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文字を愛するアートディレクター 浅葉克己さん

コシノジュンコ MASACA

2018年1月28日(日)放送

ゲスト:浅葉克己さん(part 1)

1940年、神奈川県横浜市金沢文庫生まれ。桑沢デザイン研究所でリビングデザインを学び、1964年ライトパブリシティに入社。1975年には浅葉克己デザイン室を設立し、広告史に残る数々のCMやポスターのアートディレクションを手がけました。東京TDC賞、毎日デザイン賞など、受賞歴多数。2002年に紫綬褒章、2013年に旭日小授章を受賞しています。
 

浅葉:たしか写真家の立木義浩と仕事をしていた時に、コシノさんの自宅を撮影したいということでお訪ねしたことがあります。30年ぐらい経つかね? もっと?

JK:そうやって数えるのやめよう(笑)前にメトロポリタン美術館でファッションショウをしたとき、これはすごいポスターを作んなきゃと思って、浅葉さんに頼んだのよね。これ1枚で本当にすべてが分かる、って、パリの装飾美術館の館長も気に入ってましたよ。

浅葉:そうだね、ちょっとジャパニーズも入ってて、新しさも入っているし。

JK:黄色が「陽の出づる国・日本」って感じ。太陽って日本では赤が一般的だけど、ヨーロッパでは黄色なのよね。

浅葉:ふつうNYでやると、英文だけになっちゃうじゃないですか。あえてカタカナで書いたんです。

出水:アートディレクターとしては60年以上お仕事をされていますが、スタートは横浜松喜屋百貨店の宣伝部!どんなお仕事をしていたんですか?

浅葉:えーとねぇ・・・「パンツ1枚100円」とかさ。ふんどしとか、ああいうのを書かされたり、ポスターとか新聞広告とか作ってました。伊勢崎町4丁目にあったんですよね。今はもうないんだけど「赤灯台松喜屋」っていって、屋上に観覧車があったんですよ。

JK:昔のデザイナーって、デパートとかそういう仕事をやるのが夢でしたよね。ウィンドウディスプレイとか広告とか。

浅葉:そのころは就職難でなかなか入れなかったので、僕のボーイスカウトの友達のお父さんに紹介されて。ボーイスカウト歴も長いんですよ。


JK:浅葉さんっていえば何でもやるわね! 南京玉すだれとか(笑)

浅葉:最近、誰もやらないんだよね! ネットで南京玉すだれで検索すると、いまや僕しか出てこない(笑)昔は女性の漫才師がよくやってたんだけど・・・

出水:広告デザインのほうに話を戻しますね(^^;) 百貨店を経て、その後日本初の広告制作プロダクション「ライトパブリシティ」へ移ります。

JK:このころのメンバーはすごかったわね。

浅葉:美術部の部長が村越襄さん。オリンピックの写真を撮った方です。本人もモデルになれるようなカッコいい人でしたね。スケッチがすごくうまくて。

JK:村越さんって背が高くて、紳士で、デザイナーっていうよりも大会社の社長さんみたいでしたね。本当にカッコよかった。

出水:その方へのあこがれが、ライトパブリシティへ導いたんですか?

浅葉:それもあったし、その方が面接をしてくれて。僕が作品を村越さんの所へ持っていって、村越さんがイラストレーターの和田誠さんに「こんな奴が来たけどどうか」って言って、和田さんが推薦してくれて、ライトに入社が決まったんです。

浅葉:その前に、ライトパブリシティにレタリングの名人がいたんですよ。その方がスキーで骨を折って、全治不可能と言われてたところに僕が入った。ところが誤診だということが分かって、すぐ戻ってきたんですよ!その人の仕事を取っちゃうのはまずいっていうんで、僕は向秀男さんたちと広告をやろうじゃないか、と。

JK:広告、アートってそこで定着したわね。日本で初めてですよね。

浅葉:対抗馬に日本デザインセンターがありました。同期には長友啓典とか、青葉益輝。2人とももう死んじゃったけど。そうそう、去年初めて俳句を作ったんですよ。

出水:は、俳句?

浅葉:「さんかくや まるとしかくは 天国へ」。さんかくっていうのが僕で、まるが長友、しかくが青葉。天国っていう季語はないらしいんだけど(笑)小林一茶にちなんで、浅葉克茶(かっちゃ)って諧名で。

JK:いろいろな仕事をしていると思うんだけど、一番「コレだな~」と思うのは何でしょう?

浅葉:広告じゃ、西武の「おいしい生活」じゃないかな? 糸井重里さんと一緒にやった。

JK:ウディ・アレンのね!あれはどうやったの?

浅葉:その前の「不思議大好き」っていう広告の仕事でエジプトロケに行ったんだけど、「機内食でお茶漬けなんか出てきたらいいね」って糸井さんと言ってて。

JK:あら、最近は出るのよ。鯛茶漬けとか。

浅葉:そうだね。でも80年代はまだなかったから、「ここでお茶漬け食べたら『おいしい生活』だよね」なんて感じで。なんでウディ・アレンかというと、彼は映画監督であり、詩人でもある。本当は日本で撮りたかったんだけど、飛行機に乗るのがイヤなんだって。毎週月曜日にはJAZZバーで仲間とJAZZをやる。LAにも行かないらしいよ。ずーっとNY。

出水:どうやって交渉して、ウディ・アレンを落としたんですか?

