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【映画評書き起こし】宇多丸、『ガーディアンズ』を語る!(2018.1.27放送)

ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル

実際の放送音声はこちらから↓

宇多丸:

ここから11時までは、劇場で公開されている最新映画を映画ウォッチ超人こと<シネマンディアス宇多丸>が毎週自腹でウキウキウォッチング。その<監視結果>を報告するという映画評論コーナーです。今夜扱う映画は先週、「ムービーガチャマシン」(ガチャガチャ)を回して決まったこの映画……『ガーディアンズ』

(曲が流れる)

「謎多き大国ロシア生まれの」……って、これはギャガさんの宣伝文句に入っていて。ちょっと失礼だろ?っていう気もするんだけども(笑)。そんな「謎多き大国ロシア生まれの」SFアクションエンターテイメント。冷戦下のソビエトで遺伝子操作によって特殊な能力を身につけた4人の超人が、50年後、ロシア崩壊を企むマッド・サイエンティストの野望に立ち向かう。監督はヘイデン・クリステンセンとエイドリアン・ブロディ主演で『セントルイス銀行強盗』をリメイクした『クライム・スピード』という作品を撮った、サリク・アンドレアシアンという方でございます。

 

■「終始ツッコミを入れたくなるような映画」(byリスナー)

ということで、この『ガーディアンズ』をもう見たよというリスナーのみなさま、<ウォッチメン>のからの監視報告(感想)をメールなどでいただいております。ありがとうございます。

メールの量は、「普通」。でもなんか、そんなに公開規模が大きくないのにね。それで「普通」は、結構健闘している方じゃないですかね? で、賛否の比率ですが……残念! 普通、もしくは否定的感想が8割ということでございます。「どこかで見たような設定とキャラクターばかり。それ以上のものがない」「ストーリーも設定もツッコミどころ満載」などが主な意見。ごくわずかに「わかりやすい。なにも考えずに見られてよかった」などポジティブな感想もございました。ただ、まあそんなに激怒してたりする人もあまりいないということですけどね。

代表的なところ。ラジオネーム「ゴリランド」さん。「新しいロシアの映画という感じがしてとてもよかったです。背景にソ連があり、主人公たちもロシアらしい多様さ。炎上するモスクワの風景。惜しみない戦車の行進。隠れロシア好きとしてはこれでもか! という“らしさ”の詰め込みに大変満足して楽しませてもらいました。なによりわかりやすいのがいい。これなら子供でも、誰にでもわかると少し興奮してしまいました」ということでございます。ねえ。僕はちょっと逆に難解に感じたぐらいなんですけどね(笑)。

あと、この方。「ケイマル」さん。20代男性。「この映画は終始ツッコミを入れたくなるような映画でした。恵まれた能力から繰り出されるクソみたいな戦術の数々。ラストに近づくにつれて不思議と心を開きだすメンバーたち。その他、強引な展開。ラストに関しては逆に大爆笑でした。そんな感じで最後までリアリティラインのハードルが幼いとさえ感じさせるほど低く、この幼さは長編ドラえもん映画や戦隊ヒーロー物の特撮に匹敵します。子供の目しか騙せないだろうと思いました。ロシア版『アベンジャーズ』とか言われていたから期待していたんですけど、思い切り肩すかしを食らった気分です」。「幼い」っていうのはたしかにちょっと言い得て妙かもしれませんね。

■ロシアのエンターテイメント大作が見られのはありがたいことだけど……

はい。ということでさっそく行きましょう。『ガーディアンズ』。私も池袋シネマ・ロサで2回、見てまいりました。まあロシア製のエンターテイメント映画というと、当コーナーでは去年の4月27日に評しました、あれはアメリカとロシアの合作ですけども、『ハードコア(Hardcore Henry)』がありました。あれは創意工夫が凝らされた、なかなか楽しい作品だったわけです。まあ、ロシア製エンターテイメントはなかなか侮れないんじゃないか? なんて思っていたんですけど。今回のロシア産スーパーヒーローチーム物『ガーディアンズ』はどうか? と言いますと……これ、「総製作費3億ルーブル」っていうんですけど。まあ、もちろん向こう、ロシアの方の物価差とかあるでしょうから単純に比較はできないんでしょうけど、3億ルーブル、日本円にすると6億円弱なんですよ。別にそんなバカ高い製作費でつくられたっていうわけじゃないっていうね。

