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「おらおらでひとりいぐも」おひとり様老女は何を思う

久米宏 ラジオなんですけど

TBSラジオで毎週土曜日、午後1時から放送している「久米宏 ラジオなんですけど」。
11月25日(土)放送のゲストコーナー「今週のスポットライト」では、今年の「文藝賞」を受賞した専業主婦、若竹千佐子さんをお迎えしました。

スタジオ風景

新人作家の登竜門といわれる「文藝賞」は、白岩玄さんが専門学校在学中の21歳で受賞したり(『野ブタ。をプロデュース』)、綿矢りささんが高校生で受賞するなど(『インストール』)、若い才能を数多く世に送り出してきました。田中康夫さんや山田詠美さんもこの賞でデビューしています。そんな中で、若竹さんは63歳。歴代最年長で受賞となりました。

若竹さんは岩手大学卒業後、臨時教員の経験はありますが、27歳で結婚してからはずっと専業主婦。小さい頃から「いつか小説家になりたい」と思っていましたが、それはいつも遠くにあるぼんやりとした夢。いくつか書こうとしたこともありますが、完成には至りませんでした。31歳で岩手を離れ、千葉で子育て。小説を書く時間はなかなか持てませんでしたが、子供好きの若竹さんにとっては楽しい日々でした。ところが55歳のときに夫が急死。深い悲しみから立ち直れずにいるのを見た長男の勧めで、小説講座に通うようになり、本格的に小説を書き始めました。

スタジオ風景

「夫が亡くなる前に書きかけていたものがあって、それを完成させなきゃという気持ちでした。当時はそれが支えになっていましたね。小説に救われました」(若竹さん)

おらおらでひとりでいぐも

今回「文藝賞」を受賞した作品『おらおらでひとりいぐも』は、74歳の「桃子さん」が主人公。子供は手を離れ、夫には先立たれ、ペットの犬も死に、本当に「おひとり様」となった今、たくさんの内心の声が聞こえてくるようになります。故郷の東北弁、上京してから使うようになった標準語。それらが入り乱れて勝手に会話を展開する桃子さんの脳内は、若竹さん自身のインサイド・ヘッドでもあります。スタジオでは小説の一部を作者の若竹さんご自身に朗読していただきました。色々な声の会話文と地の文が折り重なる文体は、若竹さんのお父さんが好きだった広沢虎造の浪曲がヒントになったそうです。

若竹千佐子さん

桃子さんと1歳違いの久米さんは「ひとりの老後を生きる話は他人事とは思えませんでした。共感を越えて、命に対する恐怖とか、女性に対する畏れすら感じて、読んでいて脂汗が出る思いがしました」。

若竹さんは、女の人生は「娘の時代」「妻の時代」「老年の時代」と三分割できると考えてきたと言います。そして老年時代、つまり「おばあさん」の生き方に昔から興味があったそうです。娘の時代、妻の時代を経て、ひとりで生きていくことになったおばあさんはどういう気持ちなんだろうと、ずっと考えてきたそうです。

「私は子育て時代、幸せなのに何か飽き足らないものを感じていたんです。それはどうしてだろうとずっと思っていました。フェミニズムの本や心理学の本をずいぶん読んだりもしましたけど、人はやっぱり自分が主人公となって人生を生きたいんだと思うんです。妻の時代、女は“副班長”なんですよね。夫を立てる応援団として生きている。でもやっぱり自分のためにも生きたいという気持ちがあるんです。私はそうでした。だから、夫が亡くなったとき私は本当に絶望しましたけど、後になって考えてみると絶望だけではなくて、実は心のどこかでほっとして、これから自分の人生を生き直すんだって思ったところもあったんだって」(若竹さん)

久米宏さん

そして若竹さんは、夫を亡くすまで本当の悲しみというものを分かっていなかったんだと実感したと言います。

「そばにいた人がいなくなって、形のあるものがなくなったときに、初めて本当の絶望感というものが分かりました。でも、夫が亡くなってから、死が怖くなくなったんです。死はあっち側にあるものじゃなくて、自分のすぐそばに潜んでいる。あの人のいるところへ行くだけで、死はまがまがしいものではないんだって。こんな安心がほかにあったべかって。だから、絶望の中にあっても、悲しみだけじゃないんだということをひしひしと感じました」(若竹さん)

人生初サイン

対談を終えた久米さんからお願いされて、若竹さんは初版本にサイン。これが記念すべき人生初サインだそうです。『おらおらでひとりいぐも』は新人の文芸作品としては異例の売上ペースで増刷も近そう。2刷には久米さんが推薦文を寄せた帯がつく予定です。

若竹千佐子さんのご感想

若竹千佐子さん

私が子育てをしていた時期と久米さんの「ニュースステーション」がちょうど重なるんです。その頃ブラウン管で見ていた人が目の前で本当に話をして、私の本も本当に読んでくださって、もう嬉しくて何とも言えません。幸せな気持ちです。ありがとうございました。

次回のゲストは、ジュエリーデザイナーの山下彩香さん

12月2日の「今週のスポットライト」には、フィリピン・ルソン島の山岳民族の楽器をモチーフにした竹製ジュエリーのブランド「EDAYA(エダヤ)」を立ち上げた山下彩香さんをお迎えします。急速に近代化が進む陰で失われていく現地の伝統文化を継承する活動を続けています。

2017年12月2日(土)放送「久米宏 ラジオなんですけど」http://radiko.jp/share/?sid=TBS&t=20171202140000

radikoで放送をお聴きいただけます(放送後1週間まで/首都圏エリア無料)