浅葉:いやあ、なかなか落とせなかったね。
2回ぐらい行ったんだけど、でっかいマネージャーが出てきてダメだっていうんだよ。「なんでウディ・アレンが日本の広告をやらなきゃいけないんだ」って。それで2回目に行ったときは、「西武の堤清二っていう男は、辻井 喬っていう名前で詩人もやっているし、映画館もいっぱい持ってるから、あなたの映画も上映できるかもしれない」って言ったら態度がコロッと変わった(笑)

出水:殺し文句ですね(笑)

JK:それで本当に上映したの?

浅葉:しました、本当にしました。

出水:浅葉さんといえばタイポグラフィの第一人者でもありますが、東巴(トンパ)文字とは何ですか?

JK:浅葉さんのオフィスに行くと、ドカーッとものすごいものが置いてあって・・・アレのことでしょ?

浅葉:中国の雲南省麗江っていうところがあるんです。標高2400m、そこに住んでいるナシ族という民族だけが使っている文字なんです。

出水:出会いはどこで?

浅葉:言語学者の西田龍男さんという方がいらっしゃるんです。西夏文字というすごく難しい文字を解読した方で、東巴もやっていて、「地球最後の象形文字」っていう本も書いているんですが、その本を読んでみたらめっちゃ面白いんです。

JK:象形文字って子供も誰でもわかるでしょ。絵文字。それがだんだん進化して・・・

浅葉:最初は200文字ぐらいしかなかったのが、2000文字ぐらいになって、いろんな物語を書くための記号として完成した。少数民族は文字を持ってないと思ったら、結構持ってるんですね。それで調査に行ったり・・・。

JK:雲南省だけ独特の文字を持っているのね。よく会いに行ったわね。

出水:実際に現地の人たちとどのようにコミュニケーションを取ったんですか?

浅葉:お坊さんというか、伏士がいるんですよね。その人と一緒に東巴文字を書く時間を作ってもらって。日本政府からお金をもらってDVDも出してるんですよ。それも、何周年かの記念には、東巴文字で書いた物語を百巻出してるんです! 驚いちゃって、僕それ買います、って。

出水:100巻!

浅葉:いくらですか、って聞いたら、100万円だと言うので、いいですよ、と答えたら、浅葉さんが最初に買ってくれたので70万にまけときますって(笑)かわいいこと言ってくれるんだよね! でも、本当は全部買うと本箱をくれるはずなんだけど、本箱は来ない(笑)

出水:その分ディスカウントですかね(笑)

JK:でも、すごい財産。浅葉ミュージアムを作るときは、これがメインになるわね。

出水:浅葉さんはどうして、書体や文字にそこまで惹かれるんですか?

浅葉:書かれたものが好きなんですよね。

JK:金沢文庫で生まれ育ったっていうのが大きいんじゃない?

出水:日記もずっとつけてらっしゃって、本も出版されています。「浅葉’s ダイアリー」。うわ~、すごい! A4のルーズリーフに文字がビッシリですね! 絵も少々・・・

JK:1日にこれぐらい書くわけ?

浅葉:そうそう。1時間もかからないかな。30分くらい。

JK:毎日酔っぱらってるじゃないですか。よくもまぁ。夜中に書くの?

浅葉:夜中に書きます。酔っぱらった文字の時もありますよ。何を書いたのかわからないけど。神社にいったらおみくじを買うしね。

出水:あっ、おみくじもきちんと張ってある!

JK:これも文字だもんね(笑)

浅葉:ほうっておいたら何書いてあったか忘れちゃうからね。何でも取っておく。だから荷物が多いんです。

JK:いつも何か持ってるもんね。

浅葉:もしものことがあってもいいように。忘れ物した!とか、 あれがあれば!っていう時のために。浅葉は荷物が多いっていうので有名です。

出水:東巴文字だけでなく、世界中の文字を探していらっしゃる浅葉さんにとって、日本の文字の魅力って何ですか?

浅葉:漢字を中国からお借りして、そこから平仮名・片仮名を作りましたよね。

JK:でも草書っていうのは日本でしょ? 女性的ですよね。

浅葉:あれはきれいですよね。僕は桑沢デザインの所長をやってるから、夏の終わりに生徒を連れて、御岳山へ合宿に行くんです。書道合宿。デザインと書道って関係ないと思われるんだけど、うちではやらせようと思って、楷書をやらせてるんです。

JK:デザインと書、って琳派がもともとそうじゃない? 光悦と宗達のコラボレーション。絵の上にへっちゃらで文字を書くなんで度胸がいるけど、それいいんじゃない? 歴史がちゃんと証明している。

浅葉:そうそう。僕のデザインもたいがい、ライトで教わった写真術があるんだけど、その上に文字をかぶせるっていうのが多いですね。毎年8月に合宿に行くんです。2泊3日なんだけど、ひたすら書く。三食は食わせるけど寝かさない!っていう。修行ですね。

JK:何を書くんですか?

浅葉:書道の先生にも来てもらって、褚遂良の漢字を書かせました。僕は、今年は平仮名をやろうと思って、紀貫之の「高野切」を一晩で書き終えました。一晩!紀貫之を超えた! まぁ、最近はだれでも超えちゃうんだけどね(笑)年齢も超えてるけど。

=OA楽曲=

M1. With Plenty Of Money And You / Hal Kemp & His Orchestra
(映画「おいしい生活」から)

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