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神奈川県立がんセンターで医師が次々辞職!いったい何が?

森本毅郎 スタンバイ!

神奈川県立のがんセンターで、専門医師が先月、相次いで辞職表明。この事態に、神奈川県の黒岩知事も「非常事態」を表明するまでになっています。県知事が乗り出すまでの事態になっている背景は?1月15日(月)、松井宏夫の「日本全国8時です」(TBSラジオ、月曜あさ8時~)で解説しました。

 

★相次いで辞職表明

退職意向を示した人たちが担っていた仕事は、がんの放射線治療で、中でも、「重粒子線治療」というものなのですが・・・まず退職の意向を示しているのが、その専門医師4人。先月既に、2人が辞めて、残り2人も今月末までに、辞める意向を示しています。これまで総勢6人いたのですが、今月末には2人態勢になってしまう、ということです。辞職意向の理由は、医師同士の対立などとも言われていますが・・・まだわかりません。

★重粒子線治療

ただ彼らが担っている「重粒子線治療」という治療は、厚労省の中でも「先進医療」に位置付けられるもので、大変期待の高い治療法です。重粒子線治療を、簡単に説明しておきます。重粒子線は、放射線の一種で、従来のX線に比べると、がん細胞だけをピンポイントでやっつけることができます。従来のX線治療は、皮膚から体の内部に入っていくにつれ、パワーが弱まっていきます。例えば、がんが、体の内部の難しい部分にある場合、そこを叩くためには、強めの放射線を使うので、周りの正常な部分も傷つけてしまいます。一方重粒子線の場合、悪い部分の1点に焦点を絞って、パワーを集中することができます。がんの部分でパワー全開になるので、周辺の正常な細胞に影響が出にくい手法です。また、患者さんの呼吸など微妙な動きにも合わせて、がん細胞を狙い撃つことができたり、重粒子線を照射する回数は、放射線治療よりも少なく、治療は数週間で終わります。

★どんな「がん」に効果があるのか?

切ると取り返しがつかないような場所にできたがんや、手術不可能な場所のがんです。例えば、骨や軟骨など体の内側にできたがん=骨軟部腫瘍や、舌がんや咽頭がんなど、首回りにできた、そして眼球のがんなどです。将来的に障害が出るなど切り取るにはリスクの高い部分で、かつX線で治療の難しい部分を対象に行われる治療では、いわば最後の砦となっているのが、この治療の特徴です。

★先進医療で厳しい要件

基本的には、「先進医療」に位置づけられていて、治療が可能な医療機関の要件があります。例えば、治療に当たるのは、重粒子線治療の施設で、治療経験が1年以上あること。放射線治療に専従する常勤医と合わせて、2人以上は配置される必要があります。

★後任が決まらない・・・

4人が辞める意向を示した後、県立がんセンターは、慰留するとともに、後任の医師確保に乗り出しましたが、今のところ見つかっていません。もし、後任の新しい医師が確保できなければ、来月から治療は中止の可能性もあります。この県立がんセンターでは、年間およそ3万人の患者さんを受け入れていました。しかし今新たな患者の受付を制限し、治療中の患者さんにも影響が出る可能性があります。そのまま医療施設に委ねてはおけない、一大事だとして、今月10日には、副知事を委員長とした対策委員会が、設置されました。その初めての会合で、黒岩知事が「非常事態が起きている」と危機感を表しました。

★背景には粒子線治療施設の建設ラッシュ

年度の途中であることなどから交渉が難航したとされますが、いま重粒子線治療の施設が建設・開業ラッシュが続くのも、背景にあるとみられています。重粒子線治療というのは、原子の構成物質である粒子の流れを使った粒子線治療の一つで、同じ粒子線治療には、他に陽子線治療というものもあります。重粒子線や陽子線といった、粒子線治療の施設は、現在、全国に17施設あります。

★施設の小型化

これまで、この粒子を行う施設は、バレーボールコート4面が入るくらいの大きい体育館程の大きさの建物が必要でした。粒子線のビームを作り出すためには、粒子の加速や制御など難しい作業を行う必要があり、それには、とても大きな構造物が必要となるためです。とにかく広大な敷地が必要なので、郊外に多い。それがいま徐々に、広大な敷地を必要としない、都市型の施設になってきています。業界では記録的な小ささなんですが、45m×45mの大きさになっていて、都市型の病院の駐車場に収まる大きさになってきています。そんな重粒子治療の施設が、今年は大阪、そして来年には山形で開業します。その後も岐阜県や沖縄県でも建設が検討されています。

★費用の圧縮

加えて、治療施設を建てるためのお金の面も、コンパクトになってきています。総事業費がかつては、およそ300億円と、とてもお金がかかっていました。しかし山形大学の最新の施設では、総事業費がおよそ150億円と、かつての半額。今後10年でも、建物の大きさや建設費用などがコンパクトになって、重粒子治療を行う医療機関は増え、将来的には各県に一台ずつ設置されるような流れです。すると当然、専門の医師は引っ張りだこになって、辞めやすい環境でもあります。

★開店休業・・・困るのは患者

神奈川の病院のケースはまだ原因がはっきりしていないので、病院が悪いのか、なんとも言えないところではありますが、後任が見つからず、開店休業状態になる、というのは大きな問題。この分野が今後成長していくことを考えると、専門医の確保が今後の大きな課題になります。

 

 

 

日本全国8時です(松井宏夫)

解説:医学ジャーナリスト松井宏夫

 

松井宏夫の日本全国8時です(リンクは1週間のみ有効)http://radiko.jp/share/?sid=TBS&t=20180115080000

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