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「脳転移がん」~変わる意識と治療~

森本毅郎 スタンバイ!

脳にがんが転移するというのは非常に厄介な現象。治療は難しく、長く生きられない・・・そんな後ろ向きな意識になりがちでしたが、ここ最近その意識がガラッと変わってきています。東京大学医学部付属病院・放射線治療部門長・中川恵一准教授に伺った、病気の特徴と治療の現状について。2月19日(月)、松井宏夫の「日本全国8時です」(TBSラジオ、月曜あさ8時~)で解説しました。

 ★脳転移の半分は「肺腺がん」

 

まず、日本人の、脳転移がん=転移性脳腫瘍の傾向をお話します。脳への転移は、がんになった10人に1人=1割の人に、起きています。その中で、日本人に特に多いのが、肺がんからの転移で、「46%。」そもそもがんの転移は、がん細胞が、血管やリンパ管に入り込み、血液やリンパの流れに乗って、発生した場所とは、離れたところに運ばれるという仕組み。肺にはたくさんの血管やリンパ管が張り巡らされているので、転移しやすいのです。そして、その肺がんにいくつかタイプがありますが、脳転移しやすいのは「腺がん」。腺がんは肺の中心部ではなく、末端の方にできるがんで、肺がんの半分を占めるものです。

★日本人に多いタイプの転移は?

全体の脳転移がんのうち、4分の1は、腺がんというタイプになります。これには人種的要因・・・日本人の遺伝子も関係していることがわかってきました。肺腺がんが転移する原因の半分以上が、アルファベットで「EGFR」という遺伝子の変異によるもので、その変異が日本人は、欧米人に比べ「3倍」あるそうです。その変異があると、がん細胞が増殖するスイッチがオンのままになってしまいます。この変異は、若い人や女性に多いという数字もあります。

★長く生きられない意識の原因は?

こうした脳転移がんに、これまでは、治りにくいものという意識がありました。長くて半年、場合によっては3か月・・・悲しいことですが、長く生きられないという意識などから、患者さんの1年以内の自殺率は24倍に、上がるという数字もあります。そんな後ろ向きの意識は、治療の選択肢が、これまで限られていたことも原因です。脳転移の多い、先ほどのEGFR変異型の脳転移がんでは、米粒ほどの小さな転移が、脳全体に、発症する特徴があります。こうなると治療は、手術で全てを除くことはできません。脳の左側と右側から、放射線を当てる「全脳照射」という治療になります。ただ、この全脳照射は、転移を抑えられるものの、はっきりと延命効果は示していません。むしろ、正常細胞もダメージを受け、認知機能の低下をもたらすことがわかっています。全脳照射の治療を行って、3か月で人柄が変わってしまう・・・ということも。全脳照射は、5年以上前は当たり前のように・・・今でも、多くの病院で行われています。しかし、新しい治療は着実に出てきていますので、諦める必要はありません。

★「薬による治療」

まず薬は、日本人の脳転移がんが、遺伝子変異によって起きやすい、という特徴を逆手にとったものです。異常がある遺伝子を狙い撃つことができる薬で、「分子標的薬」というものです。分子標的薬は、がんの発生、増殖に関わる物質を特定しその働きを抑えます。薬には「イレッサ」「タルセバ」「ジオトリフ」「タグリッソ」という4種類があります。今、「タグリッソ」というものが、第三世代と呼ばれる最新のものですが、4種類の薬を順に変えて使うことが、とても有効だということがわかってきました。ある70代の女性は、米粒みたいな脳転移が7つあり、手術ができないタイプ。薬の治療で、脳をはじめ全身に転移があっても、5年以上生存されています。

★「放射線による治療」

もう一つは放射線治療で、定まる位置と書いて、定位放射線治療というものです。学会のガイドラインでは、今では、先ほどの全脳照射は推奨されていません。放射線は、全体的ではなく、ピンポイントの照射が基本です。何度か過去紹介しましたが、およそ2百本の細い放射線のビームを、がん細胞に集中させ、ナイフで切り取るように、がん細胞をやっつける「ガンマナイフ」という治療です。CT検査のような空間に入る機械ですが、転移の数が、1つでも複数でも使えて、一つずつがんを潰し、患者さんの生存率を高めます。

★最新のガンマナイフ『Icon』

しかも、最新のガンマナイフは、高い照射精度はそのままに、より患者に負担が少ない治療ができるようになっています。これまでのガンマナイフでは、患者は麻酔をして、頭をフレームと4つのピンで固定して、動かないようにしていました。しかし、最新の『Icon(アイコン)』では、専用のマスクで固定をします。そして、赤外線で、患者の頭の位置を正確に追跡し、例えば、呼吸など微妙な体の動きも認識して、自動的に補正します。赤外線なので余計な被ばくがありません。

★薬と放射線、どっちが良い?

論文では、最初にガンマナイフを使って、次に薬を使うケースが、生存期間が長いというものが出ています。ただ東大病院の中川准教授は、実際の治療現場では、分子標的薬とガンマナイフを同時治療で使ってやるのが良いとされると言います。いずれにせよ、既に脳転移は、ただ死を待つという病気ではなくなっているということ。全国に54施設、各地域にガンマナイフの治療が受けられる病院がありますので、ぜひ適切な治療を受けるようにしてください。

 

 

日本全国8時です(松井宏夫)

解説:医学ジャーナリスト松井宏夫

 

松井宏夫の日本全国8時です(リンクは1週間のみ有効)http://radiko.jp/share/?sid=TBS&t=20180219080000

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