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難病「重症筋無力症」~求められる周囲の理解

森本毅郎 スタンバイ!

先週、2月28日は、世界希少・難治性疾患の日。日本で、指定難病の数は「330」あります。100万人近い人たちが、様々な難病と闘いながら生活していますが、きょうはその中の一つ、「重症筋無力症」について。3月5 日(月)、松井宏夫の「日本全国8時です」(TBSラジオ、月曜あさ8時~)で解説しました。

★重症筋無力症の症状とは

文字通り、筋肉の力が無くなる症状が起きる病気で、日本での患者数は1万5千人程です。筋肉の力が無くなる、という症状が、どこに起きるかというと、「まぶたが垂れる」、「物が二重に見える」など目に症状が現れる人が非常に多い。目の病気かな、と思う人もいるのですが、症状は全身に及ぶ場合があります。長く物を噛めない、飲み込めないなど口元での障害から手足の力が入りにくくなり「歩行困難」の症状などが、合わせて起きることがあります。さらに、病気が進行すると、呼吸に関わる筋肉に障害が現れ、「クリーゼ」という呼吸困難の状態に陥り、命の危険さえあります。

★この病気の仕組み

神経と筋肉のつなぎ目の部分で「免疫」の異常が起きていることはわかっています。普通、私たちの筋肉は、指令が、脳から神経、神経から筋肉に伝わって、動きます。重症無筋力症は、本来、外敵などから自分の身を守るはずの免疫が、神経と筋肉のつなぎ目を攻撃してしまう。ただ、どうして攻撃するのかなど、未だ解明されていない、そこが難病たる所以です。

★特徴「日内変動」

そして、この難病の一つの特徴が、「日内変動」があることです。日内変動とは、1日の間で、症状が出たり出なかったり変動があることです。症状が午前中は良かったのに、午後になると、悪くなったり、ずっと同じような姿勢を続けていると、だんだん悪くなってしまうことがあります。はたまた長電話をしていると、そのうちだんだん呂律が回らなくなる、ということも。つまり、患者さんの症状には波があるのです。

★若い時期に発症、その影響

日内変動という特徴のある難病なので、体調面でのしんどさはもちろんのこと、周囲の理解を得るのが、なかなか難しいところがあります。私が話を聞いた全国筋無力症友の会、渡部寿賀子さんは、例えば、電車で、優先席に座ることが辛いといいます。重症無筋力症は、力が入らず、だるいといった症状がひどくても、黙っていれば、見た目ではわかりません。しかも、若くして発症する人が多い病気でもあります。渡部さんが、重症筋無力症と診断されたのは29歳。発症年齢は、女性では30代をピークに20代~40代に多い。一方、男性では60歳以上の発症が多いと言われ、女性は、男性の2倍くらい多い。一昔前までは、「ナマケ病」という人もいたそうで、「本当に病気なのか?」と、周囲の理解が得られず、発症後、4分の1ほどの人が、職を失っています。たとえ、職を失わなくても、収入が大幅に減るなどの影響も出ています。

★治療の基本は薬

その一方で、今では、治療で、ある程度症状がコントロールもできるようになってきた面もあります。日常生活に支障が出ないレベルにもっていく、治療がいくつかあります。まずは薬ですが、ステロイドや免疫抑制剤を使い、症状をコントロールします。いずれも、免疫反応の異常を抑えることが目的の薬で、神経から筋肉への指令伝達を改善し、筋力を回復させます。

★胸腺腫切除

あと必須の治療ではないのですが、手術で「胸腺」という、肋骨の奥にある臓器を、切りとる方法があります。胸腺は免疫に関わる臓器で、子供のころは大きく発達し、活発に活動しています。大人になると、胸腺は、その役割を終え、50グラム程の脂肪のようになります。しかし、重症筋無力症の患者さんの多くに、何らかの胸腺異常がみられ、それが免疫異常と関わりがあるとされています。胸腺の腫瘍を切除することで、病状が改善する人もいます。

★新薬「ソソリス」

ただ一方で、こうした治療をしても、症状のコントロールができず、全身に症状が出る、全身型重症筋無力症の患者が、10%~15%います。そうした患者さん向けに、去年12月、新しい薬「ソリリス」という薬が出ました。ソリリスの臨床試験では、効果の得られた患者さんのほとんどが、12週後までに病状が改善しました。これまでの治療で、効果が不十分な方が対象で、治療の選択肢が増えたわけです。ただ、ソリリスは副作用など注意点もあるので、医師の管理のもとで使う必要があります。

★未解明だから求められること

重症筋無力症の病気の存在自体は、古くから知られています。この病気が初めて報告されたのが、1672年。重症筋無力症という名前がついたのが、1895年。それから随分立った現在でも、完全に治る治療法は、未だ解明されていません。現在、難病といわれているものの多くは、免疫に関わる病気と言われています。なぜ免疫の異常が起きてしまうのか、解明は必要です。そして解明まで、そうした難病と闘う人がいることを、周囲の理解は必要でしょう。

 

 

 

日本全国8時です(松井宏夫)

解説:医学ジャーナリスト松井宏夫

 

松井宏夫の日本全国8時です(リンクは1週間のみ有効)http://radiko.jp/share/?sid=TBS&t=20180305080000

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