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薬の「飲み忘れ」とその「最新防止策」

森本毅郎 スタンバイ!

医療の世界で、薬の飲み忘れは、長年の課題です。薬の飲み忘れに注意が必要な病気の一つ糖尿病の患者を対象に、最新の大規模な調査では飲み忘れの傾向が強く出ました。一方で、飲み忘れ対策の、あるハイテクな薬も登場してきています。飲み忘れの現状と、その防止策について。11月20日(月)、松井宏夫の「日本全国8時です」(TBSラジオ、月曜あさ8時~)で解説しました。

★糖尿病患者でも3人に1人が残薬アリ

まず、薬をどうして残してしまうのか。また、どれくらい飲み忘れが起きているのか。そんな実態について大規模調査を行った、横浜市立大学の寺内康夫教授に話を聞きました。調査の対象は、糖尿病の患者さんで、薬の治療を受けている、およそ3千人。肥満や運動不足などをきっかけに発病し、糖尿病の約9割を占める2型糖尿病の患者さん。2型糖尿病には、いくつかの薬があって、食前・食後など、薬を飲むタイミングが細かく決まっています。もし薬を飲み忘れると、合併症のリスクが高まるなど、適切な治療の効果は得られませんし、タイミングを間違えると、「けいれん」「昏睡」など重症につながる、低血糖になります。数ある病気の中でも、ひと際、薬の飲み忘れに注意が必要な2型糖尿病です。調査では、そんな患者さんであっても、残った薬「残薬がある」と答える人が33・1%。

★理由はほぼ飲み忘れ

残薬があると人はその理由として、多くの人が、「飲み忘れ」を上げます。「特に理由はないが、ついうっかり忘れてしまう」が56%で半数以上。次に多いのが「外出の際に持っていくのをつい忘れてしまう」が39%。残薬がある人が、困っているとして挙げるのは、他の病気にも共通すると思います。一度に飲む量が多い、回数が多い、種類が多い、タイミングを守ることが難しい・・・。医療側ができることとして、2つの薬を1つにまとめたり、飲む回数を3回から2回、2回から1回にまとめるなど、日々改良すべきです。

★「デジタル薬」

そんな飲み忘れを、ハイテク技術で解決する「デジタル薬」というものが最近登場しました。デジタル薬は、中にとても小さなセンサーを組み込んだ薬で、患者さんが医師の指示通りに、薬を飲んだかどうかを外から確認できるようにしたものです。この薬の名前は「エビリファイ・マイサイト」といいます。大塚製薬がアメリカのカリフォルニアの企業と共同開発したもので、アメリカで先週の13日販売が承認されました。販売承認は世界初ということです。

★薬は、統合失調症などが対象

まず、この「デジタル薬」は、薬の部分と、医療機器の部分に分けられます。薬部分は、もともと統合失調症の治療などの「エビリファイ」という錠剤です。統合失調症の患者さんが、この薬を飲み忘れると、幻視や幻聴が現れるケースがあります。しかし、患者さんの中には、単なる飲み忘れだけでなく、飲んだふりをする人もいて、そうすると、薬の治療の効果が得られない、ということが課題でした。

★服用薬の見える化

薬に組み込まれる医療機器のセンターは、およそ3ミリのチップです。チップは、薄い銅や金、マグネシウムなど金属でできていて、それが、胃液に触れると、電気が発生するようにできています。その電流が細胞を伝って、患者さんの脇腹に張り付けた装置が信号をキャッチします。信号をキャッチする装置の名前は「マイサイト・パッチ」といいます。マイサイトパッチは、患者さんの日々の活動量などのデータも記録することができます。そうした記録などと合わせて、薬をいつ飲んだかという情報が、スマートフォンやタブレット端末の中に入れた専用アプリに送られます。患者さんの同意のもとにはなりますが、その情報は医師や家族も共有することもできます。ちなみに金属チップは一定の時間が経てば、消化・吸収されずに体外に排せつるので安心。いわば「飲む薬の見える化」です。

★一方で個人情報で懸念も

一方で、デジタル薬のそうした性能から、個人情報の観点で、懸念の声も出ています。体内のチップから、薬を飲んだかどうかや、患者さんの生活リズムがわかるわけです。今後は患者さんの居場所など、さらに高度な機能が付け加えられることも、理論上は可能。患者さんの様子を遠くから監視することになりかねないといった懸念もあって、個人情報の観点から、チップで得られる情報の適切な利用も、一方で熟慮が必要です。

★デジタル薬は最終手段

現時点で、対象は、アメリカ国内の、重篤な精神疾患という少数の患者さんで、日本での承認申請や販売は予定していないということです。ただ、日本でも冒頭の2型糖尿病や、お年寄りなどでも飲み忘れの問題はあります。なにせ、飲み忘れでアメリカでは年間1000億ドル、日本円で10兆円くらい、日本でもおよそ500億円の、無駄なコストが発生しています。個人情報のルール作りなどをした上で、近い将来、他の病気でも応用は考えられます。ただ基本的にデジタル薬の使用は、飲み忘れが致命的な状態になる病気でしょう。

★頼らないために、求められる積極的な姿勢

最終手段としてのデジタル薬に頼らざるを得ない状況に関連して、2型糖尿病の患者さんへの大規模調査からわかったことで、一つ気になる現状もあります。実は、調査で残薬がある、と答えた人は、医師に対しては、残薬ありと申告をしていない、人がほとんどでした。もちろん病気の症状で、意志を伝えられない・記憶を辿れない場合もあるかと思います。しかしそうでない場合、医師と患者とで治療について連携が取れていないかもしれません。医療側も、薬の治療によって、まだまだ頑張れば良くなるんですよ、ということを患者さんに納得してもらう、丁寧な説明が必要でしょう。一方で薬の治療に消極的で、薬をきちんと飲みきらない患者さんは、薬の治療に積極的で、薬を100%飲んでいる患者さんに比べ、死亡リスクが12倍にもなる、と警鐘を鳴らす論文もあります。患者さんも、薬の治療に積極的に参加するのも大事。

 

 

日本全国8時です(松井宏夫)

解説:医学ジャーナリスト松井宏夫

 

松井宏夫の日本全国8時です(リンクは1週間のみ有効)http://radiko.jp/share/?sid=TBS&t=20171120080000

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