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偶然から生まれた新素材が世界を変える!

久米宏 ラジオなんですけど

TBSラジオで毎週土曜日、午後1時から放送している「久米宏 ラジオなんですけど」。
10月28日(土)放送のゲストコーナー「今週のスポットライト」では、東京大学大学院教授・磯貝明さんをお迎えしました。夢の新素材といわれる「セルロースナノファイバー」の世界的研究者です。

磯貝明さん

磯貝さんは1954年、静岡県生まれ。東京大学に入ったときは数学と物理が得意でしたが、その方面では天才がごろごろしているのを目の当たりにして、有機化学の研究に進んだそうです。磯貝さんが研究したのは、木材の繊維である「セルロース」。この繊維を細かくほぐすと紙の原料のパルプになるのですが、磯貝さんはこのパルプをさらに限界までばらばらにほぐした「セルロースナノファイバー」という、新しい素材を作り出すことに成功したのです。

セルロースナノファイバー

パルプの繊維は幅30マイクロメートル(マイクロメートルは1ミリメートルの1000分の1)。それをさらに1万分の1、幅3ナノメートルまで細かくしたのがセルロースナノファイバーです。木材の繊維からパルプを作るのは製紙会社が普段やっていますが、パルプをさらに超微細化してセルロースナノファイバーにするのはとても難しいことなんです。

磯貝さんは1996年からパルプの超微細化に取り組んでいましたが、思うような成果が出せないでいました。そんな時、一人の学生がやってきました。金髪ロン毛の齋藤継之さん(当時、大学4年生)でした。「僕はミュージシャン志望なので、研究テーマは何でもいいです」。面白そうな研究テーマはもうほかの学生がすべてやっていたので、最後まで残っていたいちばんつまらない研究を齋藤さんにやってもらうことにしました。そのいちばんつまらない研究というのが、パルプの超微細化だったのです。2002年のことでした。磯貝さんはまったく成果を期待していなかったのですが、4年後の2006年、なんと齋藤さんはパルプを限界までばらばらにすることに成功してしまったのです。

スタジオ風景

「偶然から生まれた大発見でした。有機化学はこういうことがしばしばあるんです。そこが数学や物理と違うところで、凡人にもチャンスがあるんです。もっとも齋藤さんはいろいろ考えてやったと言うかもしれませんけど(笑)。とにかく、極限まで細かい繊維、セルロースナノファイバーを作ることに成功したんです」(磯貝さん)。

この業績が国際的に認められ、磯貝さんと齋藤さん(それともうお一人)は、2015年“森林のノーベル賞”といわれる「マルクス・ヴァーレンベリ賞」をアジアで初めて受賞。これがきっかけとなって日本はもとより世界から一躍脚光を浴びることになりました。ちなみに齋藤さんは現在、東京大学の准教授となり、磯貝さんと一緒に研究室を持っています。

木材をはじめとする植物繊維を限界までほぐしたセルロースナノファイバーは、いろいろ面白い性質が見つかりました。まず挙げられるのが軽さと強さ。鉄と比べると重さは5分の1で、強度は5倍。炭素繊維(カーボンファイバー)に匹敵するすごい素材です。

セルロースナノファイバー

また、セルロースナノファイバーを使ってフィルムを作ってみたら、空気をほとんど通さないことが分かりました。このフィルムで食品をパックすれば賞味期限を大幅に伸ばせるかもしれません。消臭効果があることも分かり、抗菌効果のある超強力消臭シートに応用した、大人の介護用おむつが実用化されました。また、ボールペンのインクに混ぜてみたらとてもサラサラで書き心地滑らかなボールペンができました。30分間溶けないソフトクリームなんていうのもできそう。ほかにもまだまだ面白い性質がありそうなんですが、どんなことに使えるかは、生みの親である磯貝さんにも未知数なんです。

セルロースナノファイバーを振ってみる

「なんか面白いものができちゃったのでこれの使い道を一緒に考えませんかって、企業に声をかけたんです」(磯貝さん)。

ということで、今は国もバックアップして、製紙業界をはじめ産業界をあげて、この新素材の応用に取り組み始めているところです。1996年から取り組んで以来20年間ほとんど注目されることのなかった研究がにわかに脚光を浴びて、磯貝さんも驚いているそうです。

セルロースナノファイバーが“夢の新素材”と期待されるのは、化石燃料に頼らない循環型社会が実現するかもしれないからです。セルロースナノファイバーは木材から作るので、森林の伐採・利用・植樹というサイクルを生み、二酸化炭素の吸収に貢献します。

また今後、セルロースナノファイバーによって製紙業界が大きく変わる可能性もあります。今、新聞の発行部数の激減などもあって、国内製紙業界には右肩下がりで減退していくことへの危機感があり、セルロースナノファイバーに熱い視線を送っているのです。かつて日本の紡績会社が総合化学メーカーに大きく変身を遂げたように、製紙会社も近い将来、パルプから紙以外の様々なものを作るようになっているかもしれません。

スタジオ風景

「日本には資源(木材)も、技術も、学術的な蓄積もありますから、この分野で世界をリードするチャンスは大いにあると思います」(磯貝さん)。

久米宏さん

「セルロースナノファイバーを使った自動車や飛行機がなんとか見られるようお願いしたいですね。僕は今、73歳ですから、せめてあと20年のうちにぜひ!」(久米さん)

磯貝明さんのご感想

磯貝明さん

やっぱり久米さんは鋭くて、話の内容を常に100%理解して進めてくれました。出だしから、私の受け答えができるようにうまく話を流れをうまく進めてくれましたので、こちらは何も難しく考えることなく、30分非常にやりやすかったです。テレビの取材と違って、割と本音ベースで「セルロースナノファイバーは期待もされる一方で、課題もある」ということを話せました。その点はよかったです。まあ、放送を録音したものをあとで聞いて、あんなこと言わなきゃよかったと後悔することがなければいいなあと思いますが(笑)。

久米さんには、我々の狭い学術分野の話をどう紹介できるか、常にリスナーの方を意識して、30分間進めていただいて、良かったと思います。いい思い出になりました。ありがとうございました。

2017年10月28日(土)放送「今週のスポットライト」、ゲスト:磯貝明さんhttp://radiko.jp/share/?sid=TBS&t=20171028140000

radikoで放送をお聴きいただけます(放送後1週間まで/首都圏エリア無料)

次回のゲストは、明治大学教授・鈴木賢志さん

11月4日の「今週のスポットライト」には、明治大学国際日本学部教授・鈴木賢志さんをお迎えします。若者の投票率が30~40%の日本と80%に達するスウェーデン、この差はいったいどこからくるのか伺います。

2017年11月4日(土)放送「久米宏 ラジオなんですけど」http://radiko.jp/share/?sid=TBS&t=20171104140000

radikoで放送をお聴きいただけます(放送後1週間まで/首都圏エリア無料)