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がん薬物治療の最前線〜「メラノーマ」で見えてくる!

森本毅郎 スタンバイ!

がん治療で注目される「オプジーボ」ですが、保険適用が初めてスタートしたのは、悪性度が高い皮膚がんの一部「メラノーマ」でした。それから3年程経ち、ほかにも効果がある、がん治療薬「分子標的治療薬」が登場。「メラノーマ」で繰り広げられる、がんの薬物治療の最前線はどうなっている!?12月18日(月)、松井宏夫の「日本全国8時です」(TBSラジオ、月曜あさ8時~)で解説しました。

 

★メラノーマの治療に注目

まず「メラノーマ」ですが、その年間患者数は、およそ4千人、亡くなる人はおよそ7百人。他のがんに比べると患者数は少ないですが、ここに薬物治療の最前線が結集しています。「メラノーマ」の治療の基本は手術です。皮膚の表面にある色素細胞ががん化したメラノーマですが、まだ小さな段階であれば、メラノーマの部分の周り1~2センチ大きく、皮膚を切り取る手術を行います。それが、リンパ節に転移すれば、リンパ節をも切除することになり、10数年前までは、手足の切断もありました。リンパ節から他の臓器に転移した段階になると、手術は困難で、「薬物療法」となります。薬物療法は、2本柱で、「免疫」に注目した薬と、「分子」に注目した薬の2つです。

★3つの免疫チェックポイント阻害薬

免疫に注目するのは、「免疫チェックポイント阻害薬」と呼ばれるもので、3年前に使われ始めた「オプジーボ」、2年前に使われ始めた「ヤーボイ」、今年2月に出た「キイトルーダ」です。どういう仕組みかというと、がん細胞は、人間の免疫の働きを弱める作用がありますが、その作用を薬で邪魔して、免疫をしっかり働かせて、免疫でがんを叩く仕組みです。メラノーマでは、3種類の薬のうち、優先されるのはオプジーボとキイトルーダで、どちらも、およそ3割の人が、がんが小さくなった、という効果が出ています。一方で、ヤーボイは、3年生存率が2割強と低く、第2選択にとどまります。

★2つの分子標的治療薬

分子に注目した薬は、正式名称は「分子標的治療薬」という名前です。文字通り、「分子」を、「標的」にした、「治療薬」です。がん細胞が増える時には、ある分子が作用しますが、その分子だけを狙い撃ちすることで、正常な細胞を傷つけずに、がん細胞の増殖を止める、という仕組みです。どうやって狙い撃ちするかというと、メラノーマの場合、ビーラフと呼ばれる遺伝子の変異があると、がんの進行に関わることがわかっています。その遺伝子の変異がある人には、薬が効く、というわけです。日本人の患者さんでは、2割程、この遺伝子変異がある人がいます。去年からそうした人向けに、分子を標的にする2つの薬が出ています。「タフィンラー」と「メキニスト」という名前ですが、すでに使われています。分子標的治療薬の場合は、副作用が小さいのも特徴です。抗がん剤は、がんだけでなく、正常な細胞も叩きますが、分子に注目する薬だと、悪いところだけ叩くので副作用も軽いのです。

★治療成績が良いのはどっち!?

たくさんの薬が出てきていて、現場の医師も、使い分けに悩んでいるところですが・・・今は、分子に注目して狙い撃つ「分子標的治療薬」の方が優先されます。そのため、この薬が使えるかどうか、対象となる遺伝子があるかどうか、まず調べます。というのも、分子標的治療薬の治療成績が、きわめて高いことがわかってきました。がんの大きさが半分以下になり、その状態が1ヶ月以上続いた患者の割合を見ると、オプジーボなど、免疫を生かす薬は30%なのですが、分子標的治療薬は70%!

★今後は2つ使いで効果倍増!?

ただ、免疫を生かす薬も捨てたものではありません。来年、免疫を生かす薬の治療がさらに進化します。2つの薬の併用が始まります。現在のところ、免疫を生かす薬は、副作用があるため、1種類ずつ使用するのが原則です。オプジーボならオプジーボだけ、ヤーボイならヤーボイだけ、ですが、欧米ではオプジーボとヤーボイを組み合わせて使っています。これにより、効果が上がっていて、がんの大きさが半分以下になり、その状態が1ヶ月以上続いた患者の割合は、1つだと30%でしたが、2つ併用で50~60%になっています。ただ人種の違いもあるので、これが日本でどんな結果をもたらすのかは、これからです。

★速効性と持続性の特徴

分子を狙う「分子標的治療薬」と、免疫を生かす薬では、特徴に違いがあります。分子標的治療薬は「速効性」、免疫を生かす薬は「持続性」に特徴があります。進行が速い人にとっては、分子標的治療薬が有効で、数日後から効果が出てきます。メラノーマが他の臓器に転移した人でも、1週間程で生活の質が改善したこともあります。しかし、スタートダッシュは良いですが、使い続けると、薬が効きにくくなります。一方の、免疫を生かす薬は、効果が出るまで2,3か月時間かかりますが、確かな効果をあげる、という特徴があります。そのあたり、個々の患者さんの状況によって、使い分けることになります。

★消える抗がん剤・・・

こうして、新しい薬が盛り上がる中で、「抗がん剤」という言葉は、将来、消えそうです。メラノーマでは、抗がん剤は、既に使われていません。不思議ですが、メラノーマの治療では、他に先行して、新しいがんの薬が導入されています。免疫を生かす治療薬のオプジーボなどは、メラノーマから始まって、今では肺がんなどにも使われるようになっています。そういう意味では、メラノーマでの薬の進化は、がん治療全体に広がっていく可能性があり、注目です。

 

日本全国8時です(松井宏夫)

解説:医学ジャーナリスト松井宏夫

 

松井宏夫の日本全国8時です(リンクは1週間のみ有効)http://radiko.jp/share/?sid=TBS&t=20171218080000

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