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高橋芳朗が選ぶ、2017年この1曲!

ジェーン・スー 生活は踊る

音楽ジャーナリスト高橋芳朗さんが選ぶ2017年この1曲!

高橋芳朗のミュージックプレゼント ホイッスルボイス特集http://radiko.jp/share/?sid=TBS&t=20171215112353

radikoで放送をお聴きいただけます(放送後1週間まで/首都圏エリア無料)

※以下、番組内容書き起こし by みやーん(文字起こし職人)

【高橋芳朗】
今日はこんなテーマを用意しました。「高橋芳朗が選ぶ、2017年この1曲!」。早速いってみましょう。わたくし高橋芳朗
が選ぶ2017年の1曲は、アメリカの27歳のラッパー、ロジックの「1-800-273-8255」です。この曲は今年のアメリカのチャートで3位まで上昇した大ヒット曲で、累計の売り上げはアメリカだけでも300万枚を突破。来年2月に開催される第60回グラミー賞ではソングオブジイヤーにノミネートされています。

【堀井美香】
はい。

【高橋芳朗】
で、この「1-800-273-8255」という数字の羅列がなにを意味しているのかというと、これはアメリカのフリーダイヤルの電話番号です。そしてこの番号に電話したらいったいどこにかかるかというと、アメリカのNPO団体「National Suicide Prevention Lifeline/国立自殺予防ライフライン」につながります。ここからわかると思いますが、つまりこの曲は自殺防止を目的としたロジックによるメッセージソングになります。

【ジェーン・スー】
うん。

【高橋芳朗】
ロジックはファンとの交流のなかで自分の影響力の大きさを実感して、もっとリスナーにとって助けになるような曲をつくりたいと考えたそうです。「暗闇のなかにいるような人に光を灯すような曲がつくりたい」と、そう考えてこの曲の制作を決意しています。実はロジック自身も2015年に仕事に追われるなかで離人症障害、自分が自分であるという感覚が失われてしまう状態になる神経症になって何度も自殺を考えたそうです。この曲には、そんな自分の体験も活かされているんですね。きっとロジック本人が一度そういう状況にまで追い込まれたことがあるからだと思うんですけど、この曲の歌詞は自殺をしようとしている人に思いとどまるよう呼び掛けるものではなく、まさに自殺しようとしている人間の視点から歌われているんです。

【ジェーン・スー】
なるほど。

【高橋芳朗】
さらに、この曲にはゲストとしてアレッシア・カーラという女性シンガー、それからカリードという男性シンガーが参加しているんですけど、アレッシア・カーラのパートは自殺しようとしている人間の「もう死んでしまいたい」という苦しみの吐露を受け止める役割を果たしているんですね。つまり、実際に自殺予防ライフラインに電話をして相談員と対話しているような構成になっています。

【ジェーン・スー】
はい。

【高橋芳朗】
では歌詞の大意を紹介していきますね。曲はまずロジックのパートから始まります。これは自殺しようとしている人間の独白で、こんな内容になります。「ずっとひっそりと生きてきた。自分の人生が自分のものではないみたいだ。誰も俺になんか共感してくれないだろう。もう生きていたくない。いますぐにでも死んでしまいたい。誰も俺がどうなろうと知ったこっちゃないんだ」。これを受けて、今度は女性シンガーのアレッシア・カーラのパートに移ります。彼女の歌はこんなフレーズで始まるんですね。「It’s the very first breath when your head’s been drowning underwater」。直訳すると「これはいままで水のなかで溺れていたあなたの最初の呼吸」みたいな感じになると思うんですけど、要は「このライフラインに電話してきたこと、その行為自体があなたの新しい人生の産声なんだ」と歌っているんですね。そして、彼女はこう続けています。「あきらめないでほしい。時間はかかるかもしれないが、いつかきっと暗闇のなかにも光が見えてくるはず」と。

【ジェーン・スー】
うん。

【高橋芳朗】
次は再びロジックが登場して、今度の彼はロジック本人として人生に絶望してる人々にメッセージを投げかけていきます。「俺には君がどこにいるのか、どこにいこうとしているのかわかってる。夜は必ずやってくるものだけど、そのときはたとえわずかでも俺が光を照らそう。本当につらいと思う。そんなに簡単なことじゃないと思う。でも、君には生きていてほしいんだ」と。そして、最後は男性シンガーのカリードが曲を締めくくるんですけど、彼の歌は曲の冒頭の自殺しようとしていた人間が新しい人生を踏み出そうとしている、そんな希望の声の役割を担っています。「痛みは人それぞれでひとつとして同じものはない。俺が歩いていく道は孤独だけど、足が動かなくなるまで前に進もう。もう泣きたくない。生きていることを実感したい。もう死にたいなんて思わない」。

