お使いのOS・ブラウザでは、本サイトを適切に閲覧できない可能性があります。最新のブラウザをご利用ください。

放送中

放送中


  • 放送ログ
  • 音声あり

絶滅動物再生

森本毅郎 スタンバイ!

忙しい朝でもニュースがわかる「森本毅郎・スタンバイ!」(TBSラジオ、月~金、6:30-8:30)8時からは、話題のアンテナ「日本全国8時です」。全国ネットで、日替わりゲストとともに放送。毎週木曜日は、東京大学名誉教授、月尾嘉男さんの「雑学コラム」!

月尾嘉男

解説は東大名誉教授の月尾嘉男

1月25日(木)は「絶滅動物再生」

 

★ジュラシックパーク

今日は絶滅動物の再生についてご紹介したいと思います。このような話題ですと、誰もが思い出すのはスティーヴン・スピルバーグ監督の映画、「ジュラシックパーク」(1993)です。

原作はアメリカの作家マイケル・クライトンの小説ですが、ハーバード大学で医学博士にもなっている経歴からもわかるように、緊急救命室を扱ったテレビドラマ『ER』の原作、ナノマシンを扱った『プレイ』、地球温暖化問題を扱った『恐怖の存在』など、科学分野を対象とした小説が数多くあり、それらの中でも最も有名な作品が恐竜を現代に再生させた『ジュラシックパーク』です。

★DNAからの再生

その再生方法は、松ヤニのような植物の樹液が化石になったものを琥珀と呼びますが、その内部に恐竜の血を吸った蚊が封じ込められているものが発見され、その血液に含まれているDNAを使って恐竜を再生しています。

初めて小説を読んだときには、素晴らしい発想だと感心しましたが、2012年にオーストラリアの研究者たちが、その方法では恐竜を再生できないことを明らかにしてしまいました。

DNAは521年で半分が壊れ、さらに521年ごとに半分が壊れていくので、150万年くらいすると、再生に必要な情報はほとんど消えてしまうということが分かったのです。恐竜が絶滅したのは6500万年くらい前ですから、「ジュラシックパーク」の方法は不可能というわけです。

★スペインアイベックスの再生

そこで現在、期待されている方法が、恐竜に比べれば、ごく最近に絶滅した動物を再生しようという計画です。2009年にはスペインアイベックスとかピレネーアイベックスと呼ばれる、野生のヤギの一種が再生されました。これは最後の1匹が2000年に死んで絶滅したのですが、その1匹から採取したDNAを家畜のヤギに移植し、再生されました。

絶滅した生物の再生成功の第一号でしたが、肺の機能に異常があり、残念ながら生まれて10分後に死んでしまいました。

これは生存していた動物からDNAを採取した例ですが、すでに絶滅してしまった生物から再現しようという計画もいくつか進んでいます。

★ドードー・マンモスの再生計画

大航海時代が始まった16世紀初頭に、インド洋のモーリシャス島で「ドードー」という飛ばない鳥が発見されましたが、航海の時の食料として乱獲され、200年弱で絶滅しています。

そこでオックスフォード大学では、博物館に残っているドードーの剥製からDNAを採取して再生しようと計画しています。2005年に愛知県で開催された「愛・地球博覧会」の目玉はシベリアの永久凍土の中から発見されたマンモスの展示でした。これは1万8000年前に生息していた40歳から45歳のオスと推定されるマンモスで、頭部と左前足がマイナス15度に保たれた冷凍室で展示されていました。

このような状態のマンモスから生きたマンモスを再現させようという活動はいくつかあり、日本でも一時は話題になりましたが、昨年2月にアメリカのハーバード大学のジョージ・チャーチ教授が「マンモスのDNAを採取し、それをアジアゾウのゲノムに組み込んで両方のハイブリッドを2年以内に誕生させる」と発表しています。

★日露で挑むホラアナライオン再生

シベリアの凍土から発見された別の生物のプロジェクトも進んでいます。絶滅したとされる「ホラアナライオン」の生後8週間程度の子供1頭が、昨年9月に、やはりシベリアの永久凍土から発見されました。

体長45センチメートル、体重およそ4キログラムで、保存状態が良好でした。このホラアナライオンの子供は2015年にも2頭が発見されており、260万年前から1万年前くらいまで棲息していた生物です。

昨年4月に日露共同研究プロジェクトが発足し、再生するかは確定していませんが、ロシア側のアルベルト・プロトポポフ博士は「これらのミイラから採取したDNAが復元できれば、クローン再生も可能」と発表していますから、再生が検討されるかもしれません。

★6回目の大量絶滅

2013年にアメリカで「絶滅動物の復活に関する会議」が開かれ、すでに絶滅した24種の動物の復活が議論されました。代表的なものは「マンモス」「ドードー」「フクロオオカミ」「ジャイアントモア」などですが、そのようなことが議論される根拠は、ここ100年程度の間に、人間の活動によって多数の生物が地球から消滅しているからです。

これまで地球では環境の激変により、5回の大量絶滅が発生したと推定されています。4億4300万年前には生物種の85%が絶滅し、3億7400万年前には82%、2億5100万年前には90%以上、1億9900万年前には76%、6550万年前には70%が地球から消えています。

そして現在は哺乳類の25%、鳥類の15%が絶滅寸前と言われています。最初の5回は自然現象の変化の影響ですが、今回6回目は人間の活動が原因です。そこで人間が責任を取って、最新の科学の成果を利用して絶滅した生物を復活させようという構想が浮上するわけです。

「ジュラシックパーク」の結末を思い出していただければ明瞭ですが、絶海の孤島に封じ込めていたつもりの恐竜が、制御不能になり、環境全体の均衡を破壊するまでになります。

地球の環境は膨大な種類の動植物の微妙なバランスで維持されているので、わずか数種類の生物を恣意的に再生することは、そのバランスを急速に崩すことになりかねません。

絶滅生物の再生に前向きのカナダの学者でさえ「再生についての倫理や法律を整備しなければ、シベリア一帯はマンモスやホラアナライオンだらけになってしまう」と警告しています。

したがって、わずかな生物を再生するよりは、これ以上、大量の絶命が発生しない生活様式や社会構造をどのようにして作っていくかを模索することこそ、現代社会が目指すことではないかと思います。

月尾嘉男の日本全国8時です(リンクは放送後1週間のみ有効ですhttp://radiko.jp/share/?sid=TBS&t=2018012580000

radikoで放送をお聴きいただけます(放送後1週間まで/首都圏エリア無料)