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【映画評書き起こし】宇多丸、『HiGH&LOW THE MOVIE 3 / FINAL MISSION』を語る!(2017.11.25放送)

ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル

実際の放送音声はこちらから↓

宇多丸:
ここから11時までは、劇場で公開されている最新映画を映画ウォッチ超人こと<シネマンディアス宇多丸>が毎週自腹でウキウキウォッチング。その<監視結果>を報告するという映画評論コーナーです。

今週はね、ツアー中にいろいろと映画を見て。あと、鹿児島でライブを終わった後に出待ちしていただいた方とお話をしたら、やっぱり鹿児島は西原商会さんがスポンサードしているので鹿児島でも聞けるからということで。「ラジオ、聞いてます!」という人もいっぱい来ていただいて、本当にありがとうございます。そんな感じで今夜扱う映画は先週、「ムービーガチャマシン」(ガチャガチャ)を回して決まったこの映画……『HiGH&LOW THE MOVIE 3 / FINAL MISSION』

(テーマ曲 EXILE TRIBE『HIGHER GROUND』が流れる)

フォーーーッ!(笑) やっぱりこれ、無条件に上がってしまうんですよね。そりゃテーマ曲が流れればね。そういうシリーズでございます。EXILE TRIBEを中心にテレビドラマや映画、ライブなど様々な展開を見せる人気アクションシリーズ、『HiGH&LOW』プロジェクトの劇場版最終作……なのかはわかりませんけどね。一応、一区切りかもしれませんけどね。九龍グループにより壊滅の危機に晒されたSWORD地区。いろいろな不良チームがいるわけですが、SWORDのメンバーや雨宮兄弟らが九龍グループとの最後の戦いに挑んでいく。

主演はこれまで通りAKIRA、TAKAHIROらEXILEメンバーに加え、窪田正孝、林遣都、津川雅彦、岸谷五朗ら豪華メンバーが集結。監督は前作に引き続いての久保茂昭さんと中茎強さん。この中茎さんはテレビシリーズのシーズン2から監督をされている方ですね。

はい。ということで『HiGH&LOW』を……これで劇場版は3つね。『THE RED RAIN』は除いて3つやってますからね。

映画評書き起こし】宇多丸、『HiGH&LOW THE MOVIE』を語る!(2016.9.17放送)
【映画評書き起こし】宇多丸、『HiGH&LOW THE MOVIE 2 / END OF SKY』を語る!(2017.8.26放送)

ということで、この映画を見たよというリスナーのみなさま、<ウォッチメン>のからの監視報告(感想)をメールなどでいただいております。ありがとうございます。

メールの量は、普通。おいっ! ハイロー……ハイローはでもさ、前はたしか少なかったりしたんですよね。で、「どうなってるんすか、琥珀さんっ!」みたいなことを言っていたんだけど、普通になったんだからちょっとアップしているのかもしれませんよ。

■「こんな祭りが見たかったわけじゃない」(byリスナーの感想)

賛否の比率で言うと、今回はなんと「賛」が2割程度。否定的な感想、もしくは中間意見が残り8割ぐらい。「話運びが鈍重で頼みのアクションシーンも前作(『2 / END OF SKY』)ほどじゃない」「いいところもあるが、前作に比べると明らかにパワーダウン」などが目立った否定的意見。シリーズのファンほど、「こんな祭りが見たかったわけじゃない」と寂しそう。褒める意見としては「いままででいちばんストーリーがわかりやすかった」。いままでが逆にね、難解すぎるだろうっていうね(笑)。「テーマ曲が流れると問答無用で上がってしまう」ってこれ、別に評価じゃないよね(笑)。これは生理反応だろ(笑)。ということで、ありがとうございます。