【ジェーン・スー】
はい。

【高橋芳朗】
ロジックがこの曲を今年の5月にリリースして以降、自殺予防ライフラインへの電話は急増しているそうで、8月にロジックがMTVの番組で曲を披露したときにはコール数が前年比50%増に達したそうです。ライフラインのスタッフも、予想を超える曲の影響力の大きさに驚いているみたいですね。

【ジェーン・スー】
いまのアメリカの世相も反映しているんだろうね。

【高橋芳朗】
ですね。それにしても、こういうメッセージソングが総合チャートで3位、しかも300万枚ものセールスを記録しているあたりにアメリカのポップミュージックの懐の深さを感じます。というわけで、わたくしが選んだ2017年のこの1曲、ロジック feat. アレッシア・カーラ&カリードで「1-800-273-8255」です。

M1 1-800-273-8255 / Logic feat. Alessia Cara & Khalid

【高橋芳朗】
この曲はLGBTを題材にしたミュージックビデオも素晴らしいので、ぜひYouTubeなどで観てほしいですね。俳優のドン・チードルも出演しているちょっとした短編映画のような重厚な内容なんですけど、自分のセクシャリティが理解されずに一旦は自殺を決意する黒人の同性愛者の少年の苦悩が描かれています。先ほどこのビデオのYouTubeの再生回数を確認してみたら、1億7千500万回を超えていました。きっとこの曲、このビデオは少なくない数の命を救っているんじゃないかと思います。

【ジェーン・スー】
うん。

【高橋芳朗】
この流れでもう一曲、聴いてもらいたいと思います。今度は日本のアーティストの曲でSKY-HIの「0570-064-556」。これは日本のAAAのメンバー、日高光啓さんがソロ活動のときに使っている「SKY-HI」の名義でリリースした曲で、先ほど聴いてもらったロジックの「1-800-273-8255」のカバー/アンサーソングになります。ラップでは、こうして他のアーティストのトラック/オケを乗っ取って自分なりの考えやスタイルを主張する「ビートジャック」と呼ばれる手法があるんですね。つまりこの日高さんの曲はロジックの「1-800-273-8255」を日本に置き換えた内容で、タイトルの「0570-064-556」は厚生労働省が自殺対策として設けた「ここの健康相談統一ダイヤル」の電話番号になります。日高さんはこの曲を9月の自殺対策強化期間の前、18歳以下の自殺が夏休み明けに集中していることを踏まえて8月にインターネット上にアップしています。これは自殺の防止を目的としたそもそもの意義からしても本当に素晴らしい取り組みだと思うんですけど、いま日本は未曾有のラップブームじゃないですか? そういうなかでこの日高さんのアプローチはラップという表現のフットワークの軽さだったり、ラップという表現の可能性を広く知ってもらう意味でも非常に大きな価値があると思います。

M2 0570-064-556 / SKY-HI

【高橋芳朗】
この曲はロジックの「1-800-273-8255」のトラックをジャックしているという性格上販売はされていません。SKY-HIの公式YouTubeチャンネルにアップされているので、改めて聴いてみたいという方はぜひそちらをチェックしてみてください。

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当ラジオ番組では「日々の生活に音楽を」をコンセプトに、音楽ジャーナリスト・高橋芳朗さんによる洋楽選曲を毎日オンエア(稀にかかる邦楽はディレクター選曲)。最新1週間のリストは以下です。

12/11(月)

(11:03) Tokyo Joe / Bryan Ferry
(11:42) Da Ya Think I’m Sexy? / Rod Stewart
(12:18) Miss You / The Rolling Stones
(12:50) Last Train to London / Electric Light Orchestra

12/12(火)

(11:02) Kiss On My List / Daryl Hall & John Oates
(11:15) Don’t Ask Me Why / Billy Joel
(12:18) Escape (The Pina Colada Song) / Rupert Holmes

12/13(水)

(11:03) Mrs. Robinson / Simon & Garfunkel
(11:43) I Dig Rock and Roll Music / Peter, Paul and Mary
(12:16) Sweet Blindness / Laura Nyro
(12:25) Now That Everything’s Been Said / The City

12/14(木)

(11:02) Two Hearts / Phil Collins
(11:18) We’ll Be Together / Sting
(12:51) Higher Love / Steve Winwood

12/15(金)

(11:02) Walk Like an Egyptian / Bangles
(12:16) Who’s That Girl / Madonna