まあ、ロシア本国では興行収入が初登場1位ということなんですけども……結論からサクッと言ってしまいます。もちろんこういうね、ロシアのエンターテイメント大作を見られる機会があるということは、とってもありがたいことでございます。なので、せっかく配給してくれたギャガさんにはすいません、大変申し訳ないんですが……僕は正直、見終わった後、「誰だよ、これ! ムービーウォッチメンの枠に入れたのよおっ!」ってちょっとなってしまったぐらい、久々にこれ、文句なしのポンコツ映画!(笑) 文句なしのポンコツ映画が来ちゃいました、っていう感じだと思いますね。これに比べれば、2017年7月29日に評しました『パワーレンジャー』とかは、結構な傑作だった!と思えてくるぐらいですね。

 

■ロシアのヒットメイカー、サリク・アンドレアシアン監督

監督のサリク・アンドレアシアンさんという方。これ、パンフにもほとんどあんまり情報が載っていないような方なんですが。まあ、アルメニア出身の1988年生まれ。結構まだお若い。まだ30才ぐらい。20代前半から、主にコメディー映画でずっとヒットを飛ばしてきて、若くしてロシア映画界の本当にトップのヒットメーカーになった、成功を収めてきた方なんですね。なんだけど、日本ではソフトになっているような作品があまり多くなくて。僕もこのタイミングで過去作は3本しか見られていないんですけど。その中では、『グラウンドブレイク 都市壊滅』という邦題がついている、英語タイトルはシンプルに『Earthquake(地震)』っていうね、2016年の作品があるんですけど、これはよかった。

これ、彼の出身地であるアルメニアでまさに1988年。つまり彼が生まれた年、1988年12月7日に起こった超巨大地震で、すごく被害がいっぱい出たんですけど。その地震と、その後の数日を描いた作品で。なので、やっぱりサリク・アンドレアシアンさん、さすがに思い入れとか気合いが違うということなのか、非常にこれは力作になっております。特にですね、地震描写のところ。要はアルメニアで、古い建物が多いせいか、わりとすぐに建物が次々と全倒壊していっちゃうというような描写があって。都市部でさ、超高層ビルでガラスがバリーン! とかは結構ディザスター・ムービーで見たことがあると思いますけども、アルメニアならではの、地震の被害が深刻化してしまうような感じが、結構映画の中の地震描写としても、なかなか見たことがないショッキングさがあって、非常に見応えがありました。

一応このね、『Earthquake(邦題:グラウンドブレイク)』は、アカデミー賞外国語映画賞の候補として、アルメニア代表として提出されたというぐらいで。サリク・アンドレアシアンさんのフィルモグラフィーの中では、結構例外的に批評的な評価も高い、という作品だということらしいです。ただですね、このサリク・アンドレアシアンさんという方は、ちょっと演出がところどころ……よく言えば淡白。悪く言えば、「えっ、そこはそんな感じでサラッと流しちゃうんだ?」「えっ、そこはちゃんと見せないんだ?」みたいな感じで……時折「ん? いまなにが起こったの?」レベルで、本来ならしっかり見せるべきところをちゃんと見せていなかったり、あるいは異様にフワーッとした感じで軽く流してしまったりとか、そういうちょっと、先ほどのメールにもありましたけど、肩透かしを食らわしてくるような癖がちょいちょいある人なんですよ、このサリクさんは。