代表的なところをご紹介いたしましょう。ラジオネーム「モティカ」さん。「私は友人に勧められて今年の6月ごろ、Huluのドラマ版からハイロー科を履修したのですが、『HiGH&LOW THE MOVIE 2 / END OF SKY』、以下、ザム2……」。ねえ、ファンの人は『THE MOVIE』を「ザム」って略しますが。「……ザム2を映画館で見てから『HiGH&LOW THE MOVIE 3 / FINAL MISSION』、以下、ザム3を本当に楽しみにしていました。今回も謎が謎を呼び、最終的には爆笑するしかない内容ですが、本当に面白かったです。こんな『なにやってんだよ!』と爆笑できる謎のテンションになれる映画はハイローだけです。韓国映画風な屋上打ちっぱなしのゴルフ接待……」。

あったね! 『新しき世界』で出てきた場面だよね。ビルの上のところから外に向けてゴルフやっているっていうさ。たぶん『新しき世界』オマージュなところだったと思うんだけどね。「……ゴルフ接待から、政府主導の無名街爆破セレモニー。最後までの流れは何度見ても最高です。ザム3はいままでのハイロー、ドラマシリーズ1話から全てを集約している最終章にふさわしい映画だと思いました。いろいろと『?』が乱舞する部分もありますが、それこそがハイローと思ったりします。私はハイローにハマれてよかった。この映画をザム2からでもリアルタイムで映画館で見れてよかった。何年、何十年か後もずっとハイローを最高の酒の肴にできるぜと思いました」というね。これは鬼邪高の村山さんが今回言うセリフを踏まえているわけですね。

一方、ダメだったという方。「松井」さん。「『HiGH&LOW THE MOVIE 3』を見てきました。率直に言うと残念でした。『END OF SKY』で振り切ったアクションの更に上を期待していたこともあり、完全な不完全燃焼と謎のストーリー複雑化。音楽演出が少なくなった点など、帰り際に『俺の好きだったハイローはどこにもない……』と涙を流すぐらいでした。ただ、よく考えるとこれもハイローなのかと納得しました」って、そりゃそうだよ(笑)。これもハイローですよ、それは。「……もっと祭りみたいなハイローが見たい。これで終わるなと思わせる、そんな一作でした」というね。まあ、ハイローに何を求めるかっていう部分っていうのもあるのかもしれませんね。

■「作品自体の同人誌化」が進むエンタメ映画の世界的潮流

はい。ということでハイロー、『HiGH&LOW THE MOVIE 3 / FINAL MISSION』を私も先ほど言いましたけども、鹿児島ミッテ10、そして丸の内ピカデリーで2回、見てまいりました。当コーナーでは2016年9月17日に劇場版一作目『HiGH&LOW THE MOVIE』、そしてついこの間、2017年8月26日に『HiGH&LOW THE MOVIE 2 / END OF SKY』と、連続してガチャが当たってきた劇場版『HiGH&LOW』シリーズでございます。で、この『HiGH&LOW』というエンターテイメント独特の構造、楽しみ方込みで評させていただいた、という感じですよね。まあ、詳しくは番組ホームページに公式の書き起こしがございますので、そちらで改めて復習していただいてもいいかと思いますね。

ちなみに前回の『2』の評ですかね。ついにEXILE TRIBE総帥といいますか、LDH総帥のHIROさんのお耳にも届いたようでして。まあ、真正面から評したので喜んでいただいたというか。で、それが縁で(番組企画の)「スピルバーグ総選挙」にもコメントをいただけたということがあって、本当にその節はありがとうございました。

ということで、改めて『HiGH&LOW』というエンターテイメント独特の構造・楽しみ方を整理するなら、まず個々のキャラクターとか世界観は、古今東西の不良チーム物、ギャング物、アウトロー物エンターテイメントの、記号的イメージ「だけ」を寄せ集めた、まあモザイクのようなものであると。で、それらの言わば「パーツ」としてのキャラクターっていうのを自在に組み合わせて、そのキャラクター同士の「関係性から生じる見せ場」をどんどんつくっていくという。構造としては仮面ライダーの劇場版の「MOVIE大戦」シリーズ、これに近いような感じだと。

