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第60回グラミー賞授賞式、セレモニーを彩った女性アーティストたち

ジェーン・スー 生活は踊る

音楽ジャーナリスト高橋芳朗さんによる音楽コラム「第60回グラミー賞授賞式」特集

「第60回グラミー賞授賞式セレモニーを彩った女性アーティストたち」特集http://radiko.jp/share/?sid=TBS&t=20180202112505

radikoで放送をお聴きいただけます(放送後1週間まで/首都圏エリア無料)

※以下、番組内容書き起こし by みやーん(文字起こし職人)

【高橋芳朗】
今週はこんなテーマでお届けしましょう。「第60回グラミー賞授賞式、セレモニーを彩った女性アーティストたち」。日本時間1月29日に開催された世界最大の音楽の祭典、第60回グラミー賞授賞式。今年はブルーノ・マーズが主要3部門(最優秀レコード賞、最優秀アルバム賞、最優秀楽曲賞)を含む6部門を受賞して話題をかっさらっていきましたが、セレモニー自体は昨今のセクシャルハラスメントに対する抗議運動「#MeToo」や「#TimesUp」の盛り上がりを強く反映したものになりました。

【ジェーン・スー】
はい。

【高橋芳朗】
なかでもハイライトになったのが、2曲の全米No.1ヒットがある人気シンガー、ケシャの「Praying」のパフォーマンスです。ケシャは18歳のころから複数回にわたってプロデューサーから性的暴行を受けたとして2014年に訴訟を起こしていますが、結果的に彼女の訴えは棄却されてしまったんですね。

【ジェーン・スー】
うん、あったね。

【高橋芳朗】
これを受けてたくさんの女性アーティストがケシャへの支援を表明して。これが現在のセクハラ撲滅運動の基盤をつくったようなところもあるんじゃないかと思います。で、今回の授賞式でケシャが披露した「Praying」は彼女が昨年4年ぶりにリリースした復帰第一弾シングルになります。「Praying」には「祈り」という意味があるんですけど、ここでケシャは自分を苦しめたプロデューサーに祈りを捧げているんですよ。

【ジェーン・スー】
うん。

【高橋芳朗】
一体どういうことなのか、歌詞の大意を紹介しますね。「あなたのせいで地獄のような苦しみを味わった。でも、そのお陰でこんなにも強くなれた。自分を守る術も身につけた。これは私からの別れの言葉。あなたの魂が変わっていくことを、あなたが心の平穏を見つけられることを、私は祈ってる。もう怪物は消え去った。また息をすることができる」。そして、ケシャは「Praying」をリリースしたタイミングでこんなコメントを発表しています。「この曲で訴えたかったことは、たとえ自分を傷つけたような相手にでも同情の気持ちを持とうということ。そして、孤独に打ちのめされそうなときでも自分に誇りを持つこと。私は、この曲が苦しみの真っ只中にいる人たちに届くことを願っている。愛と真実を味方にすれば、あなたは決して打ち負かされることはない。絶対にあきらめないで」と。

【ジェーン・スー】
はい。

【高橋芳朗】
この「Praying」、授賞式ではシンディ・ローパーをはじめとする豪華女性シンガーをバックに従えてのパフォーマンスでしたが、今日はスタジオバージョンで聴いてみましょう。

M1 Praying / Kesha

【高橋芳朗】
このケシャをはじめとして授賞式のパフォーマンスやスピーチでは女性の権利主張と団結を訴えるものが目立っていましたが、昨年に引き続きトランプ政権に抗議を表明するアーティストも少なくありませんでした。特に印象的だったのが、ケシャの「Praying」のパフォーマンスでもバックコーラスとして参加していたカミラ・カベロのスピーチ。カミラ・カベロはいま最も勢いがある20歳の女性シンガー。ちょうど現在プロモーションで来日中です。カミラは3歳のときに母親とキューバからアメリカに移住してきたバックグラウンドがあるんですけど、そんなことからスピーチでトランプ大統領の移民排除政策を暗に批判していました。彼女は「ドリーマーズ」と呼ばれる若い不法移民がいま強制送還の危機に立たされていることを受けてこんなスピーチをしています。「私が今日このステージに立つことができているのは、ドリーマーである両親が私をこの国に連れてきてくれたからです。この国はアメリカン・ドリームを夢見てやってきたドリーマーたちによって、ドリーマーのためにつくられてきました。夢を持った移民の子供たちの存在は、この国にとって戦いに値する貴重なものなのです」。

【ジェーン・スー】
うん。

【高橋芳朗】
いま全世界的にカミラの「Havana」という曲が大ヒットしているんですけど、これは彼女のキューバ系のルーツを打ち出したラテン調の曲なんですね。この曲のミュージックビデオは最後に「This is dedicated to the dreamers」というメッセージが映し出されるように、実は移民の若者たちに捧げられているんです。カミラは以前から「移民に向けたラブソングをつくりたい」と話していて、「いま移民という言葉にはネガティブなニュアンスがある。この言葉からは夢を抱えてアメリカに渡ってきた女の子が疎外されている姿をイメージしてしまう。私は音楽を通じて彼女たちを光で照らしてあげたい」ともコメントしていて。いまヒットしている「Havana」はこうした思いのもとにつくられた曲なのかもしれませんね。

M2 Havana feat. Young Thug / Camila Cabello

【高橋芳朗】
最後は、今回の授賞式でいちばん弾けていた女の子を紹介して締めくくりたいと思います。カーディ・Bという女性ラッパーですね。ニューヨーク出身の25歳。去年メジャーデビューシングルの「Bodak Yellow」がいきなりアメリカで1位を記録した、いま乗りに乗ってる女性ラッパー。