で、それはですね、先ほど言った『グラウンドブレイク』でも実はちょいちょい出てくるところですし。あとはアメリカで、さっき言ったヘイデン・クリステンセン、エイドリアン・ブロディ、あと『ワイルド・スピード』シリーズでおなじみジョーダナ・ブリュースター主演で撮った邦題『クライム・スピード』、2014年の作品。原題は『American Heist』という作品でも、やっぱりこの癖はちょっとあってですね。はっきり言えば、決して「上手い」人とは言いがたいかな、という感じ。そういうところが多い監督なんですよね。

ひょっとすると、VFX、CGとかの絡め方などに通じている、みたいなところで、ことロシア映画界では、重宝されているところがひょっとしたらあるかもしれない。『グラウンドブレイク』とかでは、それがよく出た方だと思うんだけど。ただ、このタリクさんは、それにしては画的なケレン味、パッとキメ画で見せるみたいな、そういう押しの強さにもいまいち欠けるところがあって……少なくとも僕が見た範囲では、そんな感じのサリク・アンドレアシアン監督作。で、これでさらに脚本がよくないと、当然のごとく、本当に目も当てられないことになってしまいがち、ということなんですよ。演出、そんなに上手くない。脚本、ひどい。よくなるわけがない!っていうことなんですけども。「うーん!」ってやつですね。

 

■明らかにポンコツな脚本

で、残念ながら今回の『ガーディアンズ』。このサリク・アンドレアシアン監督、さっきも言った『グラウンドブレイク』という作品と同じ2016年……結構この人、特に最近はすごく作品を作るペースが上がっていて、2017年ももう1個、たぶんアートワークを見ると恋愛映画風の作品だと思いますけども、そういうのも撮られていて。2016年は2本撮っていて、さっきの『グラウンドブレイク』ともう1本、邦題『キル・オア・ダイ 究極のデス・ゲーム』っていう。これは英題は『Mafia』っていうタイトルがついているんですけど……これ、要するに死のゲームを放送するテレビ番組があるディストピアSF。『バトルランナー』とか『デス・レース2000』とか、まあなんでもいいですけど、まあまあ、よくあるような感じのディストピアSFなんですけど。

その『キル・オア・ダイ』と同じアンドレイ・ガブリーロフさんという方が、今回の『ガーディアンズ』も脚本を手掛けているんですけども……まずこのアンドレイさんの脚本が、すいません。明らかにポンコツすぎる!っていうことですね。この人の脚本がまず悪い。『キル・オア・ダイ』っていうね、その作品なんかは本当に全編それなんですけど。たとえばとにかく、ハナから無理くりな設定をね……まずそもそも設定に若干無理くりがあるのに、それをさらに無理くりな理屈の後出しジャンケン的セリフで、ひたすらクドクドクドクド説明を続けるという、そういう場面が多いんですよ。

というだけなので、要はもともと無理くりな設定を、 無理くりな理屈の後出しジャンケン的説明セリフで、ずーっと説明されるから……「1から10まで全く飲み込めねえよ! 説得力ゼロだよ!」みたいな(笑)。その一方では、「そこはそんなにあっさり済ますのかよ!」っていう……要は、「雑な急展開で、かろうじて話が前に進んでいく」(笑)みたいな感じなんですよね。たとえば今回の『ガーディアンズ』はどうか? 順を追っていきますけども。まず最初にさ、AIで動く迎撃マシンみたいなの、出るじゃないですか。で、それが勝手に暴走しだして軍側の人をバーン!ってやっちゃうっていうんだけど。あれもさ、どのポイントから暴走して、どれが無人の乗り物で……とかすごいわかりづらい。やっぱり、あっさりしてるんですよ。

そこでさ、「いや、こんなはずは!」「ワーッ!」みたいなのがなくて、なんか「おい、いまなんかしたか?」「してません。(ドーン!)」みたいな感じだから。なんかね、よくわかんない。ぼんやりした感じになっちゃっているし。で、まあ超人チームを集めますと。まず、その超人チームができた経緯っていうのの説明を、非常に退屈な間延びした絵面でずーっと延々……イスに座って話しているおじさんの顔を、右とか左にカメラを振りながら、ずーっと説明が続くんですよ。俺、なんかゆりかごで揺られているみたいになって、だんだん眠くなってきちゃって(笑)。

