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タネまでうまい!? 八王子の伝統野菜「高倉ダイコン」を次の世代へ 福島秀史さん

久米宏 ラジオなんですけど

TBSラジオで毎週土曜日、午後1時から放送している「久米宏 ラジオなんですけど」。
2月10日(土)放送のゲストコーナー「今週のスポットライト」では、東京の伝統野菜の魅力を伝えている江戸東京野菜コンシェルジュ協会の理事・福島秀史(ひでふみ)さんをお迎えしました。今や生産者が一軒になってしまった八王子の伝統野菜「高倉ダイコン」の継承に取り組んでいます。ここまで江戸東京野菜に深くかかわるようになったのは、ある運命的な出会いがきっかけでした。

スタジオ風景

福島さんは1965年に東京で生まれ、埼玉県・所沢で育ちました。大学卒業後は当時花形だった広告の仕事に就きました。不規則な毎日で、食事は深夜にカップラーメン…。すべてが野菜中心となった今とは180度違った生活でした。ですから東京の野菜のことも、つい数年前までそれほど知らなかったそうです。

6年前(2012年)のある日、仕事中に聞いていたカーラジオから江戸東京野菜という聞きなれない言葉が耳に入ってきました。話していたのは、元JA東京中央会参事で江戸東京・伝統野菜研究会の代表の大竹道茂さんでした。なぜか気になった福島さんは大竹さんにコンタクトを取って話を聞いてみると、「江戸東京野菜コンシェルジュ」という民間資格が前の年に始まったということでした。福島さんはその年に講座を受講して、47歳で資格を取得。翌年(2013年)からは江戸東京野菜コンシェルジュ協会に入って、運営を手伝うようになりました。

スタジオ風景

江戸東京野菜は、JA東京中央会が認定している東京の伝統野菜のブランドです。東京23区の農地がほとんどなくなっていく中でなんとか都心の農業を振興しようという目的で、10数年前からブランド化に取り組むようになりました。2005年に食育基本法が制定されると「食育」や「地産地消」への取り組みが各地で進み、土地の名前が付いた伝統野菜が注目されました。JA東京中央会でも、江戸時代から昭和中期(昭和30年代~40年代)にかけて東京で伝統的に作られてきた野菜を継承している生産者を探し、その普及や復活、タネ探しに取り組みました。そして2011年に「江戸東京野菜」の名称が商標登録されました。

今の東京で野菜作りが盛んになったのは、江戸に幕府が開かれてから。町が整備されて人口が急激増えると、人々の食糧を確保するために野菜が作られるようになったのです。また、参勤交代が諸藩に義務付けられると、大名たちは農民たちを連れてきて江戸の下屋敷で故郷の野菜を栽培させました。それで江戸には全国のいろいろな野菜のタネが集まったのです。それが周辺の農家にも伝わり、地域に根付いて固定種となったのが、江戸東京野菜のルーツです。さらに時代が明治・大正・昭和と移る中で、品種改良された新たな野菜も生まれました。実は昭和30年代までは東京の都心でも、味や形がバラエティーに富んだ個性的な野菜がたくさん作られていました。

でも昭和40年代に「指定産地制度」が導入されると状況が一変します。地方から消費地に安定的に大量の農産物を供給するため、進んだ農業技術によって形が均一によく揃って育つ「一代雑種(交配種)」、いわゆる「F1」が生まれました。全国の生産者が、揃いが良くて箱詰めや運搬に適していて、なおかつ規格外の無駄な野菜が少なく、病気に強いF1種へと切り替えました。東京の生産者も同じです。こうして東京の個性的な野菜は急速に姿を消していったのです。

それでも今から10年ほど前から地産地消が見直され、東京の伝統野菜の復活プロジェクトがあちこちで始まりました。福島さんが江戸東京野菜を知ったのは、まさにその頃でした。

江戸東京野菜では練馬大根が有名ですが、ほかにも40種類以上登録されています(2017年12月末現在、48種類)。福島さんは自分が住んでいる八王子市にも「高倉ダイコン」という大根があることを知りました。かつては八王子一帯で作られていましたが、今では生産者が一軒になっていました。大竹さんに誘われて、その一軒だけになった生産者を訪ねた福島さんは、奥さんにそのことを話しました。

高倉大根

「うちのすぐ近くが高倉ダイコンの発祥の地で、しかも生産者はもう一軒だけなんて知らなかったよ」

「なに言ってるのよ、それうちのおばあちゃんの実家じゃない」

「じゃあ、冬になると親戚から送ってくる自家製のたくあんは、もしかして立川さんの高倉ダイコンだったの?!」

久米宏さん

その唯一の生産者・立川太三郎(たちかわ・たさぶろう)さんは、奥さんの親戚だったのです。結婚してから奥さんの地元の八王子で暮らすようになって20年以上経つというのに、福島さんはずっと知らずにいたのです。でも実は八王子では、地元で作られていた大根が高倉ダイコンという伝統野菜だったことを知らない人が多いそうです。

