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「認知症」に間違えられやすい病気とその治療

森本毅郎 スタンバイ!

認知症と診断される人のおよそ1割=70万人以上は、原因不明とされつつも、よくよく調べると、実は、他の病気が原因だったということがあります。本認知症になってしまったと諦めている人でも、1割は別の病気で、治る可能性があります。認知症に間違えられやすい病気について2月26 日(月)、松井宏夫の「日本全国8時です」(TBSラジオ、月曜あさ8時~)で解説しました。

★認知症なのか、違うのか。

まず、最新の、認知症についての診療ガイドラインの内容を少しお話します。認知症の原因の多くはアルツハイマー型・脳血管性型・レビー小体型と呼ばれるものです。それら一般的に認知症と知られるものは、元の原因が脳にあって、起きるものです。一方、きょうお話する、症状から認知症に間違えられやすい病気は、元々の原因は、脳とは別の場所で起きた病気が、直接・間接的に脳に影響を及ぼすものです。最新のガイドライン(去年夏発刊)では「鑑別が必要な疾患」と、定められています。いくつかありますが、中でも、特徴的なものについてお話します。

★甲状腺に関わる病気

1つ目は、認知症の薬を使うと、逆効果のものです。「甲状腺」に関わる病気で、甲状腺機能低下症や、バセドウ病です。これらは、甲状腺の働きが乱れ、ホルモンバランスが崩れる病気です。甲状腺のホルモンは、特に心臓に関わりが深く、心臓に負担がかかりドキドキします。その一方で、頭の働きが低下したり、記憶力が低下する、という症状もあります。そうしたことから、アルツハイマー型認知症などに間違えられやすいのですが、アルツハイマー型認知症向けの治療をしたら大変なことになります。

★副作用で心臓に負担

認知症の薬の副作用が、さらに病状を悪化させます。「アリセプト」など認知症の進行を遅らせる一般的な薬がいくつかありますが、そうした認知症の薬は、心臓の働きを悪くする、副作用があります。ただでさえ心臓に負担がかかっているのに、そこに認知症の薬で負担をかけるので、甲状腺の病気がさらに悪化することになってしまいます。家族でもなかなか見分けられないので、薬を処方した医師に症状の悪化を伝えましょう。

★肝臓に関わる病気

2つ目は、今後患者が増えそうなもので、肝臓の病気が関わるものです。「肝性脳症」と呼ばれるもので、これは肝臓の病気が原因になります。肝臓の病気には、慢性肝炎から、肝硬変となり、最終的には肝がんになるという流れがあります。その原因として、有名なのは、C型やB型肝炎ウイルス、アルコールですが、NASH=非アルコール性脂肪性肝炎には要注意です。NASHは、肥満や糖尿病などが原因なので、患者さんが今後増えると予想されるので、そこから、認知症と間違えられやすい「肝性脳症」も増えるとみられています。

★「肝性脳症」とは

食事でとった、たんぱく質が、腸内の細菌によって分解される際に、アンモニアが生み出されます。普通、アンモニアは、代謝・解毒されますが、肝硬変になると、肝臓の働きが悪くなり、ほとんど代謝できなくなります。代謝が悪くなると、アンモニアが解毒されないまま、血流で、脳に達してしまいます。それが、脳に悪影響を与え、睡眠障害や物忘れなど認知機能の低下を起こします。

★見落とされやすい特徴も

肝臓の病気の特徴で、一つ厄介なこととして、痛みなどの症状が出にくい事です。肝硬変の患者さんのうち、3分の1が、診療ではわかりにくい「潜在性肝性脳症」です。肝臓の専門医でないと、肝臓の異常が見落とされ、原因不明の認知症と誤診されることも。肝臓が原因だと気づかないまま、肝性脳症がもう1段階悪化すると、認知機能低下の症状はさらに顕著になります。「時間・場所がわからなくなる」「物を取り違える」ほか、「眠りに陥りがちでウトウト・・・」ここまでくると、日常生活で転倒・転落や交通事故につながる危険性も。

★有効な薬「リファキシミン」

アンモニアの量を調節する薬を使う必要があります。「リファキシミン」という薬が、1年ほど前に保険適用となっています。これは、腸内細菌に作用して、アンモニアの量を増やさない働きがあります。およそ8割の再発が防げる薬で有効なのですが、実は外国では30年前からあった薬です。肝性脳症自体の病気の解明や治療法が進んでいなかったため、その病気の存在が知られず、認知症と間違えられていた可能性もあります・・・。今後は認知症だと思っていても、肝機能の状態が悪い場合は、肝性脳症を疑うのも一つです。そのためにも、肝臓の定期検診をしておきましょう。

★脳脊髄液に関わる病気

最後にもう一つ、認知症に間違えられやすい病気として「特発性正常圧水頭症」にも触れておきましょう。脳脊髄液の循環に障害が起きる病気で、脳から腰の間をめぐっている、その脳脊髄液が、頭の天井から吸収されなくなってしまう病気です。この水頭症の4人に3人に、記憶障害や注意障害など認知機能が低下する症状が起きます。特発性正常圧水頭症は、認知症様症状の他に「パーキンソン病の症状」にもある、「排尿障害」もあるので、変だと分かってきます。

★水頭症の治療

この水頭症は、髄液が溜まって、脳に悪影響を及ぼすので、それを抜いて改善させます。治療は3種類ありますが、体に優しい治療として腰から髄液を抜く=LPシャントという手術が広がっていて、9割は症状が改善します。そうしたことから特発性正常圧水頭症は、治る認知症とも言われます。認知症で今できることは、進行を遅くすることですが、認知症と間違われやすく、治療可能なものもあるので、ぜひ見逃さないようにしてください。

 

日本全国8時です(松井宏夫)

解説:医学ジャーナリスト松井宏夫

 

松井宏夫の日本全国8時です(リンクは1週間のみ有効)http://radiko.jp/share/?sid=TBS&t=20180226080000

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