■テンポも異常に悪いです

まず、その説明だけの絵面で見せるのはあんまり上手くないし。じゃあそいつらを探して集めましょう、っていうことになる。ここで、「ところで彼らのチーム名は?」っつって、タイトルがドーン! みたいに出るんですね。かっこいいつもりなんだろうけど、タイミングとか間とか諸々、あと「なんでここで出す?」とかも含めて、めっちゃかっこ悪い(笑)。たまらないものがある。っていうね。で、まあ「 まずは情報収集だ!」って言うんだけど、そこで「とにかく怪しい情報も集めて!」って言うんだけど、本当に都市伝説めいた与太話とかも……「○○で△△が目撃されたそうです!」みたいなさ、そういうのもフラットに伝えたりしてやっているのも、なんか笑っちゃうんだけど。

で、まあ各地に散らばった超人に再招集をかけにいく。これ、普通だったら、チーム集めのところだから、盛り上がるところじゃないですか。で、たとえばここで出てくる中で、ハンっていうキャラクター……している格好は『キャプテン・アメリカ』のバッキー風ですよね。バッキー風のルックスに、能力はフラッシュとかクイックシルバー的な「速く動く」というのに加えて、まあ『ルパン三世』の石川五エ門的な、なんでも斬っちゃう的な、そういうキャラクター。そのハン以外は、このメンバー集めのところ、「各人の特殊能力発揮に……なっているの、これ?」っていうような見せ方、微妙極まりない見せ方しかしてくれないわけです。

たとえば、クセニアっていう透明になる女性が、あれはサーカスなの? それともマジックショーなの? わかんないけどさ。バーン!って水に飛び込んで透明になりました、っていうんだけど、「これ透明(になる能力)となんの関係が……?」っていう。で、上からなんか金色のヒラヒラが飛んできて、身体について姿が見えだして、パチパチ~(拍手)とかやっているんだけど。その金色のヒラヒラの量が、すげー中途半端!(笑) なんか体にゴミがついちゃったぐらいの感じになっていて。何がやりたいの? みたいな。非常に微妙なことになっている。

で、そうやって能力発揮の描写としても微妙な上に、チーム加入にこの全員が、超絶あっさりOKを出しちゃう。「きっと私のためになると思う……OK!」みたいな感じで(笑)、全く盛り上がらないという。そのくせ、その各メンバーの過去へのわだかまりみたいなのを、これまたひたすら説明的なセリフで、感傷的なムードで語りだすくだりがいちいち挟み込まれたりして、はっきり言ってテンポ自体は、異常に悪いです。その語る場面とかも、カットカットとかの、いちいちカット尻が、「長えな、このカット!」みたいな。いちいち間延びしていたりする。

しかも、そこで語られたことが後のストーリーに有機的に絡んできたりはしないので、ただ単に過去を本当に「説明」しただけになっちゃって……僕はこういうのは「キャラクター描写」とは言わないと思います。で、その後もですね、チームとして最初の出動! かと思いきや、いきなり囚われの身になっちゃったり、返り討ちにあってしまったり……まあこれは百歩譲ってありにしましょう。これ、でもおかしいよね。囚われの身になって、さっきの透明になった女性を(かばおうとして)……「お前、なにを考えている? 魂胆は知らないがクセニアを巻き込むな! 記憶がないんだから!」っていうんだけど、いや、巻き込んだのはお前だよね?っていうね(笑)。まあ、そういう風にいちいちセリフがおかしなのがあります。

