起こし/みやーん(文字起こし職人)
写真/小荒井 弥(音楽ディレクター)

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◆過去のタマフル放送後記はこちらから。