それどころか、最終的にいま、たとえばMCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)、DCユニバースもそうですけど、世界的なエンターテイメントが、ある意味この方向……キャラクター同士の関係性から生じる見せ場をつくるような方向に向かっていて。要は、なんて言うのかな、 「作品自体の同人誌化」と言うんですかね? そういう感じになっている。これ自体がいいか悪いかに関しては、まあちょっと思うところもありますが、世界的にそっちの方向に向かっている。その世界的な潮流とも一致している、というのがございます。

ただ、この『HiGH&LOW』の場合はですね、その関係性から生じる見せ場というのは、見せ場自体は単なる記号ではなくて、スタントアクション、あるいはカメラワーク、美術、衣装などなどすべてにおいて、細部まで含めて、本当に日本映画史上類を見ないスケールだったりクオリティー、質の高さだったり、あとは非常にアイデアがいっぱい凝らされていたりとか、そういうのがどんどん投入されて……言ってみればミュージカル的な「群舞」シーンとして、非常に見応えがある見せ場、というのが毎回あるわけですね。

まあ、EXILE TRIBEが映画をつくるという時に、「格闘=ダンス」シーンっていうような、その羅列……しかもそれがEXILE TRIBEの曲を流しながら、というようなつくりになるのは、非常に理にかなった話である、というようなことも、前回の『2』の評で言いました。なので、通常の作品で言う「ストーリー」というのは、それらの見せ場をブリッジするための、やはり記号的なパーツにすぎない、 というところはあるため、その部分だけ真正面から評すると、それは当然突っ込みどころだらけだったり、陳腐だったり、というような結論にならざるをえないところもあるんだけど……っていうね。まあ、いまやそここそがハイローらしさの一部でもあるというか、要するに、まともなストーリーテリングとかをされると、なんかあんまりハイローっぽく感じられなくなってくるとか、そういうところもあるぐらいだということでございます。

■弱点が目立たなかった『2』。それに比べて今作は……

で、特に前作『HiGH&LOW THE MOVIE 2 / END OF SKY』はですね、各見せ場、アクションシーンを、さらに大幅に強化して……たとえば、三代目J Soul Brothers、私が本当に「カタチ」が好き!って言っている(笑)、小林直己さん演じる源治という、まあ要は非常にターミネーター的な殺人マシーンキャラクターと、琥珀さんと九十九さんとの、カースタントを絡めた格闘シーンのすさまじさであるとか。あるいはやはり、『2』といえばクライマックス。廃駅、寂れた駅の構内での一大乱闘=「ケンカ祭り」シークエンス。それぞれのチームが、それぞれの戦い方の特徴を活かしまくって、カメラも縦横無尽で動いて……という、素晴らしいシーンでしたけどね。

とにかく『2』はですね、そういう「アガる」見せ場の構築にひたすら注力する一方で、前作『1』までと比べて、たとえばウェットなシーンとか――このハイローというシリーズは、ちょっとウェットなシーンが多いっていうのが結構あるんですけど――そのウェットなシーンとか、あと必要以上の外しギャグシーンなどは相対的に減らすなどして、要はテンポ感を殺がないつくりにしているということで、ちゃんと弱点の補強、弱点をカバーもしてきている、というのが『2』だったと思うんですね。

ということで、少なくとも僕が考える意味で……要はハイローシリーズのどこが好きで見ているか? 非常に間口が広いというか、どこからでも入れて、どんな楽しみ方もできる、その間口の広さこそが『HiGH&LOW』シリーズというエンターテイメントの魅力でもあるので。はっきり言って、それによって人によって求めるものが全然違うというところがあるので(僕含めた誰かの意見が唯一の“正解”ではないのだけれど)……。

ともかく、僕が考える範囲での『HiGH&LOW』シリーズの美点、長所というところには力を入れて、弱点というか、弱いポイントは目立たないようにカバーしたという、ある種理想的なブラッシュアップが施された一作が前回の『2 / END OF SKY』だった、という風に思うわけですね。だから、いま振り返ってみてもやっぱり、『2』はすごいよかったな、という風にめちゃめちゃ思います。