結婚相手が八王子の女性だったこと、その親戚が高倉ダイコンの唯一の生産者だったこと、その大根で作ったたくあんを20年以上も知らずに食べていたこと、カーラジオでたまたま江戸東京野菜の話を聞いたこと、大竹さんと知り合って立川さんを詳細されたこと…。それまでの出来事が一瞬にして頭名の中を駆けめぐった福島さんは、高倉ダイコンとのただならぬ縁を強烈に感じました。

高倉大根

「高倉ダイコンのタネが、なんとか次の世代につなげてくれって訴えてるように思えたんです」(福島さん)

スタジオ風景

福島さんは農業に特化した広告会社を立ち上げ、八王子の生産者や小中学校を精力的に回って、高倉ダイコンの普及に取り組んでいます。そして去年(2017年)はついに自分も生産者となり、この冬600本の高倉ダイコンを収穫しました。スタジオにはその大根を自宅で漬けたたくあんと、タネ採り用に残しておいた大根を持ってきてくれました。たくあんを試食した久米さんと堀井さんは大絶賛。

「歯ごたえがあっておいしい! たくあんによく合いますね。売っていないんですか?」(堀井さん)

「来年はその気になって作ろうかと思っています」(福島さん)

「この大根、いぶりがっこにするとものすごくおいしくなるんじゃないですか」(久米さん)

「実は作ったんですよ。お酒に最高に合いますよ!」(福島)

久米宏さん

高倉ダイコンは、スーパーでよく見る青首大根より一回り細いのですが、長さは60センチほどもあって、持ってみるとずしりと重い。太さが均一ではなくでこぼこしているので、畑から引き抜いて収穫するのにとても力がいるそうです。いたずらに力任せに引き抜くと腰を痛めてしまうので、ひざの屈伸をうまく使って抜くのがコツだそうです。

「高倉ダイコンひざで抜け、ですね!」(堀井さん)

高倉大根の種

堀井さんから飛び出したインチキ格言に苦笑しつつ、福島さんは唯一の生産者・立川さんから分けてもらったという高倉ダイコンのタネも見せてくれました。八王子の農家が100年に渡って代々タネを残してきた思いが、この一粒一粒に凝縮されているのです。今となっては日本中で立川さんと福島さんのところにしかない貴重なタネです。すると久米さんと堀井さんが思わぬ行動に…。

大根の種を味見

「ダイコンのタネって初めて見ました。これ食べられます?」(久米さん)

「食べたことはないです。でもたぶん食べられるのかな…」(福島さん)

「じゃあ、堀井さん」(久米さん)

「え、ホントに食べちゃいます?」(福島さん)

「ちょっと苦みがあります。…あ、でも甘くなった。甘~い! おいしい!」(堀井さん)

「おいしいね、これ!」(久米さん)

「大根をぎゅうっと凝縮して甘みを乗せた感じ。おいしい!」(堀井さん)

「…あの、あんまり食べ過ぎないでくださいね(汗)」(福島さん)

福島秀史さんのご感想

福島秀史さん

久米さんは本当にいろいろなことをよく調べられていてびっくりしました。江戸東京野菜のそもそもことから、それが口に入るところまでをご紹介いただいたので、嬉しかったです。堀井さんとお二人がタネを食べたときにはちょっとびっくりしましたけど(笑)。

伝統野菜は継続していくことが大事なので、収穫や食べることだけでなく、ぜひ途中経過も知っていただけるといいと思います。そしてみなさんの頭のどこか片隅に江戸東京野菜のことを残していただけるといいですね。

今回、久米さんのラジオでお話しさせていただくことになって、取材でこんなに反響があったのは初めてです。これを聞いた若い生産者の中から後継者となってくれる人が出てきたら、都心の農業が元気になると思いますし、東京のひとつのセールスポイントにもなると思います。私自身もこれでますます高倉ダイコンを絶滅させるわけにはいかなくなりましたので、いい励みになりました。今日はありがとうございました。

2018年2月10日(土)放送「今週のスポットライト」、ゲスト:福島秀史さんhttp://radiko.jp/share/?sid=TBS&t=20180210140000

radikoで放送をお聴きいただけます(放送後1週間まで/首都圏エリア無料)

次回のゲストは、映画監督・小野さやかさん

2月17日の「今週のスポットライト」には、映画監督の小野さやかさんをお迎えします。性的マイノリティである人たちを追ったドキュメンタリー映画『恋とボルバキア』が公開されています。

2018年2月17日(土)放送「久米宏 ラジオなんですけど」http://radiko.jp/share/?sid=TBS&t=20180217140000

radikoで放送をお聴きいただけます(放送後1週間まで/首都圏エリア無料)