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地図がもたらす紛争

森本毅郎 スタンバイ!

忙しい朝でもニュースがわかる「森本毅郎・スタンバイ!」(TBSラジオ、月~金、6:30-8:30)8時からは、話題のアンテナ「日本全国8時です」

全国ネットで、日替わりゲストとともに放送。
毎週木曜日は、東京大学名誉教授、月尾嘉男さんの「雑学コラム」!

月尾嘉男

解説は東大名誉教授の月尾嘉男

2月8日(木)は「地図がもたらす紛争」

 

★中国の地図管理条例

今日は地図がもたらす紛争について紹介したいと思います。先週、中国の国家測量地理情報局が、日本の「良品計画」が中国で店舗を展開する「無印良品」の配布した「2017年秋冬版家具カタログ」の地図の表示が中国の2016年に施行した「地図管理条例」に違反していると指摘し、廃棄処分を命令したということを発表しました。

中国当局の指摘したのは「地図が事前に審査を受けておらず、その国境線に誤りがある」ということで、具体的には尖閣諸島や南シナ海などが記載されていない、海南島が中国の領土であるにもかかわらず中国本土と違う色に塗られている、台湾の表記に誤りがあるなどです。

無印良品は「誤解を生む表現があり、真摯に受け止めている」とし、カタログは廃棄したと発表しています。

しかし、尖閣諸島や南シナ海は中国が一方的に領有権を主張しているだけですから、日本の菅官房長官は記者会見で「尖閣諸島は日本固有の領土であることは歴史的、国際法上も明らかであり、現に我が国は実効支配している。中国の独自の主張に基づく措置はまったく受け入れられない」と発表し、外交ルートを通じて中国にその旨を伝えたと説明しています。

今月2日の産経新聞の記事によると、中国外交部の会見場の背景にある世界地図には尖閣諸島も沖縄諸島も描かれていないので、これは言いがかりに近い話です。

★切手がもたらす紛争

このように地図の表記は複雑な問題を含んでおり、これまでも数多くの紛争の原因になっています。中国の文化大革命期間の1968年に中国で発行された「全国山河一片紅(中国の山河はすべて赤い)」という文字の入った切手があります。国民が『毛主席語録』を高々と掲げ、その上部に名前のように真っ赤な中国の領土が描かれている切手です。

ところが発行の半日後に回収され、ほとんど市場に出回りませんでした。理由は台湾が赤い輪郭の白抜きで、全体が赤くなっていなかったからです。しかし、ほとんど出回らなかったために切手収集家には大変な価値があり、2009年に香港のオークションに出品された未使用の切手は、1枚およそ4300万円という中国切手史上最高価格を記録しました。

これは国内問題ですが、国際問題になり戦争にまで発展した切手があります。カリブ海にイスパニューラ島という北海道より一回り小さい面積の東西に細長い島があります。コロンブスの第一回航海で立ち寄った島ですが、ここは現在、東側がドミニカ共和国、西側がハイチに分かれています。

1900年にドミニカ共和国が発行した切手に島全体の地図が描かれていたのですが、ハイチとの国境線が大幅にハイチ側に入り込んでいました。当然、ハイチが怒り、国境線付近で衝突が発生しました。20年以上経ってから正しい国境線を描いた切手が発行されて戦闘は終結しましたが、残念ながら、この切手は大量に使用されていましたので、現在、1枚200円程度で入手可能のようです。

★地図がもたらす紛争

2010年11月には切手の地図ではなく、グーグルマップが原因で紛争が発生したことがあります。大西洋に面したニカラグアとコスタリカの国境地帯で、ニカラグア軍がコスタリカの領土に侵入し、掲揚されていたコスタリカの国旗をニカラグアの国旗に付け替えたという事件が発生しました。

越境したニカラグア軍の司令官は、グーグルマップを見ると侵攻した地域はニカラグアの領土になっているからだと説明しました。これはグーグルマップの国境線が間違っていたからで、グーグルはアメリカの国務省から正確な地図を受け取り、現在は正しい国境線に修正されていますが、このようなことも発生します。

日本についても領土問題に関係する切手が韓国で発行されたことがあります。1954年に韓国が竹島を描いた普通切手を3種発行しました。日本はこの切手を貼った郵便物は通用しないとして返送したり、万国郵便連合(UPU)に異議申し立てすることを決定しましたが、その時期は第5次吉田内閣の末期で政局が不安定であったため、具体的な行動をしませんでした。

★平昌五輪

明日は平昌オリンピックの開会式ですが、これに関しても韓国は領土問題を起こしています。昨年9月に平昌オリンピックの組織委員会の公式ウェブサイトに、世界各地域から何カ国、何人が参加するかを示す地図が掲載されました。

ところが、この地図には日本列島やサハリンが描かれていなかったのです。菅官房長官は記者会見で「事態は承知しており、今朝、スポーツ庁から在京韓国大使に指摘をし、早急な訂正を申し入れた」と説明し、韓国の韓国文化体育観光部関係者が「あってはいけない間違いであり、日本政府からの指摘を受けて地図を修正した」と連絡がありました。

しかし、日本語表示の地図は修正されたものの、英語版、韓国語版、フランス語版などでは修正されない状態がしばらく続きました。さらに大会組織員会の公式ホームページの地図には、現在は別のデザインになりましたが、一時は竹島を「Dokdo」、日本海を「East Sea」と表記されていたこともありました。

気になっていたのは、南北合同の入場行進に使用される朝鮮半島を描いた統一旗のデザインですが、その地図には竹島は描かれていないとのことです。

これら一連の事件は、意図的である場合はもちろん、相手が意図しない場合でも、曖昧にしておけば既成事実として領土問題に関わることにもなり、最悪の場合はハイチとドミニカ共和国、ニカラグアとコスタリカの国境紛争のような事態にもなりかねないので、うんざり感はあるものの、厳重に抗議しておく必要があると思います。

月尾嘉男の日本全国8時です(リンクは1週間のみ有効)http://radiko.jp/share/?sid=TBS&t=20180208080000

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