■敵も味方も互いの基地に出入り自由すぎ

で、まあいいんだけど、その囚われている場所がね、もう瞬時に特定された上に、「あそこに決まっている!」みたいなことを言って、行ったら本当にいて。で、結構スタスタと簡単に入り込めちゃう(笑)。で、牢屋にバリアが張ってあるんだけど、これは一応ギャグ扱いしてるけど、それにしてもいくらなんでも、これ以上ないぐらい簡単にそこが開いてしまう、という。一方その頃、味方の博士がいるラボがあるわけですけど、そこにも敵のクラトフというボスキャラが、やっぱりね、スタスタと入ってきちゃう(笑)。スタスタとこうやって入ってきて。要は、敵も味方も出入り自由すぎる!(笑)っていうね。そういう感じ。

で、そのクラトフっていう敵のボスが来て、装置をボカーン! と壊す。そこでもう、味方の博士も殺しちゃうのかな?って思ったら、装置をボカーン!って壊して煙がモクモク出てきて。で、その味方の博士はゲホゲホ言いながら、すごいゆっくりと床に寝転がりだす(笑)っていうね。画としても間抜けだし……何?っていう。あとね、最初に返り討ちされて半殺しの目にあうレアというキャラクター。いちばん頼り甲斐ある風のキャラクターなんですけど。で、ある意味瀕死の状態から、復活! 死にかけたと思ったら、復活!っていう場面のはずなんだけど、なんかこのレアさんね、いつの間にかその集団の後ろの方にね、あんまりピントも合わない状態で、いつの間にか後ろの方にいるっていう。で、こうやってなんか覗き込んでいたりね。全然盛り上がらない!(笑)

■この監督、スーパーヒーロー物に向いてなくね?

とにかく全てが淡白。あっさりしすぎ。そのくせクドクドクドクド説明セリフは長い。なのに、その説明があんまり上手くないから頭に入ってこない(笑)っていうね、もう恐ろしい事態になっているというね。で、このクラトフという敵のボスキャラ。付けている装置はウィップラッシュ風っていうのかな? しかも、レアが使う武器もウィップラッシュ風ですよね。まあ、それはいいんだけど。まあとにかくさ、ボスキャラがクローン兵士をいっぱいつくっちゃって。「こんなのがいっぱいつくられたら大変だ!」って思いきや、その兵士たちが普通に最弱の雑魚キャラで(笑)。もう存在感ゼロに限りなく近いっていうね。

で、まあ巨大なアンテナ塔をわざわざ運んで……って、ロシア軍はたぶんあのヘリコプターを攻撃すれば済む話じゃないか?っていう気がするんだけど(笑)。まあ運んで、なんで運ぶかっていうと、これを説明するセリフによれば、「衛星を操る高度を確保するために、別の高いタワーと組み合わせて使う」っていう言い方をしていましたよね? ところが、そこはさすがサリク・アンドレアシアンさん、さっきから言っているように、画としてまったく見せてくれないので、正直なんだかよくわからないんですよ。その「タワーを組み合わせて使う」っていうのがよくわからない。

とにかく、アンドレアシアンさんはちょっと、絵的なケレンっていうのに監督として決定的に欠けている人で。それって、アメコミっていうか、スーパーヒーロー物にはそもそも向いてなくね?っていう感じなんですよね。あと、市民が全然出てこない、とかね。まあ、予算の関係もあるんでしょうけど。とにかく、例によって敵がなんか天に向かってボーン!って発射したら世界はおしまいだ! みたいな、まあそんな話。よくあるやつです。ただ、ここにタイムリミットとかがまったく設定されないので、途中で主人公たちがやおら新装備の訓練とかを始めだすくだりとか、「ええと……いまどのぐらい切迫した事態なのかな?」っていうのがね(笑)、すごく気がそがれることこの上ないっていうね。

■「力を合わせて戦う」って、そういうこと?