■記号的シーンの羅列だけは空虚さが目立ってしまう

ではですね、その『『2 / END OF SKY』、「ザム2」とはセットとなっている、ある意味裏表の関係でもある今回の『3』はどうだったか? というとですね。そもそもこれは、ご存知の方も多い通り、この『2』と『3』は本来、1本の作品としてつくられる予定だったわけですね。なんだけど、いろいろと中身が収まりきらず、急遽、同時進行で制作されて、2本に分けられたという経緯があるわけです。

なので、その「ザム2」が、さっきも言ったようにとにかくド派手でゴージャスな見せ場の連発、アガる要素のみをてんこ盛りにしたような方向に行っていたのとは対照的に、今回の『3』は、要は『2』ではやっていない方向を広げている。つまり、それ以外の部分、これまでのシリーズの物語的な流れを一通り回収する、「物語的な回収」というところに重きが置かれているわけです。なので、『2』と対になっているわけですから、『2』で入りきらなかった部分を『3』でやる、ということを考えると、これはまあ当然、必然的なつくりではある。これは理解できるし、まあ、メールにも結構ありましたけど、今回ストーリーは、一本道でわかりやすいです。いままでの中ではいちばんわかりやすい。これも確かだと思います。

ただですね、先ほども言った通り、もともとハイローにおける「ストーリー」というのは、見せ場をブリッジする……その見せ場自体が、「記号的パーツとしてのキャラクター同士の関係性」から生じる見せ場なわけで。(「ストーリー」はさらに)その見せ場同士をブリッジするための記号的パーツでしかないので、今回の『3』のように、アクション的な見せ場がちょっと少なめなつくり……このハイローというシリーズにとってアクション的見せ場というのは、唯一記号的ではない、ある種豊かさに満ちたパートなんですけど、それがちょっと抑えめで……となると残りはひたすら、記号的な展開が続いてく。

たとえばお話も、記号、記号、記号しか続いていかない。たしかにそれはわかりやすいんですよ。どこかで見たような展開が、「わかるっしょ? わかるっしょ?」って感じで続いていくから、たしかにわかりやすくはあるんだけど……はっきり言えば、これだけちょっと記号だけが立て続けに続くだけで、いわゆる充実した見せ場というのが少なめになると、ちょっと空虚さが目立ってくる感は私、否めないかなと思ってしまいました。

■物語的な流れがないからカタルシスが生まれない

たとえば、メインの話は今回、大きく言えば政治的陰謀劇なわけですよね。なんだけど、そこで語られる……政治的陰謀劇、いろんなことを言うんですけど。「公害」とか「被害者」「責任者」「隠蔽」「秘密資料」(笑)……で、その「秘密資料」っていうのは、ファイルの上に「TOP SECRET」って書いてあるんですね(笑)。とにかく、「ひたすら一般名詞だけが飛び交う」という、現実には絶対にありえない会話シリーズっていうか。本当に一般名詞だけが飛び交う、というのが非常に特徴的なんですけども。まさに記号だけが飛び交っているような世界なわけです。もうちょっと、シュールですらある、というような感じになっている。

で、そもそもこの「隠蔽された事実の暴露」っていうこの話自体、『2』の途中まででやっていたことの繰り返しなわけですよ。なので、せっかく『2』と分けて物語的な回収をしますよっていう『3』なのに、でもやっていること自体は『2』の繰り返しでもあるので、なんかこう、「またそれ?」っていう感はどうしても否めなかったりします。そしてなによりも、今回の「隠蔽された事実の暴露」……『2』の、「USBをアップロードするんだ!」っていうのもね、「それ、いまやらなきゃダメだった? 琥珀さん、もっと早めにやっておけばよかったんじゃない?」っていうようなね(笑)、あれもあれでまあ、突っ込みどころでありましたけども。

今回のその「事実の暴露」っていうのは、「えっ? それで何かが証明されたことになっているのかな?」みたいな、ものすごく飲み込みづらいというか、非常にスカッとしづらい見せ方にもなっちゃっていたりとかしてて……その流れは、あまりにも記号的なだけで、全然面白くなっていかない、というのもありますし。

