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無国籍について考える~NPO法人「無国籍ネットワーク」の活動▼人権TODAY(2017年12月23日放送分)

人権TODAY

毎週土曜日「蓮見孝之 まとめて!土曜日」内で8時15分頃から放送している

「人権トゥデイ」。様々な人権をめぐるホットな話題をお伝えしています。

今回のテーマは…2017年12月23日放送「無国籍について考える」

担当:崎山敏也

 

最近、ミャンマーで迫害されて、隣のバングラデシュに逃れ、大きな問題となっているのが、ミャンマーの少数民族「ロヒンギャ民族」です。ロヒンギャ民族はミャンマー政府が国民とみなしていないため、どこの国籍も持っていません。国連の難民高等弁務官事務所の11月の発表によると、ロヒンギャ民族のような「無国籍者」は全世界に推定でおよそ1千万人いるとみられています。

無国籍ネットワーク

無国籍ネットワーク

「無国籍者」は日本にもいます。「無国籍者」の存在を知って、課題を一緒に考えてほしい、と活動しているNPO法人「無国籍ネットワーク」が11月25日、無国籍者の語りを聞くセミナーを開きました。この日のタイトルは「ベトナム南部出身のシスターのたどった足跡~マリアさんの語り」です。

 

マリア・ランさんは旧南ベトナムに生まれ育ち、1975年の南北統一後、内戦に負けた南ベトナム政府側ということで、家族が刑務所に入れられたり、勉強して大学を出ても仕事がない、といった状態にあったため、1989年、小さな船に乗って、ベトナムを脱出、フィリピンを経由して、日本に来ました。いわゆる「ボートピープル」のインドシナ難民です。今のベトナム政府は、難民として逃げたマリアさんに国籍を認めないので、日本の永住権はありますが、「無国籍」です。現在はシスターとして、埼玉県のカトリック川口教会に住み、日本にいるベトナム人への様々な支援に取り組んでいる。

マリアさんはこの日、例えば、難民認定申請中で仮放免されたベトナム人の親子が相談したときのことを話しました。「子供が生まれたあと一ヵ月後、お母さんが私に、シスター助けてください。子供が病気です。私、食べ物がない、と。赤ちゃん生まれても、ミルクもないし政府は何も支援しません。私たちはできるところを手伝ってあげます」と。命からがら、難民として日本に逃れてきた人は、滞在資格がないほうが普通ですが、不法滞在者として施設に収容されることがあります。難民認定申請中などは「仮放免」となることもありますが、「仮放免」とは、移動は制限され、仕事についてならず、医療費は全額自己負担。コミュニティの支えがないと苦しいんです。マリアさんたちはこのような生活相談だけでなく、弁護士による法律相談を開いたり、日本語の勉強など教育支援もしています。

そんな中、増えているのがベトナム人の技能実習生、留学生からの相談です。例えば、技能実習生が、日本に来てみると、ベトナムでの説明と違い、低い賃金や長時間労働、職場での暴力や暴言、劣悪な住環境、労災隠しがあったり、と相談に来ます。一方、ベトナムでは、仲介した団体に保証金や手数料名目で借金をしていることも多く、我慢して働いていることも多いようです。マリアさんは具体的な相談例をあげて、自分の取り組みについて説明していました。

マリアさん自身は「無国籍」です。日本の「永住権」はあるので、日本にいる間はさほど問題はありません。仕事で海外に出る時が問題です。日本に帰って来るため、毎回、「再入国ビザ」が必要ですし、海外にいる間、何かあってもどこの国の保護も受けられない。国によっては、無国籍を理由にビザがでないこともあるし、トランジットした空港でいろいろ尋問されたこともあるそうです。周りからは、仕事のために日本国籍をとることを勧められますが、マリアさんは踏み切れないそうで、「心の奥に、やっぱり私は、この顔、この性格は全くベトナム人ですけれど、仕事のために、日本の国籍になることを、いくら考えてもやっぱり、まだまだ受け入れられません。でも、本当に、すごい苦しんでいますね。ベトナムの国を、自由でない国から逃げたんですけど、日本に来て、自由な国だと思っているんですけど、今でも私、自由にあちこちに行けません」と話します。

国籍は権利やアイデンティティに結びつくので、「無国籍」者には困難や悩みが生じます。マリアさんはまた、「でももし、無国籍でそのままの状態であちこち自由に行けたら一番いいと思います。私だけでなく、ほかの人々も、無国籍で、でもみんな同じように平等です。そのことを期待です」と話していました。日本社会の一員として暮らしているマリアさんですが、日本国籍をとることだけが唯一の解決とはいえなさそうです。国籍とはなんなのか?何人であるとはどういうことなのか?あらためて考えさせられました。

マリアさんのトークは実は連続セミナーで「日本にくらすアジアの少数民族~マイノリティをとおして国籍をかんがえる~」の4回目。初回はロヒンギャ民族の男性、二回目はスリランカの少数派、タミル民族の男性、三回目はトルコの少数派、クルド民族の女性が話をしました。コーディネートしたのは難民など外国人の医療支援に取り組む医師の山村淳平さんです。全ての回を終えて、山村さんは「お話をしてくれた方々に共通する点は何かというと、性格が穏やかで知的レベルも高い。どうしてかというと、そうでないとその国で少数派は生きて行けないんです。例えば、100人の中に一人いると、もし、けんかになったら、負けるのは当然。そうするとどうしても少数派は人間関係をよくしていく、自分の能力をその場で発揮して行く。私たちの日本社会はいろんな外国人が入ってきている。人との関係をどうやって築いていくのか。私たちはそれを見習うこともできるんじゃないか」と話していました。

無国籍の人がかかえる課題への支援はもちろん必要ですが、同時に、無国籍の人の生き方に学ぶことで、日本社会のあり方を豊かにする可能性もあると感じました。NPO法人「無国籍ネットワーク」の活動に今後も注目したいです。

 

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