まあとにかく、そこに乗り込んでいって阻止をするという、そういうクライマックスですよ。なんだけどここね、アルススさんという、要はハルクロケット・ラクーンを足したようなキャラクターだと思ってください。熊ちゃんです。で、これが半人半獣だったのが、ついに完全に熊化! ここはね、ロシア版スーパーヒーローらしさ、という意味ではいちばんアガるところ。の、はずなんですけど……たとえばね、完全に獣化してしまって制御不能、その前のところでその懸念をセリフで言っているわけですよ。「俺が完全に獣化してしまったらどうしよう?」とか言っているんだけど……姿は熊ちゃん化してウワーッ!ってなるんだけど、別にそんなハルク的な「制御不能です! 味方も大変だ!」みたいなのが、何もないんですよ。さっきのクドクド言っていたセリフ、なんだったの? みたいな。

しかもですね、この熊ちゃん。熊ちゃんになる瞬間、ズボンがビビビッ!って破ける。まあ、これはいいとしましょう。ところがまた半人半獣になった時、またズボンをはいているんですよ。替えのズボンを持っていたっていうことなんですかね? で、またビビビッ!って破けて、(後で半人半獣に戻ったら)また穿いているんですよ。脱いだり穿いたり、脱いだり穿いたり(笑)。こういう設定を、つまりしっかり描く気がないっていうか。どうでもいいところかもしれないけど、こういうところの理屈をちゃんとつけてくれないと、スーパーヒーローはダメじゃないですか。なんでズボンが脱げて……もう毎回裸になっちゃう、とかでもいいんだけどさ。ちゃんとやっていない。

で、結局各々の力を適材適所で活かしたチームワークでの戦い方も、ちょっとしかしてくれない。あえて言えば、透明女クセニアがレアという人の手を握ってあげて、透明にしてあげてバン!っていうのは……ただ、「触ったものも透明になる」ってどういうご都合主義的新機能だよ?っていうのもありますけどね。で、たしかにチームワークでの戦い方。最後、クライマックス。たしかに力を合わせて戦うは戦うんですけど……本当にここだけ急に唐突に、「元気玉」みたいな技を出すんですよ。急に「オラに力をくれ!」みたいなことをやりだして。急にですよ? ここだけ、急になんですよ。だから、「力を合わせるって、そういうこと!?」みたいな。ねえ。敵もやられたっていうんだけど、あれは単に物理的に落っこちただけにしか見えないんですけど、っていうことになっちゃっている。

で、『アベンジャーズ』のエンディング風の、まあ橋の上かなんかに立っていて三々五々解散していくという、『アベンジャーズ』エンディング周りのパクりのエンディング。からの、今後の新展開をちょっと示唆するような場面がある。なんだけど、これさ、マーベルとかDCと違うのは、原作コミックとかがあるわけじゃあないから。新たな固有名詞を出されても……「○○が指示を出しているらしい」とかやっているんだけど、新たな固有名詞を出されても、全員が「えっ、誰?」っていうね(笑)、ことにしかならないということだと思います。

■唯一の長所は……「短い!」

まあいろいろね、苦言を呈してきましたけど、この作品は1個、長所があります。短い!っていうことですね。89分。ただ、僕はそれでも結構苦痛に感じました。みなさんは「わかりやすい、わかりやすい」って言っていますけど、あまりにもポンコツな脚本すぎて、僕には難解でした(笑)。「あれっ? なんでこの人がいまここに来ているんだ?」みたいなね。キャラクター、アイデアともに新鮮味は特にないし、見せ方、語り口も上手くない。あえていえば熊ちゃんがかわいい、とは言えるかもしれないけど。マーベル、DC映画と比べるよりも、ずーっと実写版『ガッチャマン』に近いところにいる作品だと思います。

ただまあ、その幼い、拙い感じがかわいい、っていう風に見れる心の広さがあればいいのかな……なんか今回はみなさん、メールを読んでいても「ああ、みんななんか優しいんだな」っていう風に思いました。えー、今年のワースト候補でーす(笑)。ぜひ劇場でウォッチしてください!

(ガチャ回しパート中略 ~ 来週の課題映画はキャスリン・ビグロー監督の最新作『デトロイト』 に決定!)

以上、「誰が映画を見張るのか?」 週刊映画時評ムービーウォッチメンのコーナーでした。

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