【ジェーン・スー】
そうですね。

【高橋芳朗】
カーディ・Bはもともとストリッパーだったんです。それでSNSに投稿した過激な発言や写真が話題になって、いわゆるネットセレブとしてブレイクして。それを足掛かりにしてリアリティショウにレギュラー出演するようになって、広く存在が知れ渡ったところでラッパーデビューしました。彼女はあけすけなキャラクターが同性からの支持を集めて、ウーマンパワー的な観点からも注目されていて。今年のウィメンズマーチではプラカードにカーディ・Bの歌詞を掲げて行進している女性も結構目立っていたみたいですね。今回のグラミー賞の授賞式でもめちゃくちゃ無邪気で底抜けに明るくて、彼女の振る舞いを見てるだけで元気になってくる。

【ジェーン・スー】
もう打ちのめされましたよ! だって、彼女が本格的にラッパーとして活動を始めてからほぼほぼ2年ですよ。それがブルーノ・マーズとグラミー賞の舞台でまったく互角に渡り合ってるんだから。

【高橋芳朗】
うんうん。カーディ・Bはブルーノ・マーズの「Finesse」というヒット曲のリミックスバージョンでゲスト参加しているんだけど、いまやあのブルーノ・マーズですらカーディ・Bの勢いにあやかってるようなところがありますからね。

【ジェーン・スー】
すごいよ! ふたりのステージ見ていて「はーっ!」って声が出ちゃったもん。

【高橋芳朗】
カーディ・B、授賞式の最中に自分のSNSに「U2のボノからサインもらっちゃった!」みたいな動画をアップしていたりね。とにかく無邪気でかわいい。

【ジェーン・スー】
「イエーイ!」ってね。

【高橋芳朗】
近所のノリのいい姉ちゃんみたいな感じだよね。ヒップホップはマッチョな男社会で、そこで女性ラッパーとしてキャリアを積んでいくのは本当に大変なことなんだけど、彼女はへんに虚勢を張ることも媚びることもなく、本当にのびのび生き生きと活動してる印象があって。

【ジェーン・スー】
時代なんだろうね。カーディ・Bは女性のソロラッパーとしては19年ぶりに全米チャートで1位を獲得したんですよ。19年前に誰が1位になったかというと、それはローリン・ヒルというアーティストで。ローリンは啓蒙的で優等生的で、社会を良い方向に持っていこうとしていた意識の高いアーティストだったんです。当時のローリンもそれはそれでアイコンだったわけだけど、カーディ・Bはローリンと真逆のような存在だからさ。

【高橋芳朗】
豊胸とか豊尻とか美容整形してることも平気で打ち明けてたりね。

【ジェーン・スー】
そういうコがいきなり出てきて、やりたいことをやって言いたいこともぜんぶあけすけに言って……うん、時代だなって思います。

【高橋芳朗】
では、そのカーディ・Bと今回のグラミー賞の主役だったブルーノ・マーズとのコラボレーションを聴いてください。

M3 Finesse Remix feat. Cardi B / Bruno Mars

【高橋芳朗】
このように今年のグラミー賞の授賞式は女性アーティストの活躍が印象的だったんですけど、肝心の女性アーティストの受賞はすごく少なかったんです。で、その結果に抗議する「#GrammysSoMale」(グラミー賞は男だらけだ)なんてハッシュタグがツイッターでトレンド入りしたりして。それを受けてグラミー賞の主催者が「女性アーティストはもっとがんばるべき」みたいなコメントを発表しちゃったもんだから、ピンクやレディー・ガガやシェリル・クロウが激怒しちゃってね。

【ジェーン・スー】
大炎上してますよね。

【高橋芳朗】
そう。まさにいまその真っ只中でございます。今回のグラミー賞、ノミネートが発表された去年の時点では人種やジャンルが多岐に渡っていることから「#GrammysSoDiverse」(多様性のあるグラミー賞)なんて言われていたのにね。まさかこんな事態になるとは。

【ジェーン・スー】
でもグラミー賞の授賞式を見ていて毎年思うんですけど、エンターテイメントと世相がここまで密接に組み合わさって年に一度のお祭りになっているのはちょっとうらやましいところがありますね。

―― ◇ ―― ◇ ―― ◇ ―― ◇ ―― ◇ ―― ◇ ――
当ラジオ番組では「日々の生活に音楽を」をコンセプトに、音楽ジャーナリスト・高橋芳朗さんによる洋楽選曲を毎日オンエア(稀にかかる邦楽はディレクター選曲)。最新1週間のリストは以下です。

1/29(月)

(11:04) Real Love  / The Doobie Brothers
(11:43) Do You Believe In Love / Paul Davis
(12:16) Generalities / Marc Jordan
(12:23) Light Unto the World / Archie James Cavanaugh
(12:52) Free To Be Me / Jimmy Messina

1/30(火)

(11:04) I Wanna Be Where You Are / Michael Jackson
(11:17) Cashing In / The Voices of East Harlem
(12:17) We Can Make It If We Try / The Sylvers

1/31(水)

(11:04) Cold Cold Winter  / The Pixies Three
(11:17) Whispering / Nino Tempo & April Stevens
(11:44) Tonight You Belong to Me 〜イチゴの片想い〜 / Nancy Sinatra
(12:19) Fools Rush In / Rick Nelson
(12:51) Next Door to an Angel 〜可愛いあの娘〜 / Neil Sedaka

2/1(木)

(11:03) California Dreamin’ / The Free Design
(11:43) Sticks and Stones / Salt Water Taffy

2/2(金)

(11:03) Snow Queen / Roger Nicholes & The Small Circle of Friends
(12:13) Kinda Wasted Without You / The Parade
(12:51) The Face I Love / Chris Montez