あるいは、ガンちゃん演じる事実上の主人公コブラが、加藤雅也さん演じるヤクザ、克也会会長というのに、雨の中、単身殴り込みをかけて、逆に囚われの身になってしまう場面が前半の方にあります。これね、画はすっごいかっこいいんですよ。雨が降っていて。で、運転手が倒されていて。「誰だ?」と思ったら、逆の方向から、雨が降る暗闇の中から、ぬうっと姿を現すコブラ。しかも、バンダナで顔を隠しているんですけど……コブラだよね?って(丸わかりな感じではある)。で、さらに顔を出しちゃうっていう……なんのための覆面だったんだろう?(笑)っていうのはあるんだけど、まあでも、めちゃめちゃかっこいい感じで姿を現す。

で、スローモーションで、その雨に濡れる路地を上からとらえたショットで、ワーッと(乱闘に)なる。ここ、撮影といい、美術といい、この絵面は、まさに「映画的な」かっこよさに溢れているわけです。「ああ、すごい! かっこいい!」って思うんだけど……でも、ここね、お話的な流れが、全然ぶった切られて登場する場面なんですよね。たとえば、なんでコブラは急にそんな無謀な、1人で攻め入るなんてことをしちゃっているのか? だってその手前のところで「自分たちの街、自分たちのテリトリーにおびき寄せて戦えば、俺たちが有利だ!」って言って、実際にそれでヤクザたちを撃退している場面があるのに、なんで急に1人で殴り込んで、しかもまんまと捕まっちゃてるのか?っていう。お話的な流れが、全くないんですよ。なので、やっぱりいくら画がかっこよくても、ここで単身殴り込みに行ったという物語的な流れがないので、充分なカタルシスが生まれない。

「物語的な流れがないから、カタルシスが充分生まれない」というのは、これは実はハイローシリーズが本質的に持っている弱点でもあるわけですけど……それがものすごく強く前に出ちゃう作りになっちゃっている。「お話」というものを今回は前面に押し出しているぶんね。で、そこからね、コブラが拉致監禁され、拷問されて。なんならもう、ほとんど殺される寸前まで行くわけですよね。それはすごくハラハラするし、「ああ、ついにハイローの牧歌的な世界が、ここまで行っちゃった……!」っていう(感慨もある)。それはいいんだけど、それの救出劇のあっけなさ(笑)。「ドア、薄っ!」っていう。まあ、あれがハイローらしさっちゃあ、ハイローらしさなのかもしれないけども、そこもやっぱり、ここまで話を重くしておいたのに、なんか軽く終わっちゃうんだよね……っていう感じとかですね。

■残念な「見せ場の省略」

また今回、アクション的な見せ場としては、ある意味いちばん見ごたえがある、琥珀さん、九十九さん、そして雨宮兄弟、この4人が、追っ手のヤクザ軍団と廃ビルの中で攻防戦を繰り広げる……これは、前回の駅構内のものすごい広い空間、あとは『1』のコンテナ置き場の広い空間での戦いとの差別化にもなっていて……狭い空間での戦い。全体に今回、狭い空間での戦い、たとえばRUDE BOYSのパルクールアクションを使ったのもいっぱい出てきて、狭い空間での戦いで差別化しているのはすごくいいんだけど……で、戦いもすごく面白い。途中、「どうやって撮影しているんだ?」って驚かされてしまう、上下階をまたいでの長回しショット。上の階から、穴みたいなところにシューッて(視点が)入っていって、スーッとそのままの流れで行くとか、「どうやって撮っているんだろう?」っていう長回しショットとか。

