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難病・重度障害者福祉ものづくり支援シンポジウム▼人権TODAY(2017年12月09日放送分)

人権TODAY

毎週土曜日「蓮見孝之 まとめて!土曜日」内で放送している「人権トゥデイ」。様々な人権をめぐるホットな話題をお伝えしています。

今回のテーマは・・・『福祉ものづくり』

「福祉ものづくり」とはなにか?

今回は立正大学で開催された「難病・重度障害者 福祉ものづくり支援シンポジウム」について報告します。「福祉ものづくり」とは社会的弱者に手を添えて助けるだけでなく、コミュニケーションをとりながら自立した活動や自己決定ができるよう「ものづくり」で支援するという発想が根本にあるものづくりです。とくにALSなど全身に麻痺のある難病、重度障がい者には、画一的ではない、それぞれの症状に適した個別的な活動支援が必要です。そこで大学や高専のゼミや研究室と、福祉法人、企業などが連携して補助器具類などを必要な人の視点に立って開発したり、使いやすいよう改良する課題に取り組んでいます。
    
今回のシンポジウムでは、立正大学、湘南工科大学、東京高専の学生の実践報告や、重度障がい者の人たちによる「福祉ものづくり」をテーマにした講演が行われました。また、舩後靖彦さんというALS、筋萎縮性側索硬化症患者の方によるギター演奏などもありました。

舩後靖彦さんと「全身麻痺でも弾けるギター」

シンポジウムを企画した立正大学の田坂さつき教授
通常のものづくりと違うのは「福祉」と「ものづくり」がコラボしている状態なんですね。そういうのが今までなかった要素です。私自身、工学部の一般教養を教えていた経歴があるので、そこで自然に結びついたんですが、工学技術者っていうと自分の工学技術を生かしてボランティアをする発想が今までなかった。そこを福祉と工学をつなげる意味で、「福祉ものづくり」って新しい取り組みじゃないかと思います。

福祉ものづくりの例。たとえば舩後さんによる「全身麻痺でも弾けるギター」は湘南工科大学が、かつてギター演奏が趣味だった舩後さんの要望をうけて制作したものです。舩後さんはわずかに動かせる口に噛んだセンサースイッチからコードチェンジと弦のストロークを指示しています。実際に弦を押さえるのは機械的な仕掛けで行いますが、リズムやタイミングは舩後さん本人がとっています。

ギター奏者・舩後靖彦さん
「『全身麻痺でも弾けるギター』は、まだまだ“福祉ものづくり”による創意工夫で発展する可能性があります。私はこのギターを弾くたび、感じたことを製作した大学に提供したく思っています」

他にも、ギターの演奏と同じように、わずかな動きを感知するセンサーで全身麻痺の重度障がい者の方でもメールを書いて通信したり、読み上げ装置で音声化して伝えることができます。今回のシンポジウムには脳幹梗塞という病気で全身麻痺になり、声を出すことができない山中敏彦さんも自分でパソコンに入力した文字を、人口音声で読み上げる装置、「意思伝達装置」を使って講演を行いました。
    
こうしたパソコンを介して意思を伝達する装置も「福祉ものづくり」の発想でより使いやすく改良され舩後さんや山中さんのような重度障がい者にとって自分の意思表示をし、社会と接するための支えになっています。
    
また学生の実践報告では、社会参加で空き缶回収やプレス作業をしている車椅子を使用した脳性麻痺の障がい者が、プレス機の投入口が高い位置にあって使いにくい問題点を解決するため、車椅子のまま自分で投入できるようプレス機そのものを傾けて投入口を低くする装置を作ったケースや、手に麻痺があり指を動かせる範囲が狭い障がい者が使いやすいように、ゲームのスイッチなどを改良する例などが報告、展示されました。症状によりスイッチを押す力の入る方向などに個人差があるので、当事者に使用してもらって、意見を聞きながら調整していったそうです。

「自分がやった実感を持つ」ということ

シンポジウムを企画した立正大学の田坂さつき教授
非常に重い障がいの方で、施設での活動である缶プレス作業が身体状況からできない方々がいるんですね。今まで福祉職の方は「手添え」って形で作業していたんですけど、手添えっていうのは代行に近いので、本人も自分がやったという実感が持てない。そういった状態から本人が自分で作業をしているという実感を持つと作業に対する意欲とか、取り組み方とか笑顔とか、そういうのがよくなったと現場から聞いています。

障害者、難病患者の方たちと一緒に進めるものづくり=「福祉ものづくり」

障がい者の方々と接する機会が少ない学生たちは、福祉法人やボランティアと一緒に「福祉ものづくり」に取り組むことで、福祉に対する意識が高まると話していました。

参加した学生の感想
●(男性)学校に入る時は何も考えてないで、福祉系に携わりたいとか、そういうことで入ったわけではないです。話を聞いていると、こういうものが必要なんだとか、困ってる人がいるんだなと改めて気づきました。●(女性)使ってもらう方がALS患者さんに絞っている分、私たちが気づかなかったことをこういうふうに改良したほうがいいんじゃないのと気づかせてくれるのが患者の方なので、貴重なご意見をいつもいただいてます。

障害者とコミュニケーションをとりながら、当事者が快適な日常生活を過ごせるような支援をする、そこに「福祉ものづくり」の意義があると今回のシンポジウムは伝えていました。こうした取り組みは、高齢者の介護を行うケースなどにも応用でき、企業の技術者や一般市民のボランティア活動に広げていくことが大切だと思います。

シンポジウムの来場者たち

<dd(身体に障害があり車椅子で来場していた男性)僕もあの方たちとは違うけど、筋肉の病気で、普通の健常者側がこうでいいだろうと押しつけるんじゃなくて、当事者の方と一緒に考えていくという姿勢が、良かったと思います。(重度障害者施設で働く女性)重身(重度身心障がい者施設)の仕事なので、いろいろ知りたくて伺いました。ちょっとしたヒントで、いろいろ支援ができるんでしょうけど、それを思いつくまでがまた大変なのかなと思いますけどね。

(担当:藤木TDC)

学生による実践報告のスイッチ改造例

学生が展示していた障害者のためのスイッチ。スポンジなどで使用しやすく

田坂さつき教授(右)、舩後さん(中)、田坂ゼミの学生(左)。手に持っているのは彼らが作ったマッサージ器コントローラー