お使いのOS・ブラウザでは、本サイトを適切に閲覧できない可能性があります。最新のブラウザをご利用ください。

放送中

放送中


  • 放送ログ
  • 音声あり

相馬野馬追を継承するフクシマ・サムライを撮り続ける高杉記子さん

久米宏 ラジオなんですけど

TBSラジオで毎週土曜日、午後1時から放送している「久米宏 ラジオなんですけど」。
4月14日(土)放送のゲストコーナー「今週のスポットライト」では、福島県の南相馬市など「浜通り」と呼ばれる海沿いの地域で千年の歴史をもつ伝統行事「相馬野馬追(そうま・のまおい)」を継承する人々を撮り続けている、写真家の高杉記子(たかすぎ・のりこ)さんをお迎えしました。

高杉記子さん

高杉さんは1974年、山梨県生まれ。父親の仕事の都合で3歳までカナダとアメリカで過ごしたのち、東京で育ちます。写真への興味が芽生えたのは12歳のとき。自然科学雑誌『ナショナルジオグラフィック』(世界一流の写真家たちの写真とともに地球の自然や文化を紹介しています)を見て、写真で伝えることのインパクトに惹かれたそうです。その後、早稲田大学人間科学部を卒業し、出版社に就職。海と旅行の雑誌の編集を担当し、カメラも手にするようになりました。

2002年、出版社を退職し、写真を本格的に勉強するためロンドンの大学に留学。帰国後は外資系企業の広報として6年間働きました。そこでの仕事や人間関係には満足していました。それなのに高杉さんは自分を見失ってしまいます。

スタジオ風景

「自分にとって写真がそんなに大きなものだとは自覚していなかったんです。だから留学から帰ってきて、簡単に写真を手放してしまいました。そしたら自分の真ん中にある大事なものがぽっかりなくなってしまったような感覚になってしまったんです。私って真ん中に何もないって。アイデンティティ・クライシスですね」(高杉さん)

高杉さんはもう一度、写真を学ぶためにロンドンへの留学を目指して準備を始めました。そんなとき、東日本大震災が起きたのです。高杉さんはいてもたってもいられず車で東北の被災3県を回りました。そのなかで福島のたち人と出会ったのです。

スタジオ風景

「南相馬に行ったときに話したおじさんに『お茶でも飲んでいきなよ』って誘われたんです。うちにあがると野馬追の写真がずらっと飾られていて、びっくりしました。部屋には甲冑もあるし、陣羽織もあるし、何なの?って。そこで野馬追を初めて知りました。その方が『いまは北海道に馬を避難させているから今年の野馬追は無理だけど、来年は絶対に出たい』って言うんです。実はそう思っていたのはそのおじさんだけではなくて、南相馬の6割の人が、その被災した年も野馬追を中止せずにやることに賛成したんです。まだ当時は原発事故の影響でその土地に住めなくなるかもしれないって言われていたときだったので、またびっくりしました。これは尋常じゃないって思いました」(高杉さん)。

その後、高杉さんはロンドン芸術大学大学院に合格して日本を離れましたが、野馬追のことがどうしても忘れられず、すぐに日本に戻ってまた南相馬に向かったのです。それから野馬追に関わる人たちの写真を撮り続けています。

侍1

「調べてみると、千年の歴史の中で、野馬追ができなくなりそうなときが何度かあるんです。江戸時代、飢饉で大変な年は規模を縮小してやったとか、明治維新のときは世の中が混乱して大変だったので、やっぱり縮小してやったり。そうやって今までずっと続けてきたんですね。だから震災のときでもやめるわけにはいかないという思いがあったんだと思います」(高杉さん)

久米宏さん

野馬追といえば侍姿の男たちによる勇壮な甲冑競馬(かっちゅうけいば)や神旗争奪戦(しんきそうだつせん)が有名ですが、高杉さんが撮るのはそうした写真ではありません。祭りから離れた“日常”のなかの侍たちのポートレート。鎧兜(よろいかぶと)や陣羽織を身に着けた侍に、「あの日」が来るまでいちばん大事にしていた場所に立ってもらって撮影するのです。津波ですっかり流されてしまった自宅跡に立つ人、わが子が通っていた幼稚園を選ぶ人、壊れかけた厩舎で自分の馬とともに佇む人。一見、無表情に見える侍たちの顔をじっと見つめていると、複雑な思いが伝わってきます。

「みなさん震災と原発事故でいろんなものを失くしました。さらにその後も、いろいろなものを捨てなければならなかったり、あきらめなければならなかったりしてきました。それでも最後にどうしても失くせないものとして、野馬追を残したんです。野馬追は一人ひとりのアイデンティティということもありますし、地域のアイデンティティとしても機能したんだと思います。そういう南相馬の人たちのポートレートを撮るなかで、私自身も、自分が見失っていたアイデンティティを取り戻していったところがあります」(高杉さん)

侍2

「Fukushima Samurai」(フクシマ・サムライ)と題した高杉さんの作品は、国内より先に海外で注目されました。2013年にイギリスの全国紙「インディペンデント」で紹介され、2015年には世界でも注目されるフランスのケ・ブランリー美術館の「国際フォトビエンナーレ2015」の招待作家として招かれ、個展が開かれました。ほかにロシアやマレーシアなどでも展示され、現在は中国・長沙(2018年、3/24~5/20)とニューヨーク(同、4/3~4/27)で写真展が開かれています。さらにオーストラリアでも展示が予定されているそうです。

高杉さんの作品「Fukushima Samurai」は、下記のサイトでご覧になれます。

侍たち

noriko takasugi photography

高杉記子さんのご感想

高杉記子さん

知り合いの方から「久米さんに飛び込んでいけばいいから」とアドバイスをいただいたので、自分では何もコントロールはせずに久米さんにお任せでいきました。私は台本みたいなものがないとうまくしゃべれないのですが、今日は久米さんのおかげで普通にしゃべるように話せました。

今日お話ししたことは「野馬追を守っている人の写真」とか「被災者の写真」というところで終わってほしくないんです。みなさんがご自分に引き寄せて、ご自分に重ねてみていただければと思います。ありがとうございました。

「今週のスポットライト」写真家・高杉記子さんを聴く

次回のゲストは、『相棒』の脚本家・太田愛さん

4月21日、スペシャルウィークの「今週のスポットライト」には、ドラマ『相棒』の脚本で知られる太田愛さんをお迎えします。小説家としても『犯罪 クリミナル』『天上の葦(あし)』など現代社会の闇を描いた作品で注目されています。

2018年4月21日(土)放送「久米宏 ラジオなんですけど」http://radiko.jp/share/?sid=TBS&t=20180421140000

radikoで放送をお聴きいただけます(放送後1週間まで/首都圏エリア無料)