今回全体に、要所要所で非常に力が入った長回しショットが何回か出てきて、これはすごくいいですよね。たとえば途中で、無名街に笹野高史さん演じるヤクザの会長が踏み込んでいくところの、長い長いショットであるとか、すごくそこは見ごたえがあるところでしたね。ただ、笹野さんが「シーッ!」ってやると、それまで流れていたBGMもプッ!って止まるっていう、「なにその演出? ゴダールじゃないんだから!」みたいな(笑)、びっくりするような演出があったりしましたけども。まあ、長回しとかも見ごたえがありますし。あと、文字通り敵を「一網打尽にする」スタントアクションのアイデアの数々。たとえば、床をドーン!って踏んで、それでドーン!って(敵に間接的攻撃を)やるとか、アイデアが凝らされていて。この廃ビルでの攻防戦は、「さすがハイロー!」と唸らされるシーンではあるんですが……このシーンの最後。琥珀さんとTAKAHIROさん演じる雨宮兄の間に、またまたあのターミネーター的な追っ手である、僕の大好きな源治さんが登場するわけです。

「さあ、どうするんだ?」って。僕は源治さんファンですから、「源治、来た! 盛り上がる!」って思ったら、パッと別の場面にカットが変わって。当然「ああ、別の話を進めておいて、途中でこの源治さんとの戦いのところに戻るのかな?」って思ってたら……いつの間にかこの戦いは、勝手に終わったことになっている。これは大変がっかりさせられる。こんな感じで今回の『3』は、たとえば『2』での、「日向に殴りかかっている村山さん」みたいな、ああいう粋な省略とかじゃなくて、「えっ、そこはちゃんと見せてくれないんだ?」っていう、ただ単にがっかりする見せ場の省略が、大変に多い。そもそも、ハイロー最大のアガりポイントでもある、各チームの見せ場自体が、今回は非常に少ない作りになっている。

たとえば、まだ見せ場はある方の達磨一家。「達磨通せや!」の達磨、日向さんが、今回はどんな格好で(アメ車の)ボンネットに乗っかっているのか?っていう見どころ。これは最高でした! ここはもう、爆笑しました。「危ない!」っていうね(笑)、(とんでもない体勢で)乗っかっていて、ここは爆笑するんだけど。(物語的な)達磨の見せ場としては、クライマックスで彼らが上げる、打ち上げ花火というか、カラー煙幕みたいな……まあ、『マッドマックス 怒りのデス・ロード』風っていうんでしょうか? カラー煙幕をボンボン打ち上げて、雨宮兄弟たちを突破させるっていうんだけど……その煙幕的なものを打ち上げて、それを使って、どうやって九龍グループの人の盾、防御線を突破したのか?っていうのが、描かれないんですよ。煙幕として使って突破したのか、それとも腕力で倒して突破したのか、全然わからないじゃないですか。あのカラー煙幕がなんなのかがまったくわからないまま話が進んでしまうため、なんかアガりきらないんですね。つまり、「達磨がやってくれた! どんなもんだ!」っていうカタルシスが生まれないわけですよ。

■「ガキたちの成長譚」としての物足りなさ

あとね、なにそれ? といえば、クライマックス。無名街の「爆破セレモニー」っていう(笑)、これもすごいクライマックスですけども。要は、タイムサスペンス的に盛り上げるのかと思っていると……たとえば起爆装置の受信機っていうのを、九十九さんとダンさんたちが見つけるくだりがあるわけです。で、「どのコードを切るべきか?」っていう、まあありがちな展開がある。ただこれ、起爆装置の“受信機”だったら、別に単に全部切ればいいんじゃない?っていうね(笑)。要するに、トラップが仕掛けてあるような爆破装置じゃないんだから、別に切ればいいだろって思うんだけど、そこは置いておいて。

で、「どれを切る?」みたいなことをやっているわけです。ところがここ、驚くべきことに、まあ若干ネタバレしちゃいますけど、「カウントダウン! 間に合うのか? 間に合わないのか? どれを切るんだ!?」っていう話かと思いきや、カウントダウンが終わってドカーン!って爆発した後に……「切っていなかった」っていう(笑)。「えっ? 切ってないって……なにそれ?」っていう。「切ったけど、爆発しちゃった」とかじゃないんだっていう。イライラするなー!っていう。ちなみにこの、クライマックスの九十九さんとダンさんチームの何の役にも立ってなさぶりは、ちょっと目に余るものがある(笑)っていうね。彼ら、戦ってすらいないからね。っていうのもあったり。

