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性はグラデーション「恋とボルバキア」監督・小野さやかさん

久米宏 ラジオなんですけど

TBSラジオで毎週土曜日、午後1時から放送している「久米宏 ラジオなんですけど」。
2月17日(土)放送のゲストコーナー「今週のスポットライト」では、映画監督・テレビディレクターの小野さやかさんをお迎えしました。

小野さやかさん

小野さんは1984年、愛媛県新居浜市で生まれ育ちました。中学生になると厳格な両親に反発や息苦しさを覚え、そこから逃避するように寝る時間を削って映画を観るようになり、やがて映像の世界に惹かれていきました。高校卒業後、川崎市にある日本映画学校(現・日本映画大学)に入学。いろいろな人の人生を通して何かを表現するドキュメンタリーの世界に飛び込み、3年目の卒業制作として、家族と自らの葛藤を題材にしたセルフドキュメンタリー『アヒルの子』を発表。5年後の2010年に劇場公開されると海外の映画祭などで高い評価を得ました。2012年には、脱原発ソングを歌うアイドルグループを追った『原発アイドル』がフジテレビのドキュメンタリー番組「NONFIX」で放送され、第50回ギャラクシー賞の奨励賞を受賞しています。

スタジオ風景

小野さんは久米さんの本(『久米宏です。ニュースステーションはザ・ベストテンだった』)の中に書いてある「カメラに映ったものがすべて真実ではない」という言葉が心に刺さっていると言います。ドキュメンタリーも真実を映していると思われますが、カメラの前の人が本当の姿をさらけ出しているとは限りません。人に見せたい自分であったり、取材者に求められている姿だったり、そういうものを無意識のうちに「演じて」しまうことだってあるからです。ドキュメンタリーの現場では、「真実とは何か」という問題にいつも向き合うことになるのです。

恋とボルバキア

小野さんは2013年、女装する男性たちを取材した『僕たち女の子』というドキュメンタリーを手がけました(これも「NONFIX」で放送されました)。当時は「女装男子」という言葉がブームのように使われていました。そういう人たちの話を聞いてみると、「女装趣味」という枠でひとくくりにはできないと感じたそうです。そこで、放送後も4年間取材を継続し、ドキュメンタリー映画『恋とボルバキア』が完成しました(2017年12月から全国で順次公開)。ボルバキアというのは、昆虫に寄生して性を転換させてしまうバクテリアの一種だそうです。

スタジオ風景

この番組で久米さんは「性別というのははっきり区別されるものではなくて、グラデーションなんだと思う」と言ってきました。この映画には、性の曖昧さの中で揺れている人たちが登場しますが、まさに「性はグラデーション」。このところようやく認識が広がり始めた「LGBT」以外に、実にいろいろなパターンがあることが分かります。そしてこの映画がユニークなのは、揺れている人たちの「性」だけでなく、彼・彼女たちの「恋愛」にフォーカスしているところ。恋愛が絡むからこそ、彼女たちの性がさらに揺れるのです。

例えば、映画に登場する「はずみさん」という女性は元々男性で、かつては女性と結婚をしていました。ところが子供が生まれ、父親としての役割を求められるようになって自分の中の違和感に気付いたのです。結局は離婚して、女性として生きる道を選んだのですが、今はレズビアンの「樹梨杏(ジュリアン)さん」とお付き合いをしています。樹梨杏さんははずみさんが元男性とは知らずに「恋」をしました。でも周りの人から「ニセモノのレズビアン」と言われて悩みます。はずみさんの子供がほしい、結婚したいという思いも大きくなります。でも、はずみさんとしてはそれは受け入れがたい。自分が捨てた「男性」の部分を求められているからです。実に複雑です。

小野さやかさん

「本当はみんな、性は曖昧なもので、お決まりの恋愛パターンなんかないと分かっていても、どうしても自分の中には固定概念もあります。例えば、自分の息子がある日突然、女性のカツラをかぶって現れたら、何人の人が受け入れることができるでしょうか。生まれたときに思い描いたその子の将来のこととか、さんざん考えたその子の名前とか、自分がそれまで歩んできたものを全部くつがえさなきゃいけない。そのとき、受け入れる家族の側には違和感が必ず発生します。それはすごくしんどいことだというのは、撮影してきて感じました。私も100%受け止められるかどうか…」(小野さん)

久米宏さん

「考えてみれば、人間って誰しも複雑なものです。だから子供を産むときは覚悟がいる。本当は、子供を産むんじゃなくて、人間を産むんですから」(久米さん)

この映画のパンフレットにはこんな言葉が添えられています。
「みんなちがって、みんないい、ってみんな言う。」

小野さやかさんのご感想

小野さやかさん

私自身は性への違和感を抱える当事者ではないというのが、『恋とボルバキア』を撮りながら彼女たちと関係性を作るときにいちばん難しかったところで、どこまで彼女たちを理解できるか悩んでいたんですけど、「相撲やレスリングにだって性別を超えたエロスがある」とおっしゃった久米さんの感性は面白いなあと思って、聞き惚れました。男性、女性って、誰かが決めたルールにすぎないんですよね。久米さんの話を聞いて、女らしさとか男らしさとか、そういう枠のタガが少し外れていく思いがしました。

カメラに映ったものがすべて真実ではないということを前提にしているのが久米さんの世界なんだと思います。結局、映っているものだけでは語りきれないという前提で語っているのが面白いと思いました。ありがとうございました。

次回のゲストは、JX通信社・代表の米重克洋さん

2月24日の「今週のスポットライト」には、AI(人工知能)を使って事件や事故、災害などの緊急情報を集め、いち早くテレビ局や報道機関に配信している「JX通信社」の代表・米重克洋(よねしげ・かつひろ)さんをお迎えします。人間の記者はひとりもいない“記者ゼロ”の通信社です。

2018年2月24日(土)放送「久米宏 ラジオなんですけど」http://radiko.jp/share/?sid=TBS&t=20180224140000

radikoで放送をお聴きいただけます(放送後1週間まで/首都圏エリア無料)