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一段と進む「がん早期発見技術」

森本毅郎 スタンバイ!

がんの早期発見技術が、このところ一段と進んでいます。それぞれ実用化はまもなくと言った感じで、各開発内容の特徴も徐々にわかってきました。特に進歩しているものは、大きく2つ「AI=人工知能」と、「リキッドバイオプシー」という分野です。最新の動向について。1月29日(月)、松井宏夫の「日本全国8時です」(TBSラジオ、月曜あさ8時~)で解説しました。

★AI

まず、「AI」を利用したがんの発見技術についてです。これまで、がんを発見するとき、生体診断といって、がん組織の一部を採取して、病理医が膨大な過去の検体データから、診断していました・・・つまり「経験」に頼っていた。ところが今では、AIに正常な組織のデータを学習させ、病変であるとみられる画像データを自動で、選び出すことが可能になってきています。特に患者数の多いがんで、開発が進んでいます。

★大腸がん

まず、国立がんセンターとNECが開発するのは、「大腸がん」を見つける技術です。この技術のすごいところは、組織を切り取る必要が無く、内視鏡検査をしている時に、AIを利用してがんが発見できるということです。国立がん研究センターで、これまで診断したおよそ5千例の内視鏡画像を学習させ、色・凹凸・組織の境界線などから、がんやポリープを見分ける、その発見率は「98%」。去年7月に開発は済んでいて、2年後、2020年をめどに発売する予定です。

★胃がん

同様にAIや内視鏡画像を利用したものとして、公益財団法人がん研究会では「胃がん」を発見する技術を開発しています。この研究会が運営する、がん研有明病院などで診断した、1万2千枚以上の胃がん画像のデータをAIに学ばせて、病変を「9割以上」検出する技術を開発したと最近発表しました。

 

AIで異変を見つけても、がんの確定診断のためには、最終的に人の生体検査が必要です。ただ、その生体検査でも、まもなくAIが活躍することになりそうです。

★2分で判別

島津製作所は、「2分」で、がんを判別する装置を開発しています。がん組織とその周辺の組織を針状の道具で採取します。専用の装置で細胞の構成物質や、がんとがんでない部分の質量を比較分析します。これまで30分かかっていた、検査時間が、2分に短縮されるということです。肝臓や腎臓など幅広いがんに対応していて専用装置を再来年の20年にも発売するという。

★3次元画像解析

また東京大学とエーザイが開発する、がんの組織を調べる新しい臨床検査技術もすごい。これまでは、医師が患者から取り出した組織を輪切りにして、その断面を3か所ほど見た上で、1週間ほど、時間をかけて調べていました。これだと、一部の断面なので、組織の全体を把握するのには限界がありました。今回、東大とエーザイが開発したのは、患者から取り出した組織を透明に脱色、全部が筒抜けに見えるようにして、そこから3次元画像を作って調べます。この方法では、さらに、組織に蛍光色素を入れて、血管を染めることもできます。がんは自己増殖するために血管を作る特性があるので、血管が異常に増えていないかどうか把握できるのは重要だということでした。これにより、がんの診断がより正確になる上、薬の働きを細かく調べたり、新しい薬の開発にもつながる可能性があるということです。画像を作るのにたった2日間、来年の19年までには試作システムができる予定です。

★リキッドバイオプシー

がん発見で、進歩するもう一つの分野「リキッドバイオプシー」にも触れておきましょう。「リキッドバイオプシー」は、体液サンプルを使って、生体検査を行う技術です。がんの部分の組織を切り取るよりも、患者の負担が小さくてすみます。

★血液で発見

中でも注目されているのは、国立がんセンターや東レなどが、進めるものです。彼らが注目する体液サンプルとは「血液」。特に、血液の中にある、遺伝子の働きを調節する微小物質「マイクロRNA」です。がん細胞と正常な細胞では、マイクロRNAの種類が異なるなどの違いがあります。国立がんセンターなどは、既に、がん患者らおよそ4万人の保存血液から、乳房や肺、胃、大腸、食道、肝臓、 膵臓などの13種類のがんで、それぞれ固有のマイクロRNAを特定しています。血液1滴で、がんのステージが早期である「1期」を含め、すべてのがんで、95%以上の確率で診断できます・・・ちなみに、乳がんは97%でした。共同で研究する東レは、がんの目印「バイオマーカー」を検出する特殊なチップを開発。再来年、2020年には、そのチップを検査薬として発売する予定です。

★尿で発見

さらに、日立製作所が開発を進める「尿」を使った、がん発見技術もあります。日立が得意とするのは、主に、乳がんと大腸がんの発見。尿に含まれるアミノ酸や脂質の中から、がんの目印となる「バイオマーカー」の、およそ30種類の物質の分析することができるということです。さらに進んでいる点として、血液の場合は、自宅で採取できませんが、「尿」の場合は、採取して、検査機関に送って、解析することも可能だそうです。今年度実証実験を始め、現状では数日かかる解析時間を1日以内に短くすることなど改良を進めていくということです。

★心配な点は?

こうした技術の進歩で心配な点を挙げるとするなら、早すぎる検知といった点でしょうか。表面に出てきていないがん細胞であれば、人が本来もっている免疫システムで食い止めることもできる。しかしAIや血液や尿などで、がん細胞を、あまりにも早く見分けてしまったことで患者さんが無駄な精密検査を受ける、という可能性もあります。ただ、そうした懸念以上に、早期発見は大事なこと。がんに限らず、病気の予防は、医療費の削減にもつながるので、早期の実用化を期待します。

 

 

 

日本全国8時です(松井宏夫)

解説:医学ジャーナリスト松井宏夫

 

松井宏夫の日本全国8時です(リンクは1週間のみ有効)http://radiko.jp/share/?sid=TBS&t=20180129080000

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