で、たしかにその後の爆破シーン。特に逃げるコブラとエリちゃん……「公害の被害者」ことエリちゃんがコブラと一緒に逃げていて、後ろでドカーンと起こっている事態の絵面のすさまじさは、結構度肝を抜かれました。抜かれましたけど、やっぱりここ、爆破というのを使ったタイムリミットサスペンスとして、記号的にでもいいから手順を踏んで盛り上げて、っていうのをちゃんとしていないから、ただ絵面的なすごさに終わっちゃっているっていう。これもやっぱり、ハイローが本質的に持っている弱さが、特に前に出ちゃっている感じがするんですね。たしかに、お話として、シリーズのひとまずの区切りとして、「ガキのケンカをしていればよかった季節が終わる」っていうのを描くというのは、狙いとしては理解はできる。非常に誠実な流れではあると思うんです。

ただ、そのために作品の比重が全体に、「大人たちの物語」っていう方の比重が大きい話になっちゃって。実際、九龍グループ側の話とか、なんなら途中である本質が明らかになる、ある大人のキャラクターがいて、彼の話としての比重の方が大きくなっちゃって(※宇多丸補足:実は真に重要かつ感動的なのは、彼の視点から見た物語のはずだろうとも思います)……なんだけど、そのわりには、「大人の話」になりかけているのに、作劇的には、例によって記号的、という域を出ていないので。なんというかやっぱり、帯に短し襷に長しというか、残念ながら、少なくとも僕の考えるハイローの美点はかなり後退してしまって、逆にハイローの弱点というのが前に出てしまう、というような作りになってしまっているのは、否定できないかなと思います(※宇多丸補足:加えて、主人公たちが、誰かしら大人キャラの生き様から、肯定的にであれ逆説的にであれ学び成長する、というようなプロセスがついに描かれないのも、“ガキからの卒業”を描く一応の完結編として、いかにも不十分であるように僕には思われます……それこそ前述のどんでん返しキャラクターとか、格好の存在なのに! しかし、劇中で描かれるのは結局、大人が若者をなんだかんだで生暖かく許容し、若者側は大人たちをおおむね軽んじて終わるという、おなじみの構図のみなのです)。

■『2』とワンセットで見てこそ納得度が上がる

あと、キャラクターそれぞれの落とし前のつけ方としても、僕はちょっと中途半端じゃないかな、という風に思います。少なくとも、二階堂とかキリンジとか、ああいうヤクザチームの下っ端組は、1回ちゃんと誰かに……たとえば二階堂は無名街の誰かに叩きのめされるとか、そういうのがないと納得できないですよね。キリンジとかは、やっぱりちょっと痛い目にあわせてやらないとダメじゃないですか、本当は(笑)。とかね。まあ、MIGHTY WARRIORSに至っては、今回はね、なんだかよくわからない。「モグラをあぶり出した」っていうんだけど、「あぶり出してお前、なんにもしてないよね? クソの役にも立ってなくね?」っていうような感じになっている。まあ、今回ので終わらせる気がない、ということなのかもしれませんが。

個人的にはですね、本当にこのSWORDの各キャラのファイナルをやるんだったら、個人的には……個人的なアイデアですよ。HIROさん、聞いてくれても聞いてくれなくても結構ですけど、個人的には、『死亡遊戯』的な、ダンジョン攻略型のクライマックスで、1人1人のキャラクターを立てて先に進めていく、というような、こういう真のファイナルはいかがでしょうか? というね……すいませんね、個人的な妄想をね。だってハイローってさ、こういうことを言って楽しむエンターテイメントじゃん?(笑) ということで、あくまでも『2』とワンセットで見てこそ納得度が上がる、という『3』でした。でもまあハイローはね、リアルタイムでみんなで祭りに参加してナンボなので。ぜひぜひ劇場でウォッチしてください!

(ガチャ回しパート中略 ~ 来週の課題映画は『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』に決定!)

以上、「誰が映画を見張るのか?」 週刊映画時評ムービーウォッチメンのコーナーでした。




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